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2022/7/22 政策部長談話「受診を阻害し、医療現場を混乱させる健康保険証の廃止に反対する」

受診を阻害し、医療現場を混乱させる

健康保険証の廃止に反対する

 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

翻弄される医療現場 無理筋な被保険者のオンライン資格確認の義務化方針

 医療機関で受診者(被保険者)の保険資格を、デジタルで照会する「オンライン資格確認」の義務化(23年4月)と健康保険証の廃止が、社会保障審議会医療保険部会で方針提起され医療現場が当惑している。骨太方針に盛り込まれ、今夏以降、施行規則や療養担当規則の改定議論となっていく予定だ。

 いずれも「原則」と冠がつき、例外や猶予に耳目が移動していく感があるが、そもそも、これら両方とも無理筋であり、医療現場の混乱と受診の阻害を招き、皆保険制度を揺るがす。我々は強く反対する。

 

有用性が乏しいオンライン資格確認 保険証より「診察券」でカルテは管理

 任意性の下、昨年より始まったオンライン資格確認だが、仕組みはこうである。顔認証付きカードリーダーと資格確認端末を医療機関で備え、患者が個人番号カード(マイナンバーカード)をカードリーダーの読み取り部分に置き、ICチップ内蔵の電子証明書を利用し、支払基金や国保連合会のオンライン資格確認等システムを通じ保険資格を確認する、というのが大筋である。

 ただ、カードリーダーを通さず、健康保険証の記号・番号の手打ち入力での照会確認も可能である。いま騒がれているのは、このカードリーダーと端末の設置による資格確認であり、その延長線上での健康保険証の廃止である。診療報酬の請求・支払いでの資格なし返戻の減少が利便として挙げられている。

 いま健康保険証の資格喪失での返戻は請求件数の0.1%に過ぎない。保険資格確認は月1回の保険証の目視確認で十分であり、オンライン資格確認の選択的な実施を義務化し、強制する必要性は乏しい。

 医療現場は、「診察券」のIDがカルテと結びついており、これで患者管理が行われてきている。健康保険証でカルテの管理はされていない。この変革も企図した「義務化」であり、現場混乱は必至となる。

 

現実の足下に立脚した政策提起が道理

 オンライン資格確認は、医療機関等での医療保険のレセプトオンライン請求のシステム利用が実施の前提となる。しかし全ての医療機関がオンラインで請求はしていない。

 直近の数字で病院はほぼオンライン請求(400床未満:95.4%、400床以上:98.0%)だが、診療所はオンライン請求が7割(71.1%)の一方、電子媒体提出3割弱(25.4%)、紙レセプト提出3.5%とある。ちなみに歯科はオンライン請求が2割強(24.7%)でしかなく、電子媒体提出7割弱(66.8%)、紙レセプト提出1割弱(8.5%)となっている。この環境整備も企図として内在している。

 加えて電子カルテの導入もセットされている。現在、カードリーダー導入に伴うシステム改修に対し補助金が診療所約32万円、病院105万円を上限に支給されている。実はオンライン資格確認により診察券を不要とし、転職や転居等での保険資格異動に連動した円滑な対応ができる。そのためにはレセコンや電子カルテの導入と双方の連携のシステム改修が必要となる。現在、電子カルテシステムの普及状況は一般病院とて57.2%であり、一般診療所も49.9%と半数に過ぎない。紙カルテは多いのである。

 最近の開業者は電子カルテとレセコンの一体型の導入が多いものの、現実を踏まえた政策実施としないと、紙カルテから電子カルテへの変更整備など、過重な負担を強いることになる。

 

「利点」の実用性は疑問

 オンライン資格確認は「利点」として、集積されたレセプトの薬剤情報と特定健診情報を医療機関が患者の「同意」を前提に閲覧、診療利用が可能となっている。だが、効用は疑問である。これはレセプトの薬剤情報であり反映に一月のタイムラグがある。社会的に定着した「お薬手帳」の方が実際的であり、診療現場は不自由しない。ポリファーマシーが問題となる高齢者はなおさらである。電子版お薬手帳も始まっている。 

 また、特定健診だが実施率は平均53.4%であり、市町村国保は33.7%で大都市ほど低い(「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」)。75歳以上の後期高齢者での保険者実施は努力義務であり、実施率は3割を切る。しかも検査項目は、脂質検査(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール)、 血糖検査(空腹時血糖又はHbA1c)、 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)、 検尿は尿糖、尿蛋白に限定される。直近の他医療機関での検査項目、検査値のデータではない。診療上は参考程度となる。

