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「診療明細書発行制度に関する医師・患者の意識調査」を発表しました

診療明細書発行制度に関する医師・患者の意識調査

神奈川県保険医協会 政策部

2011年2月

 

※ クリックすると、各項目へジャンプします

 

【質問項目】

1.医師の質問項目

2.患者の質問項目

 

【結 果】

1.医師についての結果

2.患者についての結果

3.医師と患者の制度評価の比較検討

 

【考 察】

【結 論】

【はじめに】

 2010年診療報酬改定により、医療機関での窓口負担金の支払いの際、従来の領収書に加えて「診療明細書」(以下、明細書)を無償発行することが義務化された。ただ、一部、自動入金システム改修が必要な病院やレセプトオンライン化に対応していない診療所などは義務ではなく、有償での発行が認められている。今回は明細書発行制度に対する、医師・患者それぞれの受け取り方と評価を調査する目的で実施した。

【目 的】

 明細書に対する理解と評価について全国的に医師・市民を無作為抽出して調査した報告はない。そこで、明細書の社会的意義を明確にするため調査した。

【方法と対象】

 調査は㈱マクロミルに委託し、インターネットにより全国の医師と患者に回答を求めた。抽出に偏りが生じないため、均等割り付け無作為抽出とした。調査期間は2010年8月3日から8月4日の2日間である。

 質問項目は医師と患者で分け、制度についての質問項目は共通のものとした。意見は記述式とし、他は項目選択方式とした。統計学的検討はPASW version18を用い、χ2検定を実施した。

  

【質問項目】

1.医師の質問項目

問№

質問項目

回答選択肢

問1

職種について

1.診療所院長  2.診療所勤務医  3.病院院長

4.病院勤務医  5.その他

問2

医療機関で窓口負担金の領収書と合わせ、明細書を発行していますか?

1.無償で発行している  2.有償で発行している

3.発行していない  4.わからない

問3

医療機関で再診料の明細書発行体制加算を算定していますか?

1.算定している  2.算定していない  3.わからない

問4

医療機関で明細書発行に関し、患者トラブル(苦情、窓口混乱、待ち時間の長時間化など)はありますか?

1.ある(具体的になんですか?)  2.ない

問5

受診のたびに毎回、明細書を発行する制度についてどう思いますか?

1.良い制度だと思う  2.必要のない制度だと思う

3.希望者だけに発行する制度で十分だと思

4.なんともいえない  5.よくわからない

問6

問5の理由に近いものはどれですか?該当するものをすべてお選びください(複数回答可)

1.費用明細がわかるのは明瞭になっていいから

2.健康保険の用語はよくわからないから

3.紙の無駄だから

4.薬害・医療事故の予防になるから

5.不正請求の防止になるから

6.窓口が混乱するから

7.検査データなど診療内容の説明に力をさくべきだから

8.明細の説明は、本来、保険者のすべきことだから

9.医療を商品にみたてた奇異な制度だから

10.その他

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2.患者の質問項目

問№

質問項目

回答選択肢

問1

窓口負担金を支払った際に、領収書に加えて明細書を発行されましたか?

1.発行された  2.発行されなかった

3.わからない(覚えてない)  4.その他

問2

明細書を発行された方にお聞きします。明細書を受け取り、持ち帰りましたか?

1.受け取った  2.受け取らなかった

3.わからない(覚えていない)  4.その他

問3

全ての方にお聞きします。明細書はいつも欲しいですか?

1.必要ない  2.必要なときだけもらいたい

3.いつもほしい  4.わからない  5.その他

問4

受診のたびに毎回、明細書を発行する制度についてどう思いますか?

