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2023/12/20 政策部長談話「薬剤5割負担となる差額負担導入に改めて反対する 医薬品の『選定療養費化』はパンドラの箱」

薬剤5割負担となる差額負担導入に改めて反対する
医薬品の「選定療養費化」はパンドラの箱

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

◆選定療養の逸脱、運用の具体化が進行する医療部会と中医協の議論

 医薬品の長期収載品に関し、後発品との価格差の一部を保険外(差額負担)とする「仕組み」の具体化が年末に向け急ピッチで進んでいる。差額ベッドと同じ扱いとなる「長期収載品の選定療養費化」だ。中医協等で示された影響額試算では価格差1/2負担で患者負担は「実質5割以上」、1/4負担で「実質4割以上」となる。これは患者負担を3割限度とした健保法改定附則を崩し、形骸化する新機軸となる。

 しかも、医療周辺のアメニティー、贅沢部分を対象とする選定療養を、医療の中核部分、現物給付の医薬品への適用導入である。運用上の逸脱であり、この定着は将来に禍根を残す。OTC類似薬処方、定型的な外来医療を超えた部分など、あらゆる保険給付にこの「仕組み」は応用可能となる。

 われわれは、保険給付を融解、変質させる、長期収載品の選定療養費化に改めて反対する。

 

◆唐突感のある選定療養の活用 医療界の抵抗感が薄く進展する不思議

 11月9日の社保審医療保険部会に提案され、揉めることなく大筋合意となり、128日に選定療養の「負担」を価格差の1/2を上限に試算が示された。併行論議をしている中医協では1215日に「対象」を後発品シェア50%以上、後発品発売5年経過の長期収載品とし、価格差の「基準」は、最高価格帯の後発品と示された。医療療側の、①周知徹底の準備期間の確保、②価格差少額からとの要望に応じ、本日、厚労相・財務相の折衝で価格差1/4、実施2410月で合意との速報があったが、後戻りはない

 この長期収載品の選定療養費化は、その具体化とされる616日の「骨太の方針2023」では、「長期収載品等の自己負担の在り方の見直し」でしかない。経済財政諮問会議では、同じ言葉での発言が5月にあっただけである。選定療養の活用の文言は一言もない。

 「選定療養の活用」は、厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」で、今年126日に遠藤座長が2回発言しただけで、議論にも資料にも一言も出ていない。にもかかわらず、最後にとりまとめられた612日の「報告書」になぜか盛り込まれたものである。

 あまりにも唐突感が強く、それにも関わらず医療側の抵抗も薄く、あっさりと事態が推移する不思議な状況となっている。「薬剤に(差額ベッドなどと同様に)選定療養という考え方が適用されること自体、驚いている」との声が委員から上がったとの報道もあるが、殆ど表には出ていない。

 

◆差額料金は上限を設定できない 通常医療に差額診療が入り込む危険 いずれ制御不能へ

 選定療養は、例外的に医療辺縁で①20年ほど前に介護保険への移行を前提に導入された180日超入院と、②医療的理由で回数制限のある検査等で、「患者の安心感」のため実施する回数超の検査等、③財政的事情で保険未導入となった多焦点眼内レンズがある。が、医療の中心部分ではない。

 選定療養の差額負担は、審議会で「選定負担」と示されているが「特別の料金」である。上限設定は出来ず、厚労省は料金の「目安」提示までとなる。180日超入院の場合、通算対象入院料の基本点数の15/100相当が1日の「標準」と示されるが、実際は最低500円、最高3,260円と幅がある。回数超の検査AFP(腫瘍マーカー)も点数表が標準だが最低400円、最高4,972円、医療機関の自由設定である。これにタガを嵌めるのは無理がある。通常医療への差額徴収の闖入は、現場混乱と拡大解釈の危険がある。

 今回の長期収載品の選定療養化は、後発品の安定供給が「前提」とされている。また医療上の必要性による長期収載品の処方は、従来通り保険給付の対象と厚労省は再三、強調している。520日、第17回日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会学術集会で、医政局医薬産業振興・医療情報企画課課長の安藤公一氏が「医薬品供給不足の問題の責任の一端は、厚労省にある。対策をしっかり講じて、この状況を改善する責任がある」「後発品の使用促進は拙速だった」と真摯な姿勢を見せている。覆水盆に返らず。長期収載品の選定療養化の中止、凍結を強く要望する。

