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OTC類似薬ってなに?どんな問題があるの?

 OTC医薬品とは、薬局やドラッグストアで処方箋なしに購入できる市販薬のことです。OTCとはOver The Counterの略で、カウンター越しに販売されることを意味します。風邪薬や湿布、胃腸薬など、比較的軽い症状に用いられ、自己判断で使用できることから「セルフメディケーション」に役立つ一方で、近年「OTC類似薬」と呼ばれる処方薬を保険の対象外にしようとする動きが出ています。保険の対象外にするときには、大きく分けて次の2つの方法があると思われます。

 

・スイッチOTC化と言って、医師の診察なしにドラッグストアなどで買えるようにする方法。

・医師の診察は行いつつも、処方される医薬品(処方薬)を保険から外す方法。

 

これはいずれも、医療財政の抑制を目的とした制度改革の一環ですが、大きな問題点があります。

 

 第一に、患者さんの健康に影響を与える懸念が高まります。医師は薬を処方するとき、副作用や飲み合わせも考慮して用法用量などを決めます。また必要に応じて検査を行い、患者さんの体に悪影響が出ないかモニタリングをすることもあります。スイッチOTC化となれば、医師の診察を受けないままOTC医薬品として購入することができ、その添付文書には相互作用や服用注意情報が不足しているものもあるため、思わぬ副作用で健康被害が起こる可能性があります。また、意図的に大量の薬を服用する"オーバードーズ"を助長する危険性もあります。

 

 また医療機関で処方される薬が「市販薬と似ている」という理由で保険適用から外されると、薬代の自己負担が増えることになります。患者さんの経済的負担が増し、結果として受診控えを招く危険があります。すると医師の診察を受ける機会が減り、病気の早期発見・早期治療の機会が損なわれる恐れがあります。

 さらに問題視されているのが「選定療養」という仕組みの乱用です。これは本来、患者さんが希望して追加料金を払う特別な医療(例:入院時の個室利用など)に使われる制度ですが、最近では治療に必要な医薬品にも適用され始めています。この流れが加速すれば、今後ますます「保険が使えない薬」が増える可能性があり、保険に加入しているのに使えなくなるという国民皆保険制度の根幹が揺らぐ懸念があるのです。

 

 

 医療の公平性と必要な治療へのアクセスを守るためには、安易な保険外しを警戒し、誰もが必要な医療を受けられる制度を維持することが求められています。

 

 

 

 

 OTC医薬品とは、薬局やドラッグストアで処方箋なしに購入できる市販薬のことです。OTCとはOver The Counterの略で、カウンター越しに販売されることを意味します。風邪薬や湿布、胃腸薬など、比較的軽い症状に用いられ、自己判断で使用できることから「セルフメディケーション」に役立つ一方で、近年「OTC類似薬」と呼ばれる処方薬を保険の対象外にしようとする動きが出ています。保険の対象外にするときには、大きく分けて次の2つの方法があると思われます。

 

・スイッチOTC化と言って、医師の診察なしにドラッグストアなどで買えるようにする方法。

・医師の診察は行いつつも、処方される医薬品(処方薬)を保険から外す方法。

 

これはいずれも、医療財政の抑制を目的とした制度改革の一環ですが、大きな問題点があります。

 

 第一に、患者さんの健康に影響を与える懸念が高まります。医師は薬を処方するとき、副作用や飲み合わせも考慮して用法用量などを決めます。また必要に応じて検査を行い、患者さんの体に悪影響が出ないかモニタリングをすることもあります。スイッチOTC化となれば、医師の診察を受けないままOTC医薬品として購入することができ、その添付文書には相互作用や服用注意情報が不足しているものもあるため、思わぬ副作用で健康被害が起こる可能性があります。また、意図的に大量の薬を服用する"オーバードーズ"を助長する危険性もあります。

 

 また医療機関で処方される薬が「市販薬と似ている」という理由で保険適用から外されると、薬代の自己負担が増えることになります。患者さんの経済的負担が増し、結果として受診控えを招く危険があります。すると医師の診察を受ける機会が減り、病気の早期発見・早期治療の機会が損なわれる恐れがあります。

 さらに問題視されているのが「選定療養」という仕組みの乱用です。これは本来、患者さんが希望して追加料金を払う特別な医療(例:入院時の個室利用など)に使われる制度ですが、最近では治療に必要な医薬品にも適用され始めています。この流れが加速すれば、今後ますます「保険が使えない薬」が増える可能性があり、保険に加入しているのに使えなくなるという国民皆保険制度の根幹が揺らぐ懸念があるのです。

 

 

 医療の公平性と必要な治療へのアクセスを守るためには、安易な保険外しを警戒し、誰もが必要な医療を受けられる制度を維持することが求められています。