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2015/7/24 政策部長談話「合法的なカルテ情報の企業利用に道開く 国民抑圧の梃、番号制の『凍結』『撤回』を求める」

合法的なカルテ情報の企業利用に道開く

国民抑圧の梃、番号制の「凍結」「撤回」を求める

神奈川県保険医協会

政策部長 桑島 政臣


 政府は2020年のオリンピックに向け「世界最先端のIT国家」をめざし社会基盤整備を急いでいる。それは税務・厚生などの官公庁のみならず民間が保有する諸分野の情報を極力、電子データ化しネット環境下、オンラインで連携・結合し、社会生活のあらゆる場面で活用する、社会構造の「パラダイム転換」である。「情報」の範疇は文書化、文字化されない「生体」データまでも対象である。

 近く実施の共通番号制(マイナンバー制)は、この構図の中での「屋台骨」となる。「官」の行政事務の効率化を超えた、「民」での利用と展開が織り込みずみであり、医療分野においてカルテ情報等の「集積」と企業による利用が堂々と計画されている。われわれは、医療を蹂躙し、社会混乱を招く、この危険なマイナンバー制の実施凍結、撤回を強く求めるものである。

◆「一体改革」の武器、資産要件、疾病自己責任による給付抑制

 番号制は消費税増税、社会保障制度改革と併せ「3点セット」の「一体改革」で、徴税強化と社会保障給付の抑制を狙いとし計画されたものである。利点と喧伝された低所得者救済の「給付つき税額控除」、患者負担軽減策の「総合合算制」は雲散霧消し跡形もない。

 12ケタの個人別のマイナンバーは、住民基本台帳、税務・社会保障関係の「官」の保有する個人情報に「紐付け」され、「官」の行政事務に利用される、これが基本である。しかし、「民」の保有する情報への「紐付け」が既に今国会に提案され、「民」による利用の拡張も視野に入ってきた。

 具体的には①預貯金口座情報(残高、出入金先)、②特定健診データ(身長・体重・腹囲・BMI、血圧、中性脂肪、HDL・LDLコレステロール、肝機能検査<GOT、GPT、γ-GTP>、血糖検査<空腹時血糖又はHbA1c>、尿検査<尿糖、尿蛋白>)、③予防接種履歴(ヒブ、肺炎球菌、インフルエンザ等)である。これらは、検討中の後期高齢者医療の2割負担への資産要件の導入や、検査データの「追跡」、疾病自己責任による保険料の傾斜設定との連結が透け、意味深長である。

 「個人番号カード」に埋め込むICチップを利用し2017年7月以降早期に保険証として通用させオンラインでの資格確認の予定であり、8,700万枚の普及(国民の2/3の保有)と皮算用を弾いている。「民」による利用に先鞭をつけ、カードの普及、制度の定着を謀る「本丸」は、医療にある。

◆番号制インフラ利用での「医療等ID」の死角

 これに照応し医療・介護分野の「医療等ID」を、番号制のインフラを利用し導入することが、日本再興戦略(閣議決定)に盛り込まれた。この医療等IDはマイナンバーから派生させた見えない電子的な符号であり、カルテ情報、検査情報など診療情報を「紐付け」、医療連携に活用することが計画されている。問題は、匿名化し集積された医療データの民間利用が前提とされている点である。医療情報連携を番号制の基盤と寸断した「独立系」とせずに、そのインフラを利用するとした点が「肝」であり、合法的に企業がカルテなどの診療情報を「入手」し、「利用・活用」することが可能となる。

 重複検査の是正、医薬品開発、医薬品の効果フォロー、医療費の無駄の排除など、論拠不在で論理的飛躍が酷く無理解な「利点」が相も変わらず強調されるが「狙い」はここにある。いまや過重な患者負担で6割超は1医療機関受診であり、診療連携での検査データ提供は一般的である。医薬品の開発・効果検証は治験計画で行うものであり、医療費の無駄の排除は理由も論理も不明である。政府の検討会や自民党のIT戦略委員会では、マインナンバーと医療との関係に極めて強い期待がかけられ、日医をはじめ医療団体が慎重対応を求め、なんとか付番の「峻別」でギリギリ押しとどめてきた。しかし、この政府の医療等IDにより擬似的「マイナンバー」となる。

 次期診療報酬改定では早くも電子カルテ化を促進する点数設定が厚労大臣により言及された。また電子カルテの標準化や、地域医療情報ネットワークの全国普及と基金での支援も打ち出された。特定健診データのマイナンバーへの紐付は、全医療機関、全患者の診療データの電子化・集積までの「代替」「一里塚」となる。