 しかもマイナンバーカードでの資格確認の際にこの利点が実用化する、という「限定版」である。個人の同意で医療機関の閲覧が可能となるが、そもそもの疾病・医療情報の電子媒体へのデータ集積・搭載を、全部または一部を搭載しないオプトアウトの権利は、逆に個人には保障されていない。

 

オンライン資格確認の診療所の実装は2割

マイナンバーカード確認は0.4%と僅少

 昨年10月より全国的にオンライン資格確認が本格導入されたが概況は次の通りである。オンライン資格確認等システムを導入し「運用開始」しているのは全体の25.0%。ただし、医科診療所は16.9%、歯科診療所は17.0%で2割を切っている。病院は41.4%、薬局は43.8%とまだ4割である(7/10時点:厚労省HP)。無償の顔認証付きカードリーダーの申し込みは確かに6割(60.1%)ではあるが、医科診療所(48.8%)、歯科診療所(51.6%)ともに半数であり、「準備完了」はどちらも2割に過ぎない。

 しかも昨年来、オンライン資格確認の総件数(8カ月分)の実に4割は、この4月、5月の運用分である。つまり、緒に就いたばかりである。当初予定は21年3月末までに6割の医療機関での導入だった。が、これが順延を重ね、1年余を経た22年7月現在でも3割弱の導入に過ぎないのである。

 更に「錦の御旗」の、マイナンバーカードでの資格確認は運用件数全体の0.4%に過ぎない(225月分)。実際はそのほとんどが健康保険証の記号・番号の手入力によるオンラインでの照会である。マイナンバーカードの普及率が国民の45.3%(6月末時点。総務省発表)だが、保険証としての代替利用は0.1%(導入実施医療機関等25%×実施率0.4%)、患者千人に1人でしかない。

 利点と謳われる薬剤情報、特定健診情報の医療機関利用は、マイナンバーカードで資格確認した受診者へ可能だが、全てには実施されておらず、直近(5月)でも薬剤情報は4割弱(37.6%)、特定健診等情報は1割強(13.4%)の利用に止まる。この数字はオンライン資格確認の運用件数全体でみて健診は、0.06%、薬剤0.16%でしかなく、更に医療保険請求全体から見れば、極々、僅少である。

 つまり、オンライン資格確認の義務化は、現実社会の実態を踏まえない、相当に遊離した施策の医療現場への強制、強行となる。混乱は必至である。

 

任意性のマイナンバーカードの取得促進の梃

オンライン資格確認の背後に透ける深謀遠慮

 昨年10月より、審査支払機関では、オンライン資格確認の実施に関わらず、医療機関が提出した電子レセプトの資格確認を行い、資格変更があった場合に返戻せずに、新資格の保険者へレセプト請求を「振替」または新旧の保険者への「分割」を実施している。ただ事業者、保険者の届出の遅滞等もあり資格確認は「完全」にはできない。同様に、医療機関のオンライン資格確認でも「完全」とはならない。資格喪失返戻0.1%の最小化はオンライン資格確認の「義務化」の理由にはなり得ないのである。

 これとセットの健康保険証は骨太方針で、24年度中を「目途」に発行の「選択制導入」を「目指し」、さらにオンライン資格確認の導入状況を踏まえ、「原則廃止を目指す」、とされている。一瀉千里の進捗を匂わせ、関係者の錯覚、短慮軽率を誘った感があるが、願望、意志表明の域は出ていない。健康保険証の代替が期されるマイナンバーカードだが、資格確認で利用するICチップ内蔵の電子証明書は有効期限が5年である。そのため更新手続きを怠ると使えない。更新後も24時間以内は健康保険証としての登録手続きができない等、不都合が伴う。法的に、マイナンバーカードの取得は「任意」である。健保法は保険証の利用も法定している。何より、健康保険証で受診する日常生活スタイルが変容を迫られる。

 マイナンバーカードは制度創設当初より「ロードマップ」で2019年度末までに、健康保険証の代替として8,700万枚の交付が計画されていた。ここに及んで、国民IDカードとして強硬策を敷いてきた。当初より本丸は医療である。診療情報連携が口実にされるが、医療情報連携ネットワークは全国に約240地域にあり、カルテ情報や画像などの連携内容・方法は多種多様であり、厚労省もこれを支援している。

