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2013/11/25 政策部長談話「医療現場への想像力を欠く薬価財源外しをただす 想定▲5%改定は医療荒廃の道 自然増削減は患者の医療削減」

医療現場への想像力を欠く薬価財源外しをただす

想定▲5%改定は医療荒廃の道 自然増削減は患者の医療削減

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 次期診療報酬改定を巡り薬価引き下げ改定分を全体の改定財源から外すことが11月15日の経済財政諮問会議で、財務省サイドから提案されている。これは主に高齢化に伴う医療費の自然増の事実上の削減を意味し、患者の医療内容の希薄化や医療者の過密労働となる。また医療機関の経営努力を評価せず医療現場の士気を挫くものとなる。そもそもこの主張は改定率決定の従来ルールの無視である。われわれは一体改革分の改定率2.2%と、通常改定分の実質プラスの上乗せを改めて求める。

 診療報酬は1981年以降、改定率の決定は「物価・賃金スライド方式」をやめ「自然増控除方式」を採っている。前者が医療費高騰を招くとし、自然増分を「前提」とし改定分を上乗せする方式に改めたのである。予算化は診療報酬の本体(技術料部分)と薬価の合計でなされており、改定率は両者合計の「ネット」で考えるのが当然である。このルールを経団連要請を背に財務省は捻じ曲げてきた。

 経済財政諮問会議では次年度の医療費の「自然増」が企業・家計の負担増であるとし、(1) 薬価引き下げ分を改定財源から外す、(2) 診療報酬本体の引き上げは認めない、の2点をあげ「自然増」を明確に切り込むことを打ち出した。過去5回の改定平均は薬価▲1.35%であり、今回は長期収載品の段階的大幅引き下げ(▲5,300億円)も挙げられており、計▲3%弱が想定される。また本体0%ないしはマイナスとなると、一体改革分+2.2%(消費税の「補填」1.2%と社会保障充実1%の計)が消し飛び、実質▲2.2%超の改定となる。消費税8%時の「約束」が全て「雲散霧消」する。

 つまり、通常改定分▲5%強(薬価▲3%弱+本体▲2.2%超)+2.2%(一体改革分)=▲3%強を、最低ラインに財務省はおいていることになる。これは02年の▲2.7%、06年の▲3.16%に匹敵するが、経済財政諮問会議、保険者6団体は「本体マイナス」を主張しており壊滅的マイナス幅も射程にある。薬価引き下げ分の改定財源の除外の「恒常化」も企図されており、看過できない事態である。

 財務省は「自然増」は企業・家計の負担増であり妥当性が問題とし、賃金減少(▲0.7%)の下プラス改定では可処分所得のマイナス要因となり、マクロ経済政策として整合性を欠くと切り捨てている。

 しかし、自然増の削減は患者あたり医療費の削減、医療内容の圧縮となる。診療報酬のプラス改定の否定は、家計の医療保障内容の劣化となり、企業にとっても良質な生産労働力の確保を難しくする。

 中医協の医療経済実態調査は、自費・保険診療以外の医業への依存度が高くなり保険診療で十分な医療機関経営が出来なくなっていることを示し、厚労省統計の各指標で保険収益の分布が下位に偏在している事実と合わせ、保険収益の不十分性、医療提供体制の基盤の弱さ、プラス改定の必要性を教えている。主治医機能を主体としたネットワーク、地域包括ケアも第一線医療があってこそである。

 財務省は自然増の否定の方策として、薬価引き下げ分は、改定時の実勢価格による「時点修正」との理屈で、その財源の除外を持ち出した。しかし医薬品と一体不可分なのが診療である。医薬品は市場経済の取引きであるが「公定価格」で請求をする。医療機関は在庫ロスなどの保管損耗を考慮し、「逆ザヤ」とならないよう卸業者と価格交渉をする。モノの費用削減分を人件費等に充当する。これらは「経営努力」として認められるものである。改定時の薬価引き下げ財源の本体への充当は、ミクロで行われている経営行動を、改定年度にマクロで行っているにすぎないのである。

 財務省は改定の透明性を口にしているが、そもそも診療報酬は「技術・労働」「モノ」「施設管理」が分離評価された体系ではなく、歴史的な経緯のもと各々の適正評価がなされず渾然一体のまま今日に至っており、口にする理がない。また全産業の賃金を比較し本体プラスを否定しているが、公益性・公共性の高い医療は公務員給与、それも一般会計の歳出予算の「人件費」の増減率で見るのが妥当である。

 医療崩壊の歪みが広がった初のマイナス改定98年の前年度を起点とすると、診療報酬は累積で▲8.4%に対し、「物価+公務員給与」は▲3.7%(10年度)であり乖離幅が大きく経済との整合性は全くない。われわれは一体改革の「約束」さえも反故にし、牽強付会でマイナス改定を誘導する財務省を批判するとともに、地域医療を守るため診療報酬のプラス改定を強く求める。

