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2026/6/19 医療情報部長談話「厳格な安全性の仕組みを無意味化し、 市民の安全な暮らしを脅かす個人情報保護法改定案に反対する」

 

厳格な安全性の仕組みを無意味化し、

市民の安全な暮らしを脅かす個人情報保護法改定案に反対する

神奈川県保険医協会

医療情報部長 藤田倫成(談話)

 


 

 現在参議院で議論されている個人情報保護法の改定案では、要配慮個人情報の取得や提供に関し"本人の同意"を不要とする方向性が盛り込まれた。高市政権が掲げるAI開発の産業競争力確保の方針を背景として、これまでの規制を大幅に緩和する内容となっている。

 病歴などの要配慮個人情報を扱うには、厳格な取り扱いを備えた制度設計が不可欠である。本人不在の中で、ひとたび不正使用や情報漏洩などが生じれば個人の尊厳と安全を脅かす可能性が飛躍的に高まる。重大なリスクを内包する本改定案は一旦廃案とし、これまで慎重を期して構築してきた個人情報保護の取り扱いを踏まえた制度として再検討すべきである。

 改定案では、AI開発を含む統計作成などを目的とし、その内容の公表がある場合に個人データ等の第三者提供や要配慮個人情報の取得について、従来必要であった本人同意を不要とする規定が盛り込まれた。しかし適正な運用がなされるかについては不透明である。要配慮個人情報の取得や第三者提供を個人情報保護委員会などがすべて把握することは考えにくく、無数の個人情報取扱事業者に委ねられる形となることが懸念される。公的な事前のチェックがなければ、不正や目的外利用の把握は内部通報や事件化などによる事後的なものにならざるを得ない。第三者提供の際に契約を交わすとしても、データを渡す側が受け取る相手方の身元や利用目的の整合性を継続的に厳格に審査する人手や専門知識があるとは限らず、チェック機能の形骸化は火を見るより明らかである。

 また生命等の保護や公衆衛生の向上などのため「同意を得ないことについて相当な理由があるとき」や、「取得状況からみて本人の意思に反しないことが明らかである場合」などに同意なしでの取得・提供を可能としている。しかし、何をもって「相当な理由」や「本人の意思に反しない」と判断するのか基準が不明瞭で、事業者による恣意的な運用を招く恐れがある。一方、新薬やAI開発などにより公的医療保険が充実するような公衆衛生の向上に資するのであれば、医療データの活用は有用な側面もあることも事実である。そのため国は2018年に「次世代医療基盤法」を定め、国が認定した極めてガバナンスの高い限定的な「認定事業者」だけがデータを集約・匿名化・仮名化し、申請に基づいて提供することができる安全の仕組みを構築してきた。今回の改定案は、これまでの厳格な安全性の仕組みを無意味化する、極めて乱暴なものである。

 日本の個人情報保護の考え方はとりわけ先進的というわけではない。それでも病歴や思想信条、犯罪歴といった「一度漏れたら取り返しのつかない情報」は、現行の個人情報保護法で「要配慮個人情報」として「本人同意なしの取得」は原則として制限されている。これはひとたび要配慮個人情報が流通すれば、本人が知らぬまま就職差別やローンの審査拒否、保険の加入拒否といった事態に直面し、人生設計や社会生活を根底から崩壊させられる恐れがあるためだ。さらには認知症の通院歴や経済的困窮といった弱みに関する情報が、不正な使用によって犯罪組織などに渡った場合、強盗や詐欺行為などに悪用される危険性が極めて高くなる。新設された課徴金制度も1000人未満と小規模に不正取得・転売を行う名簿業者などには適用されず、悪意ある事業者や犯罪組織への流出対策としては不十分だ。

 リスクを軽んじ、悪意ある事業者や犯罪組織への流出対策が不十分なまま、本人の同意を不要にすることは、市民の安全な暮らしを脅かす凶器となり得る。そればかりか、患者の要配慮個人情報を取り扱う医療機関等への不信感を増大させ、かえって有益な医療情報の利活用そのものを阻害しかねない。

 利便性の追求よりも、個人の尊厳と安全を守る仕組みの構築を最優先すべきである。本改定案に対しては一旦廃案とし、慎重な議論を行った上で、再度法案を作り直すべきである。とすることを強く求める。

