神奈川県保険医協会とは
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2026/5/19 政策部長談話「『一部保険外療養』は厚労大臣に強権を付与する『パンドラの箱』 OTC類似薬は『見せ球』 健保法改定案に反対する」
「一部保険外療養」は厚労大臣に強権を付与する「パンドラの箱」
OTC類似薬は「見せ球」 健保法改定案に反対する
神奈川県保険医協会
政策部長 磯崎 哲男
◆条文の「その他の」以降が「主部」で鬼門 技術料や軽医療外し、地域別報酬が大臣裁量で可能な仕組み
健保法等改定案が4月28日、衆院本会議で可決され、審議の舞台が参議院に移った。今法案で制度創設が盛り込まれた「一部保険外療養」は、OTC(市販薬)類似の処方薬の一部保険外しの仕組みとの巷の理解と異なり、本質は大臣裁量で保険給付を部分的に外すことが可能な仕組みである。
既に衆院の議論で明らかにされているが、法律案条文(第63第2項第6号)の「その他」以降が鬼門である。これにより、技術料や軽医療の保険外し、地域別診療報酬が、従来と比し容易に可能となる。「療養の給付」の保険給付の対象範囲を掘り崩す「パンドラの箱」となる。われわれは、一部保険外療養を創設する健保法改定案に強く反対し、廃案・修正を求める。
◆審議会の議論の結論をすり替えた一部保険外療養 逸脱是正へ参院審議での法案修正が道理
OTC類似の処方薬の保険外化を巡る昨年来の議論の攻防の結果、薬価の1/4の部分的保険外しで社会保障審議会医療保険部会での議論が落着し、そのための法案化がなされた。これが一般的な理解である。
しかし、健保法改定案では、新設する一部保険外療養(第63条第2項第6号)の条文を「要指導医薬品又は一般用医薬品との代替性が特に高い薬剤を用いた療養その他の適正な医療の提供を確保しつつ、公平かつ効率的な保険給付を行う必要性に鑑みその要する費用のうち一部を保険給付の対象としないものとする療養として厚生労働大臣が定めるもの」(*便宜的に条文カッコ内省略)とした。
一見、冒頭のOTC類似の処方薬の一部保険外しに力点があるように読めるが、実は「その他の」以降の「療養」までが主部であり、冒頭の部分は例示という構造になる。一部保険外しはOTC類似の処方薬に限定されておらず、広く投網がかけられている。衆院の審議で上野厚労大臣は法案附則でOTC類似薬に関する検討規定を設けているとしつつも、「規定ぶりはそのように読める」と否定はしていない。
衆院可決後、保険局医療課へ当協会より照会したが、「規定ぶり」については同様の返答であり、条文の「その他の」を受ける文言は「療養」であるとしている。一部保険外しの対象範囲は大臣裁量となる。
こんな議論は、医療保険部会では何も議論していない。政治上も、医療界も関知していない。参院の法案審議では、最低限、一部保険外しをOTC類似の処方薬に限局する条文修正、法案修正は道理である。
◆医師過多区域への一部保険外、1点単価9円も可能となる危険な一部保険外療養
2026年4月施行の改正医療法により、外来医師過多区域で無床診療所を新規開設する場合に、6か月前の届出義務化等の開業規制が導入された。対象は東京都、大阪市、京都市、神戸市などの9医療圏となっている。この診療報酬の1点単価10円を9円とする一部保険外療養を適用すれば地域別診療報酬となる。制度的に難しかった軽医療の保険外しなども、同様に可能となる。法案修正や法案附則で限局化を図らないと時限爆弾的なパンドラの箱となる。いま一度、慎重審議を期すべきである。
◆OTC類似薬の部分的外しは実務の世界では6割負担 費用外しがなぜ保険外併用療養なのか
今回の医療保険制度改革のポイントとして「OTC類似薬の自己負担額のイメージ」が厚労省HPに掲載されている。解熱鎮痛薬で45円が72円となりOTC医薬品購入約500円より大幅に安いと錯覚させているが、医療用医薬品は10割負担でも150円である。薬価の1/4を保険外とし理論値で5割負担だが、保険請求ルールにより実務の世界では85円で56.6%、6割弱の負担となる。医療保険の保険料を支払った上でのこの自己負担水準は異常である。一般社会での自賠責保険で生じたら受容は不可能である。
保険外併用療養は、先進医療や治験段階の薬剤や差額ベッド等のアメニティーなど保険外の技術・薬剤・サービスとの併用である。しかし一部保険外療養は、保険給付の「費用」を保険外としたものとの併用である。患者要望に応える保険外併用療養の制度趣旨から逸脱している。制度の再設計が必須である。
われわれは、皆保険制度の理念に反す、一部保険外療養を創設する健保法改定案に改めて反対する。
