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2022/2/4 地域医療対策部長談話 「特養のロング・ショートステイでも患者本位の医療提供が可能な『仕組み』を求める」

特養のロング・ショートステイでも患者本位の

医療提供が可能な「仕組み」を求める

 

神奈川県保険医協会

地域医療対策部長  岡田 孝弘

 


 

実態に制度がフィットしていない

本質より「建前」重視に翻弄される介護現場の「医療」

 地域包括ケアが2003年に提唱されて久しい。2013年に法律で定義された以降、病院も含め医療や介護など多職種連携による自主的な「ネットワーク」の構築が推進されている。この地域包括ケアは、「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」である。その目的は、「居宅生活の限界点を高める」こととなっている。

 そのため医療機関もその一翼を日々担っている。が、居宅の範疇となる自宅以外の入居施設の在宅医療で、様々な制度矛盾や隘路に直面し、医療が十分に提供できず、患者本位の形骸化を痛感している。われわれは、このことを問題提起し、診療報酬改定等での速やかな解決を関係方面に求める。

 

ロング・ショートステイにみる、医療現場不都合

 介護では特別養護老人ホーム等(「特養」)でショートステイ(短期入所生活介護)事業がある。これは短期間入所し、入浴、排泄、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものである。要介護度に応じ、1週間から30日まで連続利用できる日数上限が定められている。

 しかし、現実には介護者の体調不良や、入所待ちの一時利用など、やむを得ない事情で、上限を超えて長期入所する「ロング・ショートステイ」が認められている。ただし、①施設への介護保険からの介護報酬が減額される、②自費利用や自宅介護を1日挟み短期入所の「建前」と整合をつけるなど、不利益や方便を伴う。それに加えて、特養の配置医師と、患者の在宅医との間で、医療提供にあたって矛盾が顕在化し、患者や在宅医の医療に支障を来すことが多々、生起する。

 それは特養の配置医師が、ショートステイも含め入所者すべての健康管理を担う法的な建付けのため、在宅医によるショートステイ、ロング・ショートステイとなった患者への定期的な訪問診療は診療報酬の算定が不可となり、事実上、医療提供が寸断されてしまうことである。短期間の入所の場合に保険審査を通過し事実上、認められる場合もあるが、長期間では訪問診療や投薬は認められていない。降圧剤や脂質異常症の治療薬など1カ月単位の処方は、「定期的な診療」として認められていない。

 よって、在宅医は無報酬の「みなし配置医師」という方便で医療提供をするか、ロング・ショートステイにあたり、事前に3カ月処方のような長期処方を行い対応せざるを得ない、矛盾に満ちた現状にある。いずれ別途触れるが、老人保健施設の入所絡みとなると更に在宅医の苦衷は深くなる。施設入所が容易でなく、未だ家族介護が前提の下で、医療現場の努力を無にしない現実的な制度対応にもっと知恵を絞る必要がある。

 

在宅医療の急発展に合わない、頑迷で古色蒼然の「配置医師」論

 この配置医師の医療提供の限度・限界問題は過去に度々国会でも問題にされているが、次官、局長答弁でも役割は「健康管理」と「療養指導」である。いわば「保健室」である。当初、軽度介護や身体的自立者も入所していた老人福祉法の時代から、いまの「要介護3以上」へと入所基準が変転している経緯を考慮すれば、現状の杓子定規的な制度対応は理を欠いている。配置医師の専門外ならば医療提供の依頼は可能とのいまの制度運用も非合理である。

 そもそも、1970年代の特養の出発時点で配置医師の積極的な医療提供は期待されておらず、常勤要件もなく、夕方以降の夜間勤務はない。しかも、その後、90年代の在宅医療の浸透や、ハイテク在宅などの発展で、著しく在宅医療の様相は変貌し、チーム医療や多職種連携が進展している。その中でのショートステイ、ロング・ショートステイであり、その患者への医療提供が問題となっている。

 特養への介護報酬との二重給付が理屈建てされるが、報酬は低く配置医師に期待される医療度は低いままであり、医療保険への請求制約も過去とほぼ同一である。外部からの積極的医療提供を診療報酬で認めていくのは、地域包括ケアの推進の過渡期での現実対応である。

 ロング・ショートステイも関係者の涙ぐましい尽力でできた「現実」を、厚労省が介護報酬で追認し制度化されたのである。柔軟な思考と対応はこれまでも厚労省は行ってきており、その術の発揮を期待したい。

