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2025/12/17 理事長・医療運動部会長声明「高市首相の英断を求める 全ての医療機関の支援と、10%以上の診療報酬プラス改定を」

高市首相の英断を求める

全ての医療機関の支援と、10%以上の診療報酬プラス改定を


神奈川県保険医協会

理事長  田辺 由紀夫

医療運動部会長  二村 哲

 


 

 政府は1128日、2025年度補正予算を閣議決定。衆議院での審議を経て、1216日に参院本会議で可決、成立した。補正予算の一般会計総額は、183,034億円とコロナ禍以降最大規模で、医療・介護等支援パッケージ(医療分野)における「賃上げ・物価上昇に対する支援」は、5,341億円となった。医科・歯科無床診療所に対する補助金(支援額)は、一律32万円(賃金15万円、物価17万円)とされた。

 この補助金の賃金15万円分の支給について、ベースアップ評価料の届出医療機関に限られるとの報道もある。ベースアップ評価料は病院で約9割が届け出ているが、診療所は4割程度にとどまる。その理由は様々だが、大きくは当該評価料の届出が複雑・煩雑な点であり、小規模な無床診療所ではその対応が困難であるからだ。一方で無床診療所は当該評価料を届出せずとも、院長給与を削減するなどして職員の賃上げを実施しているところは少なくない。10月には最低賃金の引き上げもあり、どの医療機関も賃上げ対応に苦慮している。当該評価料を届出・算定していても賃上げ率は平均3.4%(24年度、25年度)にとどまり、全産業平均7.3%の半分にも満たない水準である1。賃金15万円分においても、全ての医療機関を対象とすることで、早急な補助金支給にも結び付く。公平かつ迅速な対応を求める。

 また、補正予算による補助金対応はあくまで一時的なものであり、最重要は2026年度診療報酬改定である。医療機関の窮状が待ったなしの状況であることは、この間の厚労省調査等で明らかだ。社会保障審議会・医療部会(1027日)では、無床診療所(医療法人に限る)の2024年度経常利益率の平均値は6.4%だが、最頻値を見ると0.0%~1.0%と「利益がギリギリ出せるかどうか」であり、本業に限った「医業収支」は実に4割が赤字だ※2。中央社会保険医療協議会(中医協、1126日)の「第25回医療経済実態調査」では個人立の数字が示され、医科・無床診療所の2024年度損益率の平均は28.3%と前年に比べ▲4.0%の減少。注視すべき「最頻損益差額階級」の損益差額は749万円に過ぎず、歯科診療所に至っては634万円と散々たる状況である※3。保団連・関東ブロックの9協会(当会も加盟)で行った調査でも、個人立・医科無床診療所(回答数75件)の事業所得は年間408万円減(平均)、前年度比▲17.2%であった※4。中医協で支払い側は診療所を「底堅く推移」としたが、全く医療機関の実態を顧みていない。

 この間、消費税をはじめとする国の税収は増加の一途で、当初予算より2.9兆円上振れて80兆円を超える見込みである。全国健康保険協会(協会けんぽ)は賃上げ等により保険料収入が増加しており、2026年度には保険料率を引き下げる見通しだ。自民党の社会保障制度調査会も124日、物価高に苦しむ医療機関の苦境や賃上げ困難な実態、人材流出などを案じ、次回改定では物価や賃上げ対応分にとどまらず、他産業平均と遜色ない賃金水準となるよう「必要十分な改定」を求めた。過去に例のない、診療報酬の大幅引き上げを実施する状況は整っている。

 地域医療は、診療所と病院が連携することで「面」として支えている。当然、どちらかが機能不全に陥れば地域医療は崩壊していく。すでに神奈川県内でも医療機関の撤退により、医療提供が困難な地域も出てきている。当会が実施した「診療報酬の大幅引き上げを求める署名」には、近年では例のない1,388名もの会員の協力があった。医療機関の窮状は待ったなしである。2026年度診療報酬改定は、病院・診療所問わず、10%以上の大幅な引き上げが必須である。改定率が示されるのは間近だ。我々は、高市首相の英断に期待する。

2025年1217

  

※1:2025821日 中央社会保険医療協議会(中医協)入院・外来医療等の調査・評価分科会

※2:20251027日 第120回社会保障審議会医療部会「医療法人の経営状況(R7.7月末時点)」

※3:20251126日 中央社会保険医療協議会 総会(第630回)第25回医療経済実態調査報告

※4:20251012日 医療機関経営実態調査報告 保団連関東ブロック協議会

 

