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政策部長談話 「歯科材料・金銀パラジウム合金の価格改定ルールの根本的解決を求める」

歯科材料・金銀パラジウム合金の価格改定ルールの根本的解決を求める

 

神奈川県保険医協会

政策部長 磯崎哲男

 


 

皆保険制度に反する「逆ザヤ」の宿痾(しゅくあ)からの決別を

 歯科治療で使用する金銀パラジウム合金(金パラ)の価格決定ルールの根本的な見直し論議が721日の中医協総会で始まった。過去からの堆積に載った、一昨年、急騰した金パラの大幅な「逆ザヤ」への歯科界の怨嗟の声を背景に、一石を投じた当協会の「金パラ価格改革提言」も奏功し、大きな一歩が踏み出された。われわれはこのことを素直に歓迎する。今後の多角的な議論を期待するとともに、既に提案した「超過価格設定&事後調整方式」を検討材料とするよう望みたい。治療するほど不採算が嵩む「逆ザヤ」は皆保険に反しており、われわれはこの宿痾との決別を図り、根本的なルール改定となることを強く求める。

 

平均的費用の保険償還は材料価格基準の大原則

 皆保険制度下、医療保険で使用する医療材料は、患者の治療の際に「支給に要する平均的な費用の額」が「保険償還」される。これが本来であり、「基準材料価格」の原則として定められている。

 しかし、歯科治療での汎用材料、歯科用貴金属の金パラはこの原則が順守されていない。歯科医療機関の購入価格を保険償還額が下回り、歯科医療機関の「持ち出し」となっている。いわゆる「逆ザヤ」の仕組みである。治療すればするほど歯科医療機関は材料の「赤字」が嵩んでいく。医薬品や他の医療材料ではありえず、医科では前代未聞の、この不合理極まりない状態が、国会で政治問題化して20年来、一向に解決されない。

 市場価格が下降基調の医薬品等と違い、金パラ製品は素材の金やパラジウムが、投機対象や工業用触媒となり国際価格の変動影響を受け、製品価格が上下するため、上昇基調の際に保険償還の公定価格がそれを下回る。ここ3年は上昇の一途であり、根本的な価格改定ルールの見直しは必須である。

 

弥縫策「随時改定」ルールでは矛盾未解決

上昇局面での過去数値の未来適用が根本問題

 現在、2年に1度の通常改定では金パラの市場実勢価格調査をもとに加重平均に補正を加え、公定の基準材料価格を設定し、その後、一定期間ごとに価格の変動幅を判断し「随時改定」となる。一昨年の高騰を踏まえ、6カ月単位の「随時改定Ⅰ」に加え3カ月単位の「随時改定Ⅱ」が導入されたが、貴金属素材の過去実勢値から算出した「理論値」の変動幅が、要件の±5%、±15%を超えない限り改定がなされない。金パラの実勢価格の上昇局面では「逆ザヤ」は放置され、不採算は累積されていく。

 便宜的な理論値は疑似値で実態値ではない。この4月は公定価格と市場実勢価格が▲17%も乖離する「逆ザヤ」だったがルールにより7月の随時改定は見送られている。この10月に随時改定が適用となるが、「随時改定」ルールで定まった価格は、現時点で既に「逆ザヤ」であり、解消には至らない。

 この矛盾の根本理由は、実勢価格の上昇局面で、①過去の一定期間の数値を用い設定した改定価格を数カ月先の未来で適用させることにある。通常・随時の両改定ともである。更に随時改定は、②変動幅が実施「要件」のため矛盾を拡大し、③後追いの弥縫策の限度・限界を露見させる、こととなる。

 

市場実勢価格を上回る「高値」設定スタートが道理

 この矛盾解決へは、金パラの市場実勢価格が上昇基調でも「逆ザヤ」が生じないルールが必須となる。医薬品の薬価は適用時点で市場実勢価格より「高値」設定が標準である。医療機関と卸との価格交渉による経営努力分が経営原資に回ることは常態である。市場実勢価格の下落を踏まえ2年に1度の通常改定で、「薬価」の減額補正の調整がなされる。

 つまり、金パラも市場実勢価格より高値設定のスタートが必須であり、急騰しても吸収可能、維持可能な仕組みが要諦となる。金パラは実質、価格交渉の余地がない製品である。過去実績を踏まえ、通常改定で「逆ザヤ」にならないかなり「高値」水準(通常改定の基準値の1.5倍)に設定し、市場変動を踏まえ減額補正をこまめに行い調整する方法(「超過価格設定&事後調整方式」)は、理に適うと考える。減額補正の「方法論」は叡智の絞りどころとなる。高値での患者負担問題にも工夫が要る。

