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2020/12/16 政策部長談話 「コロナ禍に皆保険制度の内実を毀損させる 後期高齢者2割負担に反対する」

コロナ禍に皆保険制度の内実を毀損させる

後期高齢者2割負担に反対する

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 年収200万円以上の後期高齢者の患者負担を2割負担とする方向で、12月10日に政府・与党が合意した。このコロナ禍に、皆保険制度の優位性が広く再認識される中、医療の必要度の高い75歳以上の高齢者への患者負担増は、国民医療を守る現下の政府姿勢に背反している。しかも、応能負担原則に反する愚を重ねており、医療保険制度を毀損しかねない。「患者負担」の増強に比重をおく施策は世界的な潮流からも外れている。われわれは、社会的に浸透しはじめた国連のSDGs(持続可能な開発目標)にも反する、後期高齢者医療の2割負担導入に強く反対し、再考を求める。

医療保険部会、国会審議での議論はこれから

 75歳以上は既に「年収383万円以上(単身)」(上位7%)は3割負担である。政府・与党の合意内容は現在1割負担の対象の中から、「年収200万円以上(単身)」(上位30%)を「中間所得層」として区分けし、「2割負担」とするもの。実質23%、370万人が患者負担増となる。実施時期は、「2022年10月から23年3月の間」と幅を持たせ、今後の協議に委ねて「政令」で定める。また外来患者の激変緩和措置とし、施行後3年間は1カ月分の負担増加額を最大3,000円に抑えるとしている。

 全世代型社会保障検討会議を経て閣議決定されたが、所管の厚生労働省の社会保障審議会の医療保険部会での議論を踏まえ法案提出、国会審議となる。まだ、法律改定には至っていない。

全世代型の社会保障は必要な財源確保が本来

 団塊世代対策の、この2割負担導入にあたり、「応能負担」「全世代型社会保障」「現役世代の負担軽減」の言葉が報道で踊っているが違和感が大きい。

 経済力による応能負担は、保険料や税金に適応するものである。公的医療保険は、患者は予め医療費の多寡がわからないため、医療サービスそのものを給付する「療養の給付」が原則である。しかし患者負担があるため、経済的余力がない場合に受診の手控えや検査・投薬の辞退、治療中断、不本意な退院等となり、十分な医療が受けられない現実がある。患者負担は受診の「障壁」でしかない。

 しかも、給付に応じた「定率負担」のため、医療サービスの多寡・濃淡に患者負担「額」が連動する「応益負担」を強いられている。ここに接ぎ木で経済力による応能負担の区分を重ね、過重さを徹底する道理はない。応能負担の歪曲、牽強付会である。

 また、全世代型社会保障とは、そもそも給付を圧縮していく話ではない。安倍政権下でまとめられた「社会保障制度改革国民会議報告書」(2013年8月)で初めて登場し、そこでは「全世代型の社会保障への転換は、世代間の財源の取り合いをするのではなく、それぞれ必要な財源を確保することによって達成を図っていく必要がある」とし、財源の分捕り合戦ではない、社会保障の機能強化を目指したものである。患者負担増による保険給付圧縮で、必要財源を圧縮していく方向は趣旨を違えている。

 現役世代の負担軽減も、無用に世代間対立を煽るだけである。誰もが、幼年期、少年期、青年期、壮年期をへて高齢期、後期高齢期になり生涯を終えるが、誰もが病気をする。その治療・療養の準備としての公的医療保険制度であり、みんな後期高齢者医療制度を利用する。これが脆弱になれば、いずれ現役世代が困ることになる。制度設計は歴史的経緯・背景を負っているが、旧・老人保健制度の「拠出金」も、いまの後期高齢者医療制度の「支援金」も、いずれも保険者からの「仕送り」である。

 医療保険制度は、健保、国保でそれぞれ、高額医療交付金交付事業、組合財政支援交付金交付事業や高額医療費共同事業、保険財政共同安定化事業を実施し、制度内で高額医療の発生や小規模・零細など構造的弱点をもつ組合を相互間で救済する「制度内再分配」の機能をもっている。

