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混合診療問題ニュース5 「混合診療とは・・・医療保険の効かない医療が増えていくことです!患者は、10割負担の後払いにルールが変更されます!?」

 混合診療で「患者の負担軽減」と、最近、マスコミで報道されました。保険診療と自由診療を組み合わせた場合、いままで「混合診療禁止ルール」により保険が適用される部分まで含めて全額自己負担だったものが、保険が使えて軽減になるという内容でした。一見、なるほどと思います。

 しかし、話しは少し違います。高度先進医療などは既に、将来的な保険導入を前提とした混合診療が制度として認められています。これを特定療養費制度といいます。この対象となる医療は専門家の会議で決めています。また、最近は抗がん剤の分野にもこの制度が拡大されています。尚、高度先進医療は年間2029人、20億円で医療費影響度は0.007%と極小です。生死に関わる、必要な医療はこの制度に取り入れることで対応は十分可能です。

 この部分解禁の特定療養費に対し、小泉首相や規制改革推進会議は「全面解禁」を求めています。このことが、最大の問題なのです。今の、必要な医療を全て医療保険から給付するルールでは、自由料金を上乗せして自由診療を購入することはできません。そこで、医療そのものを給付するのでなく、医療を買うための現金を支給する制度に変更することが法律の上では必須です。この場合、保険診療の部分は全額を支払い(10割負担)、後で払い戻しを受ける(=償還払い)ことが原則となります。運用上、当面は今と同じ扱いとするとしても、いずれ、窓口で10割の負担をし償還払いとする方法に変えられる危険性がとても高いのです。本土復帰前の沖縄県はこの10割負担で償還払いのため、当時、受診率は全国最低でした。しかも患者からの医療費償還の請求は、役所にバスでもらいに行くのが大変でやめる人が多く、全体の1/3しか給付されませんでした。

 

■保険外し差額、が既に登場

 医療内容ではなく、差額ベッドなどの追加サービスも特定療養費制度に入っていますが、最近は6ヶ月を超える入院の差額徴収など、保険の給付を外し患者に負担させる混合診療も登場しています。全面解禁では、今、保険の効いているものが外され、保険の効かない医療がどんどん増えていきます。

 

本音は『民間医療保険』の販売!規制改革会議 杜撰な論議で国民・マスコミを翻弄

生保・損保の商品開発は急ピッチ 公私2本立て医療保険が焦点

 混合診療とは、疾病治療を対象とする保険診療と自由診療の混合の問題です。しかし、規制改革会議が提示した解禁要望項目は、乳房再建術など、そもそも疾病治療とは別物の医療行為の混合や、医学的に有効性がないものなど、誤解や間違いの多いものです。解禁に向けた、為にする議論の感が強いものです。

 事実、経済財政諮問会議の下の研究会が02年12月に民間医療保険の活用を説く報告書を、それ以前にも経済同友会の研究会やアメリカンファミリーが民間保険と公的医療保険との二本立て再編に関する提言を発表しています。

 既にガンを対象にした自由診療保険を発売したセコム損保は、富国生命と共同で保険の対象外の治療費を保障する新型保険を開発、10月より販売しています。これらは、まだ全面解禁されていない混合診療が前提の商品です。

 

■規制改革会議の主張する、乳房再建術の負担軽減はウソ!!

 乳がん患者の乳房再建術が混合診療の解禁で負担軽減されると報道されましたが、事実は違います。乳房再建術は疾病治療ではないので医療保険の対象とならない形成外科領域の手術です。

 実際は、乳がんの摘出(保険診療)と乳房再建(自由料金)は峻別されており、保険診療の終了後に自由料金の乳房再建に移行となります。よって、混合診療が解禁されても患者の負担金額は今と同じで、何も負担軽減はされません。

 今、患者や医療者の双方からこの再建術の保険導入が強く要望されています。保険導入こそが負担軽減です。規制改革会議の主張は、国民要求に反するものでしかありません。

 (2004年10月25日)