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医療機関の責務・負担は膨大に マイナンバーは時代に逆行 シリーズ講座「共通番号を斬る」第2弾を開催しました

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 神奈川県保険医協会・医療情報部は2015年4月30日、シリーズ講座「マイナンバーを斬る」の第2弾として、講師に白鷗大学・教授の石村耕治氏を迎え、「市民や事業者にとり共通番号制とは何か」と題し講演を開催、会員、市民、マスコミなど36名が参加しました。

 

 石村氏は冒頭、各国が採用する番号制のモデル(方式)について解説。(1)個別番号制、(2)分野別番号制、(3)共通番号制―の3つに分類され、「マイナンバー」は共通番号制に属するが、ハッカー対策等からパスワードの変更を頻繁に求められるIT全盛の今日、一生涯同じ共通番号を幅広い分野で使うことは、明らかに時代に逆行する。カナダや米国など共通番号制を導入していた国も、なりすまし犯罪の多発等により、分野別番号にシフトしており、日本でも住民票コードから各分野の個別番号を組成、必要な事務手続きのみ住民票コードで紐付けを認める分野別番号の導入は可能で、「安全性等を考えれば、より現実的な選択」と強調しました。

 

 次に、医療機関をはじめとする事業者のマイナンバーに関わる対応や責務等について説明。2016年1月のマイナンバーの運用開始後、事業者は、支払調書や源泉徴収票等の各種法定調書に、従業員等のマイナンバーを記載することになる。そのため、既存の従業員や採用を決めた人(パート、アルバイト含む)から、本人及び扶養家族のマイナンバーの告知・提示を求め、管理する責務が課せられる。

 マイナンバー付きの個人情報は「特定個人情報」と定められ、一般法の個人情報保護法よりも厳しい安全管理義務が課せられ、悪意や故意の流出、目的外利用等には刑事罰も科せられる。それ以外の漏洩等についての罰則はないが、漏洩された側からの民事訴訟、監視・監督機関である「特定個人情報保護委員会」(第三者委員会)の立入り調査、風評被害など、社会的信頼を失うような事態も起こり得る。特定個人情報保護委員会は2014年12月、事業者向けに「特定個人情報取扱ガイドライン」を作成。取扱い、管理に関する膨大な法令順守が求められており、石村氏は「事業者は膨大な責任を徹底的に負わせられる」と指摘。個人診療所や個人商店等の小規模事業者の対応は困難を極めると強調しました。

 

 また、住基ネットとの違いにもふれ、住基ネットは非公開の番号(住民票コード)による「民―官」の情報連携であるのに対し、マイナンバーは公開番号による「民―民―官」の情報連携となる。特に取扱い事業者の数の多さから、「民―民」での漏洩、なりすまし等が多発する可能性が高まると懸念を示しました。

 

 講演後の質疑では、マイナンバー施行後の社会的混乱等について、フロアと活発に意見交換がなされました。石村氏は、個人番号カードと健康保険証の一元化など、カードの常時携行の義務化の流れが、国民監視のための「現代版通行手形」となる危険性を指摘し、監視社会化への対抗として、個人番号カードへ切り替えないなど、「一人でもできる運動はある」と提案しました。

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 神奈川県保険医協会・医療情報部は2015年4月30日、シリーズ講座「マイナンバーを斬る」の第2弾として、講師に白鷗大学・教授の石村耕治氏を迎え、「市民や事業者にとり共通番号制とは何か」と題し講演を開催、会員、市民、マスコミなど36名が参加しました。

 

 石村氏は冒頭、各国が採用する番号制のモデル(方式)について解説。(1)個別番号制、(2)分野別番号制、(3)共通番号制―の3つに分類され、「マイナンバー」は共通番号制に属するが、ハッカー対策等からパスワードの変更を頻繁に求められるIT全盛の今日、一生涯同じ共通番号を幅広い分野で使うことは、明らかに時代に逆行する。カナダや米国など共通番号制を導入していた国も、なりすまし犯罪の多発等により、分野別番号にシフトしており、日本でも住民票コードから各分野の個別番号を組成、必要な事務手続きのみ住民票コードで紐付けを認める分野別番号の導入は可能で、「安全性等を考えれば、より現実的な選択」と強調しました。

 

 次に、医療機関をはじめとする事業者のマイナンバーに関わる対応や責務等について説明。2016年1月のマイナンバーの運用開始後、事業者は、支払調書や源泉徴収票等の各種法定調書に、従業員等のマイナンバーを記載することになる。そのため、既存の従業員や採用を決めた人(パート、アルバイト含む)から、本人及び扶養家族のマイナンバーの告知・提示を求め、管理する責務が課せられる。

 マイナンバー付きの個人情報は「特定個人情報」と定められ、一般法の個人情報保護法よりも厳しい安全管理義務が課せられ、悪意や故意の流出、目的外利用等には刑事罰も科せられる。それ以外の漏洩等についての罰則はないが、漏洩された側からの民事訴訟、監視・監督機関である「特定個人情報保護委員会」(第三者委員会)の立入り調査、風評被害など、社会的信頼を失うような事態も起こり得る。特定個人情報保護委員会は2014年12月、事業者向けに「特定個人情報取扱ガイドライン」を作成。取扱い、管理に関する膨大な法令順守が求められており、石村氏は「事業者は膨大な責任を徹底的に負わせられる」と指摘。個人診療所や個人商店等の小規模事業者の対応は困難を極めると強調しました。

 

 また、住基ネットとの違いにもふれ、住基ネットは非公開の番号(住民票コード)による「民―官」の情報連携であるのに対し、マイナンバーは公開番号による「民―民―官」の情報連携となる。特に取扱い事業者の数の多さから、「民―民」での漏洩、なりすまし等が多発する可能性が高まると懸念を示しました。

 

 講演後の質疑では、マイナンバー施行後の社会的混乱等について、フロアと活発に意見交換がなされました。石村氏は、個人番号カードと健康保険証の一元化など、カードの常時携行の義務化の流れが、国民監視のための「現代版通行手形」となる危険性を指摘し、監視社会化への対抗として、個人番号カードへ切り替えないなど、「一人でもできる運動はある」と提案しました。