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2024/3/1 政策部長談話「経営介入と診療所の選別淘汰を策す診療報酬改定に異を唱える 生活習慣病管理料(Ⅱ)は「かかりつけ医機能強化」に資するかは疑問」

経営介入と診療所の選別淘汰を策す診療報酬改定に異を唱える
生活習慣病管理料(Ⅱ)は「かかりつけ医機能強化」に資するかは疑問

 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

◆使途限定財源での診療報酬改定に潜む診療所淘汰

 2024年度診療報酬改定の個別点数項目が告示案とともに214日、中医協に示された。今次改定は従業員の賃上げへ改定財源の多くが使途限定の紐づけとなっており、政策改定や経営安定に資する財源は0.18%と僅少である。改定内容は①賃上げ評価での選別淘汰と診療報酬体系の変更を内包し、②かかりつけ医機能の制度整備に連動する生活習慣病管理料の整理、③医療機関、薬局での長期収載品の差額徴収の周知徹底での差額医療横行の危険など、問題含みなものがある。団塊ジュニアが全員65歳になる「2040年問題」と人口減少で現役世代が減少する「8がけ社会」(朝日新聞)の下、医療分野の人材流出防止と人材確保をはかり、地域医療の盤石化と医療の再生産を保障する診療報酬改定を改めて求める。

 

◆財源の枠内移転で、診療所を標的にした改定 外来医療費の伸びの7割を吹き飛ばす

 今次改定の改定率は「本体」0.88%だが、①0.46%(40歳未満勤務医賃上げ分等)、②0.61%(看護職員等のベア分)、③0.06%(入院時食事基準関連)、④▲0.25%(生活習慣病等管理料、処方箋料の効率化・適正化)と、使途限定の部分で構成されている。しかも、①0.46%は、40歳未満勤務医・勤務歯科医師・薬局勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等従事者の賃上げ措置分「0.28%」を含むとされ、使途限定のない残余は0.18%である(∵0.18%=0.46%-0.28%)。

 ▲0.25%は、それ以外の改定率合計1.13%のために、診療所を標的に捻出された財源移転分である。1.13%+▲0.25%=0.88%となる。

 ▲0.25%は医療費で▲1,200億円である。コロナ禍が収束し特例措置の廃止で医療費の伸びは平年ベースに戻るが、診療所・外来は年間1,800億円の伸び(20172022年度平均)である。つまり▲0.25%はこの伸びの7割をも吹き飛ばす、マイナス改定となる。使途限定で全額投入の賃上げ分を除くと、診療所は、0.18%+▲0.25%=▲0.07%の実質マイナス、「減益」改定となる。医薬分業率はいま8割だが、診療所の3割強は、患者利便などを考慮し院内処方である。この場合、更に薬価等▲1.0%が圧し掛かる。とりわけ、かかりつけ医機能が期待されている、地域包括診療料、地域包括診療加算は施設基準で「院内処方」が「原則」であるだけに、改定医療法のかかりつけ医機能の制度整備に照らし、これらは逆行している。

 診療所にとって厳しい改定となることが、改定率決定の時点で、明示されていたのである。財務省財政制度等審議会の令和6年度予算編成の「建議」は、「診療所の報酬単価を引き下げること等により、現場従事者の処遇改善等の課題に対応しつつ診療報酬本体をマイナス改定とすることが適当」としており、この基調が貫徹されている。発熱外来などのコロナ特例の廃止財源0.7%分を鑑みれば、完遂でもある。

 

◆新設「外来・在宅ベースアップ評価料」で、賃上げ(ベースアップ)+2.3%が保障はされていない

 改定の目玉、賃上げ評価のための措置は、仕組みが複雑で必ずしも所期目標の実現を保障していない。

 40歳未満勤務医や事務員等の賃上げの改定率0.28%分は、結局、初再診料等の引き上げでの対応となった。また令和6年度+2.5%、令和7年度+2.0%で平均+2.3%相当のベースアップを期し、改定率0.61%分で、看護師など医療職32職種を対象に「外来・在宅ベースアップ評価料」(Ⅰ)と(Ⅱ)が新設された。

