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2005/9/2 医療運動部会長談話「患者要望を口実にした日常医療の混合診療"実施"に断固反対する」

患者要望を口実にした日常医療の混合診療"実施"に断固反対する

                              神奈川県保険医協会

                              医療運動部会長  池川 明


 中医協は8月31日、「回数制限を超える医療行為」の混合診療を認めるものとして、「腫瘍マーカー」検査(肝がん、大腸がんなどの検査)、「理学療法(個別療法)」など7項目を対象とし、10月1日から実施することを決めた。

 これは「公的医療保険での回数制限+全額自費負担」方式を日常診療に持ち込むものであり、現場混乱を招くとともに、医療保険制度の根幹「現物給付原則」を、瓦解させていくものであり、われわれは断固反対をする。

 今回の決定された7項目は、「医療上の必要性がほとんどない」ことが「前提」として選定されており、しかも「患者の要望に従い」実施するものとしている。

 このことは、医師のプロフェッショナル・フリーダムの否定そのものであり、医療とは、必要性により実施すべきものという医療倫理に関わる重大問題である。

 また、これまでの議論(7月13日中医協基本問題小委)で、今回、混合診療の対象となった7項目について、「医学的評価が変わらない限りにおいて、将来的な保険導入のための評価を行わない」としており、日常診療での混合診療の固定化が決定的となっている。

 この「官」による医療内容に踏み込む統制手法は、将来的には「官」による医療の"標準化"と連動していくことになる。と同時に、医療保険制度においても、日常診療のあらゆる分野での混合診療化に大きく道を開く突破口となりかねない。

 すでに今回の選定から外れた135項目について再度、次期診療報酬改定に向け検討することが決められている。この中には「医療上の必要性から実施される」と厚労省が分類した113項目が含まれている。更には、医療行為の枠を超えた大きな"投網"、外来回数の制限すら、早くも取り沙汰されており、"受診回数は欧米なみの年6回で制限、あとは全額自費負担"など、予断を許さない状況になっている。

 この間の中医協議論で、責任者である麦谷医療課長が「患者から金をとってもいい項目を選んでもらいたい」と率直に本音を発言してきたことに照らせば、非常に危険な方向に一歩踏み出したことになる。

 制限回数のある医療行為は、制限回数の設定そのものが医学的合理性を欠いており、事実、混合診療の対象選定論議のなかで、糖尿病の検査など113項目は制限回数を超えて「医療上の必要性から実施される」と、医療上の必要性を無視していることを、厚労省自らが認めている。本来の治療行為は個々の患者の状態において医師が判断すべきもので、「官」での規制には馴染まない。この制限回数という手法は2002年の診療報酬改定時に大幅導入された医療保険給付の抑制・削減手段である。

 当協会は、昨年の混合診療の「基本合意」を、内実は"大幅解禁"で"全面解禁"に道開く「羊頭狗肉」の最悪の決着、と指摘した。その後の現実の推移は、まさに指摘した内容そのものであり、慙愧に耐えない。

 今回の中医協決定は、未承認薬や先進医療と違い、一般医療の現場への影響度が計り知れない。微細な周辺問題では決してなく、日本の医療制度の根幹問題である。われわれは今回の決定に断固反対をする。

2005年9月2日

 

患者要望を口実にした日常医療の混合診療"実施"に断固反対する

                              神奈川県保険医協会

                              医療運動部会長  池川 明


 中医協は8月31日、「回数制限を超える医療行為」の混合診療を認めるものとして、「腫瘍マーカー」検査(肝がん、大腸がんなどの検査)、「理学療法(個別療法)」など7項目を対象とし、10月1日から実施することを決めた。

 これは「公的医療保険での回数制限+全額自費負担」方式を日常診療に持ち込むものであり、現場混乱を招くとともに、医療保険制度の根幹「現物給付原則」を、瓦解させていくものであり、われわれは断固反対をする。

 今回の決定された7項目は、「医療上の必要性がほとんどない」ことが「前提」として選定されており、しかも「患者の要望に従い」実施するものとしている。

 このことは、医師のプロフェッショナル・フリーダムの否定そのものであり、医療とは、必要性により実施すべきものという医療倫理に関わる重大問題である。

 また、これまでの議論(7月13日中医協基本問題小委)で、今回、混合診療の対象となった7項目について、「医学的評価が変わらない限りにおいて、将来的な保険導入のための評価を行わない」としており、日常診療での混合診療の固定化が決定的となっている。

 この「官」による医療内容に踏み込む統制手法は、将来的には「官」による医療の"標準化"と連動していくことになる。と同時に、医療保険制度においても、日常診療のあらゆる分野での混合診療化に大きく道を開く突破口となりかねない。

 すでに今回の選定から外れた135項目について再度、次期診療報酬改定に向け検討することが決められている。この中には「医療上の必要性から実施される」と厚労省が分類した113項目が含まれている。更には、医療行為の枠を超えた大きな"投網"、外来回数の制限すら、早くも取り沙汰されており、"受診回数は欧米なみの年6回で制限、あとは全額自費負担"など、予断を許さない状況になっている。

 この間の中医協議論で、責任者である麦谷医療課長が「患者から金をとってもいい項目を選んでもらいたい」と率直に本音を発言してきたことに照らせば、非常に危険な方向に一歩踏み出したことになる。

 制限回数のある医療行為は、制限回数の設定そのものが医学的合理性を欠いており、事実、混合診療の対象選定論議のなかで、糖尿病の検査など113項目は制限回数を超えて「医療上の必要性から実施される」と、医療上の必要性を無視していることを、厚労省自らが認めている。本来の治療行為は個々の患者の状態において医師が判断すべきもので、「官」での規制には馴染まない。この制限回数という手法は2002年の診療報酬改定時に大幅導入された医療保険給付の抑制・削減手段である。

 当協会は、昨年の混合診療の「基本合意」を、内実は"大幅解禁"で"全面解禁"に道開く「羊頭狗肉」の最悪の決着、と指摘した。その後の現実の推移は、まさに指摘した内容そのものであり、慙愧に耐えない。

 今回の中医協決定は、未承認薬や先進医療と違い、一般医療の現場への影響度が計り知れない。微細な周辺問題では決してなく、日本の医療制度の根幹問題である。われわれは今回の決定に断固反対をする。

2005年9月2日