 後期高齢者医療の支援金は「仕送り」であるが、「制度間再分配」の機能である。現役世代の負担軽減を主張するのであれば、保険料と公費で調整し応能負担を強化するのが筋であり、受診機会の不平等を拡大する患者負担の増強ではない。受診の「機会不平等」の是正が皆保険制度創設の目的だった過去、原点の忘却である。給付増は保険料と公費での負担増となる構造へ真摯な対峙が不可欠である。

対象患者の多くは受診時の負担が倍化に

 後期高齢者は加齢に伴い身心が病気がちとなるので現役世代に比して複数診療科目を頻回に受診する。一人当たり年間医療費は後期高齢者945,088円に対し現役(若人)221,395円(厚労省平成29年度「医療保険に関する基礎資料」)と、現役の4.27倍となる。しかし、ひと月の1件当たり診療費は外来で、後期高齢者(75歳以上)16,504円に対し現役(一般)12,441円と1.33倍に過ぎない。(令和元年度「社会医療診療行為別統計」)。1医療機関での1患者への医療費に大きな差はないのである。

 一方、一人当たりの年間患者負担は後期高齢者75,653円に対し現役(若人)43,554円と1.74倍と既に過重である(厚労省平成29年度「医療保険に関する基礎資料」)。患者負担割合の軽重が問題とされるが、後期高齢者の患者負担増はこの格差を広げていき、受診抑制に拍車がかかることになる。

 後期高齢者のひと月の1件あたり「入院」の診療費は561,682円であり、その患者負担56,168円は現在の1割負担で高額療養費「自己負担限度額」57,600円の近傍であり、2割負担となって患者負担が嵩むのは「外来」診療である。外来で1割負担が2割負担となると、ひと月の1医療機関あたりの患者負担は1,650円が3,300円となる。これは年収383万円未満に適応される高額療養費の「自己負担限度額」18,000円に満たない。つまり、受診する医療機関、診療科目の数だけ、患者負担が増嵩することになる。75歳以上の受診者の21.0%は月3件にかかっており、1万円弱の負担となる。

後期高齢者の年収に占める負担率は8.1%

現役世代の6.2%より現在でも過重

 後期高齢者医療制度の財源の4割は、各医療保険からの「支援金」が占めることから、現役世代の負担軽減という世代対立、世代分断を煽る不理解や詐術が弄されている。しかし、平均収入に対する患者負担と保険料の合計が占める割合、「年齢階級別の負担状況」(H29.11.8「社会保障審議会医療保険部会」資料1-1)は、75歳で8.1%に対し、20~64歳は6.2%に過ぎない。保険料の事業主負担分を含んだ10.4%は実像ではなく、これを除外した実質負担は後期高齢者より実は相当に低いのである。負担率は後期高齢者の76.5%でしかない。

 また後期高齢者の資産への言及もあるが、二人以上世帯の貯蓄(総務省「家計調査」2019年)は70歳以上2,253万円に対し、ある程度の資産形成がされていく40~49歳は1,076万円で2倍程度であり、これ以上の年代は増額していき格差は縮小する。患者負担額が1.7倍程度の差があり、介護保険の保険料や利用者負担、医療・介護の保険外負担や諸経費を勘案すると、資産を加えた比較はさほど意味がない。そもそも各世代を輪切りにし比較する意味がない。ミクロでは個々が年齢を重ねることへの準備であり、マクロではその生涯を医療保険制度が社会保障とし支える一貫した一連のものだからである。

制度改定の目的は事業主負担と公費負担の削減

国・保険者は医療保険への責務を果たすべき

 結論として、この後期高齢者の2割負担導入は事業主の保険料負担を減らし、公費負担を減らすことが目的となる。被保険者は一時的に保険料の僅少額が軽減されても、将来、自身が後期高齢者になった際に、ブーメランのように患者負担が重くのしかかってくる。意味は乏しい。また、応益負担に接ぎ木した欺瞞的応能負担の年収区分は、いずれ対象を広範囲とする「布石」となる。