 

歯科界の強い世論が道開く

後追いの仕組みからの脱却と解決へ

 金パラの価格決定ルールの根本的な見直し議論は、77日の中医協で次期診療報酬改定の「個別事項」の議論テーマに位置付けられたことによる。「個別事項」は、①医薬品の適切な使用の推進、②働き方改革の推進、③歯科用貴金属材料の基準材料価格改定について、④不妊治療の保険適用の4点であり、このうち①②は前回改定の「附帯意見」事項(いわゆる"宿題")であり、④は菅首相案件。宿題になかった③の設定は異例であり、歯科界の世論と運動や、当協会の「金パラ価格改革提言」(3/18)の影響(日経新聞報道、テレビ東京の特集報道等)が反映したと確信している。

 7月21日の中医協総会では「論点」として「歯科用貴金属材料の基準材料価格改定についてどのように考えるか」という根本的な問いかけが提示されている。このことの意味は大きい。つまり今後、「逆ザヤが常に発生しない仕組みはどういうものか」、「過去時点のデータで改定し数カ月先に適用するのは妥当か」などの具体的な論点を立てうる。

 また同日、日本歯科医師会の林正純・常務理事が「後追いの仕組みでは限界があり、抜本的な制度そのものの検討も必要ではないか」、とし、「より現場の実態を反映できる制度設計の構築」への検討を求めた。また、健保連の幸野庄司・理事からも「なんとかならないか」と、理解が示されている。

 金パラの価格改定ルールは不透明感が強く、市場実勢価格と公定価格の乖離率や、随時改定の「理論値」の算出方法などが不明で、疑心暗鬼や不満の温床となってきた。この透明化も不可欠である。

 歯科界の世論と多角的で多様な論点の提示と、中医協の真剣な議論で、抜本的解決を切に期待する。

2021年9月1日

 

<参考>

* 2021.7.21中医協総会・資料より

「個別事項(その1)」 歯科用貴金属材料の基準材料価格改定について

20210901danwa-01.jpg

 

歯科材料・金銀パラジウム合金の価格改定ルールの根本的解決を求める

 

神奈川県保険医協会

政策部長 磯崎哲男

 


 

皆保険制度に反する「逆ザヤ」の宿痾(しゅくあ)からの決別を

 歯科治療で使用する金銀パラジウム合金(金パラ)の価格決定ルールの根本的な見直し論議が721日の中医協総会で始まった。過去からの堆積に載った、一昨年、急騰した金パラの大幅な「逆ザヤ」への歯科界の怨嗟の声を背景に、一石を投じた当協会の「金パラ価格改革提言」も奏功し、大きな一歩が踏み出された。われわれはこのことを素直に歓迎する。今後の多角的な議論を期待するとともに、既に提案した「超過価格設定&事後調整方式」を検討材料とするよう望みたい。治療するほど不採算が嵩む「逆ザヤ」は皆保険に反しており、われわれはこの宿痾との決別を図り、根本的なルール改定となることを強く求める。

 

平均的費用の保険償還は材料価格基準の大原則

 皆保険制度下、医療保険で使用する医療材料は、患者の治療の際に「支給に要する平均的な費用の額」が「保険償還」される。これが本来であり、「基準材料価格」の原則として定められている。

 しかし、歯科治療での汎用材料、歯科用貴金属の金パラはこの原則が順守されていない。歯科医療機関の購入価格を保険償還額が下回り、歯科医療機関の「持ち出し」となっている。いわゆる「逆ザヤ」の仕組みである。治療すればするほど歯科医療機関は材料の「赤字」が嵩んでいく。医薬品や他の医療材料ではありえず、医科では前代未聞の、この不合理極まりない状態が、国会で政治問題化して20年来、一向に解決されない。

 市場価格が下降基調の医薬品等と違い、金パラ製品は素材の金やパラジウムが、投機対象や工業用触媒となり国際価格の変動影響を受け、製品価格が上下するため、上昇基調の際に保険償還の公定価格がそれを下回る。ここ3年は上昇の一途であり、根本的な価格改定ルールの見直しは必須である。

 

