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2010/1/15 保険診療対策部長談話「後発医薬品使用は医師の裁量に委ねるべき」

後発医薬品使用は

医師の裁量に委ねるべき

神奈川県保険医協会

保険診療対策部長  入澤 彰仁


 中医協ではこの間、後発医薬品の使用促進を更に強化するため、療養担当規則の改定が議論されている。これまでも後発医薬品の使用促進策として、08年4月に療養担当規則が改定され、後発医薬品使用の努力義務規定が盛り込まれた。さらには後発医薬品を標準とした処方せん様式への変更を実施。昨年7月には、個別指導等において後発医薬品の使用促進の指導を強化するよう通知が出された。

 しかし実際の医療現場では、後発医薬品の使用は医師が患者の疾患や個別性を判断し、また信頼できる後発医薬品を厳選しているのが現状である。よって当会保険診療対策部は、後発医薬品の使用は医師の裁量に委ねるべきであって、後発医薬品使用の努力義務を一律に規定した療養担当規則を撤回するよう強く求めるものである。

 

 後発医薬品は、先発医薬品と同一の有効成分を同一量含み、治療学的に同等とされる。しかし、有効成分は同じでも製造方法が異なったり、先発医薬品とは異なる添加物が使用される場合もある。よって、後発医薬品は必ずしも先発医薬品と同等の「効能・効果」が期待できないと指摘する医師が多い。

 実際に、当会が昨年11月に実施した後発医薬品使用に関するアンケートでは、後発医薬品を「処方したことがある」とする医師は全体の95%であった。そのうち、後発医薬品と先発医薬品を比較した場合、「先発医薬品と同等の効能・効果が得られているか不安」(80.7%)、「先発医薬品と異なる副作用が起こらないか不安」(55.9%)と、後発医薬品の品質に多くの不安の声が挙がった。同時に、後発医薬品の使用傾向を分析した結果、患者からの後発医薬品の処方要望に応じつつ、患者の病態等で使い分ける。さらには信頼できる薬剤を厳選して処方している等の実態が分かった。要するに医師は、後発医薬品を一様に信頼していない。医師は実際に後発医薬品を使用した上で、先発医薬品と遜色ないと判断した場合に使用しているのである。

 

 さらに医師が後発医薬品を使用する際の問題が2点ある。1点目は、一つの先発医薬品に対して、複数の製薬会社が後発医薬品を製造している。よって、同じ後発医薬品の中でも品質の良し悪しが存在することである。2点目は、先発医薬品と後発医薬品で「効能・効果」が異なる場合がある。これを理由に、調剤薬局で先発医薬品と「効能・効果」が異なる後発医薬品に変更され、医療機関が薬剤の査定を受けることである。厚労省は、医師が「効能・効果」の異なる後発医薬品を把握した上で使用すべきとしているが、その数は膨大である。実際に全てを把握した上で使用するのは不可能といえる。

 

 以上のように、医師が後発医薬品を安心して使用できる状況にないのである。厚労省がまず実施すべきことは、療養担当規則で後発医薬品使用の努力義務を規定する前に、後発医薬品の承認基準等を見直し、真に先発医薬品と後発医薬品の「効能・効果」等が同等であると証明するのが先決である。また、先発医薬品と「効能・効果」が異なる問題等、改善すべき課題も多い。

 医療費削減に主眼を置いた厚労省の後発医薬品の使用促進は、医師と患者双方にとって利益とならない。療養担当規則で後発医薬品使用を努力義務規定していることは、これに違反した場合は個別指導の対象にもなり得るのである。

 医療現場では医師が患者の疾患や個別性を判断し、また信頼できる後発医薬品を厳選して使用している現状を尊重し、療養担当規則における後発医薬品使用の努力義務規定を撤回するよう、厚労省に強く望む。 

2010年1月15

 

後発医薬品使用は

医師の裁量に委ねるべき

神奈川県保険医協会

保険診療対策部長  入澤 彰仁


 中医協ではこの間、後発医薬品の使用促進を更に強化するため、療養担当規則の改定が議論されている。これまでも後発医薬品の使用促進策として、08年4月に療養担当規則が改定され、後発医薬品使用の努力義務規定が盛り込まれた。さらには後発医薬品を標準とした処方せん様式への変更を実施。昨年7月には、個別指導等において後発医薬品の使用促進の指導を強化するよう通知が出された。

 しかし実際の医療現場では、後発医薬品の使用は医師が患者の疾患や個別性を判断し、また信頼できる後発医薬品を厳選しているのが現状である。よって当会保険診療対策部は、後発医薬品の使用は医師の裁量に委ねるべきであって、後発医薬品使用の努力義務を一律に規定した療養担当規則を撤回するよう強く求めるものである。

 

 後発医薬品は、先発医薬品と同一の有効成分を同一量含み、治療学的に同等とされる。しかし、有効成分は同じでも製造方法が異なったり、先発医薬品とは異なる添加物が使用される場合もある。よって、後発医薬品は必ずしも先発医薬品と同等の「効能・効果」が期待できないと指摘する医師が多い。

 実際に、当会が昨年11月に実施した後発医薬品使用に関するアンケートでは、後発医薬品を「処方したことがある」とする医師は全体の95%であった。そのうち、後発医薬品と先発医薬品を比較した場合、「先発医薬品と同等の効能・効果が得られているか不安」(80.7%)、「先発医薬品と異なる副作用が起こらないか不安」(55.9%)と、後発医薬品の品質に多くの不安の声が挙がった。同時に、後発医薬品の使用傾向を分析した結果、患者からの後発医薬品の処方要望に応じつつ、患者の病態等で使い分ける。さらには信頼できる薬剤を厳選して処方している等の実態が分かった。要するに医師は、後発医薬品を一様に信頼していない。医師は実際に後発医薬品を使用した上で、先発医薬品と遜色ないと判断した場合に使用しているのである。

 

 さらに医師が後発医薬品を使用する際の問題が2点ある。1点目は、一つの先発医薬品に対して、複数の製薬会社が後発医薬品を製造している。よって、同じ後発医薬品の中でも品質の良し悪しが存在することである。2点目は、先発医薬品と後発医薬品で「効能・効果」が異なる場合がある。これを理由に、調剤薬局で先発医薬品と「効能・効果」が異なる後発医薬品に変更され、医療機関が薬剤の査定を受けることである。厚労省は、医師が「効能・効果」の異なる後発医薬品を把握した上で使用すべきとしているが、その数は膨大である。実際に全てを把握した上で使用するのは不可能といえる。

 

 以上のように、医師が後発医薬品を安心して使用できる状況にないのである。厚労省がまず実施すべきことは、療養担当規則で後発医薬品使用の努力義務を規定する前に、後発医薬品の承認基準等を見直し、真に先発医薬品と後発医薬品の「効能・効果」等が同等であると証明するのが先決である。また、先発医薬品と「効能・効果」が異なる問題等、改善すべき課題も多い。

 医療費削減に主眼を置いた厚労省の後発医薬品の使用促進は、医師と患者双方にとって利益とならない。療養担当規則で後発医薬品使用を努力義務規定していることは、これに違反した場合は個別指導の対象にもなり得るのである。

 医療現場では医師が患者の疾患や個別性を判断し、また信頼できる後発医薬品を厳選して使用している現状を尊重し、療養担当規則における後発医薬品使用の努力義務規定を撤回するよう、厚労省に強く望む。 

2010年1月15