高市首相の英断を求める

全ての医療機関の支援と、10%以上の診療報酬プラス改定を


神奈川県保険医協会

理事長  田辺 由紀夫

医療運動部会長  二村 哲

 


 

 政府は1128日、2025年度補正予算を閣議決定。衆議院での審議を経て、1216日に参院本会議で可決、成立した。補正予算の一般会計総額は、183,034億円とコロナ禍以降最大規模で、医療・介護等支援パッケージ(医療分野)における「賃上げ・物価上昇に対する支援」は、5,341億円となった。医科・歯科無床診療所に対する補助金(支援額)は、一律32万円(賃金15万円、物価17万円)とされた。

 この補助金の賃金15万円分の支給について、ベースアップ評価料の届出医療機関に限られるとの報道もある。ベースアップ評価料は病院で約9割が届け出ているが、診療所は4割程度にとどまる。その理由は様々だが、大きくは当該評価料の届出が複雑・煩雑な点であり、小規模な無床診療所ではその対応が困難であるからだ。一方で無床診療所は当該評価料を届出せずとも、院長給与を削減するなどして職員の賃上げを実施しているところは少なくない。10月には最低賃金の引き上げもあり、どの医療機関も賃上げ対応に苦慮している。当該評価料を届出・算定していても賃上げ率は平均3.4%(24年度、25年度)にとどまり、全産業平均7.3%の半分にも満たない水準である1。賃金15万円分においても、全ての医療機関を対象とすることで、早急な補助金支給にも結び付く。公平かつ迅速な対応を求める。

 また、補正予算による補助金対応はあくまで一時的なものであり、最重要は2026年度診療報酬改定である。医療機関の窮状が待ったなしの状況であることは、この間の厚労省調査等で明らかだ。社会保障審議会・医療部会(1027日)では、無床診療所(医療法人に限る)の2024年度経常利益率の平均値は6.4%だが、最頻値を見ると0.0%~1.0%と「利益がギリギリ出せるかどうか」であり、本業に限った「医業収支」は実に4割が赤字だ※2。中央社会保険医療協議会(中医協、1126日)の「第25回医療経済実態調査」では個人立の数字が示され、医科・無床診療所の2024年度損益率の平均は28.3%と前年に比べ▲4.0%の減少。注視すべき「最頻損益差額階級」の損益差額は749万円に過ぎず、歯科診療所に至っては634万円と散々たる状況である※3。保団連・関東ブロックの9協会(当会も加盟)で行った調査でも、個人立・医科無床診療所(回答数75件)の事業所得は年間408万円減(平均)、前年度比▲17.2%であった※4。中医協で支払い側は診療所を「底堅く推移」としたが、全く医療機関の実態を顧みていない。

 この間、消費税をはじめとする国の税収は増加の一途で、当初予算より2.9兆円上振れて80兆円を超える見込みである。全国健康保険協会(協会けんぽ)は賃上げ等により保険料収入が増加しており、2026年度には保険料率を引き下げる見通しだ。自民党の社会保障制度調査会も124日、物価高に苦しむ医療機関の苦境や賃上げ困難な実態、人材流出などを案じ、次回改定では物価や賃上げ対応分にとどまらず、他産業平均と遜色ない賃金水準となるよう「必要十分な改定」を求めた。過去に例のない、診療報酬の大幅引き上げを実施する状況は整っている。

 地域医療は、診療所と病院が連携することで「面」として支えている。当然、どちらかが機能不全に陥れば地域医療は崩壊していく。すでに神奈川県内でも医療機関の撤退により、医療提供が困難な地域も出てきている。当会が実施した「診療報酬の大幅引き上げを求める署名」には、近年では例のない1,388名もの会員の協力があった。医療機関の窮状は待ったなしである。2026年度診療報酬改定は、病院・診療所問わず、10%以上の大幅な引き上げが必須である。改定率が示されるのは間近だ。我々は、高市首相の英断に期待する。

2025年1217

  

※1:2025821日 中央社会保険医療協議会(中医協)入院・外来医療等の調査・評価分科会

※2:20251027日 第120回社会保障審議会医療部会「医療法人の経営状況(R7.7月末時点)」

※3:20251126日 中央社会保険医療協議会 総会(第630回)第25回医療経済実態調査報告

※4:20251012日 医療機関経営実態調査報告 保団連関東ブロック協議会