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医療運動部会見解 「初診料、再診料の性格と矛盾への正確な理解を広く求める」

 初診料、再診料の性格と矛盾への

正確な理解を広く求める

 

神奈川県保険医協会

医療運動部会


■議論の混乱を是正、牽制する基本理解は必須

 外来管理加算「5分ルール」を巡り、導入根拠の不在、影響額の過大な乖離と患者の不評が明らかとなり、この撤回・是正が道理となっている。しかしながら、この事態を逆手にとり厚労省および中医協で、基本診療料「全体」の「水準」や「在りかた」の検討が始まっている。基本診療料とは、初診料、再診料、入院基本料などを総称したものであり、部分の問題での失態を全体の問題にすり替え、そこに埋没させ糊塗する、この問題処理のあり方は極めて不誠実である。この問題は今後も改めて追及するが、なし崩し的に始まった基本診療料、とりわけ初診料、再診料の診療報酬上の性格と、医療現場における矛盾についてここに説き、関係方面のみならず広く理解を求めるものである。なぜならば、基礎的理解を欠いたままでの今後の議論の進展は、医療政策の誤りと医療崩壊を深刻にすると、非常に危惧するからである。

 

■診療実態に診療報酬を合わせる、が本筋

 日本の医療は診療報酬の点数操作、つまり「価格政策」により、長年、政策誘導がなされてきた。よって診療報酬の諸規定が診療実態に優先するかのような主客転倒した錯覚に、医療関係者も陥らされてきた。しかし、本来は医師法、医療法などを遵守した医療提供を、診療実態を踏まえながら、どのように「合理性」のある経済評価を保険診療(診療報酬)で行うかが本筋である。

 

■医療機関単位のチーム医療が医療提供の基本形

 医療は受付から始まって、看護師の予診、医師の診察、検査、処置、薬局での投薬、会計で終わるというのが、基本的な診療の流れである。このプロセスに医療機関の複数の医療者や事務スタッフがチームでかかわり、医療機関の施設・設備を用い、医療機関が人的・物的に総体として医療を提供しているのである。つまり、経済評価は医師の技術・労働のみで判断されるべきものではなく、医療機関チームの技術・労働、施設・設備の費用も含めて評価がなされるべきものである。

 また「診療=診察」ではないことは、以上より自明である。診察は医師による専権的業務であり、この診察情報に基づく診療計画の下、実施される診療行為の諸々と付随する事務・会計などの診療外行為の総体が医療提供である。すなわち、これが健康保険法上の「診療」となる。

 

■診療の根幹を支える基本診療料 実態と経済評価の乖離と不合理

 外来における基本診療料は「初診料」と「再診料」で構成される。診療所においては、この初診料と再診料が診療報酬全体の22.8%('07年)を占めている。

 診療報酬は初診時、再診時に一律的に支払われるこの「基本診療料」と、特殊な診療行為の費用である「特掲診療料」を合算した額で算定されており、基本診療料は経済評価の「土台」をなしている。通則の上でも「初診、再診の際に原則として必ず算定できる」とされており、「初診若しくは再診の際に行なわれる診察行為の費用のほかに、通常初診若しくは再診の際に行なわれる基本的な診療行為の費用も一括して基本診療料として支払うという方式をとっている」と規定されている。つまり「基本診療料≠診察料」であり決してイコールの関係として、そもそも設計されていないのである。

 しかも、医療機関の人員、施設・設備、空間・面積などの診療環境の違いや、患者の疾病状態による診療時間や関与するスタッフ数の違いは考慮されていない。無形技術が重要視される内科系診療所と、有形技術が経済評価(点数化)されている外科系診療所との相違も同様である。

 これを一律的、一括的に初診料2,700円、再診料710円で評価をしており、その不合理が矛盾となって現れてくるのである。そもそもこの経済水準は米国の初診料12,000円、再診料8,500円と比べ桁違いに低いのである。

 しかも、この初診料、再診料に包括されている「基本的な診療行為」とは血液比重測定など検査56項目、浣腸や熱傷1度の処置など処置11項目や、入院の際の静脈注射などと多岐に亘り多い。また通知で明示的にされている項目にとどまらず、5誘導以下の心電図検査など、実施しても個別に算定できないものも多く、事実上、初診料、再診料に含まれることとなっている。

 

■診療の根底 初診料評価の問題点

 初診は時間を往々にしてかけじっくりと診察、診療にあたる。病態により千差万別ではあるが、要する時間についての評価がない。これは問題になっている外来管理加算の「5分ルール」の時間指標とは次元が別である。「5分ルール」は、5分を超えないと一切評価しない、つまり0円となる時間の「要件化」が問題である。

 ここでいう時間評価は、時間に応じた加算評価である。

 また、慢性疾患患者の場合、疾患のコントロール以外に、風邪や心筋梗塞、胃がんなどの急性疾患となっても実質、無料で診ている。各々の疾病に対しては初診行為であり十分な診察が要るにもかかわらず初診料は発生しない。更には、ガンの見落としのないよう日常の不断の努力も無償であり、見逃しで訴訟により法的責任を問われ敗訴した際の損害賠償の発生を鑑みても矛盾は大きいのである。

 

■最悪の仕組み 再診料

 新患と再来は、1:4の割合で患者の多くは再来、つまり再診料の算定患者が占める。その実態の下で、究極の無料の世界が再診料である。先に触れたように継続患者の場合に、新たな疾病が発生しても初診料がとれない仕組みとなっている。この事実は、ほとんど国民には知られていない。

 外来診療は多くは開業医が担っているが、CT、MRIを日本ほど保有している国(世界シェアの4割)はなく、これら高度機器を診療所で備えている。そのような環境の中で医師1人で30分診ることもあれば、一方で急性疾患、慢性疾患の治療や、重症患者、救急患者の病院との専門連携を含め開業医は行っている。

 これを支える土台の再診料が極めて低廉である。再診の診療は、専門的知識、質の向上、個人の向上、それ以外にも技術、技能がものをいう世界であり、その経済保障が無ければ、医療の再生産はありえないのである。

 

■医療現場の未来を作る基本診療料へ 人件費保障は最低条件

 医療の再生産を保障する医療費規模について当会では「人件費+管理費+外部購入費用+医業再生産費用」と合理的計算式をもとに41.4兆円と試算し、現在の33.1兆円と8兆円のギャップが存在することを明らかにしている。このことは全産業の人件費の半分で医療が行われていることを意味している。基本診療料が診療報酬の代表的な基礎的点数であることから、その是正をここに代表させることが合理的だと考える。

 

■裁量権否定、診療介入の愚を犯すな

 基本診療料の検討は、08年診療報酬改定答申書の附帯意見に盛られ規定路線である。しかし、外形基準である「時間」指標の要件化の意義を厚労省は強調しており、90年代末の「外来基本料」構想が、在宅医療、24時間対応、病診連携を要件化し減算措置を組み込んでいたことや、昨今の改定時にバリアフリーやリフトなどの要件化が噂されてきたことを想起するならば、更なる医療側の裁量権否定や診療介入が懸念される。既に各診療科別の再診料や再診料の回数制限なども中医協の議論に出始めている。

 これ以上の現場無視の机上プランを許さないために医療関係者には、以上の点を是非ご理解願いたい。また厚労省には、これ以上の愚を犯さないためにも、医療者の声に真摯に向き合うことを強く要望するものである。

2009年5月21日