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混合診療問題ニュース25 「リハビリ給付 日数打ち切り、後は "自費診療"へ移行??!」

リハビリ給付 日数打ち切り、後は “自費診療”へ移行??!

厚労省が、健保ルール無視の「解釈」提示  

 4月の診療報酬改定により、リハビリテーションが疾患別に再編され、脳血管疾患180日、運動器疾患150日、心大血管疾患150日、呼吸器疾患90日と保険給付の日数上限が導入され全国的に現場が混乱し、社会問題となっている。

 この問題について11月10日、阿部知子(社民)議員が国会質問。水田保険局長は、日数上限以降のリハビリは自由診療に切り替わる旨、の不可思議な答弁をした。医療保険では、「治療が完結するまで一貫して保険診療」、が原則的なルールであり、特例的に自費(保険外)と併用できる項目は厚労大臣が決めている。日数上限を超えたリハビリはこれに該当していない。

 この件について、当協会は11月22日、厚労省医療課に質したところ、1)日数上限以降のリハビリは自費に切り替わる、2)リハビリを実施し診察料(再診料)のみの保険算定で保険診療を継続することは不可、3)日数上限で保険診療は終了、4)高血圧など別の疾患の治療は保険診療で継続は可能、5)同一日に自費のリハビリと別疾患の保険診療を行なうことは不可、6)自費と保険の実施日が違えばOK(!)と回答した。

 

自費切替え、モザイク診は判例・法律に抵触  

 同一医療機関で1人の患者の治療に、自費と保険をモザイク的に実施することは認められておらず、過去の裁判でも自費との併用は大臣が定めた特定療養費(現制度では保険外併用療養費)以外は認められないと判例が出ている。

 また、そもそも、医療サービスを直接給付する「療養の給付」が健保法のルールのため、自費診療と混合するためには医療費用を支給する仕組み、療養費構成に転換しない限り法的には不可能である。唯一の例外は歯科の欠損・補綴(入れ歯)の自費移行があるが、これとて過去の歯科差額の超法規的な清算の産物。保険診療の継続を否定し、強制的に自費移行させる仕組みは現存しない。

 

広がる現場矛盾 日数制限の即刻、撤回が筋

 今回のリハビリの給付日数上限は、「状態改善」が期待できる疾患は対象外とされている。しかし、状態を悪くしないための「維持期リハビリ」を必要とする患者は日数上限で保険給付がなくなる。これが、大問題になっている。

 現場では、対応や説明に苦慮し、中には大赤字覚悟で、診察料のみの保険算定でリハビリを実施している医療機関もある。

 給付日数上限は、保険算定ができる上限ルールを導入したものであり、それ以降の保険診療まで否定はしてはいない。また厚労省の不可解解釈、自費診療への切り替えは、上限日数以降の「医療の必要性」を認めたものでもある。

 保険診療のルール、療養担当規則では、「リハビリテーションは、必要があると認められる場合に行なう」と大原則が定められている。この原則に戻り、即刻、日数制限を撤回することが本来の解決策である。

 

要注意!「状態改善」 高齢者、生活習慣病への波及の可能性大

民間保険も準備着々

 日数上限が導入されたリハビリのキーワードは「状態改善」。厚労省は、スコア化できる心身機能の改善と解しており、QOLやADLの改善は入らないとしている。つまり、「状態改善」のない治療は、今後、給付日数上限で保険診療が打ち切りされる可能性を否定できない。既に、後期高齢者医療の特別部会では「治る見込みのない状態」の文言が登場し診療報酬の議論が進んでいる。また、国民医療費で10兆円を占める糖尿病、高血圧などの生活習慣病は、先般の医療「改革」の目玉。管理・指導を保険診療から外し、企業に委託できる「特定保健指導」の枠組みを決めたことは記憶に新しい。

 東京海上火災日動が、患者も加入できる「糖尿病専用保険」を昨年10月発売。オリックス生命も「生活習慣病入院保険」を今年9月に発売と、民間保険の商品開発も将来を見据えた感がある。三井住友海上きらめき生命は混合診療(保険外併用療養費)の「先進医療」をカバーする民間保険をこの11月に商品化したのは、その最たるもの。ビジネスチャンスを求めた市場参入はこれにとどまらず、ニコスが保険証付きカードの100万枚普及で動いており、VISA、マスターでの保険診療の支払いが一般化すれば、一気に保険診療を療養費に転換。3割負担分から、7割給付分までもが巨大な資金運用のマーケットとなる。

 (2006年11月27日)

リハビリ給付 日数打ち切り、後は “自費診療”へ移行??!

