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2018/12/19 税対経営部長談話 「消費税損税問題はまだ解決していない 診療報酬による補填でなく、抜本的解決の検討を求める」

消費税損税問題はまだ解決していない

診療報酬による補填でなく、抜本的解決の検討を求める

神奈川県保険医協会

税対経営部長  馬場 一郎


 12月14日、自民党と公明党が2019年度与党税制改正大綱をまとめた。この中で消費税損税問題については、2019年10月の消費税率10%引き上げ時に行われる診療報酬への補填を「精緻化」することで、補填のばらつきが是正されるとの見解が示された。また、500万円以上の医療機器取得にあたり認められる12%の特別償却が2年延長されるなど、医療機関への一定の配慮が見られる大綱となった。この特別償却の期限延長や対象拡大は一定の評価ができるものの、診療報酬への補填ではいくら「精緻化」が図られても消費税損税問題の抜本的な解消にはならない点について、我々は強く抗議する。

 そもそも昨年度の与党税制改正大綱では、次回の税制改正で「税制上の抜本的な解決に向けて総合的に検討し、結論を得る」と記されていた。それに向けて我々は日医・日歯のほか、厚労省、財務省、各国会議員とも意見交換を重ね、ゼロ税率にこだわらずあらゆる可能性を模索しながら抜本的解消を追求してきた。三師会・四病協も8月に診療報酬への補填分を超えた分を申告・還付するしくみを提案するなど、医療界が今回の消費税率引き上げを損税問題の抜本的解消の好機ととらえ、改善を訴えてきた。

 しかし、今回大綱で示されたのは補填不足が生じた2014年診療報酬改定の反省を踏まえた補填の「精緻化」であり、加えて税制面では特別償却の延長・対象拡大が図られるにとどまった。また、「診療報酬への補填は限界」とした中医協消費税分科会の意見は記載が見送られたほか、大綱の検討事項の中からも「損税問題の抜本的な解決」に関する文言が削除されており、損税問題の幕引きが図られた感が否めない。そもそも診療報酬への補填では、いくら「精緻化」しても個別の医療機関ごとに生じる補填のばらつきまでは解消されない。決して「抜本的解消」ではないのである。

 今回の税制改正大綱に対する医療団体の反応は二分した。日医は税制を含めて「全体で医療に係る消費税問題が解決された」と評価。一方、開業医に比べ設備投資や医薬品購入等による損税負担が著しく大きい病院について、各病院団体からは看過できないとする意見が続出。すでに急性期病院をはじめ経営が悪化する病院が多い中、2019年10月以降、倒産する病院が相次いだとしても不思議ではない。

 また、今年7月に表面化した2014年診療報酬改定以降に十分補填されなかった点については何の手当もされないままだ。厚労省は過去の補填不足について猛省しているが、病院では85.0%、歯科では92.3%と大きく生じた補填不足への手当が一切されないことにも疑問を感じる。

 自民党税制調査会の宮澤洋一会長は税制改正大綱取りまとめ後の会見の席上、損税問題について、①課税転換をすれば色々な対応は可能、②課税転換できなければ税における対応は不可能―と説明した。ここで課税転換に活路を見出すとすれば、課税化した上で医療に係る消費税率をゼロにするゼロ税率の実現も有力な解決策となる。我々は消費税率引き上げによる影響を試算した上で今後も精査を続け、引き続き損税問題の真の解決のため、ゼロ税率をはじめとした損税問題の抜本的な解決策を講じるよう求める。

2018年12月19日

消費税損税問題はまだ解決していない

診療報酬による補填でなく、抜本的解決の検討を求める

神奈川県保険医協会

税対経営部長  馬場 一郎


 12月14日、自民党と公明党が2019年度与党税制改正大綱をまとめた。この中で消費税損税問題については、2019年10月の消費税率10%引き上げ時に行われる診療報酬への補填を「精緻化」することで、補填のばらつきが是正されるとの見解が示された。また、500万円以上の医療機器取得にあたり認められる12%の特別償却が2年延長されるなど、医療機関への一定の配慮が見られる大綱となった。この特別償却の期限延長や対象拡大は一定の評価ができるものの、診療報酬への補填ではいくら「精緻化」が図られても消費税損税問題の抜本的な解消にはならない点について、我々は強く抗議する。

 そもそも昨年度の与党税制改正大綱では、次回の税制改正で「税制上の抜本的な解決に向けて総合的に検討し、結論を得る」と記されていた。それに向けて我々は日医・日歯のほか、厚労省、財務省、各国会議員とも意見交換を重ね、ゼロ税率にこだわらずあらゆる可能性を模索しながら抜本的解消を追求してきた。三師会・四病協も8月に診療報酬への補填分を超えた分を申告・還付するしくみを提案するなど、医療界が今回の消費税率引き上げを損税問題の抜本的解消の好機ととらえ、改善を訴えてきた。

 しかし、今回大綱で示されたのは補填不足が生じた2014年診療報酬改定の反省を踏まえた補填の「精緻化」であり、加えて税制面では特別償却の延長・対象拡大が図られるにとどまった。また、「診療報酬への補填は限界」とした中医協消費税分科会の意見は記載が見送られたほか、大綱の検討事項の中からも「損税問題の抜本的な解決」に関する文言が削除されており、損税問題の幕引きが図られた感が否めない。そもそも診療報酬への補填では、いくら「精緻化」しても個別の医療機関ごとに生じる補填のばらつきまでは解消されない。決して「抜本的解消」ではないのである。

 今回の税制改正大綱に対する医療団体の反応は二分した。日医は税制を含めて「全体で医療に係る消費税問題が解決された」と評価。一方、開業医に比べ設備投資や医薬品購入等による損税負担が著しく大きい病院について、各病院団体からは看過できないとする意見が続出。すでに急性期病院をはじめ経営が悪化する病院が多い中、2019年10月以降、倒産する病院が相次いだとしても不思議ではない。

 また、今年7月に表面化した2014年診療報酬改定以降に十分補填されなかった点については何の手当もされないままだ。厚労省は過去の補填不足について猛省しているが、病院では85.0%、歯科では92.3%と大きく生じた補填不足への手当が一切されないことにも疑問を感じる。

 自民党税制調査会の宮澤洋一会長は税制改正大綱取りまとめ後の会見の席上、損税問題について、①課税転換をすれば色々な対応は可能、②課税転換できなければ税における対応は不可能―と説明した。ここで課税転換に活路を見出すとすれば、課税化した上で医療に係る消費税率をゼロにするゼロ税率の実現も有力な解決策となる。我々は消費税率引き上げによる影響を試算した上で今後も精査を続け、引き続き損税問題の真の解決のため、ゼロ税率をはじめとした損税問題の抜本的な解決策を講じるよう求める。

2018年12月19日