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2026/6/11 理事会声明「健康保険法関連法案の成立に抗議するとともに『一部保険外療養』の凍結・廃止を求める」

健康保険法関連法案の成立に抗議するとともに

「一部保険外療養」の凍結・廃止を求める

 

 5月29日、参議院本会議において「健康保険法等の一部を改正する法律案」が可決、成立した。患者国民の受療権に関わる複数の重要項目を"束ね法案"として、十分な審議時間を確保せず強行採決したことに憤りを覚える。

 特に、本法案に制度創設が盛り込まれた「一部保険外療養」は、下記のような問題があり断固認められない。

 

保険外併用療養の趣旨を逸脱 大臣裁量での給付・負担の決定は民主主義の否定

 「一部保険外療養」は、保険外併用療養費制度の新たな類型に位置付けられている。

 従来の保険外併用療養は、患者の選択や申出に基づき保険診療と自由診療の併用を限定的に認める仕組みである。一方、「一部保険外療養」は保険給付の費用の一部分を切り出して保険外とし、その費用を患者に実費負担させる、いわば"保険外しの手法"である。従来の保険外併用療養とは質が異なるばかりか、制度本来の趣旨を逸脱している。

 また「一部保険外療養」は、その対象を厚労大臣の裁量で定めることができる規定になっている。公的医療の給付・負担という国民生活に多大な影響のある内容を、国会審議なく大臣裁量で決定できる制度は、国会軽視、民主主義の否定に他ならない。

 

立法目的・立法事実のない法案 本来なら削除が道理

「一部保険外療養」の制度創設を巡り、適用範囲が薬剤(OTC類似薬)のみを対象としているのか、それとも全ての療養の給付を対象としているのか、条文解釈が国会で大きな焦点となった。法案の条文上は全ての療養の給付を対象としていると読めるが、厚労省は「薬剤以外を対象とすることは考えていない」など、曖昧な見解を繰り返した。

 当会をはじめ各地の保険医協会や全国保険医団体連合会の追及もあり、参院の厚労委員会で厚労省は条文が全ての療養の給付を対象とすることを認めつつも、その立法目的や立法事実を説明できなかった。立法事実なしに法律は作れない。これは法治国家における大原則である。大原則を満たさない法案を提出し国会審議に付すなど、国会軽視だと言わざるを得ない。本来なら"その他の療養"を条文から削除すべきであった。

 最終的に、厚労省は「薬剤のみを対象としたもの」と法令解釈を修正する答弁をしたが、条文は修正されないまま可決成立となった。薬剤に限定すると確約するのであれば、該当条文(法第63条第2項第6号)を修正するのが道理である。

 

OTC類似薬は「医療用医薬品」、市販薬での代替は無理筋 5割超の自己負担は異常

 法解釈ではあれ、「一部保険外療養」は薬剤に限定していること、負担増が少額であることを理由に問題を軽視することはできない。

 「OTC類似薬」とは呼称に過ぎず、医師の診察・診断に基づき患者個別の症状にあわせて適切に処方される「医療用医薬品」である。市販薬(OTC)とは含有量や用法、効能等が異なり、代替性はほとんどない。このことは、厚労省も詳細な資料を基に説明している。

 対象となる薬剤(77成分約1,100品目)には、解熱鎮痛剤や抗アレルギー薬など、日常的に処方される薬剤が含まれる。患者が自己判断で市販薬(OTC)の日常使用に切り替えた場合、判断ミスや受診遅れ等により重篤化する危険が高まる。結果、より高い医療費が掛かる。疾病管理、医療経済どちらの観点からもリスクが高い。

 「一部保険外療養」は薬価の25%を保険外とするが、厚労省のサイトではOTC類似薬の解熱鎮痛薬の場合、患者負担は45円から72円になると説明している。負担増は少額で、市販薬(OTC、約500円)よりも安いから問題ないと錯覚させるが、金額の多寡が問題の本質ではない。患者負担割合は単純計算で約5割、保険請求上のルールで計算すれば85円で患者負担割合は6割弱となる。保険料を支払っているにも関わらず5割を超える自己負担水準は異常だ。

 

医療アクセス権の阻害は国の責務放棄

 「一部保険外療養」の運用が始まれば、窓口負担の重さによる受診控えの増加、患者減少による医療機関の経営悪化・閉院につながり、地域医療の崩壊を招く恐れがある。「保険あって医療なし」の社会などあってはならない。

 医療へのアクセス権は憲法25条と13条に基づき保障される重要な基本的人権であり、国は実効的に保障する責務を負っている。国会審議なく大臣裁量だけで医療給付の縮小、患者負担増を可能とする制度の創設・運用は、国の責務放棄と同義である。

 

 以上の点から、「一部保険外療養」は公的医療保険・国民皆保険制度そのものを否定し、根底から崩壊させる制度だと言わざるを得ない。国民生活の厳しさが増す中、医療へのアクセスを阻害させてはならない。

 神奈川県保険医協会は「健康保険法等の一部を改正する法律案」の成立に抗議するとともに、「一部保険外療養」の凍結、廃止を強く求める。

 