1.良い制度だと思う  2.必要のない制度だと思う

3.希望者だけに発行する制度で十分だと思う

4.なんともいえない  5.よくわからない

問5

問4の理由に近いものはどれですか?該当するものをすべてお選びください(複数回答可)

1.費用明細がわかるのは明瞭になっていいから

2.健康保険の用語はよくわからないから

3.紙の無駄だから

4.薬害・医療事故の予防になるから

5.不正請求の防止になるから

6.窓口が混乱するから

7.検査データなど診療内容の説明に力をさくべきだから

8.明細の説明は、本来、保険者のすべきことだから

9.医療を商品にみたてた奇異な制度だから

10.その他

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 【結 果】  ※ グラフをクリックすると拡大表示されます

1.医師についての結果

◆医師の背景 ・・・解析対象は881名。詳細は以下に示す。

医師―性別  医師―年齢 
医師―地域 医師―世帯年収と個人年収

  

問1 ・・・医師の勤務形態 (職種について)

問1・・・医師の勤務形態 

 

問2 ・・・医師の明細書発行状況 (医療機関で窓口負担金の領収書と合わせ、明細書を発行していますか?)

 問2・・・明細書の発行状況

※ 明細書を無償で発行している医療機関が約7割を占めた。勤務形態別で発行状況を検討したところ、有意差を認めた。

 勤務形態別での明細書発行状況

  

問3 ・・・明細書発行体制加算の算定状況 (医療機関で再診料の明細書発行体制加算を算定していますか?)

問3・・・明細書発行体制加算の算定状況

 

問4 ・・・明細書発行に関するトラブル (医療機関で明細書発行に関し、患者トラブル<苦情、窓口混乱、待ち時間の長時間化など>はありますか?)

問4・・・明細書発行に関するトラブル

 

問5 ・・・明細書発行についての医師の評価 (受診のたびに毎回、明細書を発行する制度についてどう思いますか?)

問5・・・明細書発行についての医師の評価

※ また、勤務形態別での制度評価について検討し、有意差を認めた。

勤務形態別での制度評価

 

問6 ・・・制度評価の理由 (問5の理由に近いものはどれですか?該当するものをすべてお選びください) <複数回答可>

問6・・・制度評価の理由

制度評価の理由(内訳)

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2.患者についての結果

◆患者の背景 ・・・解析対象は1040名。詳細は以下に示す。

患者ー性別     患者―年齢
患者―地域 患者―職業
患者―世帯年収と個人年収  

  

問1 ・・・患者の明細書発行状況 (窓口負担金を支払った際に、領収書に加えて明細書を発行されましたか?) 

問1・・・患者の明細書発行状況

 

問2 ・・・明細書の受け取り状況 (明細書を発行された方にお聞きします。明細書を受け取り、持ち帰りましたか?)

問2・・・明細書の受け取り状況

 

問3 ・・・明細書発行の希望状況 (受診のたびに毎回、明細書を発行する制度についてどう思いますか?) 

問3・・・明細書発行の希望状況

 

問4 ・・・明細書発行制度についての患者の評価 (受診のたびに毎回、明細書を発行する制度についてどう思いますか?)

問4・・・制度についての患者の評価

 

問5 ・・・制度評価の理由 (問4の理由に近いものはどれですか?該当するものをすべてお選びください) <複数回答可>

問5・・・制度評価の理由

制度評価の理由(内訳)

 

 ※1) 患者の地域ブロックからみた検討 ・・・明細書発行などについて有意差を認めた。

 患者の地域ブロックからみた検討

 

※2) 患者の明細書発行からみた検討 ・・・明細書希望・制度評価などについて、有意差を認めた

 patient-8.jpg 

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3.医師と患者の制度評価の比較検討

(1)医師と患者の制度評価の比較検定を行なったところ、有意差を認めた。

dr&patient-1.jpg

 
 
