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2021/3/30 政策部長談話 「『社会的共通資本』の医療を支える医療保険財政へ 『現下の危機』へ診療報酬『単価補正』支払いで盤石に」

「社会的共通資本」の医療を支える医療保険財政へ

「現下の危機」へ診療報酬「単価補正」支払いで盤石に

神奈川県保険医協会

政策部長 桑島 政臣(談話)


医療崩壊はコロナ対応と通常対応の両立の破綻 2兆円が余る、医療保険財政

 1都3県の緊急事態宣言が解除されたが、コロナ禍は収束していない。ワクチン接種の広がりへの期待の一方、感染拡大「第4波」への不安と背中合わせにある。医療提供体制は依然と予断を許さない。

 医療崩壊とはコロナ対応の医療と通常医療の「両立」が破綻すること(中川俊男・日本医師会長)である。2020年度の保険医療費は12月診療分までで当初想定より▲約2兆円と大幅に下回っている。早晩、経営面でボディーブローのように効き、地域医療へ影響を確実に与える。経営面からの医療崩壊も杞憂ではない。医療は「社会的共通資本」(故・宇沢弘文東大名誉教授)であり、医療保険財政は医療体制を支えるものである。現下の医療危機からの脱却へ、医療保険給付を時限的に調整する、診療報酬の単価補正で、医療体制の盤石化へ力点を置くことを求める。

コロナ禍で経営難は深化 医療費の半分は人件費 給料・賞与減額はいずれ限界に

 皆保険制度下の日本で医療提供は8割を民間医療機関が担っている。過日3月24日の衆院厚生労働委員会では欧米のような医療崩壊が起こらなかった理由に、2020年の第1波の頃に感染防護具の不足の中、民間病院がコロナ(COVID-19)患者ではなく「それ以外の救急患者受け入れに専従した病院が多かった」(加納繁照・日本医療法人協会会長)と明らかにされている。コロナ対応と通常医療の「両輪」が機能しないと地域医療は成立せず、中小病院や診療所、歯科診療所もその役割を担っている。

 コロナ禍で極端な受診抑制が生じ依然と従前水準へ復元していない。昨秋、回復傾向を見せたが、感染拡大、緊急事態宣言で、全国的に受診減となっている。コロナ禍の収束まで、受診減、医療費減は終結しそうにない。このことは保険医療費が経営原資の殆どを占める医療機関にとっては深刻である。

 保険医療費が▲約2兆円(今年度想定比)とは、▲8,000億円と今年度増加分が吹き飛び、土台となる前年度分は▲約1.3兆円と減額し、落ち込んでいるということである。12月時点で個別平均は昨年度比で病院が▲約1億円で特に大学病院は▲約3.8億円、診療所は▲約700万円で、小児科は▲約1,400万円、耳鼻咽喉科▲約1,600万円となる。厚労省の中医協・医療経済実態調査(2019年度)では単年度の収支差額は2割の医療機関が「赤字」、5割が「経営悪化」である。2021年度も近傍の減収となると、今年度に無利子融資や支援金、積立金取り崩しで耐えていても、経営難は深化していく。

 感染爆発での医療システムの医療崩壊とは別に、経営困窮での医療崩壊が現実味を帯びていく。既に給料や賞与の減額など、医療者の労苦に十分に報いる状況にない。医療費は「人件費の塊」であり半分をしめる。労働集約産業の医療は、人材の確保が命脈であり、使命感と矜持だけには頼れない。

診療報酬の性格と限度 単価補正は「単価は不変、補正係数加算」

 この間、公費支援がなされてきたが感染予防対策、空床補填など「臨時出費」への支援であり、通常の経営原資の支援ではない。しかも「迅速さ」を欠いている。

 一方、診療報酬は、診療の2月後に「個別」「確実」「迅速」に既存のシステムで支払われる。今年度の保険医療費(診療報酬)は、約2兆円余る。そもそも保険医療費は医療体制の維持・再生産を保障するために確保された財源である。医療経済実態調査もその観点で実施されている。この「有効活用」を図り、経営原資に回し、医療崩壊を回避することは理に適う話である。

