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政策部長談話 「医療・医学を歪曲する支払側の経済的介入に抗議する 高血圧学会ガイドラインを愚弄する門外漢の越権を戒める」

医療・医学を歪曲する支払側の経済的介入に抗議する

高血圧学会ガイドラインを愚弄する門外漢の越権を戒める

 

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 中医協で11月1日、支払側委員の健保連理事・幸野庄司氏がレセプト分析を基に高血圧治療薬の使用に関し、金額ベースの多寡の観点から、日本のガイドラインにはない第一選択薬の優先順位について提言。費用対効果を考慮したガイドラインの策定の必要性に触れ、国が学会に働きかけることまで説いている(m3.com「健保連幸野氏、ARBの使用を問題視」)。われわれは、医療・医学の観点、患者本位の医療の観点から、支払側の主張に反論するとともに、経済的観点による「医療」の歪曲、換骨奪胎に強く反対する。

 

◆降圧薬の選択は、効果と副作用と医学的知見と医師による専門的な判断

 健保連の幸野氏は2014年10月から16年9月までの2年間のレセプトを対象に、高血圧症のみの傷病名で1分類の降圧薬が処方されたもの139.9万件を分析した結果、最も多い処方はCa拮抗薬で57.0%、次がARB(アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の37.9%だったが、金額ベースでは薬価の高さからARBが63.1%、Ca拮抗薬は33.5%と提示。双方どちらかのみを処方された患者群の比較で入院発生率に有為な相関関係は認められず、仮にARBをCa拮抗薬に置き換えると年間約830億円が削減できると強調。また英国のNICE(国立医療技術評価機構)では有効性と安全性が同等な場合、最も安価な降圧薬を使うことを求めているとし、費用対効果を踏まえた医薬品使用の優先順位が書かれていない日本のガイドラインを問題視。これを考慮したガイドラインの必要性を説き、国から学会へ働きかけるよう、相当に踏み込んだ提言を行っている。

 これに医療・医学の観点から実地医家として反論する。Ca拮抗薬は降圧効果が強く確かに最もよく使われるが、浮腫や便秘などの副作用が5%程度の患者に強くでる。降圧剤の選択は、降圧効果と副作用を勘案し、患者の病態、既往歴、年齢など専門的知見と診断に基づき医師が決定をしているのである。これがプロフェッショナルフリーダムによる医療である。患者目線で疑問を呈するならまだしも、科学性より経済性優先で学会ガイドラインへの介入までも提言するのは越権の度が過ぎる。

 後発医薬品の使用促進の問題も同様である。Ca拮抗薬のアムロジピンの後発品は、どのメーカーのものでも半減期が22時間を超えるため降圧効果は、ほぼ同等であるが、アダラートCRはニフェジピンをパーティクルに錠剤の形に閉じ込める技術はB社以外はもっておらず、他社のものとは同一ではない。こういう専門的知見抜きの経済性優先の議論は危険である。英国のガイドラインの話も、民族の違い、生活習慣や、遺伝・体質的な考慮を無視しては成り立たないのである。

 

◆2年前から狙われてきたARB 処方権への経済的介入は医療・医学の否定

 降圧薬ARBをターゲットにした動きは一昨年の2015年4月に財政制度等審議会で「生活習慣病治療薬の処方の在り方」と題し資料が出され本格化した。そこでは「我が国では高価な降圧薬(ARB系)が多く処方されている。費用対効果による評価やそれに基づく処方ルールの明確化や価格付けの在り方等について検討が必要」とされ日本と英国の高血圧薬使用のガイドラインの対比・相違が示された。同年の「平成28年度の予算編成の建議」では「高価な医薬品が多く処方される現状にある生活習慣病治療薬等についての処方ルールを設定し、保険給付の適正化を図っていくべき」となり、「骨太方針2016」では「本年度より検討を開始し、平成29年度中に結論を得る」とされている。そして、2017年度も財政制度等審議会、経済財政諮問会議で俎上にあがってきており、11月1日の中医協の支払側の提言は、これと軌を一にしている。

 われわれは、医療・医学の質を金額ベースの議論で捻じ曲げる、中医協の支払側の提言に強く反対する。

2017年11月15日