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2006/7/4 医療運動部会長談話「薬害C型肝炎患者の一刻も早い救済制度創設を強く要望する」

薬害C型肝炎患者の

一刻も早い救済制度創設を強く要望する

神奈川県保険医協会

医療運動部会長  池川 明


 血液製剤「フィブリノゲン」による薬害C型肝炎訴訟は、国と製薬企業の責任を一部認める大阪地裁判決が下されていたが、6月28日、国はこれを不服として控訴した。また原告団は、判決で1987年4月以前の国の責任などを認めず、原告によって判断が分かれたことを不服として、7月4日に控訴した。この控訴は、国にとっては「責任」と「補償」を巡っての勝ち負け問題になっており、原告にとっては「全員の救済」が焦点となっている。今後、控訴により時間が費やされていくことになるが、被害者に残された時間は確実に少なくなっていく。われわれは、被害者救済が何よりも急がれるべきであり、責任問題とは別次元で一刻も早い救済制度の確立を国・製薬メーカーに強く要望するものである。

 現在、国が承認した医薬品による被害者の補償は、医療用医薬品であれ大衆薬であれ、「医薬品副作用被害救済制度」で対応されることになっている。この補償財源は100%製薬企業の負担であり、国が事務費を拠出する形となっている。しかし、血液製剤などの生物由来製剤の健康被害については、これとは別立てで、生物由来製品感染等被害救済制度で対応することになっているが、制度創設がなされたのは04年4月1日である。そのため、制度創設以前の被害については対象にしておらず救済策がないのが現実である。

 問題のフィブリノゲンは旧ミドリ十字(現・三菱ウェルファーマ)の製造によるもので1964年に国が非加熱製造承認をした。C型肝炎は1974年に存在が判明、77年には米国でフィブリノゲンの製造承認を取り消している。この承認取り消しは、日本国内でも79年には明らかになっているが、87年の青森県での肝炎集団感染による旧ミドリ十字の自主回収までは積極的な対応はなされていない。しかも76年の再評価対象からの除外や、84年の不十分な再評価、87年販売開始の加熱製剤の杜撰な承認審査など、国は問題のある対応を繰り返し、感染被害者への対策も後手を踏んでいる。米国が90年代末から輸血経験者に肝炎検査を呼びかけたのに対し、日本は患者団体の働きかけにも応じず、潜在的感染者への情報提供として2004年になってはじめてフィブリノゲン納入の可能性のある6916医療機関を公表したに過ぎない。それも00年の血液製剤による肝炎感染報道と01年の情報公開審査に押されての話である。

 公表された医療機関の製剤納入期間は80年からとなっており、潜在的感染の危険性を国は認めている。よって、われわれは現行の生物由来製品感染等被害救済制度の対象を少なくとも80年投与時からと、早急に拡大するよう法改正すべきであると考える。また、その際、カルテの保存義務が5年間であるため、自己申告を基本に据え、証明書類は住民票など医療機関と関係性(診療圏)を示す書類の補完的補足にあくまでも留め、救済優先を根底におくべきである。補償額が巨額との観測がなされているが現三菱ウェルファーマは経常利益率15%と経営状態は極めて良好であり、長期償還計画での負担は可能である。

 なお、医療事故、健康被害は医療には必ず起こりうるものである。裁判による責任の明確化と補償の枠組みの設定のプロセスではなく、フランスの無過失責任制度や、スウェーデンの患者保険制度に学び、被害者救済の包括的な仕組みを早急に整備すべきである。そのための財源は国、製薬・医療機器メーカーにとどまらず、医療保険からの一定額の拠出も検討に値する。成立した医療改革法は、これに応えるものでなく残念である。

 地裁判決の後、小泉首相も救済策に言及している。原告も含め、一刻も早い、被害者を全員救済する制度の確立を重ねて要望するものである。

2006年7月4日

 

薬害C型肝炎患者の

一刻も早い救済制度創設を強く要望する

神奈川県保険医協会

医療運動部会長  池川 明


 血液製剤「フィブリノゲン」による薬害C型肝炎訴訟は、国と製薬企業の責任を一部認める大阪地裁判決が下されていたが、6月28日、国はこれを不服として控訴した。また原告団は、判決で1987年4月以前の国の責任などを認めず、原告によって判断が分かれたことを不服として、7月4日に控訴した。この控訴は、国にとっては「責任」と「補償」を巡っての勝ち負け問題になっており、原告にとっては「全員の救済」が焦点となっている。今後、控訴により時間が費やされていくことになるが、被害者に残された時間は確実に少なくなっていく。われわれは、被害者救済が何よりも急がれるべきであり、責任問題とは別次元で一刻も早い救済制度の確立を国・製薬メーカーに強く要望するものである。

 現在、国が承認した医薬品による被害者の補償は、医療用医薬品であれ大衆薬であれ、「医薬品副作用被害救済制度」で対応されることになっている。この補償財源は100%製薬企業の負担であり、国が事務費を拠出する形となっている。しかし、血液製剤などの生物由来製剤の健康被害については、これとは別立てで、生物由来製品感染等被害救済制度で対応することになっているが、制度創設がなされたのは04年4月1日である。そのため、制度創設以前の被害については対象にしておらず救済策がないのが現実である。

 問題のフィブリノゲンは旧ミドリ十字(現・三菱ウェルファーマ)の製造によるもので1964年に国が非加熱製造承認をした。C型肝炎は1974年に存在が判明、77年には米国でフィブリノゲンの製造承認を取り消している。この承認取り消しは、日本国内でも79年には明らかになっているが、87年の青森県での肝炎集団感染による旧ミドリ十字の自主回収までは積極的な対応はなされていない。しかも76年の再評価対象からの除外や、84年の不十分な再評価、87年販売開始の加熱製剤の杜撰な承認審査など、国は問題のある対応を繰り返し、感染被害者への対策も後手を踏んでいる。米国が90年代末から輸血経験者に肝炎検査を呼びかけたのに対し、日本は患者団体の働きかけにも応じず、潜在的感染者への情報提供として2004年になってはじめてフィブリノゲン納入の可能性のある6916医療機関を公表したに過ぎない。それも00年の血液製剤による肝炎感染報道と01年の情報公開審査に押されての話である。

 公表された医療機関の製剤納入期間は80年からとなっており、潜在的感染の危険性を国は認めている。よって、われわれは現行の生物由来製品感染等被害救済制度の対象を少なくとも80年投与時からと、早急に拡大するよう法改正すべきであると考える。また、その際、カルテの保存義務が5年間であるため、自己申告を基本に据え、証明書類は住民票など医療機関と関係性(診療圏)を示す書類の補完的補足にあくまでも留め、救済優先を根底におくべきである。補償額が巨額との観測がなされているが現三菱ウェルファーマは経常利益率15%と経営状態は極めて良好であり、長期償還計画での負担は可能である。

 なお、医療事故、健康被害は医療には必ず起こりうるものである。裁判による責任の明確化と補償の枠組みの設定のプロセスではなく、フランスの無過失責任制度や、スウェーデンの患者保険制度に学び、被害者救済の包括的な仕組みを早急に整備すべきである。そのための財源は国、製薬・医療機器メーカーにとどまらず、医療保険からの一定額の拠出も検討に値する。成立した医療改革法は、これに応えるものでなく残念である。

 地裁判決の後、小泉首相も救済策に言及している。原告も含め、一刻も早い、被害者を全員救済する制度の確立を重ねて要望するものである。

2006年7月4日