SDGsの目標の一つが「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」であり、WHOのUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)-「全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」が位置づく。日本の皆保険制度は医学専門誌『ランセット』で特集が組まれ、また世界銀行もその知見の途上国適用について日本政府と共同研究を開始するなど評価が高い。「社会的共通資本」(故・宇沢弘文・東大名誉教授)として息づいてきた。このコロナ禍で後期高齢者の受診抑制をもたらすことは苛斂誅求であり、コロナ収束へも逆行する。皆保険制度の内実を毀損させる、高齢者2割負担導入の撤回を改めて求める。

2020年12月16日


後期高齢者医療制度は社会全体で支える(*1)仕組みになっている

<「後期高齢者医療制度ガイドブック」(神奈川県後期高齢者医療広域連合発行)より>

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*1 「社会全体で支える」とは?:医療費のうち、医療機関などの窓口でお支払いいただいた金額を除いた残りの分は、約4割は現役世代からの支援金(*2)、約5割は公費=税金(国・県・市町村が負担)、約1割が後期高齢者の皆さんからの保険料でまかなわれています。

*2 「現役世代からの支援金」とは?:国民健康保険や被用者保険(会社などの健康保険)の加入者の方が支払う保険料に、後期高齢者医療制度への支援金が含まれています。神奈川県では、約3,743億円を支援金として現役世代から負担していただいています。(平成30年度)

後期高齢者の方が現役世代より負担率は重い

<第108回社会保障審議会医療保険部会(H29.11.8)資料より>

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*1 平成26年4月以降70歳に達した者から自己負担割合は2割であるが、表の自己負担は平成26年4月以前に70歳に達している者も2割負担だとした場合の数値。

*2 一人あたり医療費、自己負担額は、各制度の事業年報等をもとに作成した平成26年度の値。

*3 平均収入額は、平成27年国民生活基礎調査(抽出調査)による平成26年の数値。

*4 カッコ内の数値は、保険料について事業主負担分を除いた場合の数値。

医科(入院外・後期高齢者)点数階級別の件数と高額療養費(自己負担限度額)の適用範囲

<令和元年 社会医療診療行為別統計(令和元年6月審査分) 第32表より>

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コロナ禍に皆保険制度の内実を毀損させる

後期高齢者2割負担に反対する

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 年収200万円以上の後期高齢者の患者負担を2割負担とする方向で、12月10日に政府・与党が合意した。このコロナ禍に、皆保険制度の優位性が広く再認識される中、医療の必要度の高い75歳以上の高齢者への患者負担増は、国民医療を守る現下の政府姿勢に背反している。しかも、応能負担原則に反する愚を重ねており、医療保険制度を毀損しかねない。「患者負担」の増強に比重をおく施策は世界的な潮流からも外れている。われわれは、社会的に浸透しはじめた国連のSDGs(持続可能な開発目標)にも反する、後期高齢者医療の2割負担導入に強く反対し、再考を求める。

医療保険部会、国会審議での議論はこれから

 75歳以上は既に「年収383万円以上(単身)」(上位7%)は3割負担である。政府・与党の合意内容は現在1割負担の対象の中から、「年収200万円以上(単身)」(上位30%)を「中間所得層」として区分けし、「2割負担」とするもの。実質23%、370万人が患者負担増となる。実施時期は、「2022年10月から23年3月の間」と幅を持たせ、今後の協議に委ねて「政令」で定める。また外来患者の激変緩和措置とし、施行後3年間は1カ月分の負担増加額を最大3,000円に抑えるとしている。

 全世代型社会保障検討会議を経て閣議決定されたが、所管の厚生労働省の社会保障審議会の医療保険部会での議論を踏まえ法案提出、国会審議となる。まだ、法律改定には至っていない。

全世代型の社会保障は必要な財源確保が本来

 団塊世代対策の、この2割負担導入にあたり、「応能負担」「全世代型社会保障」「現役世代の負担軽減」の言葉が報道で踊っているが違和感が大きい。

 経済力による応能負担は、保険料や税金に適応するものである。公的医療保険は、患者は予め医療費の多寡がわからないため、医療サービスそのものを給付する「療養の給付」が原則である。しかし患者負担があるため、経済的余力がない場合に受診の手控えや検査・投薬の辞退、治療中断、不本意な退院等となり、十分な医療が受けられない現実がある。患者負担は受診の「障壁」でしかない。