 

2026年6月19

   

 

厳格な安全性の仕組みを無意味化し、

市民の安全な暮らしを脅かす個人情報保護法改定案に反対する

神奈川県保険医協会

医療情報部長 藤田倫成(談話)

 


 

 現在参議院で議論されている個人情報保護法の改定案では、要配慮個人情報の取得や提供に関し"本人の同意"を不要とする方向性が盛り込まれた。高市政権が掲げるAI開発の産業競争力確保の方針を背景として、これまでの規制を大幅に緩和する内容となっている。

 病歴などの要配慮個人情報を扱うには、厳格な取り扱いを備えた制度設計が不可欠である。本人不在の中で、ひとたび不正使用や情報漏洩などが生じれば個人の尊厳と安全を脅かす可能性が飛躍的に高まる。重大なリスクを内包する本改定案は一旦廃案とし、これまで慎重を期して構築してきた個人情報保護の取り扱いを踏まえた制度として再検討すべきである。

 改定案では、AI開発を含む統計作成などを目的とし、その内容の公表がある場合に個人データ等の第三者提供や要配慮個人情報の取得について、従来必要であった本人同意を不要とする規定が盛り込まれた。しかし適正な運用がなされるかについては不透明である。要配慮個人情報の取得や第三者提供を個人情報保護委員会などがすべて把握することは考えにくく、無数の個人情報取扱事業者に委ねられる形となることが懸念される。公的な事前のチェックがなければ、不正や目的外利用の把握は内部通報や事件化などによる事後的なものにならざるを得ない。第三者提供の際に契約を交わすとしても、データを渡す側が受け取る相手方の身元や利用目的の整合性を継続的に厳格に審査する人手や専門知識があるとは限らず、チェック機能の形骸化は火を見るより明らかである。

 また生命等の保護や公衆衛生の向上などのため「同意を得ないことについて相当な理由があるとき」や、「取得状況からみて本人の意思に反しないことが明らかである場合」などに同意なしでの取得・提供を可能としている。しかし、何をもって「相当な理由」や「本人の意思に反しない」と判断するのか基準が不明瞭で、事業者による恣意的な運用を招く恐れがある。一方、新薬やAI開発などにより公的医療保険が充実するような公衆衛生の向上に資するのであれば、医療データの活用は有用な側面もあることも事実である。そのため国は2018年に「次世代医療基盤法」を定め、国が認定した極めてガバナンスの高い限定的な「認定事業者」だけがデータを集約・匿名化・仮名化し、申請に基づいて提供することができる安全の仕組みを構築してきた。今回の改定案は、これまでの厳格な安全性の仕組みを無意味化する、極めて乱暴なものである。

 日本の個人情報保護の考え方はとりわけ先進的というわけではない。それでも病歴や思想信条、犯罪歴といった「一度漏れたら取り返しのつかない情報」は、現行の個人情報保護法で「要配慮個人情報」として「本人同意なしの取得」は原則として制限されている。これはひとたび要配慮個人情報が流通すれば、本人が知らぬまま就職差別やローンの審査拒否、保険の加入拒否といった事態に直面し、人生設計や社会生活を根底から崩壊させられる恐れがあるためだ。さらには認知症の通院歴や経済的困窮といった弱みに関する情報が、不正な使用によって犯罪組織などに渡った場合、強盗や詐欺行為などに悪用される危険性が極めて高くなる。新設された課徴金制度も1000人未満と小規模に不正取得・転売を行う名簿業者などには適用されず、悪意ある事業者や犯罪組織への流出対策としては不十分だ。

 リスクを軽んじ、悪意ある事業者や犯罪組織への流出対策が不十分なまま、本人の同意を不要にすることは、市民の安全な暮らしを脅かす凶器となり得る。そればかりか、患者の要配慮個人情報を取り扱う医療機関等への不信感を増大させ、かえって有益な医療情報の利活用そのものを阻害しかねない。

 利便性の追求よりも、個人の尊厳と安全を守る仕組みの構築を最優先すべきである。本改定案に対しては一旦廃案とし、慎重な議論を行った上で、再度法案を作り直すべきである。とすることを強く求める。

 

2026年6月19