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(調査報告)神奈川県内の7割の自治体が住民税額決定通知書(事業者用)にマイナンバーを記載!?

 今年5月中に自治体から事業者に送付される住民税額決定通知書(事業者用)に、従業員のマイナンバーが記載される・・・。

 一部のマスコミが報じたことを受け、神奈川県保険医協会は県内全市町村に質問状を送付。その結果、7割超の自治体が「記載する」または「記載予定」という、驚愕の事実が明らかになった。個人情報の漏洩・流出リスクの増大、自治体によるプライバシー権侵害など、多くの問題をはらむ。

 

 事業者は例年、年末調整の際に従業員から収集した扶養控除等申告書を基に、「給与支払報告書」を作成し、当該従業員が居住する市町村に提出する。市町村はこの報告書を基に当該従業員の住民税を算出し、事業者へ住民税額を記した「決定通知書」を郵送する。

 総務省は2017年度分の同通知書に、従業員のマイナンバー記載欄を追加する旨の省令を発出。自治体に向けてマイナンバーを記載するよう指示している。あわせて、同通知書の送付方法について、総務省は従来の普通郵便で可能との技術的助言をしていることが分かった。

 

調査報告

 住民税額決定通知書(事業者用)にマイナンバーを「記載する」、「記載する予定」との回答は、合わせて23自治体(74.2%)。「記載しない」と回答した自治体はゼロだった。「記載する(予定含む)」と回答した自治体のコメントでは、「総務省令に従い、個人番号を記載する予定」、「番号法や地方税法、総務省の見解等に則して適切に対応する」など、法令順守を理由とする意見が大半を占めた。

 同通知書の送付方法については、15自治体(48.4%)が「普通郵便(予定含む)」と回答。対象群を「記載する(予定含む」)と回答した23自治体に絞ると、「普通郵便(予定含む)」が13自治体(56.5%)、「簡易書留」が4自治体(17.4%)、「検討中」が5自治体(21.7%)となった。普通郵便での送付理由については、「総務省の見解」など、国の意向に従う意見があった。一方、「簡易書留」、「検討中」と回答した自治体では、「誤配送等のリスクに対応」、「特定記録郵便で送付できるよう予算要望している」など、慎重意見が見られた。

 

詳細 ≫ 神奈川県保険医新聞 2017年1月25日号・5面

 

問題点

 事業者は同通知書に記された住民税額の給与天引きを6月から実施するが、その作業に従業員のマイナンバーは必要としない。無用なマイナンバーの通知は、事業者に更なる管理や責任を押し付けるばかりか、漏洩・流出の危険性を増大させる。また、年末調整時に勤務先へのマイナンバー提供を拒否した従業員にとっては、本人の承諾を得ないまま勝手に知らされることになる。これは、自治体であってもプライバシー権の侵害に他ならない。

 自治体においては、同通知書がマイナンバー付きの「特定個人情報」である以上、通常の個人情報よりも厳しい規程や罰則のもと、厳重な保護対策が必要となる。同通知書を普通郵便で送付し、誤配や紛失などが起こった場合、自治体は事後対応や賠償金など過重な負担を背負うことになる。また、普通郵便でなく簡易書留で送付する場合、1通につきプラス310円の費用負担が生じる。

 誰にとってもメリットは皆無でリスクばかりが目立つ。まさに「百害あって一利なし」と言える。

(イメージ)

20170125zu.jpg

 

[行動提起] 生活現場から自治体を動かす 住民の声を届けよう

 住民税決定通知書(事業者用)へのマイナンバー記載を止めさせるには、住民や事業者など生活現場から多くの声を上げ、自治体を動かすことが肝要となる。

 事業主、従業員が協力し合い、居住する市町村に同趣旨の意見・要望を届けていただきたい。どの市町村も、「市長への手紙」、「市民からの提案」などの名称で、市民からの意見を広聴する事業を行っている。送付方法は郵便のほか、メールやホームページからの入力など、自治体ごとに様々あるので、ネットで検索していただきたい(自治体窓口一覧)。

 なお、神奈川県保険医協会は各市町村の2月・3月議会に向けて、以下の陳情を提出する。

 「平成29年度からの特別徴収額の決定・変更通知書に受給者の個人番号を記載する件についての陳情」

 

