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混合診療問題ニュース1 「尾辻・新厚労大臣 混合診療解禁に賛意を表明!」

 第2次小泉改造内閣(9月27日発足)の尾辻・新厚労大臣は、就任記者会見で、混合診療解禁について「個人的に賛成」と表明した。ただ、「厚労省の考え方もよく聞きたい」とし、「一定のルール(=特定療養費)の中で混合診療が広がっていく方策は検討できないか」指示したと述べた。また、どんなに高額でもいいという人のために道を開くことを触れる一方、皆保険の死守および保険外診療の拡充が医療保険制度の根幹を崩すとの認識も示した。

 

首相「解禁の方向で」  年内 結論で指示! トップダウン決着か?

 これに先立ち、9月10日、小泉首相は経済財政諮問会議で、混合診療について「年内に解禁の方向で結論を出してほしい」と規制改革担当大臣に指示した。規制改革会議は最終的に担当閣僚と直接折衝をし首相裁定を求める方針。坂口・前厚労大臣は、全面解禁に反対し、一定のルールの範囲内で特定療養費で対応すべきとしていた。

 

協会・保団連 10/28国会内シンポ 11/25国会内集会を予定

 この急転直下の動きに対し、協会・保団連は10月28日、国会内で「混合診療と特定療養費を考える懇談会」を、国会議員、マスコミ記者に参加を呼びかけ開催。また、11月25日に国会内で「国民・患者負担増反対 国会内集会」を開催する予定だ。

 尚、日医も「混合診療に向けては年末がヤマ場になる」「混合診療が解禁となった場合、患者が十分な医療を受けようとすれば、負担増を補うため民間の医療保険への依存が高まり公的な医療保険が形骸化する」とし、混合診療阻止と国民皆保険を守る国民運動を展開することを決めている。

 

【解説】 混合診療とは何か =その1=

 財界が盛んに主張する、「混合診療の解禁」。この中身について、意外と誤解や曲解があるので、シリーズで解説します。

 

 混合診療とは、保険診療と自由診療の「混合」のことをさします。もちろん、保険診療とは医療保険による診療です。

 医療保険は、疾病の治療を対象としたものです。予防接種や健康診断、検診事業(がん検診、基本検診、乳幼児検診)などの、予防や公衆衛生事業は、そもそも医療保険の対象ではありません。

 医療現場では、疾病の治療以外に、予防接種など様々な「医療」が提供されます。この様々な「医療」行為の混在は、混合診療とは呼びません。

 疾病を医療保険を用いて診療する保険診療と、疾病に保険を用いない自由診療の混在を「混合診療」として問題にされているのです。キーワードは疾病と医療保険です。この点の誤解が多くみられます。

 ですので、健診で異常が発見され治療に切り替わる場合や妊娠で通院し分娩異常で治療した場合は混合診療とはいいません。尚、歯科は治療の途中段階で自費診療へ切り替えることが認められていますが、これも混合診療とはよびません。

 

では、なぜ問題なのでしょうか?

 医療保険は、初診から治癒(ないしは中止)までの一連の診療のなかに自由診療との混在を認めていません。これは、国が医療保険で最適最善の医療を全て保障するという健康保険法の趣旨、国民皆保険や現物給付の理念によるものだからです。

 この理念のもと、医学の進歩による治療方法や治療技術、技術革新による新たな検査、医薬品、医療機器、医療材料などが、前向きに保険に導入されてきています。その結果、内視鏡、腹腔鏡下手術などの医療も、保険で受けられるようになってきています。このことが、世界一の平均寿命やWHOの健康度評価で世界1位となって現れてきたのです。

 治療や医薬品など、安全性や有効性が未確立なもの、経済性や普及性が乏しいものなどは、保険に導入されていません。これらを希望する場合は、初診から自由診療となりますが、これは上で述べた医療保険の原則のためです。 混合診療は、医療保険と自由診療の混合で、一見いいように思いますが、自由診療の部分が、保険に導入されず固定化される危険があります。

 それは歯科の歴史が如実に物語っています。次回はその点を振り返ります。


(2004年10月1日)