保険医の生活と権利を守り、国民医療の
向上をめざす

神奈川県保険医協会とは

開業医を中心とする保険医の生活と権利を守り、
国民の健康と医療の向上を目指す

TOP > 神奈川県保険医協会とは > 私たちの考え > 2011/11/8 政策部長談話「医療再生へ、診療報酬の消費税『免税』の早期実現を求める」

2011/11/8 政策部長談話「医療再生へ、診療報酬の消費税『免税』の早期実現を求める」

医療再生へ、

診療報酬の消費税「免税」の早期実現を求める

神奈川県保険医協会

政策部長 桑島 政臣


 20カ国・地域(G20)首脳会議で野田首相は消費税率10%を国際公約とした。財政再建のために税・社会保障一体改革では消費税率20%も射程に上っており既定路線化してきている。過日発表の中医協医療経済実態調査では、第一線医療を担う診療所、歯科診療所の収支差額の極端な落ち込みが判明し、今後、連続倒産の危険すらある。この下で消費税率10%への引き上げは、医薬品、治療材料など医療経営に過重な負担を強いることとなり、地域医療の瓦解、空白を加速させることになる。われわれは矛盾に満ちた、診療報酬の消費税「非課税」を改め、その政策主旨の履行に向け、早期に「免税」とするよう要望する。

 

 消費税は財・サービスの購入にあたり、消費者が負担をし、販売業者が納税をする。ただし、業者は仕入れで負担した消費税を預かった消費税から「控除」をして納める。これが基本の形である。

 

 しかし、分野によって例外が設けられている。それが医療である。実は、医療(保険診療)は保険者が、患者への医療提供の対価を医療機関に支払うのが基本的な仕組みで、その一部を患者が負担することとなっている。この医療の対価、診療報酬への消費税の扱いは次のとおりだ。

 

 医療は法律(医療法7条、13条)で「非営利」とされている。ゆえに医療は消費税の課税対象外とされた。しかし、政策主旨が不徹底な適用となり、診療報酬は消費税「非課税」となっている。「非課税」のため、医療機関が診療の対価、診療報酬を「保険者と患者」に請求する際に、保険者と患者は消費税の負担が「無い」となった。つまり消費税は「考慮外」、課税しないということだ。

 しかし、医療機関は医薬品、治療材料の仕入れで消費税の負担をしており、保険者と患者が消費税法でいう「消費者」でありながらも、保険者と患者の負担が「考慮外」のため医療機関の負担が「控除」できない矛盾を抱えている。これは制度上の欠陥であり、税法の公平を欠いている。

 

 これを解消するには、診療報酬の消費税「免税」へ転換すればよい。つまり、消費税の負担「税率0%」を適用することとなる。これにより保険者と患者の消費税は「0円」となり、医療機関は保険者と患者から預かった消費税0円から、仕入れで負担した消費税を差し引き納入する。実際はマイナスの消費税の納入となるので、還付となる。これは輸出業者で実際に採用されており、その理由は海外での競争条件を同一にするというものである。非営利の医療、社会保障は「商品」ではないとの政策主旨を歪曲させずに、是正するにはこれが最良の方法である。

 

 過日の中医協の医療経済実態調査(H23年度)で判明した数値から逆算すると、「控除不能」な消費税負担は年間で、病院(国公立除く)4,960万円、診療所280万円、歯科診療所102万円であり、 医業収入に占める比率は各々2.1%、2.2%、2.0%となっている。これが税率10%で倍化し、半月分の収入に匹敵する。現在、損益分岐点比率が95%前後(日医調査)の医療機関にとって深刻な負担となる。

 医療は、社会的基盤であり、私的企業と違い、医療機関経営の安定は公共政策として対応すべきである。この「控除不能」な消費税は年間7千億円に上り、理不尽な負担を医療機関が強いられてきた。

 医療崩壊を防ぎ、医療再生に舵を切る橋頭堡を築くため、診療報酬への消費税「免税」の転換に関し早期決断を強く要望する。

2011年11月8日

 

医療再生へ、

診療報酬の消費税「免税」の早期実現を求める

神奈川県保険医協会

政策部長 桑島 政臣


 20カ国・地域(G20)首脳会議で野田首相は消費税率10%を国際公約とした。財政再建のために税・社会保障一体改革では消費税率20%も射程に上っており既定路線化してきている。過日発表の中医協医療経済実態調査では、第一線医療を担う診療所、歯科診療所の収支差額の極端な落ち込みが判明し、今後、連続倒産の危険すらある。この下で消費税率10%への引き上げは、医薬品、治療材料など医療経営に過重な負担を強いることとなり、地域医療の瓦解、空白を加速させることになる。われわれは矛盾に満ちた、診療報酬の消費税「非課税」を改め、その政策主旨の履行に向け、早期に「免税」とするよう要望する。

 

 消費税は財・サービスの購入にあたり、消費者が負担をし、販売業者が納税をする。ただし、業者は仕入れで負担した消費税を預かった消費税から「控除」をして納める。これが基本の形である。

 

 しかし、分野によって例外が設けられている。それが医療である。実は、医療(保険診療)は保険者が、患者への医療提供の対価を医療機関に支払うのが基本的な仕組みで、その一部を患者が負担することとなっている。この医療の対価、診療報酬への消費税の扱いは次のとおりだ。

 

 医療は法律(医療法7条、13条)で「非営利」とされている。ゆえに医療は消費税の課税対象外とされた。しかし、政策主旨が不徹底な適用となり、診療報酬は消費税「非課税」となっている。「非課税」のため、医療機関が診療の対価、診療報酬を「保険者と患者」に請求する際に、保険者と患者は消費税の負担が「無い」となった。つまり消費税は「考慮外」、課税しないということだ。

 しかし、医療機関は医薬品、治療材料の仕入れで消費税の負担をしており、保険者と患者が消費税法でいう「消費者」でありながらも、保険者と患者の負担が「考慮外」のため医療機関の負担が「控除」できない矛盾を抱えている。これは制度上の欠陥であり、税法の公平を欠いている。

 

 これを解消するには、診療報酬の消費税「免税」へ転換すればよい。つまり、消費税の負担「税率0%」を適用することとなる。これにより保険者と患者の消費税は「0円」となり、医療機関は保険者と患者から預かった消費税0円から、仕入れで負担した消費税を差し引き納入する。実際はマイナスの消費税の納入となるので、還付となる。これは輸出業者で実際に採用されており、その理由は海外での競争条件を同一にするというものである。非営利の医療、社会保障は「商品」ではないとの政策主旨を歪曲させずに、是正するにはこれが最良の方法である。

 

 過日の中医協の医療経済実態調査(H23年度)で判明した数値から逆算すると、「控除不能」な消費税負担は年間で、病院(国公立除く)4,960万円、診療所280万円、歯科診療所102万円であり、 医業収入に占める比率は各々2.1%、2.2%、2.0%となっている。これが税率10%で倍化し、半月分の収入に匹敵する。現在、損益分岐点比率が95%前後(日医調査)の医療機関にとって深刻な負担となる。

 医療は、社会的基盤であり、私的企業と違い、医療機関経営の安定は公共政策として対応すべきである。この「控除不能」な消費税は年間7千億円に上り、理不尽な負担を医療機関が強いられてきた。

 医療崩壊を防ぎ、医療再生に舵を切る橋頭堡を築くため、診療報酬への消費税「免税」の転換に関し早期決断を強く要望する。

2011年11月8日