自治体への意見・要望の例文

(個人の場合)

 市が職場に送付する「給与所得等に係る住民税 特別徴収額の決定・変更通知書(特別徴収義務者用)」に、2017年度分から個人番号を記載する欄が設けられたと聞きました。

 私は、個人情報の流出や漏洩の不安などを理由に、職場に個人番号を提供していません。同通知書によって、私の意思に関わらず、市から私の個人番号が職場に知らされることは、プライバシーの侵害に他ならないと思います。また、住民税の給与天引きに個人番号は必要ないと聞いています。無用な個人番号の通知は漏洩・流出のリスクを高めるだけです。

 以上の理由から、同通知書に受給者(従業員)の個人番号を記載しないよう要望します。

 

(事業主の場合)

 市が事業者に送付する「給与所得等に係る住民税 特別徴収額の決定・変更通知書(特別徴収義務者用)」に、2017年度分から従業員の個人番号を記載する欄が設けられたと聞きました。

 私たち小規模の事業者は「個人番号関係事務実施者」という役割を一方的に押し付けられながらも、従業員に個人番号の提供を求め、個人番号の保管・管理・漏洩対策などに努めています。しかし、ハードルの高いガイドラインを遵守することは、正直難しいのが実態です。また、従業員の中には、個人情報の流出や漏洩の不安などを理由に、個人番号の提供を拒否する者もいます。

 そうした中、同通知書によって市から従業員の個人番号が通知されうことは、従業員にとってはプライバシーの侵害に他ならないと思います。また、私たち事業者にとっても、住民税の給与天引きに個人番号は必要なく、個人番号の保管・管理・漏洩対策の実務を一方的に強要させられているに過ぎません。更には、同通知書を普通郵便で送付する可能性があるという話も聞いています。誤配送やポスト荒らしなどによる紛失によって、漏洩や流失事故が起こった場合、市として責任をとっていただけるのでしょうか。あらゆる面から考えても、余りにもリスクが高いと思います。

 以上の理由から、同通知書に受給者(従業員)の個人番号を記載しないよう要望します。

 

* 下線部に該当しない場合は、削除してください

(2017.2.1更新)

 今年5月中に自治体から事業者に送付される住民税額決定通知書(事業者用)に、従業員のマイナンバーが記載される・・・。

 一部のマスコミが報じたことを受け、神奈川県保険医協会は県内全市町村に質問状を送付。その結果、7割超の自治体が「記載する」または「記載予定」という、驚愕の事実が明らかになった。個人情報の漏洩・流出リスクの増大、自治体によるプライバシー権侵害など、多くの問題をはらむ。

 

 事業者は例年、年末調整の際に従業員から収集した扶養控除等申告書を基に、「給与支払報告書」を作成し、当該従業員が居住する市町村に提出する。市町村はこの報告書を基に当該従業員の住民税を算出し、事業者へ住民税額を記した「決定通知書」を郵送する。

 総務省は2017年度分の同通知書に、従業員のマイナンバー記載欄を追加する旨の省令を発出。自治体に向けてマイナンバーを記載するよう指示している。あわせて、同通知書の送付方法について、総務省は従来の普通郵便で可能との技術的助言をしていることが分かった。

 

調査報告

 住民税額決定通知書(事業者用)にマイナンバーを「記載する」、「記載する予定」との回答は、合わせて23自治体(74.2%)。「記載しない」と回答した自治体はゼロだった。「記載する(予定含む)」と回答した自治体のコメントでは、「総務省令に従い、個人番号を記載する予定」、「番号法や地方税法、総務省の見解等に則して適切に対応する」など、法令順守を理由とする意見が大半を占めた。

 同通知書の送付方法については、15自治体(48.4%)が「普通郵便(予定含む)」と回答。対象群を「記載する(予定含む」)と回答した23自治体に絞ると、「普通郵便(予定含む)」が13自治体(56.5%)、「簡易書留」が4自治体(17.4%)、「検討中」が5自治体(21.7%)となった。普通郵便での送付理由については、「総務省の見解」など、国の意向に従う意見があった。一方、「簡易書留」、「検討中」と回答した自治体では、「誤配送等のリスクに対応」、「特定記録郵便で送付できるよう予算要望している」など、慎重意見が見られた。

