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混合診療問題ニュース16 「株式会社バイオマスターの診療所開設・特区 再生医療の実績23例のみと判明!」

安全性に重大な疑問!神奈川県・事務が書面だけで確認?!

 協会は6月22日、医療特区の推進役、神奈川県商工労働部と懇談。席上、特区で診療所開設予定のバイオマスター社の再生医療技術(脂肪由来幹細胞の応用)に関し、“実験医療”となる危険性や安全性に関し、協会より再三指摘。バ社の臨床データを医師(技官)が審査したのではなく事務方が書面確認したことが発覚。バ社の臨床データ等の資料提示を検討することを県側は約束した。しかし、後日、県側はバ社との機密保持を理由に資料提示を拒否。7月8日、協会の電話での追及により、1)バ社の再生医療の症例実績は02年から05年迄で23例にすぎず、2)副作用・事故症例はないと書面記載での確認にとどまり、3)バ社の県への報告書は全部で20頁程、4)安全性は申請前に厚生労働省が確認をしている―ことが判明。安全性についても県は「厚生労働省が最終的には判断すること」と強弁。また特区の申請主体として、安全性確認の明確な尺度(基準)がないことも明らかとなった。更には、施設規模などを勘案し、資金集積の観点で株式会社に開設させるのが妥当と、6月の懇談では話していたのに、再生医療にかかわる人員・時間について問うと、「開設許可の問題で関係ない」と、承知しないとの回答に終始した。

認定の撤回求め、内閣府へ要請

内閣府「認定の実質判断は厚労省」!? 一片の厚労省文書で安全性は判断!

 協会は7月8日、神奈川県の医療特区の認定撤回を求めて、内閣府構造改革特区推進室と交渉した。協会から池川医療運動部会長と事務局が赴き、特区推進室からは大塚参事官補佐(元厚労省係長)ほか2名が対応した。この日は、神奈川県の医療特区(バイオ医療産業特区)を7月7日に認定決定したと各紙が報道、その直後の行動となった。協会の要望書では、医療特区は医療の非営利原則を崩し、医療の安全性の観点からも問題があり、断固反対するとした(詳細は下参照)。

医療の安全性の責任は神奈川県 内閣府は県への指導を約束

 冒頭、協会より医療特区認定の撤回を求める要望書を、会員署名467名分とともに提出。池川部会長より、株式会社バイオマスター社の脂肪由来幹細胞による美容外科は安全性に問題があることを説き、認定撤回を要請した。

 内閣府はまだ内示段階だとし、1)撤回はありえず、申請主体からの申請取り下げしか方法はない、2)内閣府は形式上の審査に近く、実質的には所管官庁の厚労省の判断による、3)安全性の実態上の判断は厚労省であり内閣府はしない、4)内閣府は特区法に則っているか、経済効果があるのかを判断するだけだ、と回答した。

 協会からは、この自由診療による経済効果や企業利益は甚だ疑問とし、しわ取り(アンチエージング)は50万円の医療費のうち特許料が49万円を占めていることを上げ、混合診療に株式会社が参入しないと旨味がないこと、米国商工会議所が株式会社の保険診療への参入(つまりは混合診療)を要望しており、医療特区第一号がこれらの水先案内となる危険性を指摘。特区推進室は、混合診療は現行の枠組みでは不可能、新たな特区メニューとして厚労省のOKが必要だと返答。あわせて今年10月に自由診療限定となっている医療特区の要件が見直されると付言した。

 協会からは、特区は全国化を念頭に置いたものであり、健保法改定による混合診療解禁や医療法7条(非営利原則・開設許可制限)の弾力運用での株式会社の医療経営解禁に向けて、蟻の一穴に今回の特区認定がなりうると反論。

 また協会より、バ社の技術はわずか23例の症例実績しかなく安全性は疑問、内閣府は厚労大臣の同意をどのように確認し、医療事故の責任はどこかと質問。

 特区推進室は、安全性は厚労大臣から「同意する」との一片の文書だけで確認としていること、事故の際に責任は基本的に申請主体の神奈川県にあることなどを明言。また、今回の医療特区の経済効果、社会的効果については書面の記載事項のみで判断、神奈川県の医療特区申請の書類は10枚程度、厚労省の直接の担当は医療政策局総務課であると明らかにした。

 懇談の最後に、安全性問題について神奈川県が責任を認識していない点について指導を要請。また事故被害の際の医療保険利用の制限や相談窓口体制の整備もあわせて指導を要望。特区推進室は理解を示し対応を約束した。今後は横浜市の開設許可に焦点が移動する。協会は引き続き運動を強化していく予定である。

●神奈川県の医療特区「認定」、現在は内示段階、正式決定は7月19日予定

  (2005年7月14日)