 ただ、診療報酬は人件費・家賃等の「固定費」と医薬品等の「変動費」を区分評価し支払う仕組みではない。医療行為や医薬品を「点数」評価し、1点「単価」を10円計算とする「点数単価方式」で患者ごとの「診療対価」として「集約・代表」して支払う仕組みのため、受診抑制(患者数減少)が経営を直撃する。よって、この支払いの仕組みをコロナ禍の「有事限定」で変更する必要がある。

 2年に一度の全面的な診療報酬の点数改定は今年度実施ずみであり、方法は単価調整となる。「単価引き上げ」だと患者負担に影響し受診抑制を助長し財政にも影響する。

 そこで患者負担を「算定」する単価は10円のまま、医療保険の「支払い」単価を別に設定し、「減収」医療機関ごとに減収状況に応じ、「逆数値」で単価補正をし、月単位で補填をすればよい。前年度比80/100の際は、100/80×10円=12.5円に単価を補正し支払う。時限的特例的措置とし告示改定で対応は可能である。「減収」分の前年度水準への復元が「限度」であり、保険財政は当年度想定内の「財政中立」となる。8割が「減収」医療機関であり、医療体制を守るためとの理解は得やすいはずである。

 これは、単価は10円で不変であり、逆数値の「補正係数」で「支払い」のみを個別に調整することである。単価不変で補正係数を乗じる方法は、地方交付税の基準財政額需要の算出の際に取られている。 保険収入の医療機関ごとの階級分布はここ数年ほぼ同一であり、平時に果たしてきた医療機能・医療体制の堅持のため、経営原資を保障するには個別の「補正係数」となる。

 しかも実は「算定」と「支払い」方法の分離は、診療録等が損壊した被災時の「概算請求」で現実に行われている。過去データ利用での補正は技術的にも可能であり、既に資金繰り対策での診療報酬の「概算前払い」で、過去対比減額分の100/80の先払いが行われている。年度末が近いが、過去分は「単価補正」で再計算し精算すればよい。この「単価補正」は、「アイデアとしては非常に優れている」(二木立・日本福祉大学名誉教授)と識者にも評価されている。

 財務省の財政制度等審議会「建議」も「診療報酬による対応に軸足を移すべき」とし、この4月からの診療報酬で「特例措置」(初再診料1回5点、入院料1日10点の加算)が講じられた。21年度介護報酬改定では「安定的なサービス提供を可能とする観点」から「単価補正」と類似の仕組みが採られている。

 コロナ患者対応、非対応ともに医療機関は疲弊していると田村厚労相は昨春より警鐘し、日本医師会も診療報酬の活用に早くに着眼している。余る診療報酬の活用には合理的ルールが不可欠である。「単価補正」を軸に、診療科・感染状況で係数化した全国一律補正など、合意範囲での実現を望みたい。

「悪魔の証明」は不可能 平時「標準」への復元と緊急対応の二本立てが肝要

 医療界へはこの間、医療機関の減収の全てが新型コロナの影響によるものとはいえない、減収補填は他業種と同様にしない、と突き付けられてきている。が、前者は「悪魔の証明」のような話である。日医調査(「第7回日本の医療に関する意識調査」R2.10.7)で国民の約8割が新型コロナで生活の不安を感じ、外出自粛要請に96.8%が従い、約7割が医療機関受診の不安(待合室等での感染不安)を抱いている。平時と違い、審査支払機関の公的統計で受診抑制による患者減は明白であり、当協会の調査で、その間に慢性疾患の悪化や、がんの発見の遅れなどを医科で4割、歯科で6割の医療機関が経験している。受診抑制の影響は全体に及んでいる。価格を自由に設定できる「企業」「商売」と違い、医療は公的サービスを8割を「民間」が担い、「公定価格」で運営されている。「社会的共通資本」を守る経営原資の保障は道理である。コロナでの減収機関・減収額の峻別・腑分けの成否を理由に経営支援を放置するのはこれに反している。平時「標準」への経営資源の復元の「土台」に緊急対応の公費支援が「上乗せ」されないと、持たないことは明らかである。昨年12月4日、この危機意識から自民党の「国民医療を守る議員の会」が「医療社会保障財源確保についての提言」を田村厚労相に提出。精緻な試算をし「新型コロナ診療施設以外の医療機関の崩壊を防ぐ財政支援」とし「地域医療維持交付金」4.1兆円を要望している。

