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政府・財界の利点「大」、国民「無」 共通番号制の問題を考える市民シンポジウムを開催

20121112sinpo-inYOKOHAMA.jpg 神奈川県保険医協会・医療情報部は2011年11月12日、全国保険医団体連合会(保団連)と共催で「共通番号制の問題を考える市民シンポジウム in YOKOHAMA」を開催しました。

 「共通番号・管理社会にNO!」をメインテーマに、弁護士、税理士、医師をパネリストに迎えました。

 

 当日は会員や市民など65名が参加。シンポには日弁連の協力をはじめ、県医師会や横浜弁護士など多くの団体から後援をいただいきました。

 

(以下:2011年11月25日号 神奈川県保険医新聞より)


 

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番号制はプライバシー権に抵触 政府・財界の利点「大」、国民「無」

  

 はじめに事務局員より、政府が早期導入を目論む「社会保障・税の共通番号制度」(番号制)の制度概要、政府・財界が番号制の導入議論に至るまでの歴史を説明。続いて3名のパネリストよる話題提供が行われた。

  

 弁護士で日弁連・情報問対策委員会委員の彦坂敏之氏は、憲法・人権の観点から問題提起。憲法の本質は人権保障にあり、プライバシー権や自己情報の管理・統制ができる権利(自己情報コントロール権)は、全ての国民が有する人権。番号制は個人情報の名寄せ・マッチングを前提としており、「これらの人権に抵触する」と指摘した。また、政府の主張する利便性が抽象的で「国民益(私益)」に乏しく、情報漏洩や民間利用、膨大な導入費用など負の面が際立つ。その上で、「プライバシー権などを制約してまで導入する価値はない」と強調した。

 

 税理士でプライバシー・インターナショナル・ジャパン副代表の辻村祥造氏は、番号制が納税者番号(納番)として使用されることの危険性を説明。「課税の公平が実現する」という政府の主張は欺瞞であり、現行の分離課税は正確な所得捕捉を必要としない、全ての商取引の把握は不可能。「番号制で課税の公平は実現しない」と強調した。また、納番として広く民間企業に使われることで、企業等での各種個人情報の一元管理、企業間の情報連携が加速。今後、企業による個人情報の営利利用が拡大し、民間サービス等に番号提示が強要されることが想定される。「番号(個人情報)の流出や不正利用など、多くの問題が起こる可能性がある」と警鐘を鳴らした。

 

 医師からの話題提供は、協会の池川理事長が担当。医療・社会保障での問題点として、政府が番号制の目玉と位置付けている低所得者対策の「総合合算制」は、実は負担の範囲内で給付上限を設ける「社会保障個人会計」の実現を企図。公的保険の範囲を縮小、はみ出た部分は民間保険が補うという図式が完成するとした。また、番号制と医療IT戦略の連動は、政府・財界にとっては既定路線と指摘。民間保険や健康産業等による個人の医療・健康情報の活用、保険料や所得情報の一元管理により、米国型「管理医療」に酷似した仕組みが完成。「政府や財界の狙いは医療・社会保障の給付抑制と市場化にある」と強調した。

 

 

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番号制をテコとした監視社会への転換を阻止

 

 

 後半のパネルディスカッションでは、弁護士で日弁連・情報問題対策委員会副委員長の水永誠二氏と協会の桑島副理事長が座長を務めた。

 

 討論では、番号制の税分野での利便性・効率性は税務署や企業にしかない、総合合算制の実現には医療機関のリアルタイムでのオンライン請求が必須であり、番号制によって憲法が定める社会保障の理念が後退どころか否定される恐れがある―など、多岐に渡り意見交換。フロアからは、当日参加していた日弁連・情報問題対策委員会委員長の清水勉氏より、「番号制の背景には、省庁間の主導権争いや利権問題がある」との意見が寄せられた。

 

 最後に、保団連政策部長の三浦清春氏が閉会挨拶。「日本が監視社会にならぬよう、今後も番号制の問題を広く知らせていく必要がある」と締めくくった