2023年1220

 

 

薬剤5割負担となる差額負担導入に改めて反対する
医薬品の「選定療養費化」はパンドラの箱

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

◆選定療養の逸脱、運用の具体化が進行する医療部会と中医協の議論

 医薬品の長期収載品に関し、後発品との価格差の一部を保険外(差額負担)とする「仕組み」の具体化が年末に向け急ピッチで進んでいる。差額ベッドと同じ扱いとなる「長期収載品の選定療養費化」だ。中医協等で示された影響額試算では価格差1/2負担で患者負担は「実質5割以上」、1/4負担で「実質4割以上」となる。これは患者負担を3割限度とした健保法改定附則を崩し、形骸化する新機軸となる。

 しかも、医療周辺のアメニティー、贅沢部分を対象とする選定療養を、医療の中核部分、現物給付の医薬品への適用導入である。運用上の逸脱であり、この定着は将来に禍根を残す。OTC類似薬処方、定型的な外来医療を超えた部分など、あらゆる保険給付にこの「仕組み」は応用可能となる。

 われわれは、保険給付を融解、変質させる、長期収載品の選定療養費化に改めて反対する。

 

◆唐突感のある選定療養の活用 医療界の抵抗感が薄く進展する不思議

 11月9日の社保審医療保険部会に提案され、揉めることなく大筋合意となり、128日に選定療養の「負担」を価格差の1/2を上限に試算が示された。併行論議をしている中医協では1215日に「対象」を後発品シェア50%以上、後発品発売5年経過の長期収載品とし、価格差の「基準」は、最高価格帯の後発品と示された。医療療側の、①周知徹底の準備期間の確保、②価格差少額からとの要望に応じ、本日、厚労相・財務相の折衝で価格差1/4、実施2410月で合意との速報があったが、後戻りはない

 この長期収載品の選定療養費化は、その具体化とされる616日の「骨太の方針2023」では、「長期収載品等の自己負担の在り方の見直し」でしかない。経済財政諮問会議では、同じ言葉での発言が5月にあっただけである。選定療養の活用の文言は一言もない。

 「選定療養の活用」は、厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」で、今年126日に遠藤座長が2回発言しただけで、議論にも資料にも一言も出ていない。にもかかわらず、最後にとりまとめられた612日の「報告書」になぜか盛り込まれたものである。

 あまりにも唐突感が強く、それにも関わらず医療側の抵抗も薄く、あっさりと事態が推移する不思議な状況となっている。「薬剤に(差額ベッドなどと同様に)選定療養という考え方が適用されること自体、驚いている」との声が委員から上がったとの報道もあるが、殆ど表には出ていない。

 

◆差額料金は上限を設定できない 通常医療に差額診療が入り込む危険 いずれ制御不能へ

 選定療養は、例外的に医療辺縁で①20年ほど前に介護保険への移行を前提に導入された180日超入院と、②医療的理由で回数制限のある検査等で、「患者の安心感」のため実施する回数超の検査等、③財政的事情で保険未導入となった多焦点眼内レンズがある。が、医療の中心部分ではない。

 選定療養の差額負担は、審議会で「選定負担」と示されているが「特別の料金」である。上限設定は出来ず、厚労省は料金の「目安」提示までとなる。180日超入院の場合、通算対象入院料の基本点数の15/100相当が1日の「標準」と示されるが、実際は最低500円、最高3,260円と幅がある。回数超の検査AFP(腫瘍マーカー)も点数表が標準だが最低400円、最高4,972円、医療機関の自由設定である。これにタガを嵌めるのは無理がある。通常医療への差額徴収の闖入は、現場混乱と拡大解釈の危険がある。

 今回の長期収載品の選定療養化は、後発品の安定供給が「前提」とされている。また医療上の必要性による長期収載品の処方は、従来通り保険給付の対象と厚労省は再三、強調している。520日、第17回日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会学術集会で、医政局医薬産業振興・医療情報企画課課長の安藤公一氏が「医薬品供給不足の問題の責任の一端は、厚労省にある。対策をしっかり講じて、この状況を改善する責任がある」「後発品の使用促進は拙速だった」と真摯な姿勢を見せている。覆水盆に返らず。長期収載品の選定療養化の中止、凍結を強く要望する。

2023年1220