 もし老齢等による診療規模縮小を反映するなら、当協会提案の「単価補正」に、5年程度の収入減額状況を指標化し補正を重ね、ほとんど稼働しないようにするなど制度技術としては可能である。

足下の危機を回避しなければ将来はない 20年度は診療報酬▲5%に匹敵

 医療費抑制は、医療費増の伸びの減額修正であり、医療費規模が先に決まり、その範囲に収まるよう診療報酬改定や患者負担割合増が行われる。「単価補正」支払いは、その範疇の医療費の執行方法である。単価は全国一律単価であり、単価上下は現行の点数表の矛盾を拡大すると厚生白書(S33年度版)は釘を刺している。地域別の単価は現行法、何重もハードルが敷かれ事実上できない。単価1点引き下げは改定率▲10%である。既に、今年度の▲2兆円は改定率▲5%相当である。2021年度の保険医療費は、20年度の増加予定分の吹き飛んだ▲8,000億円どまりで、そこからの減額▲1.3兆円の水準まで「土台」を下げないで、国庫負担を予算計上している。19年度水準である。闇雲な医療費削減は実施されていない。コロナ禍、年度を跨いでいくが、「単価補正」の基準点は20年度同様、21年度も、19年度水準となる。22年度は診療報酬改定となるが通例だと改定率計算のベースは21年度の見込み医療費となる。この水準の19年度水準までの復元は死活問題となる。現下の医療危機の回避へ、皆保険制度を守るため、診療報酬の「単価補正」支払いへの医療界、医療保険者の理解と、実現を求める。

2021年3月30日

<参考>

医療費の「伸び」の抑制と医療費「前年割れ」との相違

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対前年同月比(支払基金・2020年4~12月の累計、点数ベース)

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1施設当たりの医療費減収状況(推計値)

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「社会的共通資本」の医療を支える医療保険財政へ

「現下の危機」へ診療報酬「単価補正」支払いで盤石に

神奈川県保険医協会

政策部長 桑島 政臣(談話)


医療崩壊はコロナ対応と通常対応の両立の破綻 2兆円が余る、医療保険財政

 1都3県の緊急事態宣言が解除されたが、コロナ禍は収束していない。ワクチン接種の広がりへの期待の一方、感染拡大「第4波」への不安と背中合わせにある。医療提供体制は依然と予断を許さない。

 医療崩壊とはコロナ対応の医療と通常医療の「両立」が破綻すること(中川俊男・日本医師会長)である。2020年度の保険医療費は12月診療分までで当初想定より▲約2兆円と大幅に下回っている。早晩、経営面でボディーブローのように効き、地域医療へ影響を確実に与える。経営面からの医療崩壊も杞憂ではない。医療は「社会的共通資本」(故・宇沢弘文東大名誉教授)であり、医療保険財政は医療体制を支えるものである。現下の医療危機からの脱却へ、医療保険給付を時限的に調整する、診療報酬の単価補正で、医療体制の盤石化へ力点を置くことを求める。

コロナ禍で経営難は深化 医療費の半分は人件費 給料・賞与減額はいずれ限界に

 皆保険制度下の日本で医療提供は8割を民間医療機関が担っている。過日3月24日の衆院厚生労働委員会では欧米のような医療崩壊が起こらなかった理由に、2020年の第1波の頃に感染防護具の不足の中、民間病院がコロナ(COVID-19)患者ではなく「それ以外の救急患者受け入れに専従した病院が多かった」(加納繁照・日本医療法人協会会長)と明らかにされている。コロナ対応と通常医療の「両輪」が機能しないと地域医療は成立せず、中小病院や診療所、歯科診療所もその役割を担っている。