 しかし、ベースアップ評価料(Ⅰ)は、ベースアップ+2.3%の半分、+1.2%を最低保証するものでしかなく、これに至らない場合に(Ⅱ)で補填する仕組みである。全医療機関が+2.3%とはならない。

 しかも、①この評価料での収入は全額を賃上げに充当、②ベースアップ+2.3%での「実施計画」と事後の「実績報告」の提出により実行が担保され、初再診料等で手当てした勤務医・事務職等の賃上げ状況も併せて記すこととなっている。なお賃上げとは定期昇給ではなく賃金表の賃金水準引き上げである。 

 加えて、ベースアップ評価料(Ⅱ)の対象は、医療職2人以上の勤務が要件となっており、パート看護職員が常勤換算2人未満で他は事務職員というスタイルの診療所は対象にならない。零細診療所は切り捨てとなっている。診療所が淘汰されていく懸念が非常に強い。

 

◆診療報酬体系の議論を欠く拙速と、評価路線の撤退不可能の予感 

 診療報酬は、療養の給付の医療機関への対価として経済評価されているが、医療者の技術・労働、施設整備・人員体制確保など、コミコミで点数項目として設定されている。療養の給付(=医療サービス)の内容と水準を事実上、規定する格好となる。大枠で「基本診療料」+「特掲診療料」の構成であり、各医療機関は診療行為に応じ算定・請求し、保険収入を得て、医療機関の裁量で経営をしている。

 この診療報酬は、モノと技術の分離や、ドクターフィーとホスピタルフィーとの区分評価はされていない。初再診の際の基本的な診療行為の費用を一括評価する、初診料、再診料の「基本診療料」をベースに、それに一括評価されない特別の診療行為を、医学管理や投薬、検査、処置などの部門別に、個別の診療行為細目を評価する「特掲診療料」を組み合わせている。 

 新設の「ベースアップ評価料」は、「特掲診療料」の中の中項目「投薬」「検査」などと同格の「その他」の部とされ、しかも初診、再診と連動する算定方式となっている。基本診療料を底上げするのではなく、ベースアップ水準を条件づけて、実施計画に応じ点数格差がつくという、ある意味、経営介入と診療報酬体系の部分改編を画した新機軸の導入となっている。この評価料はベースアップ1.2%超へ8段階の点数格差がつく。この評価方法は、今次改定以降、途中での廃止、撤退が難しいと考えられる。

 患者サイドからは領収・明細書に「ベースアップ評価料」の名称が載ることでの不納得や誤解が想起され、事実上の基本診療料の上乗せによる「一物多価」による混乱を招くことになる。短兵急な議論で制度設計がなされた感が強く、覆水盆に返らず、である。初再診料等の基本診療料の大幅底上げが王道である。

 

◆3疾病の生活習慣病管理料(Ⅱ)への移行は、医療現場では当惑、困惑し不評 奇異な自署、同意 

  特定疾患療養管理料の対象から高血圧、脂質異常症、糖尿病の3疾病が外れ、新設の生活習慣病管理料(Ⅱ)へと移行となった。特定疾患療養管理料の全算定件数に占める主傷病の割合は、高血圧57.7%、糖尿病16.2%、脂質異常症23.9%だとし、昨年720日の中医協・分科会で支払側委員より強く求められたものである。「かかりつけ医機能」の議論の文脈のなかで、医療法改正での制度整備への先んじた対応として提起されたものである。この3疾病で算定患者の97.8%を占めているが、特定疾患療養管理料は医療機関の9割が算定している。いわば、かかりつけ医機能のための日常的な汎用点数項目であった。

 生活習慣病管理料(Ⅱ)は333点と設定され、外来管理加算や特定疾患処方管理加算は包括され別途算定ができず、旧来の特定疾患療養管理料での算定に比し、月1回診療で▲13点、月2回診療の場合、▲340点の減額となる。3疾病は長期処方が多くなっているとはいえ、月2回患者も実際にあり、経済的影響は大きい。加えて、処方箋料の8点減額も初再診料の増額分を相殺し上回り影響は大である。