2026年5月19日
◆一部保険外療養の健康保険法改正条文
「第63条第2項に次の1号を加える。
6 要指導医薬品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第4条第5項第3号に規定する要指導医薬品をいう。)又は一般用医薬品(同項第4号に規定する一般用医薬品をいう。)との代替性が特に高い薬剤を用いた療養その他の適正な医療の提供を確保しつつ、公平かつ効率的な保険給付を行う必要性に鑑みその要する費用のうち一部を保険給付の対象としないものとする療養として厚生労働大臣が定めるもの(以下「一部保険外療養」という。)」
<参考>
健康保険法 第63条の第1項に「療養の給付」(疾病又は負傷に関して、療養の給付として、①診察、②薬剤又は治療材料の支給、③処置、手術その他の治療、などを行う。)の基本的な条文がある。
第2項に「療養の給付」以外の「食事療養」「生活療養」と3つの「保険外併用療養」(評価療養〔3号〕、患者申出療養〔4号〕選定療養〔5号〕)が定められている。
今回、新たに「一部保険外療養」を創設すべく、同法第63条第2項に1号を加え、それを第5号の選定療養の後ろに付けて、第6号としている。
◆OTC類似薬の薬剤給付の見直しの厚労省広報のトリック
1)「医療用医薬院の自己負担額のイメージ」の「解熱鎮痛剤」は、
ロキソニン錠60㎎(薬価10.80円)と思われる。
2)朝昼晩の服用で1剤(服用方法の同一なものはまとめて「剤」という所定単位で計算する)は
1点10円の点数換算で
10.80円×3回=32.4円=3点。 5日分で3点×5日分×10円×0.3(3割負担)=45円(患者負担)。
3)これが、10割負担だとしても、自己負担は150円で、OTC医薬品購入約500円より大幅に安い。
4)今回、これが「薬価」の1/4が保険外となるので、薬価の保険分は10.8円×3/4=8.1円
差額料金は10.8円×1/4=2.7円 1剤分の保険分は8.1円×3回=24.3円=2点
これが5日分なので2点×5日分×10円×0.3(3割負担)=30円
差額料金の1剤分は2.7円×3回=8.1円=1点 これが5日分なので
1点×5日分×10円×1.1(消費税10%)=55円 よって合計85円。
5)厚労省資料の72円より実際の世界の85円の方が高く、
負担率56.6%で理論値の47.5%より実は10ポイントも高い
「一部保険外療養」は厚労大臣に強権を付与する「パンドラの箱」
OTC類似薬は「見せ球」 健保法改定案に反対する
神奈川県保険医協会
政策部長 磯崎 哲男
◆条文の「その他の」以降が「主部」で鬼門 技術料や軽医療外し、地域別報酬が大臣裁量で可能な仕組み
健保法等改定案が4月28日、衆院本会議で可決され、審議の舞台が参議院に移った。今法案で制度創設が盛り込まれた「一部保険外療養」は、OTC(市販薬)類似の処方薬の一部保険外しの仕組みとの巷の理解と異なり、本質は大臣裁量で保険給付を部分的に外すことが可能な仕組みである。
既に衆院の議論で明らかにされているが、法律案条文(第63第2項第6号)の「その他」以降が鬼門である。これにより、技術料や軽医療の保険外し、地域別診療報酬が、従来と比し容易に可能となる。「療養の給付」の保険給付の対象範囲を掘り崩す「パンドラの箱」となる。われわれは、一部保険外療養を創設する健保法改定案に強く反対し、廃案・修正を求める。
◆審議会の議論の結論をすり替えた一部保険外療養 逸脱是正へ参院審議での法案修正が道理
OTC類似の処方薬の保険外化を巡る昨年来の議論の攻防の結果、薬価の1/4の部分的保険外しで社会保障審議会医療保険部会での議論が落着し、そのための法案化がなされた。これが一般的な理解である。
しかし、健保法改定案では、新設する一部保険外療養(第63条第2項第6号)の条文を「要指導医薬品又は一般用医薬品との代替性が特に高い薬剤を用いた療養その他の適正な医療の提供を確保しつつ、公平かつ効率的な保険給付を行う必要性に鑑みその要する費用のうち一部を保険給付の対象としないものとする療養として厚生労働大臣が定めるもの」(*便宜的に条文カッコ内省略)とした。
一見、冒頭のOTC類似の処方薬の一部保険外しに力点があるように読めるが、実は「その他の」以降の「療養」までが主部であり、冒頭の部分は例示という構造になる。一部保険外しはOTC類似の処方薬に限定されておらず、広く投網がかけられている。衆院の審議で上野厚労大臣は法案附則でOTC類似薬に関する検討規定を設けているとしつつも、「規定ぶりはそのように読める」と否定はしていない。
