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政策部長談話 「医師に『赤紙』が届く?これは現代の"治安維持法"ではないのか!? 不意を衝く、新型インフル対策特別法案の拙速を問う」

医師に「赤紙」が届く?

これは現代の"治安維持法"ではないのか!?

不意を衝く、新型インフル対策特別法案の拙速を問う

 

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 新型インフルエンザ等対策特別措置法案(以下、新型インフル特措法案)が3月9日、国会に提出され近日中(3月28日)にも衆院通過の予定となっている。この法案は、新型インフルエンザ等の緊急事態措置を定め、国民の生命及び健康を保護し、国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることを目的とし、行政に大きな権限を与えるものとなっている。それは、「医師・看護師等の医療関係者への医療従事の要請・指示」をはじめ、集会制限、土地収用、食料品収用、政策金融、報道規制など広範囲にわたる。この法案は昨年11月に突如、内閣官房で2回議論されたにすぎず、唐突感は否めない。すでに日本弁護士連合会や、薬害オンブズパースン会議から「人権侵害」との指摘と制定反対の声明がだされている。われわれは、拙速を改め法案の撤回、廃案を強く求める。

 

 この新型インフル特措法案は、内閣官房の「新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議」でたった2回しか議論されていない。昨年11月10日が初めてであり、今年1月17日で最終である。しかも審議時間は資料説明を含んで初回が25分、2回目が30分と1時間にも満たないのである。構成員は36名全て各省の審議官・局長級であり、うち厚労省は4名でしかない。

 法案提出の背景や経緯、緊急性などを内閣官房に照会しても、その理由は判然としないのである。

 

 09年の新型インフルの狂騒、空港での防護服をまとった水際作戦の医学的非常識は依然と記憶に新しい。最前線の医療現場と政府中央の対策本部との医療常識の乖離・隔絶、問題認識の差異、臨機応変さを欠いた通知の乱発に、医療関係者の多くが、疲弊し徒労感を味わった。それらを省みずに、しかも医療現場で発熱患者と新型インフルとの鑑別診断が容易でない現実を無視した机上の論理で、特措法は作られている。科学性、実際性の乏しい、法規範が羅列されている。

 

 仔細は略すが、この法案で特徴的なのは、かつての「治安維持法」を想起させる内容が随所に盛られている点にある。政府と都道府県に対策本部を置き、厚労大臣と知事は医療関係者に対し、場所、期間その他必要な事項を示して新型インフルエンザ等の患者の診療等に従事するよう「要請・書面で指示できる」としている。拒否した際の罰則は設けられてはいないが「義務」規定である。

 

 09年の例をみても明らかなように、医師や郡市地区医師会等の関係者の自律的な連携で十分に対応は可能である。東日本大震災ではJMAT(日本医師会災害医療チーム)、DMAT(災害派遣医療チーム)など専門的な自律性のもと有事に対応できることを証明した。「餅は餅屋」である。大切なことは、法規範によって縛ることではなく、医療という専門分野は専門家にきちんと任せる体制を築き、医療常識に反する邪魔や朝令暮改で医療現場を翻弄したりしないことである。

 

 拙速に法案成立を急ぐその裏に、実は何か隠されているのだろうかと勘繰りたくもなる。論議をした内閣官房の関係省庁対策会議の議長を務める内閣危機管理監は、元警視総監である。そもそも厚生労働省の関係審議会でこの法案が起案論議はなされていないのである。

 医療関係者のみならず広範な権利侵害、権利制限をともなうこの法案の廃案を改めて望む。

2012年3月27日