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2008/1/15 医療運動部会長談話「未承認薬使用の『先進医療』容認は、混合診療の全面実施の布石 危険な大臣合意の撤回を強く求める」

未承認薬使用の「先進医療」容認は、混合診療の全面実施の布石

危険な大臣合意の撤回を強く求める

 

神奈川県保険医協会

医療運動部会長  池川 明


 昨年12月17日、厚労大臣と規制改革担当大臣は、未承認薬などを用いた先進医療と保険診療の併用を認めることを合意した。診療報酬改定率の報道の陰に隠れ注目されていないが、看過できない大問題である。現行の保険外併用療養費の原則、安全性・有効性の前提をないがしろにし、混合診療の全面実施に向けた危険な合意であり、われわれはこの撤回を強く求める。

 

 05年6月に厚労省は、薬事法上未承認の医薬品・医療機器や、薬事法上の適用外使用に該当する医薬品・医療機器が含まれる保険外の先進医療は、保険診療との併用を認めないとする課長通知を出している。

 今回の大臣合意はこの課長通知を撤回し、現在厚労省で検討中の「臨床的な使用確認試験」の枠組みの中で未承認薬などを用いた先進医療を認める、新たなルールを構築するというものだ。

 この「臨床的な使用確認試験」とは本来、旧・高度先進医療と先進医療を06年10月に統合する際に、高度先進医療の一部に薬事法の未承認薬や適用外使用が含まれていたため問題となり、経過措置として考案されたもの。未承認薬使用については(1)薬事法の承認申請か、(2)承認に向けた治験(臨床試験)で対応することとし、(3)適用外使用については「臨床的な使用確認試験」を実施するとしたものだ、08年3月までの経過措置が設けられ現在は「時限的先進医療」として18技術が該当している。

 この経過措置は旧・高度先進医療が、届出で実施できる「先進医療」と異なり、安全性を厳格に審議し個別に大臣承認していた経緯を踏まえた、あくまでも暫定的な特例的措置である。しかも、「臨床的な使用確認試験」は対象を適用外使用に限定して検討がなされてきたものである。

 

 新たなルールの仔細はこれからだが、保険外併用療養費は安全性・有効性が前提であり、未承認薬・未承認医療機器は少なくとも治験実施段階にあることが前提である。今回の合意、特例的措置の転用による未承認薬・未承認医療機器を使用した先進医療の保険外併用療養費の容認は、原則からの逸脱であり、根本的なルール転換となる。

 つまり、安全性・有効性の担保のない医薬品・医療機器が現場に出回ることに国がお墨付きを与えることになる。

 旧・高度先進医療に比べ厳格な審査をしない「先進医療」は05年7月の制度創設以来、未承認や適用外にあたる技術が新規に届けられるケースが目立ち、全て厚労省は却下してきている。

 

 今回の合意は東京地裁での混合診療禁止「根拠なし」判決に乗じた規制改革会議の攻勢に押され譲歩したものであり、「全面解禁実現せず」とのマスコミ報道と内実は違い、確実に危険な歩みを進めているのである。

 この合意は日本医療の分水嶺となる。われわれは合意を撤回し、従来どおり慎重姿勢をとることを強く求めるものである。

2008年1月15日

 

未承認薬使用の「先進医療」容認は、混合診療の全面実施の布石

危険な大臣合意の撤回を強く求める

 

神奈川県保険医協会

医療運動部会長  池川 明


 昨年12月17日、厚労大臣と規制改革担当大臣は、未承認薬などを用いた先進医療と保険診療の併用を認めることを合意した。診療報酬改定率の報道の陰に隠れ注目されていないが、看過できない大問題である。現行の保険外併用療養費の原則、安全性・有効性の前提をないがしろにし、混合診療の全面実施に向けた危険な合意であり、われわれはこの撤回を強く求める。

 

 05年6月に厚労省は、薬事法上未承認の医薬品・医療機器や、薬事法上の適用外使用に該当する医薬品・医療機器が含まれる保険外の先進医療は、保険診療との併用を認めないとする課長通知を出している。

 今回の大臣合意はこの課長通知を撤回し、現在厚労省で検討中の「臨床的な使用確認試験」の枠組みの中で未承認薬などを用いた先進医療を認める、新たなルールを構築するというものだ。

 この「臨床的な使用確認試験」とは本来、旧・高度先進医療と先進医療を06年10月に統合する際に、高度先進医療の一部に薬事法の未承認薬や適用外使用が含まれていたため問題となり、経過措置として考案されたもの。未承認薬使用については(1)薬事法の承認申請か、(2)承認に向けた治験(臨床試験)で対応することとし、(3)適用外使用については「臨床的な使用確認試験」を実施するとしたものだ、08年3月までの経過措置が設けられ現在は「時限的先進医療」として18技術が該当している。

 この経過措置は旧・高度先進医療が、届出で実施できる「先進医療」と異なり、安全性を厳格に審議し個別に大臣承認していた経緯を踏まえた、あくまでも暫定的な特例的措置である。しかも、「臨床的な使用確認試験」は対象を適用外使用に限定して検討がなされてきたものである。

 

 新たなルールの仔細はこれからだが、保険外併用療養費は安全性・有効性が前提であり、未承認薬・未承認医療機器は少なくとも治験実施段階にあることが前提である。今回の合意、特例的措置の転用による未承認薬・未承認医療機器を使用した先進医療の保険外併用療養費の容認は、原則からの逸脱であり、根本的なルール転換となる。

 つまり、安全性・有効性の担保のない医薬品・医療機器が現場に出回ることに国がお墨付きを与えることになる。

 旧・高度先進医療に比べ厳格な審査をしない「先進医療」は05年7月の制度創設以来、未承認や適用外にあたる技術が新規に届けられるケースが目立ち、全て厚労省は却下してきている。

 

 今回の合意は東京地裁での混合診療禁止「根拠なし」判決に乗じた規制改革会議の攻勢に押され譲歩したものであり、「全面解禁実現せず」とのマスコミ報道と内実は違い、確実に危険な歩みを進めているのである。

 この合意は日本医療の分水嶺となる。われわれは合意を撤回し、従来どおり慎重姿勢をとることを強く求めるものである。

2008年1月15日