 それ以上に、算定要件の療養計画書への患者の自署による同意に関し、形式的文書発行への懸念と同意への違和感で、医療現場では不評である。継続治療の患者は信頼関係構築の下、合意の上で診療しており改めて療養計画書に同意の自署を求める奇異さがある。各医療機関は、検査データの手交や食事指導など患者に応じ工夫し診療している。中には難聴患者に説明内容をワープロ文書で同時作成し手渡す医師もいる。家族問題等も含めた相談を傾聴し、行動変容を促し、別疾病の発見にも対応している。この内実を再診料等も含め経済評価せず、形式要件の強要では、医療の質の向上とならず本末転倒である。

 自署での同意は患者の心理的抵抗も強く、既に生活習慣病管理料の算定で不同意など支障がでている。日常生活では「契約」場面での行為である。改正医療法は、継続治療の「患者が希望する場合」にかかりつけ医機能として提供する医療内容の「書面交付」である。趣旨を違えている感が強い。

 

◆長期収載品の差額徴収は無軌道化を懸念 第一線医療、地域医療充実は、医療費総枠拡大が必須 

 長期収載品の患者希望の際の差額料金徴収も、趣旨の院内掲示や薬局薬剤師の説明、処方箋様式変更など、周知徹底と環境整備が点数改定で図られた。後発品との価格差の1/4とされているが、選定療養は合法的差額徴収の仕組みであり、超過差額の違法性は問えない。貧すれば鈍す。倫理が決壊し超過差額の横行が非常に懸念される。

 8割の患者が使う医療費は総医療費の2割でしかなく、診療所は初診患者の8割、外来患者の7割を診ている。軽症患者を診る診療所の医療費の抑制は、圧縮額は少なく、医療全体への負の影響、被害は大きくなる。角を矯めて牛を殺す、では元も子もない。医療の質の向上は医療費総枠拡大が必須である。医療の再生産に資するよう、期中改定や柔軟な通知運用なども含め、対応を求める。

 

2024年3月1日

 

 

経営介入と診療所の選別淘汰を策す診療報酬改定に異を唱える
生活習慣病管理料(Ⅱ)は「かかりつけ医機能強化」に資するかは疑問

 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

◆使途限定財源での診療報酬改定に潜む診療所淘汰

 2024年度診療報酬改定の個別点数項目が告示案とともに214日、中医協に示された。今次改定は従業員の賃上げへ改定財源の多くが使途限定の紐づけとなっており、政策改定や経営安定に資する財源は0.18%と僅少である。改定内容は①賃上げ評価での選別淘汰と診療報酬体系の変更を内包し、②かかりつけ医機能の制度整備に連動する生活習慣病管理料の整理、③医療機関、薬局での長期収載品の差額徴収の周知徹底での差額医療横行の危険など、問題含みなものがある。団塊ジュニアが全員65歳になる「2040年問題」と人口減少で現役世代が減少する「8がけ社会」(朝日新聞)の下、医療分野の人材流出防止と人材確保をはかり、地域医療の盤石化と医療の再生産を保障する診療報酬改定を改めて求める。

 

◆財源の枠内移転で、診療所を標的にした改定 外来医療費の伸びの7割を吹き飛ばす

 今次改定の改定率は「本体」0.88%だが、①0.46%(40歳未満勤務医賃上げ分等)、②0.61%(看護職員等のベア分)、③0.06%(入院時食事基準関連)、④▲0.25%(生活習慣病等管理料、処方箋料の効率化・適正化)と、使途限定の部分で構成されている。しかも、①0.46%は、40歳未満勤務医・勤務歯科医師・薬局勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等従事者の賃上げ措置分「0.28%」を含むとされ、使途限定のない残余は0.18%である(∵0.18%=0.46%-0.28%)。