2026年6月11日

神奈川県保険医協会

第32期第18回理事会

 

健康保険法関連法案の成立に抗議するとともに

「一部保険外療養」の凍結・廃止を求める

 

 5月29日、参議院本会議において「健康保険法等の一部を改正する法律案」が可決、成立した。患者国民の受療権に関わる複数の重要項目を"束ね法案"として、十分な審議時間を確保せず強行採決したことに憤りを覚える。

 特に、本法案に制度創設が盛り込まれた「一部保険外療養」は、下記のような問題があり断固認められない。

 

保険外併用療養の趣旨を逸脱 大臣裁量での給付・負担の決定は民主主義の否定

 「一部保険外療養」は、保険外併用療養費制度の新たな類型に位置付けられている。

 従来の保険外併用療養は、患者の選択や申出に基づき保険診療と自由診療の併用を限定的に認める仕組みである。一方、「一部保険外療養」は保険給付の費用の一部分を切り出して保険外とし、その費用を患者に実費負担させる、いわば"保険外しの手法"である。従来の保険外併用療養とは質が異なるばかりか、制度本来の趣旨を逸脱している。

 また「一部保険外療養」は、その対象を厚労大臣の裁量で定めることができる規定になっている。公的医療の給付・負担という国民生活に多大な影響のある内容を、国会審議なく大臣裁量で決定できる制度は、国会軽視、民主主義の否定に他ならない。

 

立法目的・立法事実のない法案 本来なら削除が道理

「一部保険外療養」の制度創設を巡り、適用範囲が薬剤(OTC類似薬)のみを対象としているのか、それとも全ての療養の給付を対象としているのか、条文解釈が国会で大きな焦点となった。法案の条文上は全ての療養の給付を対象としていると読めるが、厚労省は「薬剤以外を対象とすることは考えていない」など、曖昧な見解を繰り返した。

 当会をはじめ各地の保険医協会や全国保険医団体連合会の追及もあり、参院の厚労委員会で厚労省は条文が全ての療養の給付を対象とすることを認めつつも、その立法目的や立法事実を説明できなかった。立法事実なしに法律は作れない。これは法治国家における大原則である。大原則を満たさない法案を提出し国会審議に付すなど、国会軽視だと言わざるを得ない。本来なら"その他の療養"を条文から削除すべきであった。

 最終的に、厚労省は「薬剤のみを対象としたもの」と法令解釈を修正する答弁をしたが、条文は修正されないまま可決成立となった。薬剤に限定すると確約するのであれば、該当条文(法第63条第2項第6号)を修正するのが道理である。

 

OTC類似薬は「医療用医薬品」、市販薬での代替は無理筋 5割超の自己負担は異常

 法解釈ではあれ、「一部保険外療養」は薬剤に限定していること、負担増が少額であることを理由に問題を軽視することはできない。

 「OTC類似薬」とは呼称に過ぎず、医師の診察・診断に基づき患者個別の症状にあわせて適切に処方される「医療用医薬品」である。市販薬(OTC)とは含有量や用法、効能等が異なり、代替性はほとんどない。このことは、厚労省も詳細な資料を基に説明している。

 対象となる薬剤(77成分約1,100品目)には、解熱鎮痛剤や抗アレルギー薬など、日常的に処方される薬剤が含まれる。患者が自己判断で市販薬(OTC)の日常使用に切り替えた場合、判断ミスや受診遅れ等により重篤化する危険が高まる。結果、より高い医療費が掛かる。疾病管理、医療経済どちらの観点からもリスクが高い。

 「一部保険外療養」は薬価の25%を保険外とするが、厚労省のサイトではOTC類似薬の解熱鎮痛薬の場合、患者負担は45円から72円になると説明している。負担増は少額で、市販薬(OTC、約500円)よりも安いから問題ないと錯覚させるが、金額の多寡が問題の本質ではない。患者負担割合は単純計算で約5割、保険請求上のルールで計算すれば85円で患者負担割合は6割弱となる。保険料を支払っているにも関わらず5割を超える自己負担水準は異常だ。

 

医療アクセス権の阻害は国の責務放棄

 「一部保険外療養」の運用が始まれば、窓口負担の重さによる受診控えの増加、患者減少による医療機関の経営悪化・閉院につながり、地域医療の崩壊を招く恐れがある。「保険あって医療なし」の社会などあってはならない。

 医療へのアクセス権は憲法25条と13条に基づき保障される重要な基本的人権であり、国は実効的に保障する責務を負っている。国会審議なく大臣裁量だけで医療給付の縮小、患者負担増を可能とする制度の創設・運用は、国の責務放棄と同義である。

 

 以上の点から、「一部保険外療養」は公的医療保険・国民皆保険制度そのものを否定し、根底から崩壊させる制度だと言わざるを得ない。国民生活の厳しさが増す中、医療へのアクセスを阻害させてはならない。

 神奈川県保険医協会は「健康保険法等の一部を改正する法律案」の成立に抗議するとともに、「一部保険外療養」の凍結、廃止を強く求める。

 

2026年6月11日

神奈川県保険医協会

第32期第18回理事会