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2023/2/3 公害環境対策部長談話 「原発の新設・建て替え・運転期間延長に反対する 原子力に頼らず、再生可能エネルギーの推進を」

原発の新設・建て替え・運転期間延長に反対する

原子力に頼らず、再生可能エネルギーの推進を

 

神奈川県保険医協会

公害環境対策部長  野本 哲夫

 


 

 昨年12月22日、政府はGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議を開催し、「GX実現に向けた基本方針(案)~今後10年を見据えたロードマップ~」をまとめた。昨年末から原子力関連のパブリックコメントもいくつか実施されたが、我々は国民の命・健康を守る医療者として、基本方針に盛り込まれた原発の建て替え推進や運転延長、新炉の開発・建設に反対する。

 

原発の新設・建て替え・運転期間延長は不筋 福島第一原発事故での教訓の順守を

 基本方針では、「将来にわたって持続的に原子力を活用するため、安全性の確保を大前提に、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む」と明記。さらに、「廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替えを対象として、(中略)具体化を進めていく」としている。福島第一原発事故以降に、新たな原発の建設や建て替えを「想定していない」としてきた政府の見解を大きく覆す内容であり、我々は容認することができない。

 さらに、基本方針では、現在原則40年、最長60年とされている原発の運転期間に関して、原子力規制委員会による安全審査などで停止していた期間を運転期間に入れず、60年を超えた運転を認める方針を打ち出している。

 国民の意見を十分に聞くこともなく、このような方針に舵を切ることは許されず、これでは福島第一原発事故の反省・教訓は諸々無くなってしまっていると言わざるを得ない。30年以内に70%の確率で発生するとされている南海トラフ地震、都市直下型地震など史上最大規模の地震が危惧されるなか、このような姿勢では、原発事故は再び起きかねない。放射線障害への医療的対応には限界があり、事故がつきものの原発の稼働を推進することに反対する。福島第一原発の事故を受けて定められた運転期間や原発依存を低減する方針は、簡単には変えてよいものではない。

 

再生可能エネルギーの導入拡大が肝要

 原子力に頼らず、太陽光発電や風力発電の導入拡大をはかることも重要である。エネルギーコストの比較でも、「補助金なしの太陽光発電と風力発電は今や石炭火力より安価になり、日本以外のすべての主要経済圏で最も安価な電源(ブルームバーグNEF調査)」であり、「2018年時点では、原子力はすべての電源の中で最も高コストな発電方式になっており、自然エネルギーの4倍近くに達している(世界的な投資顧問・資産管理会社のラザードによる電源別の発電コストの推移)」のである。安全性だけでなくコスト面からも再生可能エネルギーの導入拡大を図ることが道理だ。

 再び福島第一原発事故と同規模の事故が起きれば日本経済が破滅的になるとの指摘もある。政府の最大使命は原発を廃止することであることを強調したい。

2023年23

 

原発の新設・建て替え・運転期間延長に反対する

原子力に頼らず、再生可能エネルギーの推進を

 

神奈川県保険医協会

公害環境対策部長  野本 哲夫

 


 

 昨年12月22日、政府はGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議を開催し、「GX実現に向けた基本方針(案)~今後10年を見据えたロードマップ~」をまとめた。昨年末から原子力関連のパブリックコメントもいくつか実施されたが、我々は国民の命・健康を守る医療者として、基本方針に盛り込まれた原発の建て替え推進や運転延長、新炉の開発・建設に反対する。

 

原発の新設・建て替え・運転期間延長は不筋 福島第一原発事故での教訓の順守を

 基本方針では、「将来にわたって持続的に原子力を活用するため、安全性の確保を大前提に、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む」と明記。さらに、「廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替えを対象として、(中略)具体化を進めていく」としている。福島第一原発事故以降に、新たな原発の建設や建て替えを「想定していない」としてきた政府の見解を大きく覆す内容であり、我々は容認することができない。

 さらに、基本方針では、現在原則40年、最長60年とされている原発の運転期間に関して、原子力規制委員会による安全審査などで停止していた期間を運転期間に入れず、60年を超えた運転を認める方針を打ち出している。

 国民の意見を十分に聞くこともなく、このような方針に舵を切ることは許されず、これでは福島第一原発事故の反省・教訓は諸々無くなってしまっていると言わざるを得ない。30年以内に70%の確率で発生するとされている南海トラフ地震、都市直下型地震など史上最大規模の地震が危惧されるなか、このような姿勢では、原発事故は再び起きかねない。放射線障害への医療的対応には限界があり、事故がつきものの原発の稼働を推進することに反対する。福島第一原発の事故を受けて定められた運転期間や原発依存を低減する方針は、簡単には変えてよいものではない。

 

再生可能エネルギーの導入拡大が肝要

 原子力に頼らず、太陽光発電や風力発電の導入拡大をはかることも重要である。エネルギーコストの比較でも、「補助金なしの太陽光発電と風力発電は今や石炭火力より安価になり、日本以外のすべての主要経済圏で最も安価な電源(ブルームバーグNEF調査)」であり、「2018年時点では、原子力はすべての電源の中で最も高コストな発電方式になっており、自然エネルギーの4倍近くに達している(世界的な投資顧問・資産管理会社のラザードによる電源別の発電コストの推移)」のである。安全性だけでなくコスト面からも再生可能エネルギーの導入拡大を図ることが道理だ。

 再び福島第一原発事故と同規模の事故が起きれば日本経済が破滅的になるとの指摘もある。政府の最大使命は原発を廃止することであることを強調したい。

2023年23