(2)医師と患者の制度評価の理由からみた検討

 医師と患者の制度評価の理由について比較検定を行ったところ、制度について「よい」と回答した理由についてはp=0.301で有意差はなかった。その他の評価については、いずれも有意差を認めた。

dr&patient-2.jpg

dr&patient-3-1.jpg

dr&patient-4.jpg

dr&patient-5.jpg

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【考 察】

 診療明細書の発行義務化制度の評価については医師・患者との間に有意差を認め、「良い制度だと思う」は医師16.3%、患者43.7%、「必要のない制度だと思う」は医師14.6%、患者2.7%、「希望者だけに発行する制度で十分」は医師58.1%、患者44.0%であり、調査実施前の予想通り、医師と患者とで評価が分かれた。

 医師の評価については勤務形態別に見たところ有意差が認められ、診療所院長、診療所勤務医、病院院長、病院勤務医とも「希望者だけに発行する制度で十分」が最も多く、診療所院長は「必要ない」が31.4%と突出した(診療所勤務医14.7%、病院院長6.3%、病院勤務医11.1%)。「良い」とする意見は診療所院長8.8%、診療所勤務医16.2%、病院院長18.8%、病院勤務医17.7%と、診療所院長だけが1割を切り、特に診療所院長が制度に否定的であることが分かった。これは、診療所院長が明細書に記載された診療報酬点数について質問されたり、会計業務に関わることが多いためではないかと予想される。また、会計の場に居合わせることが少ないと考えられる病院勤務医も、5割が希望者のみ発行する制度でよいと回答した点は特筆される。

 患者については、実際に明細書が発行されたことがあるとしたのは74.8%だった。明細書を発行している医師も無償発行68.6%と有償発行4.8%をあわせて73.4%で、ほぼ一致していた。

 明細書を発行された患者について検討したところ、受け取って持ち帰ったのは98.2%であった。また、希望する発行頻度を尋ねると、「必要な時だけ欲しい」が47.1%、「いつも欲しい」が36.6%、「必要ない」は10.4%となり、患者が明細書を概ね有益だと判断していることが覗えた。

 制度評価の理由(複数回答)については、「希望者だけに発行する制度で十分」「必要ない」「なんともいえない」「よくわからない」と回答した理由について、医師と患者との回答に有意差を認めた。「希望者だけで十分」と回答した理由では、医師は「紙の無駄」が53.9%、次いで「窓口が混乱するから」35.2%、「医療を商品に見立てた奇異な制度だから」23.0%となった。一方、患者で「希望者だけで十分」とした理由は、「紙の無駄」が56.1%で最も多く、「費用明細がわかり明瞭になってよい」31.9%、「不正請求の防止になる」28.6%が続いた。同じ「希望者のみの発行で十分」との評価でも、医師が否定的な理由で選んでいるのに対し、患者の中には明細書を肯定的に捉えた上で判断している声も一定あることが分かった。

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【結 論】

 明細書発行義務化制度の評価については、医師は「希望者のみに発行する制度で十分」が6割、「必要ない制度」が1割となり、その多くが「紙の無駄」と認識していることが分かった。

 一方、患者は5割が希望した場合のみ発行する制度でよいとし、4割が発行義務化制度を「良い」と評価した。全体の6割が明細書を「費用明細が明瞭になる」と捉えており、明細書を実際に見た上で「毎回欲しい」という人は4割いた。

 これらを合わせると、医療機関側には患者の希望に応じ明細書を発行することが求められるが、毎回の発行を義務づける必要性は疑問視される。また、患者の4割が明細書は不正請求の防止になる、2割が薬害・医療事故の予防になると答えるなど、医師と患者の理解、考え方にも差が見られた。双方の理解の乖離は窓口での混乱などにも繋がるため、これらの解消は今後の課題であろう。

 なお、当会は2010年3月にも今回の調査同様㈱マクロミルに依頼し、患者の窓口負担に関する意識調査を行った。この時の調査と比べ、今回の調査では患者の年収200万円未満の割合が世帯年収は1.6ポイント(6.3%→7.9%)、個人年収は1.2ポイント(39.1%→40.3%)増えた。これは収入の減収が進んでいると考えられ、政府による更なる所得再分配の方策が望まれる。

