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2022/5/30 理事長談話 「政府は一般消費伸ばすことで経済循環活性化させる政策を ポストコロナに向けた経済対策」

政府は一般消費伸ばすことで経済循環活性化させる政策を

ポストコロナに向けた経済対策

 

神奈川県保険医協会

理事長  田辺 由紀夫

 

 政府は5月17日、一般会計の歳出総額を2兆7009億円とする補正予算案を閣議決定した。政府は2022年度予算の予備費、5兆5,000億円をコロナ対策や景気対策に充当していく予定だったが、公明党等の要望を受け入れ、参院選前に補正予算を成立させる方向に舵を切った。

 その中身を見ると4月28日に緊急経済対策で先行支出した22年度予算の予備費を、「予期せぬ事態への備え」として埋め合わせるため、1兆5,200億円を積んだ。予備費を補充するための補正予算案の編成は異例といわれている。しかも穴埋めに使う予備費の内訳は、一般予備費が4,000億円、「新型コロナ・原油価格・物価高騰対策予備費」が1兆1,200億円となった。新型コロナ対策予備費の名称を変更し、原油価格と物価の高騰対策にも使途を広げたのだ。

 総務省は4月の全国消費者物価指数について前年同月比で2.1%上昇と発表。生活必需品に特化した「基礎的支出」は同4.8%なっており低所得者層を中心に国民へ影響が出始めているため、物価対策は緊急の課題である。

 政府の緊急経済対策は6.2兆円。そのうち原油価格高騰対策に1兆1,739億円を充てる。野村総研の試算によれば、原油価格高騰対策による景気浮遊効果は1年間のGDPの累積効果は0.02から0.04%しかない。これはガソリン価格の影響が一般消費の中で占める割合が低いためとされている。

 日本経済の6割は一般消費が支えているため、一般消費を如何に伸ばすかが経済循環好転へのカギといえる。

 その意味では、一般家庭の可処分所得を継続的に増やす仕組みが重要だ。定額給付金等はないよりましだが、一度きりでは消費マインドは上向かないし、将来を案じて貯蓄に回る。一番効果的なのは賃金の引き上げである。そのため最低賃金の引き上げや企業が内部留保を増やすのではなく賃金引き上げに誘導する税制の構築などが重要といえよう。あわせて、先行きが見通せない不安から貯蓄に走るのであれば、その不安を払拭できる社会保障の構築がポイントとなる。後期高齢者医療の2割化導入などが予定されれば、高齢者の財布のひもは余計に固く締まることになる。

 また、消費税は、物価を引き上げる性格を持つ。単純に言えば10%なら1割の物価上昇だ。その意味では一時的に消費税率を引き下げるなどの対応も検討すべきだ。

 いずれにしてもコロナによる打撃を受けた国民に対し、ウクライナ問題を引き金とする物価上昇はさらなる重荷となる。国による大規模な財政支出による経済対策は喫緊の課題だ。それも一般消費を拡大するための具体的で実効性のある施策が重要と強く訴えたい。

2022年5月30日

 

政府は一般消費伸ばすことで経済循環活性化させる政策を

ポストコロナに向けた経済対策

 

神奈川県保険医協会

理事長  田辺 由紀夫

 

 政府は5月17日、一般会計の歳出総額を2兆7009億円とする補正予算案を閣議決定した。政府は2022年度予算の予備費、5兆5,000億円をコロナ対策や景気対策に充当していく予定だったが、公明党等の要望を受け入れ、参院選前に補正予算を成立させる方向に舵を切った。

 その中身を見ると4月28日に緊急経済対策で先行支出した22年度予算の予備費を、「予期せぬ事態への備え」として埋め合わせるため、1兆5,200億円を積んだ。予備費を補充するための補正予算案の編成は異例といわれている。しかも穴埋めに使う予備費の内訳は、一般予備費が4,000億円、「新型コロナ・原油価格・物価高騰対策予備費」が1兆1,200億円となった。新型コロナ対策予備費の名称を変更し、原油価格と物価の高騰対策にも使途を広げたのだ。

 総務省は4月の全国消費者物価指数について前年同月比で2.1%上昇と発表。生活必需品に特化した「基礎的支出」は同4.8%なっており低所得者層を中心に国民へ影響が出始めているため、物価対策は緊急の課題である。

 政府の緊急経済対策は6.2兆円。そのうち原油価格高騰対策に1兆1,739億円を充てる。野村総研の試算によれば、原油価格高騰対策による景気浮遊効果は1年間のGDPの累積効果は0.02から0.04%しかない。これはガソリン価格の影響が一般消費の中で占める割合が低いためとされている。

 日本経済の6割は一般消費が支えているため、一般消費を如何に伸ばすかが経済循環好転へのカギといえる。

 その意味では、一般家庭の可処分所得を継続的に増やす仕組みが重要だ。定額給付金等はないよりましだが、一度きりでは消費マインドは上向かないし、将来を案じて貯蓄に回る。一番効果的なのは賃金の引き上げである。そのため最低賃金の引き上げや企業が内部留保を増やすのではなく賃金引き上げに誘導する税制の構築などが重要といえよう。あわせて、先行きが見通せない不安から貯蓄に走るのであれば、その不安を払拭できる社会保障の構築がポイントとなる。後期高齢者医療の2割化導入などが予定されれば、高齢者の財布のひもは余計に固く締まることになる。

 また、消費税は、物価を引き上げる性格を持つ。単純に言えば10%なら1割の物価上昇だ。その意味では一時的に消費税率を引き下げるなどの対応も検討すべきだ。

 いずれにしてもコロナによる打撃を受けた国民に対し、ウクライナ問題を引き金とする物価上昇はさらなる重荷となる。国による大規模な財政支出による経済対策は喫緊の課題だ。それも一般消費を拡大するための具体的で実効性のある施策が重要と強く訴えたい。

2022年5月30日