 コロナ禍で極端な受診抑制が生じ依然と従前水準へ復元していない。昨秋、回復傾向を見せたが、感染拡大、緊急事態宣言で、全国的に受診減となっている。コロナ禍の収束まで、受診減、医療費減は終結しそうにない。このことは保険医療費が経営原資の殆どを占める医療機関にとっては深刻である。

 保険医療費が▲約2兆円(今年度想定比)とは、▲8,000億円と今年度増加分が吹き飛び、土台となる前年度分は▲約1.3兆円と減額し、落ち込んでいるということである。12月時点で個別平均は昨年度比で病院が▲約1億円で特に大学病院は▲約3.8億円、診療所は▲約700万円で、小児科は▲約1,400万円、耳鼻咽喉科▲約1,600万円となる。厚労省の中医協・医療経済実態調査(2019年度)では単年度の収支差額は2割の医療機関が「赤字」、5割が「経営悪化」である。2021年度も近傍の減収となると、今年度に無利子融資や支援金、積立金取り崩しで耐えていても、経営難は深化していく。

 感染爆発での医療システムの医療崩壊とは別に、経営困窮での医療崩壊が現実味を帯びていく。既に給料や賞与の減額など、医療者の労苦に十分に報いる状況にない。医療費は「人件費の塊」であり半分をしめる。労働集約産業の医療は、人材の確保が命脈であり、使命感と矜持だけには頼れない。

診療報酬の性格と限度 単価補正は「単価は不変、補正係数加算」

 この間、公費支援がなされてきたが感染予防対策、空床補填など「臨時出費」への支援であり、通常の経営原資の支援ではない。しかも「迅速さ」を欠いている。

 一方、診療報酬は、診療の2月後に「個別」「確実」「迅速」に既存のシステムで支払われる。今年度の保険医療費(診療報酬)は、約2兆円余る。そもそも保険医療費は医療体制の維持・再生産を保障するために確保された財源である。医療経済実態調査もその観点で実施されている。この「有効活用」を図り、経営原資に回し、医療崩壊を回避することは理に適う話である。

 ただ、診療報酬は人件費・家賃等の「固定費」と医薬品等の「変動費」を区分評価し支払う仕組みではない。医療行為や医薬品を「点数」評価し、1点「単価」を10円計算とする「点数単価方式」で患者ごとの「診療対価」として「集約・代表」して支払う仕組みのため、受診抑制(患者数減少)が経営を直撃する。よって、この支払いの仕組みをコロナ禍の「有事限定」で変更する必要がある。

 2年に一度の全面的な診療報酬の点数改定は今年度実施ずみであり、方法は単価調整となる。「単価引き上げ」だと患者負担に影響し受診抑制を助長し財政にも影響する。

 そこで患者負担を「算定」する単価は10円のまま、医療保険の「支払い」単価を別に設定し、「減収」医療機関ごとに減収状況に応じ、「逆数値」で単価補正をし、月単位で補填をすればよい。前年度比80/100の際は、100/80×10円=12.5円に単価を補正し支払う。時限的特例的措置とし告示改定で対応は可能である。「減収」分の前年度水準への復元が「限度」であり、保険財政は当年度想定内の「財政中立」となる。8割が「減収」医療機関であり、医療体制を守るためとの理解は得やすいはずである。

 これは、単価は10円で不変であり、逆数値の「補正係数」で「支払い」のみを個別に調整することである。単価不変で補正係数を乗じる方法は、地方交付税の基準財政額需要の算出の際に取られている。 保険収入の医療機関ごとの階級分布はここ数年ほぼ同一であり、平時に果たしてきた医療機能・医療体制の堅持のため、経営原資を保障するには個別の「補正係数」となる。

 しかも実は「算定」と「支払い」方法の分離は、診療録等が損壊した被災時の「概算請求」で現実に行われている。過去データ利用での補正は技術的にも可能であり、既に資金繰り対策での診療報酬の「概算前払い」で、過去対比減額分の100/80の先払いが行われている。年度末が近いが、過去分は「単価補正」で再計算し精算すればよい。この「単価補正」は、「アイデアとしては非常に優れている」(二木立・日本福祉大学名誉教授)と識者にも評価されている。