 いまマイナポータルを通じて薬剤、医療費、特定健診情報など自己の医療データが閲覧可能となり、PHR(Personal Health Record)に注目が集まっている。この616日、「PHRサービス事業協会(仮称)」の設立宣言発表会が都内で開催された。PHR事業者をはじめ、保険、IT、医療機器、通信、オンライン診療、製薬など全15社が参加し、2023年早期の設立を目指すとした。医療現場とは異なる産業界の虎視眈々とした医療情報の利活用が透けている。我々は保険証廃止とオンライン資格確認義務化に反対する。

2022年7月22日

 

医療機関等の電子レセプトの請求状況(医療機関数・薬局数ベース) 【令和4年4月診療分】

20220722danwa01.png

(社会保険診療報酬支払基金HPより レセプト請求形態別の請求状況 令和4年4月診療分)

 

電子カルテシステム等の普及状況の推移

20220722danwa02.png

(※1) 一般病院とは、病院のうち、精神科病床のみを有する病院及び結核病床のみを有する病院を除いたものをいう。

(※2) 一般診療所とは、診療所のうち歯科医業のみを行う診療所を除いたものをいう。

(※3)宮城県、福島県一部地域除く。 (厚労省HPより)

 

オンライン資格確認システムの導入状況内訳(2022.7.10時点:厚労省HPより作成)

20220722danwa03.png

*1)カードリーダー申込は、顔認証付きカードリーダー申込数のこと。

*2)内訳は内数。

 

オンライン資格確認システムの利用状況(厚労省HPより作成)

1)運用開始施設における資格確認の利用件数

20220722danwa04.png

*1)通常なら運用8カ月での2カ月分は、2カ月/8カ月=25.0%となるが、22年4月分と5月分の計が総合計の4割を占めており、運用が緒についたばかりということがわかる。

 

2)運用施設別の利用内訳件数(2022年5月分)

20220722danwa05.png

*1)直近の22年5月分の運用実績の内訳。

*2)割合は施設別の合計件数に対する各々の内訳件数の割合。

*3)一括照会:医療機関等が事前に予約患者の保険資格が有効かどうか等、オンライン資格確認等システムに一括して照会すること。

 

特定健診等情報・薬剤情報の利用件数(2022年5月分:厚労省㏋より作成)

20220722danwa06.png

*1)マイナンバーカードで資格確認した患者で閲覧の同意をし医療機関等が利用した件数。

*2)右端欄は総件数対比

 

受診を阻害し、医療現場を混乱させる

健康保険証の廃止に反対する

 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

翻弄される医療現場 無理筋な被保険者のオンライン資格確認の義務化方針

 医療機関で受診者(被保険者)の保険資格を、デジタルで照会する「オンライン資格確認」の義務化(23年4月)と健康保険証の廃止が、社会保障審議会医療保険部会で方針提起され医療現場が当惑している。骨太方針に盛り込まれ、今夏以降、施行規則や療養担当規則の改定議論となっていく予定だ。

 いずれも「原則」と冠がつき、例外や猶予に耳目が移動していく感があるが、そもそも、これら両方とも無理筋であり、医療現場の混乱と受診の阻害を招き、皆保険制度を揺るがす。我々は強く反対する。

 

有用性が乏しいオンライン資格確認 保険証より「診察券」でカルテは管理

 任意性の下、昨年より始まったオンライン資格確認だが、仕組みはこうである。顔認証付きカードリーダーと資格確認端末を医療機関で備え、患者が個人番号カード(マイナンバーカード)をカードリーダーの読み取り部分に置き、ICチップ内蔵の電子証明書を利用し、支払基金や国保連合会のオンライン資格確認等システムを通じ保険資格を確認する、というのが大筋である。

 ただ、カードリーダーを通さず、健康保険証の記号・番号の手打ち入力での照会確認も可能である。いま騒がれているのは、このカードリーダーと端末の設置による資格確認であり、その延長線上での健康保険証の廃止である。診療報酬の請求・支払いでの資格なし返戻の減少が利便として挙げられている。

 いま健康保険証の資格喪失での返戻は請求件数の0.1%に過ぎない。保険資格確認は月1回の保険証の目視確認で十分であり、オンライン資格確認の選択的な実施を義務化し、強制する必要性は乏しい。

 医療現場は、「診察券」のIDがカルテと結びついており、これで患者管理が行われてきている。健康保険証でカルテの管理はされていない。この変革も企図した「義務化」であり、現場混乱は必至となる。

 