厚労省が、健保ルール無視の「解釈」提示  

 4月の診療報酬改定により、リハビリテーションが疾患別に再編され、脳血管疾患180日、運動器疾患150日、心大血管疾患150日、呼吸器疾患90日と保険給付の日数上限が導入され全国的に現場が混乱し、社会問題となっている。

 この問題について11月10日、阿部知子(社民)議員が国会質問。水田保険局長は、日数上限以降のリハビリは自由診療に切り替わる旨、の不可思議な答弁をした。医療保険では、「治療が完結するまで一貫して保険診療」、が原則的なルールであり、特例的に自費(保険外)と併用できる項目は厚労大臣が決めている。日数上限を超えたリハビリはこれに該当していない。

 この件について、当協会は11月22日、厚労省医療課に質したところ、1)日数上限以降のリハビリは自費に切り替わる、2)リハビリを実施し診察料(再診料)のみの保険算定で保険診療を継続することは不可、3)日数上限で保険診療は終了、4)高血圧など別の疾患の治療は保険診療で継続は可能、5)同一日に自費のリハビリと別疾患の保険診療を行なうことは不可、6)自費と保険の実施日が違えばOK(!)と回答した。

 

自費切替え、モザイク診は判例・法律に抵触  

 同一医療機関で1人の患者の治療に、自費と保険をモザイク的に実施することは認められておらず、過去の裁判でも自費との併用は大臣が定めた特定療養費(現制度では保険外併用療養費)以外は認められないと判例が出ている。

 また、そもそも、医療サービスを直接給付する「療養の給付」が健保法のルールのため、自費診療と混合するためには医療費用を支給する仕組み、療養費構成に転換しない限り法的には不可能である。唯一の例外は歯科の欠損・補綴(入れ歯)の自費移行があるが、これとて過去の歯科差額の超法規的な清算の産物。保険診療の継続を否定し、強制的に自費移行させる仕組みは現存しない。

 

広がる現場矛盾 日数制限の即刻、撤回が筋

 今回のリハビリの給付日数上限は、「状態改善」が期待できる疾患は対象外とされている。しかし、状態を悪くしないための「維持期リハビリ」を必要とする患者は日数上限で保険給付がなくなる。これが、大問題になっている。

 現場では、対応や説明に苦慮し、中には大赤字覚悟で、診察料のみの保険算定でリハビリを実施している医療機関もある。

 給付日数上限は、保険算定ができる上限ルールを導入したものであり、それ以降の保険診療まで否定はしてはいない。また厚労省の不可解解釈、自費診療への切り替えは、上限日数以降の「医療の必要性」を認めたものでもある。

 保険診療のルール、療養担当規則では、「リハビリテーションは、必要があると認められる場合に行なう」と大原則が定められている。この原則に戻り、即刻、日数制限を撤回することが本来の解決策である。

 

要注意!「状態改善」 高齢者、生活習慣病への波及の可能性大

民間保険も準備着々

 日数上限が導入されたリハビリのキーワードは「状態改善」。厚労省は、スコア化できる心身機能の改善と解しており、QOLやADLの改善は入らないとしている。つまり、「状態改善」のない治療は、今後、給付日数上限で保険診療が打ち切りされる可能性を否定できない。既に、後期高齢者医療の特別部会では「治る見込みのない状態」の文言が登場し診療報酬の議論が進んでいる。また、国民医療費で10兆円を占める糖尿病、高血圧などの生活習慣病は、先般の医療「改革」の目玉。管理・指導を保険診療から外し、企業に委託できる「特定保健指導」の枠組みを決めたことは記憶に新しい。

 東京海上火災日動が、患者も加入できる「糖尿病専用保険」を昨年10月発売。オリックス生命も「生活習慣病入院保険」を今年9月に発売と、民間保険の商品開発も将来を見据えた感がある。三井住友海上きらめき生命は混合診療(保険外併用療養費)の「先進医療」をカバーする民間保険をこの11月に商品化したのは、その最たるもの。ビジネスチャンスを求めた市場参入はこれにとどまらず、ニコスが保険証付きカードの100万枚普及で動いており、VISA、マスターでの保険診療の支払いが一般化すれば、一気に保険診療を療養費に転換。3割負担分から、7割給付分までもが巨大な資金運用のマーケットとなる。

 (2006年11月27日)