 ▲0.25%は、それ以外の改定率合計1.13%のために、診療所を標的に捻出された財源移転分である。1.13%+▲0.25%=0.88%となる。

 ▲0.25%は医療費で▲1,200億円である。コロナ禍が収束し特例措置の廃止で医療費の伸びは平年ベースに戻るが、診療所・外来は年間1,800億円の伸び(20172022年度平均)である。つまり▲0.25%はこの伸びの7割をも吹き飛ばす、マイナス改定となる。使途限定で全額投入の賃上げ分を除くと、診療所は、0.18%+▲0.25%=▲0.07%の実質マイナス、「減益」改定となる。医薬分業率はいま8割だが、診療所の3割強は、患者利便などを考慮し院内処方である。この場合、更に薬価等▲1.0%が圧し掛かる。とりわけ、かかりつけ医機能が期待されている、地域包括診療料、地域包括診療加算は施設基準で「院内処方」が「原則」であるだけに、改定医療法のかかりつけ医機能の制度整備に照らし、これらは逆行している。

 診療所にとって厳しい改定となることが、改定率決定の時点で、明示されていたのである。財務省財政制度等審議会の令和6年度予算編成の「建議」は、「診療所の報酬単価を引き下げること等により、現場従事者の処遇改善等の課題に対応しつつ診療報酬本体をマイナス改定とすることが適当」としており、この基調が貫徹されている。発熱外来などのコロナ特例の廃止財源0.7%分を鑑みれば、完遂でもある。

 

◆新設「外来・在宅ベースアップ評価料」で、賃上げ(ベースアップ)+2.3%が保障はされていない

 改定の目玉、賃上げ評価のための措置は、仕組みが複雑で必ずしも所期目標の実現を保障していない。

 40歳未満勤務医や事務員等の賃上げの改定率0.28%分は、結局、初再診料等の引き上げでの対応となった。また令和6年度+2.5%、令和7年度+2.0%で平均+2.3%相当のベースアップを期し、改定率0.61%分で、看護師など医療職32職種を対象に「外来・在宅ベースアップ評価料」(Ⅰ)と(Ⅱ)が新設された。

 しかし、ベースアップ評価料(Ⅰ)は、ベースアップ+2.3%の半分、+1.2%を最低保証するものでしかなく、これに至らない場合に(Ⅱ)で補填する仕組みである。全医療機関が+2.3%とはならない。

 しかも、①この評価料での収入は全額を賃上げに充当、②ベースアップ+2.3%での「実施計画」と事後の「実績報告」の提出により実行が担保され、初再診料等で手当てした勤務医・事務職等の賃上げ状況も併せて記すこととなっている。なお賃上げとは定期昇給ではなく賃金表の賃金水準引き上げである。 

 加えて、ベースアップ評価料(Ⅱ)の対象は、医療職2人以上の勤務が要件となっており、パート看護職員が常勤換算2人未満で他は事務職員というスタイルの診療所は対象にならない。零細診療所は切り捨てとなっている。診療所が淘汰されていく懸念が非常に強い。

 

◆診療報酬体系の議論を欠く拙速と、評価路線の撤退不可能の予感 

 診療報酬は、療養の給付の医療機関への対価として経済評価されているが、医療者の技術・労働、施設整備・人員体制確保など、コミコミで点数項目として設定されている。療養の給付(=医療サービス)の内容と水準を事実上、規定する格好となる。大枠で「基本診療料」+「特掲診療料」の構成であり、各医療機関は診療行為に応じ算定・請求し、保険収入を得て、医療機関の裁量で経営をしている。

 この診療報酬は、モノと技術の分離や、ドクターフィーとホスピタルフィーとの区分評価はされていない。初再診の際の基本的な診療行為の費用を一括評価する、初診料、再診料の「基本診療料」をベースに、それに一括評価されない特別の診療行為を、医学管理や投薬、検査、処置などの部門別に、個別の診療行為細目を評価する「特掲診療料」を組み合わせている。 