診療明細書発行制度に関する医師・患者の意識調査

神奈川県保険医協会 政策部

2011年2月

 

※ クリックすると、各項目へジャンプします

 

【質問項目】

1.医師の質問項目

2.患者の質問項目

 

【結 果】

1.医師についての結果

2.患者についての結果

3.医師と患者の制度評価の比較検討

 

【考 察】

【結 論】

【はじめに】

 2010年診療報酬改定により、医療機関での窓口負担金の支払いの際、従来の領収書に加えて「診療明細書」(以下、明細書)を無償発行することが義務化された。ただ、一部、自動入金システム改修が必要な病院やレセプトオンライン化に対応していない診療所などは義務ではなく、有償での発行が認められている。今回は明細書発行制度に対する、医師・患者それぞれの受け取り方と評価を調査する目的で実施した。

【目 的】

 明細書に対する理解と評価について全国的に医師・市民を無作為抽出して調査した報告はない。そこで、明細書の社会的意義を明確にするため調査した。

【方法と対象】

 調査は㈱マクロミルに委託し、インターネットにより全国の医師と患者に回答を求めた。抽出に偏りが生じないため、均等割り付け無作為抽出とした。調査期間は2010年8月3日から8月4日の2日間である。

 質問項目は医師と患者で分け、制度についての質問項目は共通のものとした。意見は記述式とし、他は項目選択方式とした。統計学的検討はPASW version18を用い、χ2検定を実施した。

  

【質問項目】

1.医師の質問項目

問№

質問項目

回答選択肢

問1

職種について

1.診療所院長  2.診療所勤務医  3.病院院長

4.病院勤務医  5.その他

問2

医療機関で窓口負担金の領収書と合わせ、明細書を発行していますか?

1.無償で発行している  2.有償で発行している

3.発行していない  4.わからない

問3

医療機関で再診料の明細書発行体制加算を算定していますか?

1.算定している  2.算定していない  3.わからない

問4

医療機関で明細書発行に関し、患者トラブル(苦情、窓口混乱、待ち時間の長時間化など)はありますか?

1.ある(具体的になんですか?)  2.ない

問5

受診のたびに毎回、明細書を発行する制度についてどう思いますか?

1.良い制度だと思う  2.必要のない制度だと思う

3.希望者だけに発行する制度で十分だと思

4.なんともいえない  5.よくわからない

問6

問5の理由に近いものはどれですか?該当するものをすべてお選びください(複数回答可)

1.費用明細がわかるのは明瞭になっていいから

2.健康保険の用語はよくわからないから

3.紙の無駄だから

4.薬害・医療事故の予防になるから

5.不正請求の防止になるから

6.窓口が混乱するから

7.検査データなど診療内容の説明に力をさくべきだから

8.明細の説明は、本来、保険者のすべきことだから

9.医療を商品にみたてた奇異な制度だから

10.その他

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2.患者の質問項目

問№

質問項目

回答選択肢

問1

窓口負担金を支払った際に、領収書に加えて明細書を発行されましたか?

1.発行された  2.発行されなかった

3.わからない(覚えてない)  4.その他

問2

明細書を発行された方にお聞きします。明細書を受け取り、持ち帰りましたか?

1.受け取った  2.受け取らなかった

3.わからない(覚えていない)  4.その他

問3

全ての方にお聞きします。明細書はいつも欲しいですか?

1.必要ない  2.必要なときだけもらいたい

3.いつもほしい  4.わからない  5.その他

問4

受診のたびに毎回、明細書を発行する制度についてどう思いますか?

