保険医の生活と権利を守り、国民医療の
向上をめざす

神奈川県保険医協会とは

開業医を中心とする保険医の生活と権利を守り、
国民の健康と医療の向上を目指す

TOP > 神奈川県保険医協会とは > 私たちの考え > 2021/12/20 政策部長談話 「不妊治療の保険適用は助成事業『廃止』と表裏一体、『別枠』の話 実質で診療報酬のネット『プラス改定』を求める」

2021/12/20 政策部長談話 「不妊治療の保険適用は助成事業『廃止』と表裏一体、『別枠』の話 実質で診療報酬のネット『プラス改定』を求める」

不妊治療の保険適用は助成事業「廃止」と表裏一体、「別枠」の話

実質で診療報酬のネット「プラス改定」を求める

 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

本体プラス0.5%から0.43%へ後退?!

 時々刻々と、2022年度診療報酬改定を巡る改定率は、一進一退を繰り返し、当初の「本体プラス0.5%」への「上積み」を巡る攻防から、「本体プラス0.3%」程度確保での調整へと後退(12/17)し、昨夕に「本体プラス0.43%」で最終調整(12/19)となっている。当初の「本体プラス0.5%」は看護師の処遇改善分で0.2%程度、不妊治療の保険適用分で0.3%程度とされていた。が、先週末(12/17)に急性期病床再編などの入院・外来医療の効率化で▲0.2%程度の減額調整で「本体0.3%」となった。これが現段階で本体0.43%となった。薬価は▲1.3%と見られ、このままだとネット▲0.87%程度となる。しかも、不妊治療の保険適用分というのは現在の公費の助成事業の廃止と表裏一体である。

 これらは前首相、現首相の政治案件の政策改定であり、医療機関「全体」の経営改善には寄与しない。われわれは、コロナ禍に全ての医療機関が一体で面として地域医療を支えてきたことを踏まえ、これら政治案件は別枠とし、薬価と本体のネットでのプラスとなる診療報酬改定を改めて要望する。

 

不妊治療の保険適用は慎重な制度設計が課題 支援事業は廃止方向で朝三暮四

 12月15日の中医協では日本生殖医学会の生殖医療ガイドラインで「推奨度A及びB」の医療技術、体外受精や顕微授精などを保険適用とした。対象は事実婚を含め43歳未満とし、40歳未満は1子6回まで、43歳未満は1子3回までと大枠を了承した。第三者の生殖補助医療は適用外とし、今後、実施医療機関の施設基準、実績を含めた情報公開のあり方、医療技術の点数設定、先進医療(保険外併用療養)の医療技術の検討が進められる方向だ。医療技術の標準化と利用者の負担軽減の面があるものの、適用外の医療技術の選択肢の狭隘化や未承認薬使用の隘路など、慎重な制度設計が課題となる。

 今回の保険適用は、総じて現在の特定不妊治療支援事業の実施要領を踏襲した内容となっている。この保険適用に伴い、現在の公費助成の支援事業は廃止となる。ただ、現在この事業の対象者で22年度に跨るものは1回分だけ公費助成を予算計上するとなっている。

 現在の支援事業の21年度分の予算は約325億円なので、この国庫分を医療保険に投入すると、医療費ベースで約1,300億円となる。これは改定率で0.3%(1,300億円÷42.2兆円〔20年度概算医療費〕×1.019〔21年度推定医療伸び率1.9%〕)となる。つまり、先週末に騒がれていた0.3%というのは公費助成事業が医療保険にバーターされたに過ぎない。

 

虚飾のプラスは経営に資さない 喉元過ぎれば熱さを忘れる財務省 医療を守るためプラス改定を

 看護師の処遇改善は、コロナ対応の病院看護師を対象に月4,000円の賃上げを見込み、春闘への波及を狙い、来年2月~9月は補助金で対応し、10月以降は診療報酬で半年分組み込むとしている。しかし既に見たように、「効率化」の名の下に急性期病床等の入院・外来の医療費を減額し、看護師処遇に振り向けるコストシフティングでしかない。

 つまり、不妊治療の保険適用も看護師処遇改善の何れも、新規に診療報酬本体に財源を投入したのではない。改定率とは「別枠」である。ここに貫かれている実質は、「自然増」の圧縮、否定である。

 現段階で、不妊治療分を0.2%と下げて報道されているが当初計算は財務省であり、既にみた数字と不整合である。効率化の内容をリフィル処方導入や小児医療見直しと変更し、本体0.43%の「真水分」が0.23%と数字のマジックが報じられるが、不妊治療の0.3%に、薬価財源の10分の1と極一部をあてたにすぎない。本体の実質はプラス0.13%であり、ネットの名目は▲0.87%、実質▲1.17%である。

 医療費が長年にわたり抑制され、今回の医療危機を招いている。このことを財務省が理解できないのであれば、コロナ変異株など新たな危機が襲来した際に、リスクを放置し国民を危険に晒すことへの責任を財務省に取ってもらいたい。緊急支援の轍を踏まない長期の医療体制盤石化が道理である。

 コロナ禍、全ての医療機関が日本の医療を支え健闘してきた。12月14日に田村・前厚労大臣は自民党の社会保障制度調査会医療委員会で医療機関の経営状況について「決して良い状況ではない」とし、大幅なプラス改定が必要と見識を示した。15日には中川・日医会長は「絶対にプラス改定にしなければ医療が壊れる」と会見で訴えた。16日、17日と自民党厚労部会や厚労相経験者の尾辻・田村・加藤の各氏が尽力を重ねている。医療を守るため関係方面の最後の尽力を強く要望する。

2021年12月20日

 

不妊治療の保険適用は助成事業「廃止」と表裏一体、「別枠」の話

実質で診療報酬のネット「プラス改定」を求める

 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

本体プラス0.5%から0.43%へ後退?!

