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2010/11/22 政策部長談話「省令改定!?お産潰す、厚生行政は何でもありなのか 産科専門の第一線に耳貸さず、裏企図を貫く傲慢を問う」

省令改定!?お産潰す、厚生行政は何でもありなのか

産科専門の第一線に耳貸さず、裏企図を貫く傲慢を問う

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 法律に根拠がない出産育児一時金の直接支払制度を、「省令」で規定することが11月15日の社会保障審議会の医療保険部会で提案され、その方向となった。またこの制度に関し、法令に規定がない国保連合会による出産育児一時金の審査支払も問題化せずに温存となる。席上、省令での規定に疑問が呈されたものの、厚労省の武田総務課長は「問題なし」とした。

 産科専門施設が一貫して訴えてきた、直接支払制度の廃止、「日本のお産を守れ」の声に、真摯に向きあわない厚生労働省および医療保険部会の委員に、われわれは怒りを禁じえない。強く抗議する。

 この部会では、出産一時金について次年度以降、(1)直接支払制度と(2)受取代理制度、(3)法律に沿った償還払いの3案併用が提案されたものの、妊産婦にも産科医療機関にも全く負担のない受取代理制度は、月の分娩数17件以下と上限設定がなされた。これは産科医療機関の1/3、分娩数では僅か5%しか対応しない。つまり産科専門医療機関の多くは、この提案では対応困難となり分娩の取りやめが多くでることとなる。既に21施設は明確に意思表示しており、年間分娩数8,000件は確実に不可能となる。

 正常分娩は自由料金の自費診療であり、出産当月の入金で産科専門施設は医療機関経営をしてきた。この直接支払制度とは、出産費用の大方を出産育児一時金に振り替えて、国保連合会を通じて2か月後に入金するシステムである。産婦の経済負担が導入の理由とされたが、従来の事前申請方式の受取代理制度を周知・利用すれば、当月入金で何も問題はなかったのである。しかも、説明や同意書作成、専用請求書の作成と産科医療機関側の事務作業量が格段に複雑・煩瑣となった。

 つまり、突然、「給料の支払いはこれからはいつもの2か月後、専用の用紙で請求しないと払えません」と言われたに等しく、理不尽な話である。対応可能なのは分娩収入の比率が低い、大病院だけである。

 産科専門医療機関は、保険診療収入の占める割合は低く、しかも10年間にわたる診療報酬のマイナス改定のもとでも更に冷遇されてきた。その上、福島県の大野病院事件など医療現場の事故に警察が介入し、徹底的に士気を砕くことが重ねられてきた。そのなかでも何とか、挫けずに産科の現場で懸命に守ってきたのである。それをこの直接支払制度が、とどめを刺す形で登場し、これまで34施設が閉院、分娩の中止となり年間1万件に及ぶ分娩が不可能となっているのである。

 妊産婦と産科医療機関の両者が幸福となる受取代理制度を普及させずに、直接支払制度にこだわる裏には、自由診療の管理とともに、これを梃に医療保険を介護保険同様の現金給付の制度とし、混合診療の全面展開へと誘導する企図がある。この要の国保連合会は、今また進められている医療保険の県単位再編の司令塔、保険者協議会の事務局を務めていることも意味深長である。今回の省令規定が既成事実化すると厚労省は、他分野でのフリーハンドを可能とする。

 第一線の産科専門施設を愚弄した、この省令制定、直接支払制度継続を撤回するよう強く求める。

2010年11月22

 

省令改定!?お産潰す、厚生行政は何でもありなのか

産科専門の第一線に耳貸さず、裏企図を貫く傲慢を問う

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 法律に根拠がない出産育児一時金の直接支払制度を、「省令」で規定することが11月15日の社会保障審議会の医療保険部会で提案され、その方向となった。またこの制度に関し、法令に規定がない国保連合会による出産育児一時金の審査支払も問題化せずに温存となる。席上、省令での規定に疑問が呈されたものの、厚労省の武田総務課長は「問題なし」とした。

 産科専門施設が一貫して訴えてきた、直接支払制度の廃止、「日本のお産を守れ」の声に、真摯に向きあわない厚生労働省および医療保険部会の委員に、われわれは怒りを禁じえない。強く抗議する。

 この部会では、出産一時金について次年度以降、(1)直接支払制度と(2)受取代理制度、(3)法律に沿った償還払いの3案併用が提案されたものの、妊産婦にも産科医療機関にも全く負担のない受取代理制度は、月の分娩数17件以下と上限設定がなされた。これは産科医療機関の1/3、分娩数では僅か5%しか対応しない。つまり産科専門医療機関の多くは、この提案では対応困難となり分娩の取りやめが多くでることとなる。既に21施設は明確に意思表示しており、年間分娩数8,000件は確実に不可能となる。

 正常分娩は自由料金の自費診療であり、出産当月の入金で産科専門施設は医療機関経営をしてきた。この直接支払制度とは、出産費用の大方を出産育児一時金に振り替えて、国保連合会を通じて2か月後に入金するシステムである。産婦の経済負担が導入の理由とされたが、従来の事前申請方式の受取代理制度を周知・利用すれば、当月入金で何も問題はなかったのである。しかも、説明や同意書作成、専用請求書の作成と産科医療機関側の事務作業量が格段に複雑・煩瑣となった。

 つまり、突然、「給料の支払いはこれからはいつもの2か月後、専用の用紙で請求しないと払えません」と言われたに等しく、理不尽な話である。対応可能なのは分娩収入の比率が低い、大病院だけである。

 産科専門医療機関は、保険診療収入の占める割合は低く、しかも10年間にわたる診療報酬のマイナス改定のもとでも更に冷遇されてきた。その上、福島県の大野病院事件など医療現場の事故に警察が介入し、徹底的に士気を砕くことが重ねられてきた。そのなかでも何とか、挫けずに産科の現場で懸命に守ってきたのである。それをこの直接支払制度が、とどめを刺す形で登場し、これまで34施設が閉院、分娩の中止となり年間1万件に及ぶ分娩が不可能となっているのである。

 妊産婦と産科医療機関の両者が幸福となる受取代理制度を普及させずに、直接支払制度にこだわる裏には、自由診療の管理とともに、これを梃に医療保険を介護保険同様の現金給付の制度とし、混合診療の全面展開へと誘導する企図がある。この要の国保連合会は、今また進められている医療保険の県単位再編の司令塔、保険者協議会の事務局を務めていることも意味深長である。今回の省令規定が既成事実化すると厚労省は、他分野でのフリーハンドを可能とする。

 第一線の産科専門施設を愚弄した、この省令制定、直接支払制度継続を撤回するよう強く求める。

2010年11月22