弥縫策「随時改定」ルールでは矛盾未解決

上昇局面での過去数値の未来適用が根本問題

 現在、2年に1度の通常改定では金パラの市場実勢価格調査をもとに加重平均に補正を加え、公定の基準材料価格を設定し、その後、一定期間ごとに価格の変動幅を判断し「随時改定」となる。一昨年の高騰を踏まえ、6カ月単位の「随時改定Ⅰ」に加え3カ月単位の「随時改定Ⅱ」が導入されたが、貴金属素材の過去実勢値から算出した「理論値」の変動幅が、要件の±5%、±15%を超えない限り改定がなされない。金パラの実勢価格の上昇局面では「逆ザヤ」は放置され、不採算は累積されていく。

 便宜的な理論値は疑似値で実態値ではない。この4月は公定価格と市場実勢価格が▲17%も乖離する「逆ザヤ」だったがルールにより7月の随時改定は見送られている。この10月に随時改定が適用となるが、「随時改定」ルールで定まった価格は、現時点で既に「逆ザヤ」であり、解消には至らない。

 この矛盾の根本理由は、実勢価格の上昇局面で、①過去の一定期間の数値を用い設定した改定価格を数カ月先の未来で適用させることにある。通常・随時の両改定ともである。更に随時改定は、②変動幅が実施「要件」のため矛盾を拡大し、③後追いの弥縫策の限度・限界を露見させる、こととなる。

 

市場実勢価格を上回る「高値」設定スタートが道理

 この矛盾解決へは、金パラの市場実勢価格が上昇基調でも「逆ザヤ」が生じないルールが必須となる。医薬品の薬価は適用時点で市場実勢価格より「高値」設定が標準である。医療機関と卸との価格交渉による経営努力分が経営原資に回ることは常態である。市場実勢価格の下落を踏まえ2年に1度の通常改定で、「薬価」の減額補正の調整がなされる。

 つまり、金パラも市場実勢価格より高値設定のスタートが必須であり、急騰しても吸収可能、維持可能な仕組みが要諦となる。金パラは実質、価格交渉の余地がない製品である。過去実績を踏まえ、通常改定で「逆ザヤ」にならないかなり「高値」水準(通常改定の基準値の1.5倍)に設定し、市場変動を踏まえ減額補正をこまめに行い調整する方法(「超過価格設定&事後調整方式」)は、理に適うと考える。減額補正の「方法論」は叡智の絞りどころとなる。高値での患者負担問題にも工夫が要る。

 

歯科界の強い世論が道開く

後追いの仕組みからの脱却と解決へ

 金パラの価格決定ルールの根本的な見直し議論は、77日の中医協で次期診療報酬改定の「個別事項」の議論テーマに位置付けられたことによる。「個別事項」は、①医薬品の適切な使用の推進、②働き方改革の推進、③歯科用貴金属材料の基準材料価格改定について、④不妊治療の保険適用の4点であり、このうち①②は前回改定の「附帯意見」事項(いわゆる"宿題")であり、④は菅首相案件。宿題になかった③の設定は異例であり、歯科界の世論と運動や、当協会の「金パラ価格改革提言」(3/18)の影響(日経新聞報道、テレビ東京の特集報道等)が反映したと確信している。

 7月21日の中医協総会では「論点」として「歯科用貴金属材料の基準材料価格改定についてどのように考えるか」という根本的な問いかけが提示されている。このことの意味は大きい。つまり今後、「逆ザヤが常に発生しない仕組みはどういうものか」、「過去時点のデータで改定し数カ月先に適用するのは妥当か」などの具体的な論点を立てうる。

 また同日、日本歯科医師会の林正純・常務理事が「後追いの仕組みでは限界があり、抜本的な制度そのものの検討も必要ではないか」、とし、「より現場の実態を反映できる制度設計の構築」への検討を求めた。また、健保連の幸野庄司・理事からも「なんとかならないか」と、理解が示されている。

 金パラの価格改定ルールは不透明感が強く、市場実勢価格と公定価格の乖離率や、随時改定の「理論値」の算出方法などが不明で、疑心暗鬼や不満の温床となってきた。この透明化も不可欠である。

 歯科界の世論と多角的で多様な論点の提示と、中医協の真剣な議論で、抜本的解決を切に期待する。

2021年9月1日

 

<参考>

* 2021.7.21中医協総会・資料より

「個別事項(その1)」 歯科用貴金属材料の基準材料価格改定について

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