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2014/3/13 神奈川県保険医協会版・医療基本法(草案)を発表しました

 神奈川県保険医協会は2014年5月19日、厚生労働省記者クラブにて、神奈川県保険医協会版「医療基本法案(草案)」を発表しました。

 これは、2009年~10年まで国を相手に闘った「レセプトオンライン義務化撤回訴訟」の後、残された課題である「法の原理違反の解決」を発端に、2011年1月より3年にわたり検討したもの。法文案は、前文と全16条、附則2条で構成。日医や患者団体などの案と比較し、医療者の「権利」を明確に規定した点が特徴となっています(以下に全文を掲載)。


神奈川県保険医協会版・医療基本法(草案・第二次案)の提案にあたって

 日本は先進国24ヶ国中16位(対GDP)と低い医療費の下で、世界一の健康度(WHO)を達成している。これを可能としてきたのは、医療者の「献身」にある。しかし近年、「医療崩壊」の言葉に象徴さえるよう、このことが危うくなってきている。

 医療への低い経済評価は、医師不足、看護師不足となり、労働基準法に沿わない「当直」勤務を日常とし、当直・夜勤明けの長時間連続勤務、と医療者の労働状況は依然と過酷であり、過労死さえも生じている。過密、過重労働は患者の医療安全と表裏一体であり患者の医療が脅かされている。

 また低医療費政策の下で、自己資本と借金による医療機関の私的開設に大きく負う医療体制は、その経営基盤を危うくし、公的医療機関でさえ役割を十分に果たせず、地方の医療過疎、医療空白ばかりか都市部での産科、小児科の空白などの地域医療体制の脆弱さとなって問題化している。

 更には、皆保険下の保険診療の規則・規定により、医療・医学と相いれない行政指導とその乱用、ガイドラインの絶対化など、医師の裁量権への介入や人権侵害さえも横行しており、萎縮診療を引き起こし、果ては自殺などの痛ましい事件に発展する例も少なくない。裏返すと患者の医療保障が、守られていない事態となっている。

 昨今は、低医療費政策の徹底により、混合診療(保険外併用療養)が台頭。民間商品の先進医療特約保険の販売や保険外負担の拡大など医療の私費負担化、商品化、市場化の策動も活発となっている。このため、医療の非営利性、公共性が脅かされ、先進医療の保険導入も不安定となり、患者が新しい治療を受けることが難しくなり始めている。

 それに加え、医療事故の刑事事件化など、故意・悪意の犯罪との同列視が頻発する事態も起こり、医療現場に暗い影を落とし、医療者の士気に大きな影響を与えている。

 医療は、医療者、医療機関が存在してこそ、成り立つものである。また、医師と患者の信頼にもとづく共同の行為である。近年の患者の自己決定権を主とする患者の権利法運動から発展した医療基本法制定の動きや、患者取り違い事故などの医療事故への批判の目などもあり、医療者、医療界はややもすると、自身が置かれている状況に関する発信に弱腰となり、本質的な状況改善への法的担保を築けずにいる。患者の自己決定のための「十分」な説明には、専門的知識の格差、人的体制の整備、時間的制約を踏まえなければ「説明義務」は実現可能性はないに等しい。

 低医療費政策の下、過重な患者負担、高い保険料により、多くの病人が受診できずにいることはゆゆしきことである。その一方で、医療知識や医療情報の氾濫の中、高い要求が医療機関に突きつけられる流れも厳然とある。財政再建の御旗の下、消費増税による税と社会保障の一体改革により一定の財源が振り向けられるが、社会保障への「大鉈」は確実となっている。

 これ以上の財政圧力と患者要求の狭間で、医療現場は確実にもたない。そのことを踏まえ、医療者、医療機関の法的権利の基本を定め、患者への医療提供を守ることに重きを置いた医療基本法を制定することとした。

医療基本法(案)草案「第二次案」(2014.3.13)

第一章 総則

第二章 医療保障政策

第三章 医療提供者の権利と責務

第四章 患者等の権利と責務

附則

前 文

 日本は戦後の社会保障制度審議会「勧告」(1950年)で示された新たな国家建設の理想のもと、国民皆保険、皆年金の制度を敷き(1961年)、多年にわたり憲法の、生存権保障(第二十五条)、個人の尊重と幸福追求権(第十三条)、基本的人権の不可侵(第九十七条)に基づく医療保障を築いてきた。

 これを将来にわたり保障するため、医療者が持てる力を発揮できる環境を整え、患者は経済的負担がなく安心・安全な医療が受けられるよう、ここに医療基本法を制定する。

第一章 総則

[目 的

第一条 この法律は、憲法に基づき、すべての国民の生命と健康を守るため、医療保障、医療提供の基本的理念ならびに基本的権利と原則を定め、医療に関する施策の指針及び国、地方公共団体の責務を定めることを目的とする。

