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2013/4/8 政策部長談話「保険商品の『現物給付化』は金融審部会で『一致』はしていない 質の担保、期待との落差に懸念、異論続出が事実 金融庁の計略を指弾する」

保険商品の「現物給付化」は金融審部会で「一致」はしていない

質の担保、期待との落差に懸念、異論続出が事実 金融庁の計略を指弾する

神奈川県保険医協会

政策部長 桑島 政臣


 不思議である。4月5日、保険商品に関し「現物給付 事実上容認 金融審部会 生保から介護費」(毎日新聞)など各紙ならびにNHK、専門紙が同趣旨の報道をした。しかし、前日の金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」(保険商品WG)の議論では、この新たな商品の認可・販売に関し「一致」などみていない。サービスの質の担保、広告による期待との落差、苦情の処理、トラブルの多発など、懸念や異論が続出。明確な対応策や解消策なども示されず、この議論は終えている。現物給付商品は、医療に適応されると米国型の保険会社運営の「健康保険」の誕生となり、公的医療保険の給付範囲縮小や競合、浸食などで空洞化、形骸化を招き、貧富による医療格差を生む。われわれは一貫してこの策動に反対している。事実と違うこの一連の報道は金融庁幹部の計略である。懸念、異論を封殺する金融庁の姿勢をわれわれは厳しく指弾する。

 現在、保険会社が契約者に物・サービスを提供する「現物給付」は禁じられている。この代替として、保険金を契約者ではなく介護などのサービスを提供する事業者に支払うことを可能とする「直接支払いサービス」(=保険商品の現物給付化)が、生保業界から昨年6月に「保険商品WG」に提案され議論が重ねられてきた。これは、法律改定を要しない「裏ワザ」であり、過去に法律改定を企図し失敗した経験を踏まえたものである。

 4月4日の保険商品WGでこの新たな保険商品が議題となるのは実に5か月ぶりであり、しかも6月発表の報告書作成に向けた「とりまとめ」の会議であった。議論では、商品認可を前提とした金融庁のまとめた論点整理に対し、保険会社が提携する事業者のサービスの質の担保、提携事業者の選定や監督の責任の所在、広告内容による期待と給付内容との落差、サービス内容への苦情の処理対応への懸念をはじめ、保険金支払いの生命保険商品でさえ苦情が大量にあるなか未知の分野でのリスクは更に大きいとの異論がだされている。また、インフレや事業者の倒産などによる将来の給付の不安定さ、契約者の指図で事後に事業者に保険金を払うのとは違い提携事業者のサービスが広告ポイントとなることへの不安も指摘され、この商品はサービス提供ではなく、あくまで保険金の代理受領の範囲でしかないことを確認すべきとの留保さえ出されている。

 奇しくも、議論の最中、経団連の委員より、医療はこの商品の対象かと出され、保険企画室長よりあらゆるサービスが対象であり否定されていない、今後検討課題となるとの説明さえなされている。

 それもそのはずである。そもそもWGの第1回目で生保業界よりこの商品に関し、「保険会社が、例えば、医療機関に対して、医療費の自己負担分を直接お支払いし、その残額分をお客様にお支払いするというスキームで考えております。そういったことが可能であれば、お客様、医療機関、保険会社にとってもメリットがあると考えております。」「現行法制上の問題点の有無等につき、ぜひご検討いただきたい」と提案していたのである。今回、金融庁は、「現行の法体系の下でも実現可能」、とお墨付きを与え、現物給付で整理するよりこの直接支払い(=保険商品の現物給付化)で整理したほうがよいとさえしている。

 金融庁幹部が、WGを傍聴していない記者に概況説明をし、記事になった例を当会は確認しており、事実を歪曲した作為がみてとれる。揉めにもめた不妊治療の保険商品は見送りで落着したのに、再度議題にあげると書かせている。懸案が多々あるこの保険商品は今後、議題にあがらない可能性が高い。5日の報道に関する当会の照会に対し、金融庁は、事実や説明趣旨を超えた記事もままあり、4月は記者の担当異動もあり理解が不十分なこともあると、うそぶき、とぼけている。

 事は重大である。この間の報道等を踏まえれば2014年度認可で業界は動いている。過日のWGで保険会社による提携事業者の「選定基準」、「サービス内容」も議論されている。現物給付化した保険商品の契約を通じた医療機関の選別・囲い込みは射程にはいっている。当座の患者負担金の補填、キャッシュレスの負担ゼロは、いずれ医療内容に応じた商品開発へと行きつく。それは公的医療保険がカバーしない、10割負担の自由診療部分を対象とする。介護保険型の混合診療が全面的に合法化されれば、この民間版「健康保険」が花開くことになる。