 しかも、給付に応じた「定率負担」のため、医療サービスの多寡・濃淡に患者負担「額」が連動する「応益負担」を強いられている。ここに接ぎ木で経済力による応能負担の区分を重ね、過重さを徹底する道理はない。応能負担の歪曲、牽強付会である。

 また、全世代型社会保障とは、そもそも給付を圧縮していく話ではない。安倍政権下でまとめられた「社会保障制度改革国民会議報告書」(2013年8月)で初めて登場し、そこでは「全世代型の社会保障への転換は、世代間の財源の取り合いをするのではなく、それぞれ必要な財源を確保することによって達成を図っていく必要がある」とし、財源の分捕り合戦ではない、社会保障の機能強化を目指したものである。患者負担増による保険給付圧縮で、必要財源を圧縮していく方向は趣旨を違えている。

 現役世代の負担軽減も、無用に世代間対立を煽るだけである。誰もが、幼年期、少年期、青年期、壮年期をへて高齢期、後期高齢期になり生涯を終えるが、誰もが病気をする。その治療・療養の準備としての公的医療保険制度であり、みんな後期高齢者医療制度を利用する。これが脆弱になれば、いずれ現役世代が困ることになる。制度設計は歴史的経緯・背景を負っているが、旧・老人保健制度の「拠出金」も、いまの後期高齢者医療制度の「支援金」も、いずれも保険者からの「仕送り」である。

 医療保険制度は、健保、国保でそれぞれ、高額医療交付金交付事業、組合財政支援交付金交付事業や高額医療費共同事業、保険財政共同安定化事業を実施し、制度内で高額医療の発生や小規模・零細など構造的弱点をもつ組合を相互間で救済する「制度内再分配」の機能をもっている。

 後期高齢者医療の支援金は「仕送り」であるが、「制度間再分配」の機能である。現役世代の負担軽減を主張するのであれば、保険料と公費で調整し応能負担を強化するのが筋であり、受診機会の不平等を拡大する患者負担の増強ではない。受診の「機会不平等」の是正が皆保険制度創設の目的だった過去、原点の忘却である。給付増は保険料と公費での負担増となる構造へ真摯な対峙が不可欠である。

対象患者の多くは受診時の負担が倍化に

 後期高齢者は加齢に伴い身心が病気がちとなるので現役世代に比して複数診療科目を頻回に受診する。一人当たり年間医療費は後期高齢者945,088円に対し現役(若人)221,395円(厚労省平成29年度「医療保険に関する基礎資料」)と、現役の4.27倍となる。しかし、ひと月の1件当たり診療費は外来で、後期高齢者(75歳以上)16,504円に対し現役(一般)12,441円と1.33倍に過ぎない。(令和元年度「社会医療診療行為別統計」)。1医療機関での1患者への医療費に大きな差はないのである。

 一方、一人当たりの年間患者負担は後期高齢者75,653円に対し現役(若人)43,554円と1.74倍と既に過重である(厚労省平成29年度「医療保険に関する基礎資料」)。患者負担割合の軽重が問題とされるが、後期高齢者の患者負担増はこの格差を広げていき、受診抑制に拍車がかかることになる。

 後期高齢者のひと月の1件あたり「入院」の診療費は561,682円であり、その患者負担56,168円は現在の1割負担で高額療養費「自己負担限度額」57,600円の近傍であり、2割負担となって患者負担が嵩むのは「外来」診療である。外来で1割負担が2割負担となると、ひと月の1医療機関あたりの患者負担は1,650円が3,300円となる。これは年収383万円未満に適応される高額療養費の「自己負担限度額」18,000円に満たない。つまり、受診する医療機関、診療科目の数だけ、患者負担が増嵩することになる。75歳以上の受診者の21.0%は月3件にかかっており、1万円弱の負担となる。