衆院可決後、保険局医療課へ当協会より照会したが、「規定ぶり」については同様の返答であり、条文の「その他の」を受ける文言は「療養」であるとしている。一部保険外しの対象範囲は大臣裁量となる。
こんな議論は、医療保険部会では何も議論していない。政治上も、医療界も関知していない。参院の法案審議では、最低限、一部保険外しをOTC類似の処方薬に限局する条文修正、法案修正は道理である。
◆医師過多区域への一部保険外、1点単価9円も可能となる危険な一部保険外療養
2026年4月施行の改正医療法により、外来医師過多区域で無床診療所を新規開設する場合に、6か月前の届出義務化等の開業規制が導入された。対象は東京都、大阪市、京都市、神戸市などの9医療圏となっている。この診療報酬の1点単価10円を9円とする一部保険外療養を適用すれば地域別診療報酬となる。制度的に難しかった軽医療の保険外しなども、同様に可能となる。法案修正や法案附則で限局化を図らないと時限爆弾的なパンドラの箱となる。いま一度、慎重審議を期すべきである。
◆OTC類似薬の部分的外しは実務の世界では6割負担 費用外しがなぜ保険外併用療養なのか
今回の医療保険制度改革のポイントとして「OTC類似薬の自己負担額のイメージ」が厚労省HPに掲載されている。解熱鎮痛薬で45円が72円となりOTC医薬品購入約500円より大幅に安いと錯覚させているが、医療用医薬品は10割負担でも150円である。薬価の1/4を保険外とし理論値で5割負担だが、保険請求ルールにより実務の世界では85円で56.6%、6割弱の負担となる。医療保険の保険料を支払った上でのこの自己負担水準は異常である。一般社会での自賠責保険で生じたら受容は不可能である。
保険外併用療養は、先進医療や治験段階の薬剤や差額ベッド等のアメニティーなど保険外の技術・薬剤・サービスとの併用である。しかし一部保険外療養は、保険給付の「費用」を保険外としたものとの併用である。患者要望に応える保険外併用療養の制度趣旨から逸脱している。制度の再設計が必須である。
われわれは、皆保険制度の理念に反す、一部保険外療養を創設する健保法改定案に改めて反対する。
2026年5月19日
◆一部保険外療養の健康保険法改正条文
「第63条第2項に次の1号を加える。
6 要指導医薬品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第4条第5項第3号に規定する要指導医薬品をいう。)又は一般用医薬品(同項第4号に規定する一般用医薬品をいう。)との代替性が特に高い薬剤を用いた療養その他の適正な医療の提供を確保しつつ、公平かつ効率的な保険給付を行う必要性に鑑みその要する費用のうち一部を保険給付の対象としないものとする療養として厚生労働大臣が定めるもの(以下「一部保険外療養」という。)」
<参考>
健康保険法 第63条の第1項に「療養の給付」(疾病又は負傷に関して、療養の給付として、①診察、②薬剤又は治療材料の支給、③処置、手術その他の治療、などを行う。)の基本的な条文がある。
第2項に「療養の給付」以外の「食事療養」「生活療養」と3つの「保険外併用療養」(評価療養〔3号〕、患者申出療養〔4号〕選定療養〔5号〕)が定められている。
今回、新たに「一部保険外療養」を創設すべく、同法第63条第2項に1号を加え、それを第5号の選定療養の後ろに付けて、第6号としている。
◆OTC類似薬の薬剤給付の見直しの厚労省広報のトリック
1)「医療用医薬院の自己負担額のイメージ」の「解熱鎮痛剤」は、
ロキソニン錠60㎎(薬価10.80円)と思われる。
2)朝昼晩の服用で1剤(服用方法の同一なものはまとめて「剤」という所定単位で計算する)は
1点10円の点数換算で
10.80円×3回=32.4円=3点。 5日分で3点×5日分×10円×0.3(3割負担)=45円(患者負担)。
3)これが、10割負担だとしても、自己負担は150円で、OTC医薬品購入約500円より大幅に安い。
4)今回、これが「薬価」の1/4が保険外となるので、薬価の保険分は10.8円×3/4=8.1円
差額料金は10.8円×1/4=2.7円 1剤分の保険分は8.1円×3回=24.3円=2点
これが5日分なので2点×5日分×10円×0.3(3割負担)=30円
差額料金の1剤分は2.7円×3回=8.1円=1点 これが5日分なので
1点×5日分×10円×1.1(消費税10%)=55円 よって合計85円。
5)厚労省資料の72円より実際の世界の85円の方が高く、
負担率56.6%で理論値の47.5%より実は10ポイントも高い