 

詳細 ≫ 神奈川県保険医新聞 2017年1月25日号・5面

 

問題点

 事業者は同通知書に記された住民税額の給与天引きを6月から実施するが、その作業に従業員のマイナンバーは必要としない。無用なマイナンバーの通知は、事業者に更なる管理や責任を押し付けるばかりか、漏洩・流出の危険性を増大させる。また、年末調整時に勤務先へのマイナンバー提供を拒否した従業員にとっては、本人の承諾を得ないまま勝手に知らされることになる。これは、自治体であってもプライバシー権の侵害に他ならない。

 自治体においては、同通知書がマイナンバー付きの「特定個人情報」である以上、通常の個人情報よりも厳しい規程や罰則のもと、厳重な保護対策が必要となる。同通知書を普通郵便で送付し、誤配や紛失などが起こった場合、自治体は事後対応や賠償金など過重な負担を背負うことになる。また、普通郵便でなく簡易書留で送付する場合、1通につきプラス310円の費用負担が生じる。

 誰にとってもメリットは皆無でリスクばかりが目立つ。まさに「百害あって一利なし」と言える。

(イメージ)

20170125zu.jpg

 

[行動提起] 生活現場から自治体を動かす 住民の声を届けよう

 住民税決定通知書(事業者用)へのマイナンバー記載を止めさせるには、住民や事業者など生活現場から多くの声を上げ、自治体を動かすことが肝要となる。

 事業主、従業員が協力し合い、居住する市町村に同趣旨の意見・要望を届けていただきたい。どの市町村も、「市長への手紙」、「市民からの提案」などの名称で、市民からの意見を広聴する事業を行っている。送付方法は郵便のほか、メールやホームページからの入力など、自治体ごとに様々あるので、ネットで検索していただきたい(自治体窓口一覧)。

 なお、神奈川県保険医協会は各市町村の2月・3月議会に向けて、以下の陳情を提出する。

 「平成29年度からの特別徴収額の決定・変更通知書に受給者の個人番号を記載する件についての陳情」

 

自治体への意見・要望の例文

(個人の場合)

 市が職場に送付する「給与所得等に係る住民税 特別徴収額の決定・変更通知書(特別徴収義務者用)」に、2017年度分から個人番号を記載する欄が設けられたと聞きました。

 私は、個人情報の流出や漏洩の不安などを理由に、職場に個人番号を提供していません。同通知書によって、私の意思に関わらず、市から私の個人番号が職場に知らされることは、プライバシーの侵害に他ならないと思います。また、住民税の給与天引きに個人番号は必要ないと聞いています。無用な個人番号の通知は漏洩・流出のリスクを高めるだけです。

 以上の理由から、同通知書に受給者(従業員)の個人番号を記載しないよう要望します。

 

(事業主の場合)

 市が事業者に送付する「給与所得等に係る住民税 特別徴収額の決定・変更通知書(特別徴収義務者用)」に、2017年度分から従業員の個人番号を記載する欄が設けられたと聞きました。

 私たち小規模の事業者は「個人番号関係事務実施者」という役割を一方的に押し付けられながらも、従業員に個人番号の提供を求め、個人番号の保管・管理・漏洩対策などに努めています。しかし、ハードルの高いガイドラインを遵守することは、正直難しいのが実態です。また、従業員の中には、個人情報の流出や漏洩の不安などを理由に、個人番号の提供を拒否する者もいます。

 そうした中、同通知書によって市から従業員の個人番号が通知されうことは、従業員にとってはプライバシーの侵害に他ならないと思います。また、私たち事業者にとっても、住民税の給与天引きに個人番号は必要なく、個人番号の保管・管理・漏洩対策の実務を一方的に強要させられているに過ぎません。更には、同通知書を普通郵便で送付する可能性があるという話も聞いています。誤配送やポスト荒らしなどによる紛失によって、漏洩や流失事故が起こった場合、市として責任をとっていただけるのでしょうか。あらゆる面から考えても、余りにもリスクが高いと思います。

 以上の理由から、同通知書に受給者(従業員)の個人番号を記載しないよう要望します。

 

* 下線部に該当しない場合は、削除してください

(2017.2.1更新)