1.良い制度だと思う  2.必要のない制度だと思う

3.希望者だけに発行する制度で十分だと思う

4.なんともいえない  5.よくわからない

問5

問4の理由に近いものはどれですか?該当するものをすべてお選びください(複数回答可)

1.費用明細がわかるのは明瞭になっていいから

2.健康保険の用語はよくわからないから

3.紙の無駄だから

4.薬害・医療事故の予防になるから

5.不正請求の防止になるから

6.窓口が混乱するから

7.検査データなど診療内容の説明に力をさくべきだから

8.明細の説明は、本来、保険者のすべきことだから

9.医療を商品にみたてた奇異な制度だから

10.その他

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 【結 果】  ※ グラフをクリックすると拡大表示されます

1.医師についての結果

◆医師の背景 ・・・解析対象は881名。詳細は以下に示す。

医師―性別  医師―年齢 
医師―地域 医師―世帯年収と個人年収

  

問1 ・・・医師の勤務形態 (職種について)

問1・・・医師の勤務形態 

 

問2 ・・・医師の明細書発行状況 (医療機関で窓口負担金の領収書と合わせ、明細書を発行していますか?)

 問2・・・明細書の発行状況

※ 明細書を無償で発行している医療機関が約7割を占めた。勤務形態別で発行状況を検討したところ、有意差を認めた。

 勤務形態別での明細書発行状況

  

問3 ・・・明細書発行体制加算の算定状況 (医療機関で再診料の明細書発行体制加算を算定していますか?)

問3・・・明細書発行体制加算の算定状況

 

問4 ・・・明細書発行に関するトラブル (医療機関で明細書発行に関し、患者トラブル<苦情、窓口混乱、待ち時間の長時間化など>はありますか?)

問4・・・明細書発行に関するトラブル

 

問5 ・・・明細書発行についての医師の評価 (受診のたびに毎回、明細書を発行する制度についてどう思いますか?)

問5・・・明細書発行についての医師の評価

※ また、勤務形態別での制度評価について検討し、有意差を認めた。

勤務形態別での制度評価

 

問6 ・・・制度評価の理由 (問5の理由に近いものはどれですか?該当するものをすべてお選びください) <複数回答可>

問6・・・制度評価の理由

制度評価の理由(内訳)

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2.患者についての結果

◆患者の背景 ・・・解析対象は1040名。詳細は以下に示す。

患者ー性別     患者―年齢
患者―地域 患者―職業
患者―世帯年収と個人年収  

  

問1 ・・・患者の明細書発行状況 (窓口負担金を支払った際に、領収書に加えて明細書を発行されましたか?) 

問1・・・患者の明細書発行状況

 

問2 ・・・明細書の受け取り状況 (明細書を発行された方にお聞きします。明細書を受け取り、持ち帰りましたか?)

問2・・・明細書の受け取り状況

 

問3 ・・・明細書発行の希望状況 (受診のたびに毎回、明細書を発行する制度についてどう思いますか?) 

問3・・・明細書発行の希望状況

 

問4 ・・・明細書発行制度についての患者の評価 (受診のたびに毎回、明細書を発行する制度についてどう思いますか?)

問4・・・制度についての患者の評価

 

問5 ・・・制度評価の理由 (問4の理由に近いものはどれですか?該当するものをすべてお選びください) <複数回答可>

問5・・・制度評価の理由

制度評価の理由(内訳)

 

 ※1) 患者の地域ブロックからみた検討 ・・・明細書発行などについて有意差を認めた。

 患者の地域ブロックからみた検討

 

※2) 患者の明細書発行からみた検討 ・・・明細書希望・制度評価などについて、有意差を認めた

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3.医師と患者の制度評価の比較検討

(1)医師と患者の制度評価の比較検定を行なったところ、有意差を認めた。

dr&patient-1.jpg

 
 
