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2015/12/24 政策部長談話 「医療界を愚弄する『実質▲1.43%』改定に抗議する 虚構を演出する『外枠改定』を厳しく指弾する」

医療界を愚弄する「実質▲1.43%」改定に抗議する

虚構を演出する「外枠改定」を厳しく指弾する

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 次期診療報酬改定の改定率が、▲0.84%で政府決定された。しかし、「外枠」改定分▲0.59%が算入されておらず、実質は▲1.43%である。前回の改定率(▲1.26%)を大きく上回るマイナス改定となった。医療経済実態調査では医療機関の5割が「経営悪化」と示されており、これに冷や水を浴びせた格好だ。われわれは医療機関を愚弄する、このマイナス改定の泥沼路線に、断固抗議する。

◆社会保障関係費増5,000億へ抑制 財務省の意向を貫徹し前回上回るマイナス改定

 決定された改定率▲0.84%の内訳は、本体+0.49%、薬価等▲1.33%とされている。しかし、「外枠」で①市場拡大再算定▲0.19%、②「特例」品目の市場拡大再算定▲0.28%の改定率明示分と、(1)新規収載後発品引下げ・長期収載品の特例的引下げ(20億円)、(2)大型門前薬局の調剤報酬引き下げ(40億円)、(3)経腸栄養製品の給付適正化(40億円)、(4)湿布薬の1処方あたりの枚数制限と歯科材料適正化(30億円)の計▲130億円が行われる(改定率▲0.12%相当)。これらを合計すると▲1.43%となる。

 次年度社会保障関係費は概算要求の増額分6,700億円が結果的に5,000億円へと切り込まれた。削減額1,700億円は①協会けんぽの国庫負担の削減200億円と②医療費の削減1,500億円で捻出する。つまり、診療報酬で▲1,500億円で捻出するのであり、その方策が上記であり、真の改定率は▲1.43%となる。関係者の尽力は多とするが、事実は厳然としている。

◆ゴマカシの「制度改定分」という、「外枠改定」の詐術が定着 医療崩壊の懸念

 改定率に組み込まない、「外枠改定」分は、「制度改定分」と称される。実は、この改定率分割の「手法」は、政権交代でプラス改定に転じた2010年度改定(改定率+0.19%)で、「プラス改定」を演出するために採用された。10年は「後発品のある先発品引き下げ」(▲0.16%)、12年は「ビタミン剤の保険外し」(▲0.12%)、14年は「うがい薬の単剤使用」(▲0.07%)と、以降は「定着」し常套手段となっている。今回は、薬価引下げに乗せて本体マイナス改定が財務省サイドから早々に提言され、攻防の末、本体+0.49%となったが、実は外枠改定となった市場拡大再算定分▲0.47%と同水準であり、改定率の明示がない「外枠改定分」▲0.12%で、実質は本体分が「深堀り」、マイナスされたに等しい。

 報道で急遽「実質▲1.03%」と踊った数字は、今回「外枠改定」分に分割した市場拡大再算定分を、戻し入れた数字である。それ以外の「外枠改定分」に注意が向かないよう仕向け、本体プラスの虚構を糊塗する厚労省からの作為的な演出となっている。

 つまり、今次改定は、①薬価引き下げ財源の技術料振替えの廃止の「恒常化」と、②改定率を分割する「外枠改定」の手法の「定着」が図られ、③実質マイナス改定の完全な「既定路線化」が敷かれ、泥沼化した。骨太方針2015は2020年までに社会保障関係費1.9兆円削減を予定しているが、この間の診療報酬改定は3回あり、大半は医療で削減することとなる。今回の改定はそのプロローグとなる。

 今次改定にあたり、本体プラス改定の財源捻出を高額療養費の償還基準の引き上げ、要は患者負担の増加で行うことが画策された。いまだ火種は残っているが、「本体=医師技術料」に矮小化する報道と相まって、この方法は、診療報酬改定財源を患者負担で賄うという、医療者―患者・国民を完全に分断し、信頼関係を基礎とする現場の治療を台無しにする愚策であり、言語道断である。