後期高齢者の年収に占める負担率は8.1%

現役世代の6.2%より現在でも過重

 後期高齢者医療制度の財源の4割は、各医療保険からの「支援金」が占めることから、現役世代の負担軽減という世代対立、世代分断を煽る不理解や詐術が弄されている。しかし、平均収入に対する患者負担と保険料の合計が占める割合、「年齢階級別の負担状況」(H29.11.8「社会保障審議会医療保険部会」資料1-1)は、75歳で8.1%に対し、20~64歳は6.2%に過ぎない。保険料の事業主負担分を含んだ10.4%は実像ではなく、これを除外した実質負担は後期高齢者より実は相当に低いのである。負担率は後期高齢者の76.5%でしかない。

 また後期高齢者の資産への言及もあるが、二人以上世帯の貯蓄(総務省「家計調査」2019年)は70歳以上2,253万円に対し、ある程度の資産形成がされていく40~49歳は1,076万円で2倍程度であり、これ以上の年代は増額していき格差は縮小する。患者負担額が1.7倍程度の差があり、介護保険の保険料や利用者負担、医療・介護の保険外負担や諸経費を勘案すると、資産を加えた比較はさほど意味がない。そもそも各世代を輪切りにし比較する意味がない。ミクロでは個々が年齢を重ねることへの準備であり、マクロではその生涯を医療保険制度が社会保障とし支える一貫した一連のものだからである。

制度改定の目的は事業主負担と公費負担の削減

国・保険者は医療保険への責務を果たすべき

 結論として、この後期高齢者の2割負担導入は事業主の保険料負担を減らし、公費負担を減らすことが目的となる。被保険者は一時的に保険料の僅少額が軽減されても、将来、自身が後期高齢者になった際に、ブーメランのように患者負担が重くのしかかってくる。意味は乏しい。また、応益負担に接ぎ木した欺瞞的応能負担の年収区分は、いずれ対象を広範囲とする「布石」となる。

SDGsの目標の一つが「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」であり、WHOのUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)-「全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」が位置づく。日本の皆保険制度は医学専門誌『ランセット』で特集が組まれ、また世界銀行もその知見の途上国適用について日本政府と共同研究を開始するなど評価が高い。「社会的共通資本」(故・宇沢弘文・東大名誉教授)として息づいてきた。このコロナ禍で後期高齢者の受診抑制をもたらすことは苛斂誅求であり、コロナ収束へも逆行する。皆保険制度の内実を毀損させる、高齢者2割負担導入の撤回を改めて求める。

2020年12月16日


後期高齢者医療制度は社会全体で支える(*1)仕組みになっている

<「後期高齢者医療制度ガイドブック」(神奈川県後期高齢者医療広域連合発行)より>

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*1 「社会全体で支える」とは?:医療費のうち、医療機関などの窓口でお支払いいただいた金額を除いた残りの分は、約4割は現役世代からの支援金(*2)、約5割は公費=税金(国・県・市町村が負担)、約1割が後期高齢者の皆さんからの保険料でまかなわれています。

*2 「現役世代からの支援金」とは?:国民健康保険や被用者保険(会社などの健康保険)の加入者の方が支払う保険料に、後期高齢者医療制度への支援金が含まれています。神奈川県では、約3,743億円を支援金として現役世代から負担していただいています。(平成30年度)

後期高齢者の方が現役世代より負担率は重い

<第108回社会保障審議会医療保険部会(H29.11.8)資料より>

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*1 平成26年4月以降70歳に達した者から自己負担割合は2割であるが、表の自己負担は平成26年4月以前に70歳に達している者も2割負担だとした場合の数値。

*2 一人あたり医療費、自己負担額は、各制度の事業年報等をもとに作成した平成26年度の値。

*3 平均収入額は、平成27年国民生活基礎調査(抽出調査)による平成26年の数値。

*4 カッコ内の数値は、保険料について事業主負担分を除いた場合の数値。

医科(入院外・後期高齢者)点数階級別の件数と高額療養費(自己負担限度額)の適用範囲

<令和元年 社会医療診療行為別統計(令和元年6月審査分) 第32表より>

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