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開業とは?〜その3 「開業の形態」

開業の形態

 開業の形態も有床か無床かと考えるだけでなく、もっといろいろな選択肢がありますので自分がやりたい医療に合わせて検討してみてください。

(1) 診療機能

 診療所の機能を類型化すると、次の3つのパターンが見られます。

1) プライマリ・ケア型

 風邪や腹痛など軽度の急性疾患や慢性疾患の管理などを中心に、患者の総合的な健康を担うタイプの診療所で、内科系の標榜で多く見受けられます。病院や専門性の高い診療所、介護・福祉施設との連携が重要です。

2) 専門特化型

 院長の専門分野を診療の中心に置きます。内科系では糖尿病や肝臓疾患など単一の疾患、小児科ではアレルギー疾患、眼科の白内障日帰り手術、整形外科のリウマチ疾患など、各科で専門性を打ち出す深慮ウン所が増加しています。

3) 介護・福祉型

 寝たきりの高齢者の訪問診療や訪問介護、介護、通所リハビリテーションなどを積極的に活用するタイプの診療所。医療保険のみではなく、介護保険との関わりも多くなります。リハビリの施設基準や短期入所、療養型病床の設置など施設基準への対応や入所施設の保有などが必要となる場合があります。

(2) 新規開業か継承か

 継承のメリットとしては、新規開業に比べ開業資金が少なく済むこと、患者を引き継ぐことによって立ち上がりから安定した経営が行える点があります。最近は親族間の継承の他に、第三者間での継承も多くなってきました。

(3) テナント(ビル開業)か一戸建てか

 対象とする患者や診療所の機能を考えた場合、テナントでの開業も集患のうえで一概に不利であるとは言えません。従来から言われているテナント(ビル開業)のメリット・デメリットとしては以下のことがありますが、求める診療所の機能と資金面を総合的に考慮する必要があります。また診療科によっては、テナントでの開業が困難な場合もあります。

ビル開業のメリット

  

・ 資金が少なくても開業できる。

・ 職住分離ができる。

・ 他店舗の集客能力も活用できるし医療機関があれば連携できる。

ビル開業のデメリット

  

・ テナントのため診療所が融資の担保にならない。

・ 診療科目にもよるが、一戸建てより外来は少なくなる(職住分離ゆえ、地域への密着性が乏しい)。

・ 使用可能なスペースが限定されるため診療内容にも制限ができる。

(4) 単独の開業かグループの開業か

※メディカル・モール

 今後、規制緩和の影響もあり増加すると予想される形態に「メディカル・モール」があります。グループ診療の一形態ですが、単にビル会社などが医療機関をテナントとして複数募集するというだけでなく、開発業者やビル管理会社が大型施設の医療センターとして位置付け、一定の設備を整えたうえでテナントを募集するというものです。資金があまりかからない、他の医療機関との連携が容易、患者が集まりやすい、管理業務の外注などで診療に集中できるというなどのメリットがあります。

 一方、モールを運営する業者の求める診療科に一致するか、開業スケジュールが自分の都合で決められないなど、現状では情報が得にくいこともあって、開業する側の都合で選択できる状況にはなっていません。 

 1人で開業するにしても、他の病医院との連携体制は十分考えないといけませんが、最近ではメディカルビルということで数件から多いところでは10件以上の医療機関の入居するビルでの開業や、それぞれは独立の1戸建てながら近接した地域に診療所を建てる例もあります。共有化できる部分の節減とか、連携の緊密化などの利点があると考えられます。同一の診療所で、標榜科目の違う人が共同で診療にあたる例も出てきています。親族に限らず、複数での開業ということも選択肢として一考の価値はあるでしょう。

(5) 院内処方か院外処方か

 現在の開業では院外処方を選択する場合が多くなっています。診療所機能に何を求めるか、院外処方薬局のはいちなどを考慮し選択します。

 またどちらにするか迷ったら、判断の基本に置くのは、患者さんの立場になったらどうなのか、ということでしょう。これは他の選択についても同様のことが言えます。院外処方についても、自分のしたい医療と患者さんのことを考えてどうするか検討してください。

(6) 有床か無床か

 最近、有床診療所としての開業は少ないのですが、今後の医療環境を考えると一考する価値はあります。専門特化型診療所で手術を行いたい場合、入院機能を備えることが必要となる場合があります。介護・福祉型の場合でも、地域のニーズに合わせ療養型病床を確保することが有効になってきます。無床に比べ多額の資金が必要になりますので、診療機能や地域のニーズなどを考え「有床診療所」も選択の範囲とすることが必要かもしれません。

(7) その他

 「診療日(休診日)はいつにするか」「診療時間は何時から何時にするか」「在宅診療はどうするか」など、他にも考慮することはあります。肝要なことは、開業してから変更の困難なものと変更の容易なものとに分けて整理し考え、必要に応じて途中で変更する柔軟性です。

(...続く)