 われわれは改めて、今回の診療報酬マイナス改定に強く、抗議する。

2015年12月24日

医療界を愚弄する「実質▲1.43%」改定に抗議する

虚構を演出する「外枠改定」を厳しく指弾する

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 次期診療報酬改定の改定率が、▲0.84%で政府決定された。しかし、「外枠」改定分▲0.59%が算入されておらず、実質は▲1.43%である。前回の改定率(▲1.26%)を大きく上回るマイナス改定となった。医療経済実態調査では医療機関の5割が「経営悪化」と示されており、これに冷や水を浴びせた格好だ。われわれは医療機関を愚弄する、このマイナス改定の泥沼路線に、断固抗議する。

◆社会保障関係費増5,000億へ抑制 財務省の意向を貫徹し前回上回るマイナス改定

 決定された改定率▲0.84%の内訳は、本体+0.49%、薬価等▲1.33%とされている。しかし、「外枠」で①市場拡大再算定▲0.19%、②「特例」品目の市場拡大再算定▲0.28%の改定率明示分と、(1)新規収載後発品引下げ・長期収載品の特例的引下げ(20億円)、(2)大型門前薬局の調剤報酬引き下げ(40億円)、(3)経腸栄養製品の給付適正化(40億円)、(4)湿布薬の1処方あたりの枚数制限と歯科材料適正化(30億円)の計▲130億円が行われる(改定率▲0.12%相当)。これらを合計すると▲1.43%となる。

 次年度社会保障関係費は概算要求の増額分6,700億円が結果的に5,000億円へと切り込まれた。削減額1,700億円は①協会けんぽの国庫負担の削減200億円と②医療費の削減1,500億円で捻出する。つまり、診療報酬で▲1,500億円で捻出するのであり、その方策が上記であり、真の改定率は▲1.43%となる。関係者の尽力は多とするが、事実は厳然としている。

◆ゴマカシの「制度改定分」という、「外枠改定」の詐術が定着 医療崩壊の懸念

 改定率に組み込まない、「外枠改定」分は、「制度改定分」と称される。実は、この改定率分割の「手法」は、政権交代でプラス改定に転じた2010年度改定(改定率+0.19%)で、「プラス改定」を演出するために採用された。10年は「後発品のある先発品引き下げ」(▲0.16%)、12年は「ビタミン剤の保険外し」(▲0.12%)、14年は「うがい薬の単剤使用」(▲0.07%)と、以降は「定着」し常套手段となっている。今回は、薬価引下げに乗せて本体マイナス改定が財務省サイドから早々に提言され、攻防の末、本体+0.49%となったが、実は外枠改定となった市場拡大再算定分▲0.47%と同水準であり、改定率の明示がない「外枠改定分」▲0.12%で、実質は本体分が「深堀り」、マイナスされたに等しい。

 報道で急遽「実質▲1.03%」と踊った数字は、今回「外枠改定」分に分割した市場拡大再算定分を、戻し入れた数字である。それ以外の「外枠改定分」に注意が向かないよう仕向け、本体プラスの虚構を糊塗する厚労省からの作為的な演出となっている。

 つまり、今次改定は、①薬価引き下げ財源の技術料振替えの廃止の「恒常化」と、②改定率を分割する「外枠改定」の手法の「定着」が図られ、③実質マイナス改定の完全な「既定路線化」が敷かれ、泥沼化した。骨太方針2015は2020年までに社会保障関係費1.9兆円削減を予定しているが、この間の診療報酬改定は3回あり、大半は医療で削減することとなる。今回の改定はそのプロローグとなる。

 今次改定にあたり、本体プラス改定の財源捻出を高額療養費の償還基準の引き上げ、要は患者負担の増加で行うことが画策された。いまだ火種は残っているが、「本体=医師技術料」に矮小化する報道と相まって、この方法は、診療報酬改定財源を患者負担で賄うという、医療者―患者・国民を完全に分断し、信頼関係を基礎とする現場の治療を台無しにする愚策であり、言語道断である。

 われわれは改めて、今回の診療報酬マイナス改定に強く、抗議する。

2015年12月24日