現実の足下に立脚した政策提起が道理

 オンライン資格確認は、医療機関等での医療保険のレセプトオンライン請求のシステム利用が実施の前提となる。しかし全ての医療機関がオンラインで請求はしていない。

 直近の数字で病院はほぼオンライン請求(400床未満:95.4%、400床以上:98.0%)だが、診療所はオンライン請求が7割(71.1%)の一方、電子媒体提出3割弱(25.4%)、紙レセプト提出3.5%とある。ちなみに歯科はオンライン請求が2割強(24.7%)でしかなく、電子媒体提出7割弱(66.8%)、紙レセプト提出1割弱(8.5%)となっている。この環境整備も企図として内在している。

 加えて電子カルテの導入もセットされている。現在、カードリーダー導入に伴うシステム改修に対し補助金が診療所約32万円、病院105万円を上限に支給されている。実はオンライン資格確認により診察券を不要とし、転職や転居等での保険資格異動に連動した円滑な対応ができる。そのためにはレセコンや電子カルテの導入と双方の連携のシステム改修が必要となる。現在、電子カルテシステムの普及状況は一般病院とて57.2%であり、一般診療所も49.9%と半数に過ぎない。紙カルテは多いのである。

 最近の開業者は電子カルテとレセコンの一体型の導入が多いものの、現実を踏まえた政策実施としないと、紙カルテから電子カルテへの変更整備など、過重な負担を強いることになる。

 

「利点」の実用性は疑問

 オンライン資格確認は「利点」として、集積されたレセプトの薬剤情報と特定健診情報を医療機関が患者の「同意」を前提に閲覧、診療利用が可能となっている。だが、効用は疑問である。これはレセプトの薬剤情報であり反映に一月のタイムラグがある。社会的に定着した「お薬手帳」の方が実際的であり、診療現場は不自由しない。ポリファーマシーが問題となる高齢者はなおさらである。電子版お薬手帳も始まっている。 

 また、特定健診だが実施率は平均53.4%であり、市町村国保は33.7%で大都市ほど低い(「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」)。75歳以上の後期高齢者での保険者実施は努力義務であり、実施率は3割を切る。しかも検査項目は、脂質検査(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール)、 血糖検査(空腹時血糖又はHbA1c)、 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)、 検尿は尿糖、尿蛋白に限定される。直近の他医療機関での検査項目、検査値のデータではない。診療上は参考程度となる。

 しかもマイナンバーカードでの資格確認の際にこの利点が実用化する、という「限定版」である。個人の同意で医療機関の閲覧が可能となるが、そもそもの疾病・医療情報の電子媒体へのデータ集積・搭載を、全部または一部を搭載しないオプトアウトの権利は、逆に個人には保障されていない。

 

オンライン資格確認の診療所の実装は2割

マイナンバーカード確認は0.4%と僅少

 昨年10月より全国的にオンライン資格確認が本格導入されたが概況は次の通りである。オンライン資格確認等システムを導入し「運用開始」しているのは全体の25.0%。ただし、医科診療所は16.9%、歯科診療所は17.0%で2割を切っている。病院は41.4%、薬局は43.8%とまだ4割である(7/10時点:厚労省HP)。無償の顔認証付きカードリーダーの申し込みは確かに6割(60.1%)ではあるが、医科診療所(48.8%)、歯科診療所(51.6%)ともに半数であり、「準備完了」はどちらも2割に過ぎない。

 しかも昨年来、オンライン資格確認の総件数(8カ月分)の実に4割は、この4月、5月の運用分である。つまり、緒に就いたばかりである。当初予定は21年3月末までに6割の医療機関での導入だった。が、これが順延を重ね、1年余を経た22年7月現在でも3割弱の導入に過ぎないのである。

 更に「錦の御旗」の、マイナンバーカードでの資格確認は運用件数全体の0.4%に過ぎない(225月分)。実際はそのほとんどが健康保険証の記号・番号の手入力によるオンラインでの照会である。マイナンバーカードの普及率が国民の45.3%(6月末時点。総務省発表)だが、保険証としての代替利用は0.1%(導入実施医療機関等25%×実施率0.4%)、患者千人に1人でしかない。

 利点と謳われる薬剤情報、特定健診情報の医療機関利用は、マイナンバーカードで資格確認した受診者へ可能だが、全てには実施されておらず、直近(5月)でも薬剤情報は4割弱(37.6%)、特定健診等情報は1割強(13.4%)の利用に止まる。この数字はオンライン資格確認の運用件数全体でみて健診は、0.06%、薬剤0.16%でしかなく、更に医療保険請求全体から見れば、極々、僅少である。