 マイナンバーは現在、医療給付・社会保障給付との紐付は、出産育児一時金などの「現金給付」に限定され、現物給付と関連する診療報酬明細書(「レセプト」)とは紐付いていない。ただ、厚労省保険局にはそれがオンラインで集積され、匿名処理が施された92億件の「ナショナルデータベース」があり、この民間利用が射程に上っている。この延長線で近い将来の、レセプトとマイナンバーの紐付けは想像に難くない。いまのレセプトの匿名処理は「患者名」と「生年月日」の「日」、「医療機関名」等に過ぎない。「生年月」、「性別」、「傷病名」、「診療開始日」、「医療機関コード」、「保険者コード」や「投薬」、「注射」、「検査」、「画像診断」の具体的項目など治療概要はわかり、これが匿名化の基準となる。

 医療とマイナンバーの連結は、"ダルマ落とし"のように次々と巧妙に政府に攻略される懸念が強い。既にOTC保険外し、自己採血判定の検体測定室、健康情報拠点薬局、データヘルスと、医薬品、検査、生活習慣病指導、食事・栄養指導など保険給付の「保険外化」、医療からの「医師・歯科医師外し」の策動が始まっており、医療分野の営利産業化、保険外ビジネスへ虎視眈々と狙う企業の好餌となる。

 政府の医療等IDは、保険診療、非営利原則の医療提供の瓦解ももたらす危険が非常に高い。

◆安保法制採決で濃厚となる国民弾圧の「武器」の側面

 マイナンバーは、各機関が保有する個人情報の「格納庫」へ照会し利用するための「マスターキー」である。この扱いには、人為が介在するため、故意ならずも不注意や杜撰・不適正な実務による漏洩、流出や、悪用は不可避である。多くの国民が手続きなどで「記入」、「提示」する場面、企業・事業者が官公庁への法定調書提出や従業員での出向先に「提供」する場面、官公庁職員のネット上での「照会」、「利用」とマイナンバーは、日常的にやり取りされていく。

 この間の個人情報の「官」による悪用、年金情報流出にみる便乗詐欺、サイバー攻撃による略取など以上に、マイナンバーはそれへの個人情報の集積の度合いに応じ危険度は嵩んでいく。今後、個人番号カードを身分証明(国民ID)として普及させ、旅券、戸籍、印鑑証明、運転免許など「官」の情報との紐付け、キャッシュカード、クレジットカードなど民間カードとの一体化(ワンカード化、1枚保有)、商品購入、チケット購入での利用などが政府の工程には上っている。

 漏洩、流出、悪用の際の「被害の補償」、「原状回復」は現実には難しい。個々人が番号の照会履歴を把握できても、苦情申立てや訴訟など時間的、金銭的負担が大きくほとんど無理であり、ネットでの被害拡散も想定され社会的混乱は幾何級数的に膨れ上がる。

 それだけに止まらない。今国会で審議中の番号法改定案で、身体情報、資産情報が紐付され、国家による個人管理は緻密化する。一生涯の管理である。利用範囲は現在、限定されてはいるが、個人抑圧、個人弾圧の「武器」にいつでも転じることが可能である。いまでさえ公安警察の利用は認められ、電子記録(マイナポータル)に「足跡」は残らないことになっている。

 これは杞憂でない。実際、インド等に倣い、指紋、目の虹彩と国民ID(個人番号カード)、暗証番号と組み合わせた個人識別も、オリンピック会場のセキュリティーの関連で検討がなされている。

 安保法制の衆院可決により、国民抑制、国民弾圧の「武器」としての稼働が現実味を帯びる。マイナンバーは各企業の保有するビッグデータとの連結も想定されており、これにより個人の資産、健康情報のみならず購入履歴、行動情報などあらゆる情報で個人の階層化、格付け、識別が可能となる。つまり、個人の「弱点」も明らかとなる。特定秘密保護法、インフルエンザ特措法(緊急事態宣言による戦時総動員法)の文脈でみれば、政敵や国民の弾圧に利用できる武器となる可能性が十分に高い。

 ビジネス利用と国民抑圧。憲法9条と25条、13条を否定する「横串」をマイナンバーは内包しており、立憲主義、法の支配、法治国家が揺らいでいるいま、楽観は禁物である。しかも、マイナンバーは、諜報攻略に長けた他国や国際勢力にとり「垂涎の的」となる。国家の危機管理上、危険であり国家存亡に直結する。覆水盆に返らず。われわれは番号制の「凍結」「撤回」を強く求める。

