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要望書 「審議中のマイナンバー法改定案の廃案を求めるとともにマイナンバーの10月施行、来年1月の運用開始の中止または延期を求める要望書」

 神奈川県保険医協会は2015年6月16日、表題の要望書を内閣官房に送付しました。全文を以下に掲載します。


2015年6月16日

内閣総理大臣 安倍 晋三殿

社会保障・税一体改革担当相 甘利 明殿

神奈川県保険医協会

理事長 森 壽生

 

審議中のマイナンバー法改定案の廃案を求めるとともに

マイナンバーの10月施行、来年1月の運用開始の中止または延期を求める要望書

 

 日本年金機構がサイバー攻撃を受け約125万件の年金情報が流出した問題を受けて、政府関係各省庁は原因究明、事後対応等にご尽力のことと存じます。

 しかしこの流出問題に端を発し、国民のマイナンバー制度に対する情報漏洩・流出の懸念や不安が広がっていることは、周知の事実です。こうした情勢の最中に、預貯金口座をはじめ、特定健診情報や予防接種履歴をマイナンバーの対象範囲に加えるという、いわば「拡大法案」の審議は、国民感情を逆撫でするばかりか、政府への信頼を損なうことにも繋がります。

 

 2013年5月に成立したマイナンバー法の附則第6条では、施行後3年を目途に国民の理解を得つつ利用範囲を見直すものと規定しています。しかし今改定案は、10月5日の制度施行を待たずに審議が進められています。また医療情報については、マイナンバー法の審議段階からその機微性が重視され、マイナンバーの利用範囲から除外されていました。しかし今改定案で追加対象としている特定健診情報は、個人の血圧、尿検査や血液検査の結果等が含まれており、紛れもなく医療情報です。このように、改定法案自体が法の附則や当初の約束を反故にするものであり、国会審議は「勇み足」だと言わざるを得ません。

 

 そもそも、マイナンバー制度に対する国民の認知度が3割弱と低いことは、内閣府が1月に実施した世論調査でも明らかです。また、帝国データバンクが4月に実施した調査では、9割超の企業がマイナンバー制度を認識するも対応は2割弱にとどまるという結果が報告されています。更には、情報連携システムの中核となる中間サーバーの設計・開発の大幅な遅れに伴い、自治体のシステム改修も遅れる状況にあるとも報じられています(2015.2.17朝日新聞)。これらは、社会的にマイナンバー制度の受け入れ態勢が整っていない現実を物語っています。

 

 このような状況下で、改定法案の審議を続けることは勿論のこと、10月の個人番号通知、来年1月から運用を開始することは、余りにも無謀と言わざるを得ません。マイナンバーの対象となる個人情報は、税分野や社会保障分野など多岐に渡り、漏洩・流出の際の被害は年金情報とは比較にならないほど甚大です。また、規模の大小を問わず、多くの民間事業者が「個人番号利用事務実施者」としてマイナンバー付き個人情報を取り扱うことになります。日本年金機構さえ防げなかったサイバー攻撃を、小規模の民間事業者が防ぐことは不可能です。民間事業者の情報漏洩・流出が多発する可能性は非常に高く、社会的に混乱が生じること懸念されます。

 

 冒頭にも述べたとおり、国民の個人情報漏洩・流出に対する不安は広がっています。政府、各関係省庁には、憲法13条が保障するプライバシー権の順守、個人情報保護を優先する視点に立ち、(1) 審議中のマイナンバー法改定案を廃案にすること、(2) マイナンバーの10月施行、来年1月の運用開始の中止又は延期――この2つの英断を下されることを強く求めます。

 神奈川県保険医協会は2015年6月16日、表題の要望書を内閣官房に送付しました。全文を以下に掲載します。


2015年6月16日

内閣総理大臣 安倍 晋三殿

社会保障・税一体改革担当相 甘利 明殿

神奈川県保険医協会

理事長 森 壽生

 

審議中のマイナンバー法改定案の廃案を求めるとともに

マイナンバーの10月施行、来年1月の運用開始の中止または延期を求める要望書

 

 日本年金機構がサイバー攻撃を受け約125万件の年金情報が流出した問題を受けて、政府関係各省庁は原因究明、事後対応等にご尽力のことと存じます。

 しかしこの流出問題に端を発し、国民のマイナンバー制度に対する情報漏洩・流出の懸念や不安が広がっていることは、周知の事実です。こうした情勢の最中に、預貯金口座をはじめ、特定健診情報や予防接種履歴をマイナンバーの対象範囲に加えるという、いわば「拡大法案」の審議は、国民感情を逆撫でするばかりか、政府への信頼を損なうことにも繋がります。

 

 2013年5月に成立したマイナンバー法の附則第6条では、施行後3年を目途に国民の理解を得つつ利用範囲を見直すものと規定しています。しかし今改定案は、10月5日の制度施行を待たずに審議が進められています。また医療情報については、マイナンバー法の審議段階からその機微性が重視され、マイナンバーの利用範囲から除外されていました。しかし今改定案で追加対象としている特定健診情報は、個人の血圧、尿検査や血液検査の結果等が含まれており、紛れもなく医療情報です。このように、改定法案自体が法の附則や当初の約束を反故にするものであり、国会審議は「勇み足」だと言わざるを得ません。

 

 そもそも、マイナンバー制度に対する国民の認知度が3割弱と低いことは、内閣府が1月に実施した世論調査でも明らかです。また、帝国データバンクが4月に実施した調査では、9割超の企業がマイナンバー制度を認識するも対応は2割弱にとどまるという結果が報告されています。更には、情報連携システムの中核となる中間サーバーの設計・開発の大幅な遅れに伴い、自治体のシステム改修も遅れる状況にあるとも報じられています(2015.2.17朝日新聞)。これらは、社会的にマイナンバー制度の受け入れ態勢が整っていない現実を物語っています。

 

 このような状況下で、改定法案の審議を続けることは勿論のこと、10月の個人番号通知、来年1月から運用を開始することは、余りにも無謀と言わざるを得ません。マイナンバーの対象となる個人情報は、税分野や社会保障分野など多岐に渡り、漏洩・流出の際の被害は年金情報とは比較にならないほど甚大です。また、規模の大小を問わず、多くの民間事業者が「個人番号利用事務実施者」としてマイナンバー付き個人情報を取り扱うことになります。日本年金機構さえ防げなかったサイバー攻撃を、小規模の民間事業者が防ぐことは不可能です。民間事業者の情報漏洩・流出が多発する可能性は非常に高く、社会的に混乱が生じること懸念されます。

 

 冒頭にも述べたとおり、国民の個人情報漏洩・流出に対する不安は広がっています。政府、各関係省庁には、憲法13条が保障するプライバシー権の順守、個人情報保護を優先する視点に立ち、(1) 審議中のマイナンバー法改定案を廃案にすること、(2) マイナンバーの10月施行、来年1月の運用開始の中止又は延期――この2つの英断を下されることを強く求めます。