 つまり、オンライン資格確認の義務化は、現実社会の実態を踏まえない、相当に遊離した施策の医療現場への強制、強行となる。混乱は必至である。

 

任意性のマイナンバーカードの取得促進の梃

オンライン資格確認の背後に透ける深謀遠慮

 昨年10月より、審査支払機関では、オンライン資格確認の実施に関わらず、医療機関が提出した電子レセプトの資格確認を行い、資格変更があった場合に返戻せずに、新資格の保険者へレセプト請求を「振替」または新旧の保険者への「分割」を実施している。ただ事業者、保険者の届出の遅滞等もあり資格確認は「完全」にはできない。同様に、医療機関のオンライン資格確認でも「完全」とはならない。資格喪失返戻0.1%の最小化はオンライン資格確認の「義務化」の理由にはなり得ないのである。

 これとセットの健康保険証は骨太方針で、24年度中を「目途」に発行の「選択制導入」を「目指し」、さらにオンライン資格確認の導入状況を踏まえ、「原則廃止を目指す」、とされている。一瀉千里の進捗を匂わせ、関係者の錯覚、短慮軽率を誘った感があるが、願望、意志表明の域は出ていない。健康保険証の代替が期されるマイナンバーカードだが、資格確認で利用するICチップ内蔵の電子証明書は有効期限が5年である。そのため更新手続きを怠ると使えない。更新後も24時間以内は健康保険証としての登録手続きができない等、不都合が伴う。法的に、マイナンバーカードの取得は「任意」である。健保法は保険証の利用も法定している。何より、健康保険証で受診する日常生活スタイルが変容を迫られる。

 マイナンバーカードは制度創設当初より「ロードマップ」で2019年度末までに、健康保険証の代替として8,700万枚の交付が計画されていた。ここに及んで、国民IDカードとして強硬策を敷いてきた。当初より本丸は医療である。診療情報連携が口実にされるが、医療情報連携ネットワークは全国に約240地域にあり、カルテ情報や画像などの連携内容・方法は多種多様であり、厚労省もこれを支援している。

 いまマイナポータルを通じて薬剤、医療費、特定健診情報など自己の医療データが閲覧可能となり、PHR(Personal Health Record)に注目が集まっている。この616日、「PHRサービス事業協会(仮称)」の設立宣言発表会が都内で開催された。PHR事業者をはじめ、保険、IT、医療機器、通信、オンライン診療、製薬など全15社が参加し、2023年早期の設立を目指すとした。医療現場とは異なる産業界の虎視眈々とした医療情報の利活用が透けている。我々は保険証廃止とオンライン資格確認義務化に反対する。

2022年7月22日

 

医療機関等の電子レセプトの請求状況(医療機関数・薬局数ベース) 【令和4年4月診療分】

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(社会保険診療報酬支払基金HPより レセプト請求形態別の請求状況 令和4年4月診療分)

 

電子カルテシステム等の普及状況の推移

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(※1) 一般病院とは、病院のうち、精神科病床のみを有する病院及び結核病床のみを有する病院を除いたものをいう。

(※2) 一般診療所とは、診療所のうち歯科医業のみを行う診療所を除いたものをいう。

(※3)宮城県、福島県一部地域除く。 (厚労省HPより)

 

オンライン資格確認システムの導入状況内訳(2022.7.10時点:厚労省HPより作成)

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*1)カードリーダー申込は、顔認証付きカードリーダー申込数のこと。

*2)内訳は内数。

 

オンライン資格確認システムの利用状況(厚労省HPより作成)

1)運用開始施設における資格確認の利用件数

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*1)通常なら運用8カ月での2カ月分は、2カ月/8カ月=25.0%となるが、22年4月分と5月分の計が総合計の4割を占めており、運用が緒についたばかりということがわかる。

 

2)運用施設別の利用内訳件数(2022年5月分)

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*1)直近の22年5月分の運用実績の内訳。

*2)割合は施設別の合計件数に対する各々の内訳件数の割合。

*3)一括照会:医療機関等が事前に予約患者の保険資格が有効かどうか等、オンライン資格確認等システムに一括して照会すること。

 

特定健診等情報・薬剤情報の利用件数(2022年5月分:厚労省㏋より作成)

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*1)マイナンバーカードで資格確認した患者で閲覧の同意をし医療機関等が利用した件数。

*2)右端欄は総件数対比