神奈川県保険医協会とは
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TOP > 神奈川県保険医協会とは > 私たちの考え > 2025/11/13 理事会声明「財政審の社会保障に対する議論に抗議する 医療機関への補助金等による緊急対応、及び2026年度診療報酬改定は診療所・病院一体での対応を強く求める」
2025/11/13 理事会声明「財政審の社会保障に対する議論に抗議する 医療機関への補助金等による緊急対応、及び2026年度診療報酬改定は診療所・病院一体での対応を強く求める」
財政審の社会保障に対する議論に抗議する
医療機関への補助金等による緊急対応、及び2026年度診療報酬改定は
診療所・病院一体での対応を強く求める
11月5日に開かれた財政審・財政制度分科会では、社会保障について議論され、改革の方向性(案)として「診療所については、依然として高水準にある利益率や利益剰余金を踏まえ、適正化の方向で検討すべき」という論点が提示された。各論では、「かかりつけ医機能の評価」の再構築として、機能強化加算や外来管理加算は廃止等を含めて精査・整理すべきとした。これらの論点提示・議論は、地域医療を面で支えている診療所の実態を全く把握しておらず、適正化(削減)となれば地域医療の崩壊を意味する。高市首相は所信表明等で、診療所も含めた支援に言及している。地域の診療所の実態を見ず、財務省に都合の良い数字のみを積み上げた議論に強く抗議する。
財務省は「診療所を巡る状況」として、厚生労働省「経営情報データベース」を基に、無床診療所の平均利益率は2023年度9.3%、24年度6.4%と高水準を保ち、経営余力が引き続き存在するとしている※1。10月27日の社保審・医療部会においても同様の数字が提示されているが、2024年度の経常利益率の平均値(6.4%)以外にも中央値が3.6%、最頻値に至っては0.0%~1.0%であり大きな乖離が見られる※2。平均値と最頻値に大きな差があるのは、一部に高収益の医療法人が存在するからである。無床診療所のボリュームゾーンは「利益がギリギリ出せるかどうか」であり、本業である「医業収支」における無床診療所の赤字割合は4割にのぼる※2。この数字は医療法人に限った数字であり、経営基盤が零細な個人事業主の診療所はさらに厳しい実態であることが推察される。保団連関東ブロック協議会で行った個人立・医科無床診療所への調査(回答数75件)では、事業所得が年間408万円減(平均)、前年度比17.2%のマイナスである※3。
病院はより厳しい実態であることは確かだが、決して診療所が多大な利益を上げている現状でないことは明白だ。無床診療所においても経営難により民間企業並みの賃上げができず、人材流出が進む。2024年度、25年度における医療従事者の賃上げ(3.4%)は全産業平均(7.3%)の半分にも満たない水準だ※4。当然、新規採用もままならないのが実態であり、医療提供の質の低下を招いている。日本医師会の調査では、13.8%が「近い将来、廃業」を考えているとの結果も出ている※5。当会の会員からは「良心的に診療してきたが、もう限界」、「職員の給料を上げられず、優秀な人材が他業種へ流れて倒産の危機です」、「地域医療は崩壊せよと、国から言われている気がする」など、多くの悲痛な声が寄せられている。
高市首相は所信表明で、2026年度の診療報酬改定を待たずに、25年度内に補正予算を組んで「医療機関」を支援する意向を表明。11月7日の予算委員会でも「診療所を含めて対象」と言及している。
繰り返しになるが、地域医療は診療所と病院が連携することで「面」として支えている。当然、どちらかが機能不全に陥れば地域医療は崩壊する。この間の急激な物価上昇等の影響は、当然ながら病院に限らず診療所も例外ではない。この間の連続のマイナス改定により、医療機関は既に限界に達している。補正予算による支援は当然のことだがあくまで一時的なものであり、26年度診療報酬改定においては診療所・病院問わず、10%以上の大幅な引き上げを強く求める。
2025年11月13日
神奈川県保険医協会
第32期第8回理事会
※1:2025年11月5日 財政制度等審議会財政制度分科会「社会保障①」
※2:2025年10月27日 第120回社会保障審議会医療部会「医療法人の経営状況(R7.7月末時点)」
