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2013/2/20 政策部長談話「混合診療の拡大にダマされてはいけない 健康保険に不理解な、規制改革会議の放言に呆れる」

混合診療の拡大にダマされてはいけない

健康保険に不理解な、規制改革会議の放言に呆れる

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 政府の規制改革会議は2月15日、成長戦略の具体策として混合診療の拡大を挙げた。マスコミ各紙はこれを大きく取り上げ、患者の負担軽減、先進的な医療技術の発展につながると報じた。われわれは事実認識の欠如とその内容の酷さに、辟易し呆れかえっている。安全性、有効性を無視し、医療現場に無用の混乱を招き、ビジネスチャンスを伺うこの策動に断固反対する。

 健康保険は病気や負傷の診療を対象とする公的医療保険であり、安全性・有効性が確認された医薬品、医療機器、医療技術を用いることがルールとなっている。問題の混合診療とは、一般に健康保険の利く診療と、それが利かない「保険外」の診療の混合と理解されている。しかし、本質は自由診療へ健康保険のお金を部分的に適応することである。診察や検査など保険診療の類似行為に着目した、いわば「流用」である。

 この混合診療の制度化に関しては2004年に大騒動の末、規制改革と厚労の担当大臣間の合意が結ばれ、「保険外併用療養費制度」創設で既に決着をみている。とりわけ、この制度は「保険診療と保険外診療との併用に関する具体的要望については、今後新たに生じるものについても、概ね全てに対する」とされたものである。

 規制改革会議の動きに関し、すぐさま田村厚労大臣が「現行制度で十分に対応できる」「『混合診療』をどういう意味でいっているのかわからない」との良識のある見解を示しているが、当然である。

 今回、規制改革会議は▽再生医療の推進、▽医療機器の承認業務の民間開放、▽治験前臨床試験のデータの承認申請への活用なども併せて「論点」に挙げている。

 混合診療の制度、保険外併用療養費制度の対象は、有効性・安全性の確認されていることが前提だったが、どんどん崩れ「骨抜き」にされてきている。医薬品等の承認のために厳格な管理の下、安全性・有効性を確かめる「臨床試験(治験)」への適用をはじめ、それに至る前段階の「臨床研究」へも適用されるに至っている。各々、「先進医療」、「高度医療」と称され、いま「先進医療A」「先進医療B」と名称を変え、後者は厚労省の審議会の関与を外した。いうまでもなく、「試験」や「研究」は、健康保険が担う「診療」ではない。混合診療と関連づけて説かれる医療は、未確立のものでありバラ色の幻想は禁物である。規制改革会議の提案は、混合診療にかこつけ再生医療への健康保険のお金の流用や、更には医薬品や医療機器の臨床研究、治験の簡略化、形骸化を策した感が強い。

 混合診療はいつも皮算用で経済成長が語られるが、その効果は検証されていない。実際、先進医療、高度医は合計で約146億円、総医療費の0.04%に過ぎない。カバーする先進医療特約「商品」が保険会社で開発されたが、とるべき政策は逆であり、安全性・有効性の確立されたものは混合診療に拘泥せず、健康保険に導入すればよい。それ以外の臨床試験、臨床研究は治験費用、科学研究費で峻別し対応すべきである。また制度の誤解に乗じ疾病治療以外の予防や検診、通訳等のサービスを混合診療と称し翻弄することや、検討中の民間版「健康保険」との併用も予想される。厳に戒めるべきである。

 おりしも、不透明で危険な再生医療を問題視し再生医療への法規制が俎上に上っている。この方向の強化に期待したい。更には治験と臨床研究のダブルスタンダードの解消に向けた法整備も望まれる。

 安全・安心な健康保険制度の確立が、内需拡大の梃であり、経済成長のカギを握っている。荒唐無稽な規制改革会議の、医療・健康に関する提案の撤回を強く求める。

2013年2月20日

 

混合診療の拡大にダマされてはいけない

健康保険に不理解な、規制改革会議の放言に呆れる

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 政府の規制改革会議は2月15日、成長戦略の具体策として混合診療の拡大を挙げた。マスコミ各紙はこれを大きく取り上げ、患者の負担軽減、先進的な医療技術の発展につながると報じた。われわれは事実認識の欠如とその内容の酷さに、辟易し呆れかえっている。安全性、有効性を無視し、医療現場に無用の混乱を招き、ビジネスチャンスを伺うこの策動に断固反対する。

 健康保険は病気や負傷の診療を対象とする公的医療保険であり、安全性・有効性が確認された医薬品、医療機器、医療技術を用いることがルールとなっている。問題の混合診療とは、一般に健康保険の利く診療と、それが利かない「保険外」の診療の混合と理解されている。しかし、本質は自由診療へ健康保険のお金を部分的に適応することである。診察や検査など保険診療の類似行為に着目した、いわば「流用」である。

 この混合診療の制度化に関しては2004年に大騒動の末、規制改革と厚労の担当大臣間の合意が結ばれ、「保険外併用療養費制度」創設で既に決着をみている。とりわけ、この制度は「保険診療と保険外診療との併用に関する具体的要望については、今後新たに生じるものについても、概ね全てに対する」とされたものである。

 規制改革会議の動きに関し、すぐさま田村厚労大臣が「現行制度で十分に対応できる」「『混合診療』をどういう意味でいっているのかわからない」との良識のある見解を示しているが、当然である。

 今回、規制改革会議は▽再生医療の推進、▽医療機器の承認業務の民間開放、▽治験前臨床試験のデータの承認申請への活用なども併せて「論点」に挙げている。

 混合診療の制度、保険外併用療養費制度の対象は、有効性・安全性の確認されていることが前提だったが、どんどん崩れ「骨抜き」にされてきている。医薬品等の承認のために厳格な管理の下、安全性・有効性を確かめる「臨床試験(治験)」への適用をはじめ、それに至る前段階の「臨床研究」へも適用されるに至っている。各々、「先進医療」、「高度医療」と称され、いま「先進医療A」「先進医療B」と名称を変え、後者は厚労省の審議会の関与を外した。いうまでもなく、「試験」や「研究」は、健康保険が担う「診療」ではない。混合診療と関連づけて説かれる医療は、未確立のものでありバラ色の幻想は禁物である。規制改革会議の提案は、混合診療にかこつけ再生医療への健康保険のお金の流用や、更には医薬品や医療機器の臨床研究、治験の簡略化、形骸化を策した感が強い。

 混合診療はいつも皮算用で経済成長が語られるが、その効果は検証されていない。実際、先進医療、高度医は合計で約146億円、総医療費の0.04%に過ぎない。カバーする先進医療特約「商品」が保険会社で開発されたが、とるべき政策は逆であり、安全性・有効性の確立されたものは混合診療に拘泥せず、健康保険に導入すればよい。それ以外の臨床試験、臨床研究は治験費用、科学研究費で峻別し対応すべきである。また制度の誤解に乗じ疾病治療以外の予防や検診、通訳等のサービスを混合診療と称し翻弄することや、検討中の民間版「健康保険」との併用も予想される。厳に戒めるべきである。

 おりしも、不透明で危険な再生医療を問題視し再生医療への法規制が俎上に上っている。この方向の強化に期待したい。更には治験と臨床研究のダブルスタンダードの解消に向けた法整備も望まれる。

 安全・安心な健康保険制度の確立が、内需拡大の梃であり、経済成長のカギを握っている。荒唐無稽な規制改革会議の、医療・健康に関する提案の撤回を強く求める。

2013年2月20日