2015年7月24日

合法的なカルテ情報の企業利用に道開く

国民抑圧の梃、番号制の「凍結」「撤回」を求める

神奈川県保険医協会

政策部長 桑島 政臣


 政府は2020年のオリンピックに向け「世界最先端のIT国家」をめざし社会基盤整備を急いでいる。それは税務・厚生などの官公庁のみならず民間が保有する諸分野の情報を極力、電子データ化しネット環境下、オンラインで連携・結合し、社会生活のあらゆる場面で活用する、社会構造の「パラダイム転換」である。「情報」の範疇は文書化、文字化されない「生体」データまでも対象である。

 近く実施の共通番号制(マイナンバー制)は、この構図の中での「屋台骨」となる。「官」の行政事務の効率化を超えた、「民」での利用と展開が織り込みずみであり、医療分野においてカルテ情報等の「集積」と企業による利用が堂々と計画されている。われわれは、医療を蹂躙し、社会混乱を招く、この危険なマイナンバー制の実施凍結、撤回を強く求めるものである。

◆「一体改革」の武器、資産要件、疾病自己責任による給付抑制

 番号制は消費税増税、社会保障制度改革と併せ「3点セット」の「一体改革」で、徴税強化と社会保障給付の抑制を狙いとし計画されたものである。利点と喧伝された低所得者救済の「給付つき税額控除」、患者負担軽減策の「総合合算制」は雲散霧消し跡形もない。

 12ケタの個人別のマイナンバーは、住民基本台帳、税務・社会保障関係の「官」の保有する個人情報に「紐付け」され、「官」の行政事務に利用される、これが基本である。しかし、「民」の保有する情報への「紐付け」が既に今国会に提案され、「民」による利用の拡張も視野に入ってきた。

 具体的には①預貯金口座情報(残高、出入金先)、②特定健診データ(身長・体重・腹囲・BMI、血圧、中性脂肪、HDL・LDLコレステロール、肝機能検査<GOT、GPT、γ-GTP>、血糖検査<空腹時血糖又はHbA1c>、尿検査<尿糖、尿蛋白>)、③予防接種履歴(ヒブ、肺炎球菌、インフルエンザ等)である。これらは、検討中の後期高齢者医療の2割負担への資産要件の導入や、検査データの「追跡」、疾病自己責任による保険料の傾斜設定との連結が透け、意味深長である。

 「個人番号カード」に埋め込むICチップを利用し2017年7月以降早期に保険証として通用させオンラインでの資格確認の予定であり、8,700万枚の普及(国民の2/3の保有)と皮算用を弾いている。「民」による利用に先鞭をつけ、カードの普及、制度の定着を謀る「本丸」は、医療にある。

◆番号制インフラ利用での「医療等ID」の死角

 これに照応し医療・介護分野の「医療等ID」を、番号制のインフラを利用し導入することが、日本再興戦略(閣議決定)に盛り込まれた。この医療等IDはマイナンバーから派生させた見えない電子的な符号であり、カルテ情報、検査情報など診療情報を「紐付け」、医療連携に活用することが計画されている。問題は、匿名化し集積された医療データの民間利用が前提とされている点である。医療情報連携を番号制の基盤と寸断した「独立系」とせずに、そのインフラを利用するとした点が「肝」であり、合法的に企業がカルテなどの診療情報を「入手」し、「利用・活用」することが可能となる。

 重複検査の是正、医薬品開発、医薬品の効果フォロー、医療費の無駄の排除など、論拠不在で論理的飛躍が酷く無理解な「利点」が相も変わらず強調されるが「狙い」はここにある。いまや過重な患者負担で6割超は1医療機関受診であり、診療連携での検査データ提供は一般的である。医薬品の開発・効果検証は治験計画で行うものであり、医療費の無駄の排除は理由も論理も不明である。政府の検討会や自民党のIT戦略委員会では、マインナンバーと医療との関係に極めて強い期待がかけられ、日医をはじめ医療団体が慎重対応を求め、なんとか付番の「峻別」でギリギリ押しとどめてきた。しかし、この政府の医療等IDにより擬似的「マイナンバー」となる。

 次期診療報酬改定では早くも電子カルテ化を促進する点数設定が厚労大臣により言及された。また電子カルテの標準化や、地域医療情報ネットワークの全国普及と基金での支援も打ち出された。特定健診データのマイナンバーへの紐付は、全医療機関、全患者の診療データの電子化・集積までの「代替」「一里塚」となる。