(患者の権利に偏らない医療提供側の権利の確保の宣言)

※(  )内は趣旨。以下、同様

[定義規定

第二条 この法律でいう医療とは、健康の保持増進、疾病の予防、治療及びリハビリテーション、公衆衛生など医学的知見により社会的に行われるものをいう。

 この法律でいう、病院、診療所は医療法第一条の五に規定するものをいう。

 この法律でいう健康情報とは、健診、予防接種、診療、投薬などの記録その他健康管理に必要な情報をいうものである。

※必要に応じ「定義」項目は追加

[医療保障の基本理念

第三条 国は、患者・国民が「いつでも、どこでも、だれでも」医療を受けられるように、公共性、公益性を踏まえた施策を講じなければならない。

(皆保険理念の明文化/医療の商品化、市場化への牽制) 

 国は、医療に関する施策の決定にあたり国民の意思が反映されるようにしなければならない。

(医療政策決定過程への国民参加)

第二章 医療保障政策

[財源の確保

第四条 国は、医療保障に関する施策に必要な財源を確保しなければならない。

(財政圧力による医療費抑制策への牽制) 

[医療の進歩、安全の確保

第五条 国は、医療に関する研究及び技術の開発が、有効性、安全性を担保し、その成果が国民に還元されるように、その推進に関し必要な施策を講じなければならない。

(医学研究への財政保障と臨床研究・試験の法整備) 

 国は医療機関において、医療提供が安全になされるよう、人的体制等の労働安全、医療技術、医薬品などの医療水準の担保がはかられるよう施策を講じなければならない。

(医療者の過密労働の解消/安全な医療提供)

[医療制度

第六条 国は国民が医療を等しくあまねく享受できるよう法律等に基づく制度により保障しなければならない。

(財政措置による雲散霧消化の牽制)

[健康情報

第七条 健康情報は原則、患者本人の同意なく、利用することを禁ずる。

(医療情報の無断使用、商業利用等の禁止)

[医療機関の体系的整備

第八条 国及び地方公共団体は、住民が必要に応じ適切な医療を受けることができるようにするため、その地域の自然的、社会的諸条件に応じて、診療所並びに総合的、専門的な病院及びその他の病院が体系的に整備されるよう必要な施策を講じなければならない。

 その際、特に専門的医療を担当する病院は主として公的医療機関の新設又は整備拡充によって行なわれるものとする。

 国は診療所、病院の各機能に応じた診療分担と、各機能の補完的な連携がなされるよう、体制整備をはからなければならない。また、国は広報・教育による患者の自律性と、疾病の多様性に鑑みた医療機関の自主性を尊重しなければならない。

(診療科目、診療機能の地域偏在と無秩序化の整備)

(その際の地域の医療機関の合意形成の担保)

(診療ガイドラインの強制の排除とプロフェッショナル・オートノミーの保障)

[医療担当者の確保のための施策

第九条 国は、医学、歯学、薬学及び医療技術の進歩及び専門分化並びに医療に対する需要の変化に対応して、各種の医療担当者が十分に確保されるよう必要な施策を講じなければならない。

 前項の施策は、生活環境、人口構成、疾病構造等の変化に伴う各種医療担当者の需要に応じ、その養成は計画的に行わなければならない。

(医療需要に即応した計画)

[医療提供者の質の確保

第十条 国は、医学、歯学、薬学及び医療技術の進歩及び専門分化並びに医療に対する需要の変化に対応して、医療を提供するものの業務範囲、資格要件等を見直し、必要な措置を講じなければならない。

 医師は担当する診療科目につき原則、相当期間の臨床研修を経ているものとする。

 医療を提供する各種医療担当者は、医学、歯学、薬学及び医療技術の進歩等の状況の変化に対応するため、その資格取得後においても研鑚し、その研修は物的・時間的に保障されなければならない。

(医師養成の国家責任と医師の研鑽保障)

第三章 医療提供者の権利と責務

[医療担当者の処遇

第十一条 国は、各種医療担当者の職務の公共性並びにその職務について必要とされる高度の知識及び技能にふさわしい社会的地位の確保と経済的待遇の保障がなされるよう必要な施策を講じなければならない。

(診療報酬などの経済水準、労働・技術の的確な評価の保証)

[医療担当者の労務環境の保障

第十二条 国は、各種医療担当者の職務遂行が適切に行われるよう、労務環境の保障に努めなければなない。その際、労働の特殊性に配慮がなされなければならない。

[医療を提供するものの裁量権

第十三条 医療を提供するものは、医療水準に応じた合理的判断と職業的判断に基づき、適切な診療を実施することを妨げられない。

保険診療の点数ルール、審査、個別指導などによる診療介入の拒否)