 団塊の世代が75歳以上となる2025年は目前である。問題解決へ関係方面の尽力を切に求める。

2022年2月4日

 

特養のロング・ショートステイでも患者本位の

医療提供が可能な「仕組み」を求める

 

神奈川県保険医協会

地域医療対策部長  岡田 孝弘

 


 

実態に制度がフィットしていない

本質より「建前」重視に翻弄される介護現場の「医療」

 地域包括ケアが2003年に提唱されて久しい。2013年に法律で定義された以降、病院も含め医療や介護など多職種連携による自主的な「ネットワーク」の構築が推進されている。この地域包括ケアは、「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」である。その目的は、「居宅生活の限界点を高める」こととなっている。

 そのため医療機関もその一翼を日々担っている。が、居宅の範疇となる自宅以外の入居施設の在宅医療で、様々な制度矛盾や隘路に直面し、医療が十分に提供できず、患者本位の形骸化を痛感している。われわれは、このことを問題提起し、診療報酬改定等での速やかな解決を関係方面に求める。

 

ロング・ショートステイにみる、医療現場不都合

 介護では特別養護老人ホーム等(「特養」)でショートステイ(短期入所生活介護)事業がある。これは短期間入所し、入浴、排泄、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものである。要介護度に応じ、1週間から30日まで連続利用できる日数上限が定められている。

 しかし、現実には介護者の体調不良や、入所待ちの一時利用など、やむを得ない事情で、上限を超えて長期入所する「ロング・ショートステイ」が認められている。ただし、①施設への介護保険からの介護報酬が減額される、②自費利用や自宅介護を1日挟み短期入所の「建前」と整合をつけるなど、不利益や方便を伴う。それに加えて、特養の配置医師と、患者の在宅医との間で、医療提供にあたって矛盾が顕在化し、患者や在宅医の医療に支障を来すことが多々、生起する。

 それは特養の配置医師が、ショートステイも含め入所者すべての健康管理を担う法的な建付けのため、在宅医によるショートステイ、ロング・ショートステイとなった患者への定期的な訪問診療は診療報酬の算定が不可となり、事実上、医療提供が寸断されてしまうことである。短期間の入所の場合に保険審査を通過し事実上、認められる場合もあるが、長期間では訪問診療や投薬は認められていない。降圧剤や脂質異常症の治療薬など1カ月単位の処方は、「定期的な診療」として認められていない。

 よって、在宅医は無報酬の「みなし配置医師」という方便で医療提供をするか、ロング・ショートステイにあたり、事前に3カ月処方のような長期処方を行い対応せざるを得ない、矛盾に満ちた現状にある。いずれ別途触れるが、老人保健施設の入所絡みとなると更に在宅医の苦衷は深くなる。施設入所が容易でなく、未だ家族介護が前提の下で、医療現場の努力を無にしない現実的な制度対応にもっと知恵を絞る必要がある。

 

在宅医療の急発展に合わない、頑迷で古色蒼然の「配置医師」論

 この配置医師の医療提供の限度・限界問題は過去に度々国会でも問題にされているが、次官、局長答弁でも役割は「健康管理」と「療養指導」である。いわば「保健室」である。当初、軽度介護や身体的自立者も入所していた老人福祉法の時代から、いまの「要介護3以上」へと入所基準が変転している経緯を考慮すれば、現状の杓子定規的な制度対応は理を欠いている。配置医師の専門外ならば医療提供の依頼は可能とのいまの制度運用も非合理である。

 そもそも、1970年代の特養の出発時点で配置医師の積極的な医療提供は期待されておらず、常勤要件もなく、夕方以降の夜間勤務はない。しかも、その後、90年代の在宅医療の浸透や、ハイテク在宅などの発展で、著しく在宅医療の様相は変貌し、チーム医療や多職種連携が進展している。その中でのショートステイ、ロング・ショートステイであり、その患者への医療提供が問題となっている。

 特養への介護報酬との二重給付が理屈建てされるが、報酬は低く配置医師に期待される医療度は低いままであり、医療保険への請求制約も過去とほぼ同一である。外部からの積極的医療提供を診療報酬で認めていくのは、地域包括ケアの推進の過渡期での現実対応である。

 ロング・ショートステイも関係者の涙ぐましい尽力でできた「現実」を、厚労省が介護報酬で追認し制度化されたのである。柔軟な思考と対応はこれまでも厚労省は行ってきており、その術の発揮を期待したい。

 団塊の世代が75歳以上となる2025年は目前である。問題解決へ関係方面の尽力を切に求める。

2022年2月4日