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政策部長談話 「深刻な看護職員不足の迅速な解消の実現へ 急な准看養成廃止『合意』の見直しを求める」

深刻な看護職員不足の迅速な解消の実現へ

急な准看養成廃止「合意」の見直しを求める

 

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 11月22日、県医師会は黒岩知事が突然打ち出した准看護師の養成廃止に関し、当初方針を「2年延長」し2015年度入学生を最終とする苦渋の合意を結んだ。神奈川県の圧倒的な看護職員不足の現実や、国の供給過剰を前提とした看護職の資格統合方針を一顧だにせず、自身のライフワーク貫徹に拘泥した知事の強権にわれわれは断固抗議する。また“新聞辞令”による既成事実化、審議中の検討会の軽視、地域医療再生基金を「人質」にとった兵糧攻めなど、医療現場の声に耳を傾けない一連の知事の行政手法は到底、承服できない。地に足をつけた政策と合意内容の見直しを強く求める。

 

 医療の高度化、複雑化により、新たに専門看護師、認定看護師が制度化され、いま医師の業務の一部を肩代わりする特定看護師(仮称)の創設と、併せて看護業務の無資格者への移譲が議論されている。医師業務の軽減、医療崩壊からの脱却が企図にあるが、准看廃止の看護資格統合を改めてこの文脈に位置づけ「看護のあり方」「責任ある看護」を考える必要がある。

 看護業務は、観察・検温・採血、排泄介助、全身清拭、入浴介助、食事介助から検査・リハビリの補助、手術の器械出し、がん性疼痛看護、化学療法看護と、その範囲は幅広く、個々の看護職員にとっても一様ではない。医療機関の機能・役割においても看護力や必要度は違ってくる。

 この国の看護職員数は5万6千人の絶対的不足状況にある。この下で、プライマリーから高度医療まで、各医療機関が役割分担をし重層構造で医療提供を行っている。

 実態は、大病院、急性期病院に正看護師の多くが集中し、経済的にも診療報酬で配置要件を強化する誘導策が図られてきた。当然ながら、中小病院の正看護師は少なく、開業医では確保は困難である。焦眉の准看護師は慢性期の療養病棟や介護施設に多くいるが、実はその4割強は急性期病院で役割を発揮している。よって、第一線を担う開業医では、准看護師の確保すらままならないのが現実である。

 「初診」患者の75%は、診療所で診ている。この事実は意外に知られていない。絶対的不足状況で、准看護師の養成を廃止すれば診療所や中小病院の看護力は危機的状況に陥る。当協会会員の調査回答で9割が「医療の底辺が崩壊する」と廃止に反対しているのは現場実感である。

 県医師会は、事実誤認や偏見・誤解の解消に東奔西走の果て、県議会議長の提案で苦渋の決断をし合意に至ったが、会長の「忸怩たる思い」は偽らざる本音だと解し、ご努力を多としたい。

 国の看護職員養成の不十分さを、医師会等の准看護師養成で補い、地域医療に責任を果たしてきた。この歴史的事実は重い。われわれは看護職員の教育・職能水準の向上、高い水準の看護は時代・患者の要請だと考えてはいる。ただ、看護資格の統一は国の方針に準拠し、少なくとも需給均衡を前提にしなければ、現場の疲弊と医療秩序の混乱をきたすだけである。この合意は、准看護師養成数240名の正看護師養成数への振り替えは何ら約束していない。看護職員養成数が減るだけである。

 12年度の医師会立准看学校の平均倍率は過去最高の3.0倍で最大は6.8倍であった。県下の准看学校は5~6倍と高率で「高嶺の花」でもある。卒業生の7割は医療機関に勤務し“戦力”となっている。「一体改革」では“医療から介護、施設から在宅へ”と医療と介護の連携がうたわれる。医療知識があり介護の素養のある准看護師の役割は無視できない。看護資格統合へは、低医療費政策を根本的に改め、看護職員を迅速に大量養成し、就労環境の改善と医療機関経営の改善が必須である。

 角を矯めて牛を殺す、では神奈川の医療は守られない。「合意」の再検討を強く望むものである。

 

2012年12月25日