 新設の「ベースアップ評価料」は、「特掲診療料」の中の中項目「投薬」「検査」などと同格の「その他」の部とされ、しかも初診、再診と連動する算定方式となっている。基本診療料を底上げするのではなく、ベースアップ水準を条件づけて、実施計画に応じ点数格差がつくという、ある意味、経営介入と診療報酬体系の部分改編を画した新機軸の導入となっている。この評価料はベースアップ1.2%超へ8段階の点数格差がつく。この評価方法は、今次改定以降、途中での廃止、撤退が難しいと考えられる。

 患者サイドからは領収・明細書に「ベースアップ評価料」の名称が載ることでの不納得や誤解が想起され、事実上の基本診療料の上乗せによる「一物多価」による混乱を招くことになる。短兵急な議論で制度設計がなされた感が強く、覆水盆に返らず、である。初再診料等の基本診療料の大幅底上げが王道である。

 

◆3疾病の生活習慣病管理料(Ⅱ)への移行は、医療現場では当惑、困惑し不評 奇異な自署、同意 

  特定疾患療養管理料の対象から高血圧、脂質異常症、糖尿病の3疾病が外れ、新設の生活習慣病管理料(Ⅱ)へと移行となった。特定疾患療養管理料の全算定件数に占める主傷病の割合は、高血圧57.7%、糖尿病16.2%、脂質異常症23.9%だとし、昨年720日の中医協・分科会で支払側委員より強く求められたものである。「かかりつけ医機能」の議論の文脈のなかで、医療法改正での制度整備への先んじた対応として提起されたものである。この3疾病で算定患者の97.8%を占めているが、特定疾患療養管理料は医療機関の9割が算定している。いわば、かかりつけ医機能のための日常的な汎用点数項目であった。

 生活習慣病管理料(Ⅱ)は333点と設定され、外来管理加算や特定疾患処方管理加算は包括され別途算定ができず、旧来の特定疾患療養管理料での算定に比し、月1回診療で▲13点、月2回診療の場合、▲340点の減額となる。3疾病は長期処方が多くなっているとはいえ、月2回患者も実際にあり、経済的影響は大きい。加えて、処方箋料の8点減額も初再診料の増額分を相殺し上回り影響は大である。

 それ以上に、算定要件の療養計画書への患者の自署による同意に関し、形式的文書発行への懸念と同意への違和感で、医療現場では不評である。継続治療の患者は信頼関係構築の下、合意の上で診療しており改めて療養計画書に同意の自署を求める奇異さがある。各医療機関は、検査データの手交や食事指導など患者に応じ工夫し診療している。中には難聴患者に説明内容をワープロ文書で同時作成し手渡す医師もいる。家族問題等も含めた相談を傾聴し、行動変容を促し、別疾病の発見にも対応している。この内実を再診料等も含め経済評価せず、形式要件の強要では、医療の質の向上とならず本末転倒である。

 自署での同意は患者の心理的抵抗も強く、既に生活習慣病管理料の算定で不同意など支障がでている。日常生活では「契約」場面での行為である。改正医療法は、継続治療の「患者が希望する場合」にかかりつけ医機能として提供する医療内容の「書面交付」である。趣旨を違えている感が強い。

 

◆長期収載品の差額徴収は無軌道化を懸念 第一線医療、地域医療充実は、医療費総枠拡大が必須 

 長期収載品の患者希望の際の差額料金徴収も、趣旨の院内掲示や薬局薬剤師の説明、処方箋様式変更など、周知徹底と環境整備が点数改定で図られた。後発品との価格差の1/4とされているが、選定療養は合法的差額徴収の仕組みであり、超過差額の違法性は問えない。貧すれば鈍す。倫理が決壊し超過差額の横行が非常に懸念される。

 8割の患者が使う医療費は総医療費の2割でしかなく、診療所は初診患者の8割、外来患者の7割を診ている。軽症患者を診る診療所の医療費の抑制は、圧縮額は少なく、医療全体への負の影響、被害は大きくなる。角を矯めて牛を殺す、では元も子もない。医療の質の向上は医療費総枠拡大が必須である。医療の再生産に資するよう、期中改定や柔軟な通知運用なども含め、対応を求める。

 

2024年3月1日