 時々刻々と、2022年度診療報酬改定を巡る改定率は、一進一退を繰り返し、当初の「本体プラス0.5%」への「上積み」を巡る攻防から、「本体プラス0.3%」程度確保での調整へと後退(12/17)し、昨夕に「本体プラス0.43%」で最終調整(12/19)となっている。当初の「本体プラス0.5%」は看護師の処遇改善分で0.2%程度、不妊治療の保険適用分で0.3%程度とされていた。が、先週末(12/17)に急性期病床再編などの入院・外来医療の効率化で▲0.2%程度の減額調整で「本体0.3%」となった。これが現段階で本体0.43%となった。薬価は▲1.3%と見られ、このままだとネット▲0.87%程度となる。しかも、不妊治療の保険適用分というのは現在の公費の助成事業の廃止と表裏一体である。

 これらは前首相、現首相の政治案件の政策改定であり、医療機関「全体」の経営改善には寄与しない。われわれは、コロナ禍に全ての医療機関が一体で面として地域医療を支えてきたことを踏まえ、これら政治案件は別枠とし、薬価と本体のネットでのプラスとなる診療報酬改定を改めて要望する。

 

不妊治療の保険適用は慎重な制度設計が課題 支援事業は廃止方向で朝三暮四

 12月15日の中医協では日本生殖医学会の生殖医療ガイドラインで「推奨度A及びB」の医療技術、体外受精や顕微授精などを保険適用とした。対象は事実婚を含め43歳未満とし、40歳未満は1子6回まで、43歳未満は1子3回までと大枠を了承した。第三者の生殖補助医療は適用外とし、今後、実施医療機関の施設基準、実績を含めた情報公開のあり方、医療技術の点数設定、先進医療(保険外併用療養)の医療技術の検討が進められる方向だ。医療技術の標準化と利用者の負担軽減の面があるものの、適用外の医療技術の選択肢の狭隘化や未承認薬使用の隘路など、慎重な制度設計が課題となる。

 今回の保険適用は、総じて現在の特定不妊治療支援事業の実施要領を踏襲した内容となっている。この保険適用に伴い、現在の公費助成の支援事業は廃止となる。ただ、現在この事業の対象者で22年度に跨るものは1回分だけ公費助成を予算計上するとなっている。

 現在の支援事業の21年度分の予算は約325億円なので、この国庫分を医療保険に投入すると、医療費ベースで約1,300億円となる。これは改定率で0.3%(1,300億円÷42.2兆円〔20年度概算医療費〕×1.019〔21年度推定医療伸び率1.9%〕)となる。つまり、先週末に騒がれていた0.3%というのは公費助成事業が医療保険にバーターされたに過ぎない。

 

虚飾のプラスは経営に資さない 喉元過ぎれば熱さを忘れる財務省 医療を守るためプラス改定を

 看護師の処遇改善は、コロナ対応の病院看護師を対象に月4,000円の賃上げを見込み、春闘への波及を狙い、来年2月~9月は補助金で対応し、10月以降は診療報酬で半年分組み込むとしている。しかし既に見たように、「効率化」の名の下に急性期病床等の入院・外来の医療費を減額し、看護師処遇に振り向けるコストシフティングでしかない。

 つまり、不妊治療の保険適用も看護師処遇改善の何れも、新規に診療報酬本体に財源を投入したのではない。改定率とは「別枠」である。ここに貫かれている実質は、「自然増」の圧縮、否定である。

 現段階で、不妊治療分を0.2%と下げて報道されているが当初計算は財務省であり、既にみた数字と不整合である。効率化の内容をリフィル処方導入や小児医療見直しと変更し、本体0.43%の「真水分」が0.23%と数字のマジックが報じられるが、不妊治療の0.3%に、薬価財源の10分の1と極一部をあてたにすぎない。本体の実質はプラス0.13%であり、ネットの名目は▲0.87%、実質▲1.17%である。

 医療費が長年にわたり抑制され、今回の医療危機を招いている。このことを財務省が理解できないのであれば、コロナ変異株など新たな危機が襲来した際に、リスクを放置し国民を危険に晒すことへの責任を財務省に取ってもらいたい。緊急支援の轍を踏まない長期の医療体制盤石化が道理である。

 コロナ禍、全ての医療機関が日本の医療を支え健闘してきた。12月14日に田村・前厚労大臣は自民党の社会保障制度調査会医療委員会で医療機関の経営状況について「決して良い状況ではない」とし、大幅なプラス改定が必要と見識を示した。15日には中川・日医会長は「絶対にプラス改定にしなければ医療が壊れる」と会見で訴えた。16日、17日と自民党厚労部会や厚労相経験者の尾辻・田村・加藤の各氏が尽力を重ねている。医療を守るため関係方面の最後の尽力を強く要望する。

2021年12月20日