(2)医師と患者の制度評価の理由からみた検討

 医師と患者の制度評価の理由について比較検定を行ったところ、制度について「よい」と回答した理由についてはp=0.301で有意差はなかった。その他の評価については、いずれも有意差を認めた。

dr&patient-2.jpg

dr&patient-3-1.jpg

dr&patient-4.jpg

dr&patient-5.jpg

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【考 察】

 診療明細書の発行義務化制度の評価については医師・患者との間に有意差を認め、「良い制度だと思う」は医師16.3%、患者43.7%、「必要のない制度だと思う」は医師14.6%、患者2.7%、「希望者だけに発行する制度で十分」は医師58.1%、患者44.0%であり、調査実施前の予想通り、医師と患者とで評価が分かれた。

 医師の評価については勤務形態別に見たところ有意差が認められ、診療所院長、診療所勤務医、病院院長、病院勤務医とも「希望者だけに発行する制度で十分」が最も多く、診療所院長は「必要ない」が31.4%と突出した(診療所勤務医14.7%、病院院長6.3%、病院勤務医11.1%)。「良い」とする意見は診療所院長8.8%、診療所勤務医16.2%、病院院長18.8%、病院勤務医17.7%と、診療所院長だけが1割を切り、特に診療所院長が制度に否定的であることが分かった。これは、診療所院長が明細書に記載された診療報酬点数について質問されたり、会計業務に関わることが多いためではないかと予想される。また、会計の場に居合わせることが少ないと考えられる病院勤務医も、5割が希望者のみ発行する制度でよいと回答した点は特筆される。

 患者については、実際に明細書が発行されたことがあるとしたのは74.8%だった。明細書を発行している医師も無償発行68.6%と有償発行4.8%をあわせて73.4%で、ほぼ一致していた。

 明細書を発行された患者について検討したところ、受け取って持ち帰ったのは98.2%であった。また、希望する発行頻度を尋ねると、「必要な時だけ欲しい」が47.1%、「いつも欲しい」が36.6%、「必要ない」は10.4%となり、患者が明細書を概ね有益だと判断していることが覗えた。

 制度評価の理由(複数回答)については、「希望者だけに発行する制度で十分」「必要ない」「なんともいえない」「よくわからない」と回答した理由について、医師と患者との回答に有意差を認めた。「希望者だけで十分」と回答した理由では、医師は「紙の無駄」が53.9%、次いで「窓口が混乱するから」35.2%、「医療を商品に見立てた奇異な制度だから」23.0%となった。一方、患者で「希望者だけで十分」とした理由は、「紙の無駄」が56.1%で最も多く、「費用明細がわかり明瞭になってよい」31.9%、「不正請求の防止になる」28.6%が続いた。同じ「希望者のみの発行で十分」との評価でも、医師が否定的な理由で選んでいるのに対し、患者の中には明細書を肯定的に捉えた上で判断している声も一定あることが分かった。

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【結 論】

 明細書発行義務化制度の評価については、医師は「希望者のみに発行する制度で十分」が6割、「必要ない制度」が1割となり、その多くが「紙の無駄」と認識していることが分かった。

 一方、患者は5割が希望した場合のみ発行する制度でよいとし、4割が発行義務化制度を「良い」と評価した。全体の6割が明細書を「費用明細が明瞭になる」と捉えており、明細書を実際に見た上で「毎回欲しい」という人は4割いた。

 これらを合わせると、医療機関側には患者の希望に応じ明細書を発行することが求められるが、毎回の発行を義務づける必要性は疑問視される。また、患者の4割が明細書は不正請求の防止になる、2割が薬害・医療事故の予防になると答えるなど、医師と患者の理解、考え方にも差が見られた。双方の理解の乖離は窓口での混乱などにも繋がるため、これらの解消は今後の課題であろう。

 なお、当会は2010年3月にも今回の調査同様㈱マクロミルに依頼し、患者の窓口負担に関する意識調査を行った。この時の調査と比べ、今回の調査では患者の年収200万円未満の割合が世帯年収は1.6ポイント(6.3%→7.9%)、個人年収は1.2ポイント(39.1%→40.3%)増えた。これは収入の減収が進んでいると考えられ、政府による更なる所得再分配の方策が望まれる。