 マイナンバーは現在、医療給付・社会保障給付との紐付は、出産育児一時金などの「現金給付」に限定され、現物給付と関連する診療報酬明細書(「レセプト」)とは紐付いていない。ただ、厚労省保険局にはそれがオンラインで集積され、匿名処理が施された92億件の「ナショナルデータベース」があり、この民間利用が射程に上っている。この延長線で近い将来の、レセプトとマイナンバーの紐付けは想像に難くない。いまのレセプトの匿名処理は「患者名」と「生年月日」の「日」、「医療機関名」等に過ぎない。「生年月」、「性別」、「傷病名」、「診療開始日」、「医療機関コード」、「保険者コード」や「投薬」、「注射」、「検査」、「画像診断」の具体的項目など治療概要はわかり、これが匿名化の基準となる。

 医療とマイナンバーの連結は、"ダルマ落とし"のように次々と巧妙に政府に攻略される懸念が強い。既にOTC保険外し、自己採血判定の検体測定室、健康情報拠点薬局、データヘルスと、医薬品、検査、生活習慣病指導、食事・栄養指導など保険給付の「保険外化」、医療からの「医師・歯科医師外し」の策動が始まっており、医療分野の営利産業化、保険外ビジネスへ虎視眈々と狙う企業の好餌となる。

 政府の医療等IDは、保険診療、非営利原則の医療提供の瓦解ももたらす危険が非常に高い。

◆安保法制採決で濃厚となる国民弾圧の「武器」の側面

 マイナンバーは、各機関が保有する個人情報の「格納庫」へ照会し利用するための「マスターキー」である。この扱いには、人為が介在するため、故意ならずも不注意や杜撰・不適正な実務による漏洩、流出や、悪用は不可避である。多くの国民が手続きなどで「記入」、「提示」する場面、企業・事業者が官公庁への法定調書提出や従業員での出向先に「提供」する場面、官公庁職員のネット上での「照会」、「利用」とマイナンバーは、日常的にやり取りされていく。

 この間の個人情報の「官」による悪用、年金情報流出にみる便乗詐欺、サイバー攻撃による略取など以上に、マイナンバーはそれへの個人情報の集積の度合いに応じ危険度は嵩んでいく。今後、個人番号カードを身分証明(国民ID)として普及させ、旅券、戸籍、印鑑証明、運転免許など「官」の情報との紐付け、キャッシュカード、クレジットカードなど民間カードとの一体化(ワンカード化、1枚保有)、商品購入、チケット購入での利用などが政府の工程には上っている。

 漏洩、流出、悪用の際の「被害の補償」、「原状回復」は現実には難しい。個々人が番号の照会履歴を把握できても、苦情申立てや訴訟など時間的、金銭的負担が大きくほとんど無理であり、ネットでの被害拡散も想定され社会的混乱は幾何級数的に膨れ上がる。

 それだけに止まらない。今国会で審議中の番号法改定案で、身体情報、資産情報が紐付され、国家による個人管理は緻密化する。一生涯の管理である。利用範囲は現在、限定されてはいるが、個人抑圧、個人弾圧の「武器」にいつでも転じることが可能である。いまでさえ公安警察の利用は認められ、電子記録(マイナポータル)に「足跡」は残らないことになっている。

 これは杞憂でない。実際、インド等に倣い、指紋、目の虹彩と国民ID(個人番号カード)、暗証番号と組み合わせた個人識別も、オリンピック会場のセキュリティーの関連で検討がなされている。

 安保法制の衆院可決により、国民抑制、国民弾圧の「武器」としての稼働が現実味を帯びる。マイナンバーは各企業の保有するビッグデータとの連結も想定されており、これにより個人の資産、健康情報のみならず購入履歴、行動情報などあらゆる情報で個人の階層化、格付け、識別が可能となる。つまり、個人の「弱点」も明らかとなる。特定秘密保護法、インフルエンザ特措法(緊急事態宣言による戦時総動員法)の文脈でみれば、政敵や国民の弾圧に利用できる武器となる可能性が十分に高い。

 ビジネス利用と国民抑圧。憲法9条と25条、13条を否定する「横串」をマイナンバーは内包しており、立憲主義、法の支配、法治国家が揺らいでいるいま、楽観は禁物である。しかも、マイナンバーは、諜報攻略に長けた他国や国際勢力にとり「垂涎の的」となる。国家の危機管理上、危険であり国家存亡に直結する。覆水盆に返らず。われわれは番号制の「凍結」「撤回」を強く求める。

2015年7月24日