 財務省の財政制度等審議会「建議」も「診療報酬による対応に軸足を移すべき」とし、この4月からの診療報酬で「特例措置」(初再診料1回5点、入院料1日10点の加算)が講じられた。21年度介護報酬改定では「安定的なサービス提供を可能とする観点」から「単価補正」と類似の仕組みが採られている。

 コロナ患者対応、非対応ともに医療機関は疲弊していると田村厚労相は昨春より警鐘し、日本医師会も診療報酬の活用に早くに着眼している。余る診療報酬の活用には合理的ルールが不可欠である。「単価補正」を軸に、診療科・感染状況で係数化した全国一律補正など、合意範囲での実現を望みたい。

「悪魔の証明」は不可能 平時「標準」への復元と緊急対応の二本立てが肝要

 医療界へはこの間、医療機関の減収の全てが新型コロナの影響によるものとはいえない、減収補填は他業種と同様にしない、と突き付けられてきている。が、前者は「悪魔の証明」のような話である。日医調査(「第7回日本の医療に関する意識調査」R2.10.7)で国民の約8割が新型コロナで生活の不安を感じ、外出自粛要請に96.8%が従い、約7割が医療機関受診の不安(待合室等での感染不安)を抱いている。平時と違い、審査支払機関の公的統計で受診抑制による患者減は明白であり、当協会の調査で、その間に慢性疾患の悪化や、がんの発見の遅れなどを医科で4割、歯科で6割の医療機関が経験している。受診抑制の影響は全体に及んでいる。価格を自由に設定できる「企業」「商売」と違い、医療は公的サービスを8割を「民間」が担い、「公定価格」で運営されている。「社会的共通資本」を守る経営原資の保障は道理である。コロナでの減収機関・減収額の峻別・腑分けの成否を理由に経営支援を放置するのはこれに反している。平時「標準」への経営資源の復元の「土台」に緊急対応の公費支援が「上乗せ」されないと、持たないことは明らかである。昨年12月4日、この危機意識から自民党の「国民医療を守る議員の会」が「医療社会保障財源確保についての提言」を田村厚労相に提出。精緻な試算をし「新型コロナ診療施設以外の医療機関の崩壊を防ぐ財政支援」とし「地域医療維持交付金」4.1兆円を要望している。

 もし老齢等による診療規模縮小を反映するなら、当協会提案の「単価補正」に、5年程度の収入減額状況を指標化し補正を重ね、ほとんど稼働しないようにするなど制度技術としては可能である。

足下の危機を回避しなければ将来はない 20年度は診療報酬▲5%に匹敵

 医療費抑制は、医療費増の伸びの減額修正であり、医療費規模が先に決まり、その範囲に収まるよう診療報酬改定や患者負担割合増が行われる。「単価補正」支払いは、その範疇の医療費の執行方法である。単価は全国一律単価であり、単価上下は現行の点数表の矛盾を拡大すると厚生白書(S33年度版)は釘を刺している。地域別の単価は現行法、何重もハードルが敷かれ事実上できない。単価1点引き下げは改定率▲10%である。既に、今年度の▲2兆円は改定率▲5%相当である。2021年度の保険医療費は、20年度の増加予定分の吹き飛んだ▲8,000億円どまりで、そこからの減額▲1.3兆円の水準まで「土台」を下げないで、国庫負担を予算計上している。19年度水準である。闇雲な医療費削減は実施されていない。コロナ禍、年度を跨いでいくが、「単価補正」の基準点は20年度同様、21年度も、19年度水準となる。22年度は診療報酬改定となるが通例だと改定率計算のベースは21年度の見込み医療費となる。この水準の19年度水準までの復元は死活問題となる。現下の医療危機の回避へ、皆保険制度を守るため、診療報酬の「単価補正」支払いへの医療界、医療保険者の理解と、実現を求める。

2021年3月30日

<参考>

医療費の「伸び」の抑制と医療費「前年割れ」との相違

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対前年同月比(支払基金・2020年4~12月の累計、点数ベース)

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1施設当たりの医療費減収状況(推計値)

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