※3:2025年10月12日 医療機関経営実態調査報告 保団連関東ブロック協議会
※4:2025年8月21日 令和7年度第9回入院・外来医療等の調査・評価分科会
※5:2025年9月17日 令和7年度診療所の緊急経営調査 結果 -令和5年度、6年度実態報告-
財政審の社会保障に対する議論に抗議する
医療機関への補助金等による緊急対応、及び2026年度診療報酬改定は
診療所・病院一体での対応を強く求める
11月5日に開かれた財政審・財政制度分科会では、社会保障について議論され、改革の方向性(案)として「診療所については、依然として高水準にある利益率や利益剰余金を踏まえ、適正化の方向で検討すべき」という論点が提示された。各論では、「かかりつけ医機能の評価」の再構築として、機能強化加算や外来管理加算は廃止等を含めて精査・整理すべきとした。これらの論点提示・議論は、地域医療を面で支えている診療所の実態を全く把握しておらず、適正化(削減)となれば地域医療の崩壊を意味する。高市首相は所信表明等で、診療所も含めた支援に言及している。地域の診療所の実態を見ず、財務省に都合の良い数字のみを積み上げた議論に強く抗議する。
財務省は「診療所を巡る状況」として、厚生労働省「経営情報データベース」を基に、無床診療所の平均利益率は2023年度9.3%、24年度6.4%と高水準を保ち、経営余力が引き続き存在するとしている※1。10月27日の社保審・医療部会においても同様の数字が提示されているが、2024年度の経常利益率の平均値(6.4%)以外にも中央値が3.6%、最頻値に至っては0.0%~1.0%であり大きな乖離が見られる※2。平均値と最頻値に大きな差があるのは、一部に高収益の医療法人が存在するからである。無床診療所のボリュームゾーンは「利益がギリギリ出せるかどうか」であり、本業である「医業収支」における無床診療所の赤字割合は4割にのぼる※2。この数字は医療法人に限った数字であり、経営基盤が零細な個人事業主の診療所はさらに厳しい実態であることが推察される。保団連関東ブロック協議会で行った個人立・医科無床診療所への調査(回答数75件)では、事業所得が年間408万円減(平均)、前年度比17.2%のマイナスである※3。
病院はより厳しい実態であることは確かだが、決して診療所が多大な利益を上げている現状でないことは明白だ。無床診療所においても経営難により民間企業並みの賃上げができず、人材流出が進む。2024年度、25年度における医療従事者の賃上げ(3.4%)は全産業平均(7.3%)の半分にも満たない水準だ※4。当然、新規採用もままならないのが実態であり、医療提供の質の低下を招いている。日本医師会の調査では、13.8%が「近い将来、廃業」を考えているとの結果も出ている※5。当会の会員からは「良心的に診療してきたが、もう限界」、「職員の給料を上げられず、優秀な人材が他業種へ流れて倒産の危機です」、「地域医療は崩壊せよと、国から言われている気がする」など、多くの悲痛な声が寄せられている。
高市首相は所信表明で、2026年度の診療報酬改定を待たずに、25年度内に補正予算を組んで「医療機関」を支援する意向を表明。11月7日の予算委員会でも「診療所を含めて対象」と言及している。
繰り返しになるが、地域医療は診療所と病院が連携することで「面」として支えている。当然、どちらかが機能不全に陥れば地域医療は崩壊する。この間の急激な物価上昇等の影響は、当然ながら病院に限らず診療所も例外ではない。この間の連続のマイナス改定により、医療機関は既に限界に達している。補正予算による支援は当然のことだがあくまで一時的なものであり、26年度診療報酬改定においては診療所・病院問わず、10%以上の大幅な引き上げを強く求める。
2025年11月13日
神奈川県保険医協会
第32期第8回理事会
※1:2025年11月5日 財政制度等審議会財政制度分科会「社会保障①」
※2:2025年10月27日 第120回社会保障審議会医療部会「医療法人の経営状況(R7.7月末時点)」
※3:2025年10月12日 医療機関経営実態調査報告 保団連関東ブロック協議会
※4:2025年8月21日 令和7年度第9回入院・外来医療等の調査・評価分科会
※5:2025年9月17日 令和7年度診療所の緊急経営調査 結果 -令和5年度、6年度実態報告-