 われわれは、保険商品の現物給付化に断固反対するとともに、国民を愚弄する強引な金融庁の対応を強く批判し、猛省を求める。

2013年4月8日

 

保険商品の「現物給付化」は金融審部会で「一致」はしていない

質の担保、期待との落差に懸念、異論続出が事実 金融庁の計略を指弾する

神奈川県保険医協会

政策部長 桑島 政臣


 不思議である。4月5日、保険商品に関し「現物給付 事実上容認 金融審部会 生保から介護費」(毎日新聞)など各紙ならびにNHK、専門紙が同趣旨の報道をした。しかし、前日の金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」(保険商品WG)の議論では、この新たな商品の認可・販売に関し「一致」などみていない。サービスの質の担保、広告による期待との落差、苦情の処理、トラブルの多発など、懸念や異論が続出。明確な対応策や解消策なども示されず、この議論は終えている。現物給付商品は、医療に適応されると米国型の保険会社運営の「健康保険」の誕生となり、公的医療保険の給付範囲縮小や競合、浸食などで空洞化、形骸化を招き、貧富による医療格差を生む。われわれは一貫してこの策動に反対している。事実と違うこの一連の報道は金融庁幹部の計略である。懸念、異論を封殺する金融庁の姿勢をわれわれは厳しく指弾する。

 現在、保険会社が契約者に物・サービスを提供する「現物給付」は禁じられている。この代替として、保険金を契約者ではなく介護などのサービスを提供する事業者に支払うことを可能とする「直接支払いサービス」(=保険商品の現物給付化)が、生保業界から昨年6月に「保険商品WG」に提案され議論が重ねられてきた。これは、法律改定を要しない「裏ワザ」であり、過去に法律改定を企図し失敗した経験を踏まえたものである。

 4月4日の保険商品WGでこの新たな保険商品が議題となるのは実に5か月ぶりであり、しかも6月発表の報告書作成に向けた「とりまとめ」の会議であった。議論では、商品認可を前提とした金融庁のまとめた論点整理に対し、保険会社が提携する事業者のサービスの質の担保、提携事業者の選定や監督の責任の所在、広告内容による期待と給付内容との落差、サービス内容への苦情の処理対応への懸念をはじめ、保険金支払いの生命保険商品でさえ苦情が大量にあるなか未知の分野でのリスクは更に大きいとの異論がだされている。また、インフレや事業者の倒産などによる将来の給付の不安定さ、契約者の指図で事後に事業者に保険金を払うのとは違い提携事業者のサービスが広告ポイントとなることへの不安も指摘され、この商品はサービス提供ではなく、あくまで保険金の代理受領の範囲でしかないことを確認すべきとの留保さえ出されている。

 奇しくも、議論の最中、経団連の委員より、医療はこの商品の対象かと出され、保険企画室長よりあらゆるサービスが対象であり否定されていない、今後検討課題となるとの説明さえなされている。

 それもそのはずである。そもそもWGの第1回目で生保業界よりこの商品に関し、「保険会社が、例えば、医療機関に対して、医療費の自己負担分を直接お支払いし、その残額分をお客様にお支払いするというスキームで考えております。そういったことが可能であれば、お客様、医療機関、保険会社にとってもメリットがあると考えております。」「現行法制上の問題点の有無等につき、ぜひご検討いただきたい」と提案していたのである。今回、金融庁は、「現行の法体系の下でも実現可能」、とお墨付きを与え、現物給付で整理するよりこの直接支払い(=保険商品の現物給付化)で整理したほうがよいとさえしている。

 金融庁幹部が、WGを傍聴していない記者に概況説明をし、記事になった例を当会は確認しており、事実を歪曲した作為がみてとれる。揉めにもめた不妊治療の保険商品は見送りで落着したのに、再度議題にあげると書かせている。懸案が多々あるこの保険商品は今後、議題にあがらない可能性が高い。5日の報道に関する当会の照会に対し、金融庁は、事実や説明趣旨を超えた記事もままあり、4月は記者の担当異動もあり理解が不十分なこともあると、うそぶき、とぼけている。

 事は重大である。この間の報道等を踏まえれば2014年度認可で業界は動いている。過日のWGで保険会社による提携事業者の「選定基準」、「サービス内容」も議論されている。現物給付化した保険商品の契約を通じた医療機関の選別・囲い込みは射程にはいっている。当座の患者負担金の補填、キャッシュレスの負担ゼロは、いずれ医療内容に応じた商品開発へと行きつく。それは公的医療保険がカバーしない、10割負担の自由診療部分を対象とする。介護保険型の混合診療が全面的に合法化されれば、この民間版「健康保険」が花開くことになる。

 われわれは、保険商品の現物給付化に断固反対するとともに、国民を愚弄する強引な金融庁の対応を強く批判し、猛省を求める。

2013年4月8日