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医療運動部会長談話 「75歳以上の医療費窓口負担『2倍化』 法案採決に抗議する」

75歳以上の医療費窓口負担『2倍化』 法案採決に抗議する

 

神奈川県保険医協会

医療運動部会長 二村 哲


 6月3日、参議院厚生労働委員会にて75歳以上の医療費窓口負担の「2割化」を含む「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」が、自民・公明・維新・国民民主の賛成多数で可決され、4日、参議院本会議にて成立した。当会は、「いつでも」「どこでも」「誰でも」保険証1枚でかかれる日本の医療制度の“安心”を脅かす、同法案成立に抗議する。

 

 新型コロナウイルス感染症の拡大は第4波を迎え、収束のめどが立たない状況が続いている。5月28日に発表された2020年度・毎月勤労統計調査によると、新型コロナ感染拡大が本格化した昨年度給与総額は、前年度比1.5%減の31万8081円(一人あたり・月平均)と8年ぶりに減少。高齢者に関しては今年4月から年金受給額が前年度比0.1%の引き下げとなっている。1年半にも及ぶコロナ禍で、高齢者含む国民の暮らしぶりは厳しくなる一方であり、先行き不安を抱える人は多い。2割導入にあたり「現役世代の負担軽減」が喧伝されたが、保険料の軽減額は月額30円(*1)足らずであり、公費及び企業支出を削減するため、世代間分断を狙ったミスリードであることは明らかである。負担軽減どころか、現役世代に将来不安を抱かせ、長い消費低迷を招く結果となりかねない。

 

 同法案審議の過程で国は、窓口負担の2割導入による給付削減額は1,880億円とし、そのうち900億円(*2)は高齢者が負担増で受診を控えることによるものとした。国が想定する『財政効果』の半分は、経済的ハードルによって患者が受診を諦めることを期待したものであり、社会保障の理念に悖る。

 負担増額を3千円以内に抑える『配慮措置』は、そもそも3年間の時限措置であるが、適用されたとしても窓口負担額は現在の約8・3万円から約10・9万円へと約2・6万円増加(一人あたり・年平均)する。医療費が2倍になっても年金収入は増えないため、内科、整形外科、眼科、歯科など複数科に通院する高齢者は、預金や生活費を切り崩すだけでは従来通り受診が出来ず、受診控えを強いられることになる。日本高齢期運動連絡会のアンケートによれば、1割負担から2割負担となったら約3割の高齢者が、「通院回数を減らす」、「受診科の数を減らす」、「薬の飲み方を自分で調整する(いわゆる“飲み延ばし”)」と回答している。年収200万円(単身世帯)という所得ラインも、これら高齢者の生活実態を踏まえ設計されたものではなく、国会審議を経ることなく今後政令で変更できてしまう点も問題が大きい。

 

 さらに6月1日の参議院厚生労働委員会で、負担軽減のため自治体が独自に高齢者に医療費助成を行うことに対し、田村厚労大臣が「法の趣旨に反する」とし、助成しないよう自治体に依頼していくと言及した。これは地方単独事業を実施する市町村への国保減額調整措置を念頭に置いた発言であり、財政ペナルティを盾に受療権を奪う行為となりかねない。

 

 国民のいのち、健康を守るために政府・国会がいま全力を上げなければならないのは、新型コロナウイルス感染症の一日も早い収束と打撃を受けた国民生活の再建であり、医療にかかる「不安」を与える政策決定ではない。

 われわれは高齢者の受療権を侵害し、国民皆保険の形骸化を招く「75歳以上の窓口負担2割」導入の法案採決に断固抗議し、中止を強く求める。

2021年6月4日


*1:第135回社保審・医療保険部会資料。前年度からの支援金増加額の差額を事業主と折半した場合の2022年時点の被用者本人負担

*2:2022年度時点

75歳以上の医療費窓口負担『2倍化』 法案採決に抗議する

 

神奈川県保険医協会

医療運動部会長 二村 哲


 6月3日、参議院厚生労働委員会にて75歳以上の医療費窓口負担の「2割化」を含む「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」が、自民・公明・維新・国民民主の賛成多数で可決され、4日、参議院本会議にて成立した。当会は、「いつでも」「どこでも」「誰でも」保険証1枚でかかれる日本の医療制度の“安心”を脅かす、同法案成立に抗議する。

 

 新型コロナウイルス感染症の拡大は第4波を迎え、収束のめどが立たない状況が続いている。5月28日に発表された2020年度・毎月勤労統計調査によると、新型コロナ感染拡大が本格化した昨年度給与総額は、前年度比1.5%減の31万8081円(一人あたり・月平均)と8年ぶりに減少。高齢者に関しては今年4月から年金受給額が前年度比0.1%の引き下げとなっている。1年半にも及ぶコロナ禍で、高齢者含む国民の暮らしぶりは厳しくなる一方であり、先行き不安を抱える人は多い。2割導入にあたり「現役世代の負担軽減」が喧伝されたが、保険料の軽減額は月額30円(*1)足らずであり、公費及び企業支出を削減するため、世代間分断を狙ったミスリードであることは明らかである。負担軽減どころか、現役世代に将来不安を抱かせ、長い消費低迷を招く結果となりかねない。

 

 同法案審議の過程で国は、窓口負担の2割導入による給付削減額は1,880億円とし、そのうち900億円(*2)は高齢者が負担増で受診を控えることによるものとした。国が想定する『財政効果』の半分は、経済的ハードルによって患者が受診を諦めることを期待したものであり、社会保障の理念に悖る。

 負担増額を3千円以内に抑える『配慮措置』は、そもそも3年間の時限措置であるが、適用されたとしても窓口負担額は現在の約8・3万円から約10・9万円へと約2・6万円増加(一人あたり・年平均)する。医療費が2倍になっても年金収入は増えないため、内科、整形外科、眼科、歯科など複数科に通院する高齢者は、預金や生活費を切り崩すだけでは従来通り受診が出来ず、受診控えを強いられることになる。日本高齢期運動連絡会のアンケートによれば、1割負担から2割負担となったら約3割の高齢者が、「通院回数を減らす」、「受診科の数を減らす」、「薬の飲み方を自分で調整する(いわゆる“飲み延ばし”)」と回答している。年収200万円(単身世帯)という所得ラインも、これら高齢者の生活実態を踏まえ設計されたものではなく、国会審議を経ることなく今後政令で変更できてしまう点も問題が大きい。

 

 さらに6月1日の参議院厚生労働委員会で、負担軽減のため自治体が独自に高齢者に医療費助成を行うことに対し、田村厚労大臣が「法の趣旨に反する」とし、助成しないよう自治体に依頼していくと言及した。これは地方単独事業を実施する市町村への国保減額調整措置を念頭に置いた発言であり、財政ペナルティを盾に受療権を奪う行為となりかねない。

 

 国民のいのち、健康を守るために政府・国会がいま全力を上げなければならないのは、新型コロナウイルス感染症の一日も早い収束と打撃を受けた国民生活の再建であり、医療にかかる「不安」を与える政策決定ではない。

 われわれは高齢者の受療権を侵害し、国民皆保険の形骸化を招く「75歳以上の窓口負担2割」導入の法案採決に断固抗議し、中止を強く求める。

2021年6月4日


*1:第135回社保審・医療保険部会資料。前年度からの支援金増加額の差額を事業主と折半した場合の2022年時点の被用者本人負担

*2:2022年度時点