2013年11月25日

 

医療現場への想像力を欠く薬価財源外しをただす

想定▲5%改定は医療荒廃の道 自然増削減は患者の医療削減

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 次期診療報酬改定を巡り薬価引き下げ改定分を全体の改定財源から外すことが11月15日の経済財政諮問会議で、財務省サイドから提案されている。これは主に高齢化に伴う医療費の自然増の事実上の削減を意味し、患者の医療内容の希薄化や医療者の過密労働となる。また医療機関の経営努力を評価せず医療現場の士気を挫くものとなる。そもそもこの主張は改定率決定の従来ルールの無視である。われわれは一体改革分の改定率2.2%と、通常改定分の実質プラスの上乗せを改めて求める。

 診療報酬は1981年以降、改定率の決定は「物価・賃金スライド方式」をやめ「自然増控除方式」を採っている。前者が医療費高騰を招くとし、自然増分を「前提」とし改定分を上乗せする方式に改めたのである。予算化は診療報酬の本体(技術料部分)と薬価の合計でなされており、改定率は両者合計の「ネット」で考えるのが当然である。このルールを経団連要請を背に財務省は捻じ曲げてきた。

 経済財政諮問会議では次年度の医療費の「自然増」が企業・家計の負担増であるとし、(1) 薬価引き下げ分を改定財源から外す、(2) 診療報酬本体の引き上げは認めない、の2点をあげ「自然増」を明確に切り込むことを打ち出した。過去5回の改定平均は薬価▲1.35%であり、今回は長期収載品の段階的大幅引き下げ(▲5,300億円)も挙げられており、計▲3%弱が想定される。また本体0%ないしはマイナスとなると、一体改革分+2.2%(消費税の「補填」1.2%と社会保障充実1%の計)が消し飛び、実質▲2.2%超の改定となる。消費税8%時の「約束」が全て「雲散霧消」する。

 つまり、通常改定分▲5%強(薬価▲3%弱+本体▲2.2%超)+2.2%(一体改革分)=▲3%強を、最低ラインに財務省はおいていることになる。これは02年の▲2.7%、06年の▲3.16%に匹敵するが、経済財政諮問会議、保険者6団体は「本体マイナス」を主張しており壊滅的マイナス幅も射程にある。薬価引き下げ分の改定財源の除外の「恒常化」も企図されており、看過できない事態である。

 財務省は「自然増」は企業・家計の負担増であり妥当性が問題とし、賃金減少(▲0.7%)の下プラス改定では可処分所得のマイナス要因となり、マクロ経済政策として整合性を欠くと切り捨てている。

 しかし、自然増の削減は患者あたり医療費の削減、医療内容の圧縮となる。診療報酬のプラス改定の否定は、家計の医療保障内容の劣化となり、企業にとっても良質な生産労働力の確保を難しくする。

 中医協の医療経済実態調査は、自費・保険診療以外の医業への依存度が高くなり保険診療で十分な医療機関経営が出来なくなっていることを示し、厚労省統計の各指標で保険収益の分布が下位に偏在している事実と合わせ、保険収益の不十分性、医療提供体制の基盤の弱さ、プラス改定の必要性を教えている。主治医機能を主体としたネットワーク、地域包括ケアも第一線医療があってこそである。

 財務省は自然増の否定の方策として、薬価引き下げ分は、改定時の実勢価格による「時点修正」との理屈で、その財源の除外を持ち出した。しかし医薬品と一体不可分なのが診療である。医薬品は市場経済の取引きであるが「公定価格」で請求をする。医療機関は在庫ロスなどの保管損耗を考慮し、「逆ザヤ」とならないよう卸業者と価格交渉をする。モノの費用削減分を人件費等に充当する。これらは「経営努力」として認められるものである。改定時の薬価引き下げ財源の本体への充当は、ミクロで行われている経営行動を、改定年度にマクロで行っているにすぎないのである。

 財務省は改定の透明性を口にしているが、そもそも診療報酬は「技術・労働」「モノ」「施設管理」が分離評価された体系ではなく、歴史的な経緯のもと各々の適正評価がなされず渾然一体のまま今日に至っており、口にする理がない。また全産業の賃金を比較し本体プラスを否定しているが、公益性・公共性の高い医療は公務員給与、それも一般会計の歳出予算の「人件費」の増減率で見るのが妥当である。

 医療崩壊の歪みが広がった初のマイナス改定98年の前年度を起点とすると、診療報酬は累積で▲8.4%に対し、「物価+公務員給与」は▲3.7%(10年度)であり乖離幅が大きく経済との整合性は全くない。われわれは一体改革の「約束」さえも反故にし、牽強付会でマイナス改定を誘導する財務省を批判するとともに、地域医療を守るため診療報酬のプラス改定を強く求める。

2013年11月25日