[医療を提供するものの責務

第十四条 すべての医療担当者は、生命の尊厳に立脚して、医療担当者相互の立場を尊重しつつ、医師又は歯科医師を中心として有機的連携の下に一体となって、医療を提供する義務を負う。

(医療の必要に応じた連携の強化)

第四章 患者等の権利と責務

[患者等の権利と責務

第十五条 患者は自らの医療に関し、自らの健康情報の提供を受け、主体的に判断し決定する権利を有する。

(患者の自己決定権の保障)

 患者は、医療提供者が適切な医療を提供できるよう、協力に務めなければならない。

(適切な医療の提供のために)

[医療制度に関する教育

第十六条 国は国民が適切に医療を受けられるよう教育を行わなければならない。

(大病院志向の是正と医療制度、医療知識の理解の促進)

附 則

第一条 国、都道府県及び市町村は医療施策について、医療機関、住民、有識者などと共に検証し、必要な施策の軌道修正を図らなければならない。

(政策の「検証」のルール化)

第二条 この法律は、公布の日から施行する。

 神奈川県保険医協会は2014年5月19日、厚生労働省記者クラブにて、神奈川県保険医協会版「医療基本法案(草案)」を発表しました。

 これは、2009年~10年まで国を相手に闘った「レセプトオンライン義務化撤回訴訟」の後、残された課題である「法の原理違反の解決」を発端に、2011年1月より3年にわたり検討したもの。法文案は、前文と全16条、附則2条で構成。日医や患者団体などの案と比較し、医療者の「権利」を明確に規定した点が特徴となっています(以下に全文を掲載)。


神奈川県保険医協会版・医療基本法(草案・第二次案)の提案にあたって

 日本は先進国24ヶ国中16位(対GDP)と低い医療費の下で、世界一の健康度(WHO)を達成している。これを可能としてきたのは、医療者の「献身」にある。しかし近年、「医療崩壊」の言葉に象徴さえるよう、このことが危うくなってきている。

 医療への低い経済評価は、医師不足、看護師不足となり、労働基準法に沿わない「当直」勤務を日常とし、当直・夜勤明けの長時間連続勤務、と医療者の労働状況は依然と過酷であり、過労死さえも生じている。過密、過重労働は患者の医療安全と表裏一体であり患者の医療が脅かされている。

 また低医療費政策の下で、自己資本と借金による医療機関の私的開設に大きく負う医療体制は、その経営基盤を危うくし、公的医療機関でさえ役割を十分に果たせず、地方の医療過疎、医療空白ばかりか都市部での産科、小児科の空白などの地域医療体制の脆弱さとなって問題化している。

 更には、皆保険下の保険診療の規則・規定により、医療・医学と相いれない行政指導とその乱用、ガイドラインの絶対化など、医師の裁量権への介入や人権侵害さえも横行しており、萎縮診療を引き起こし、果ては自殺などの痛ましい事件に発展する例も少なくない。裏返すと患者の医療保障が、守られていない事態となっている。

 昨今は、低医療費政策の徹底により、混合診療(保険外併用療養)が台頭。民間商品の先進医療特約保険の販売や保険外負担の拡大など医療の私費負担化、商品化、市場化の策動も活発となっている。このため、医療の非営利性、公共性が脅かされ、先進医療の保険導入も不安定となり、患者が新しい治療を受けることが難しくなり始めている。

 それに加え、医療事故の刑事事件化など、故意・悪意の犯罪との同列視が頻発する事態も起こり、医療現場に暗い影を落とし、医療者の士気に大きな影響を与えている。

 医療は、医療者、医療機関が存在してこそ、成り立つものである。また、医師と患者の信頼にもとづく共同の行為である。近年の患者の自己決定権を主とする患者の権利法運動から発展した医療基本法制定の動きや、患者取り違い事故などの医療事故への批判の目などもあり、医療者、医療界はややもすると、自身が置かれている状況に関する発信に弱腰となり、本質的な状況改善への法的担保を築けずにいる。患者の自己決定のための「十分」な説明には、専門的知識の格差、人的体制の整備、時間的制約を踏まえなければ「説明義務」は実現可能性はないに等しい。

 低医療費政策の下、過重な患者負担、高い保険料により、多くの病人が受診できずにいることはゆゆしきことである。その一方で、医療知識や医療情報の氾濫の中、高い要求が医療機関に突きつけられる流れも厳然とある。財政再建の御旗の下、消費増税による税と社会保障の一体改革により一定の財源が振り向けられるが、社会保障への「大鉈」は確実となっている。

 これ以上の財政圧力と患者要求の狭間で、医療現場は確実にもたない。そのことを踏まえ、医療者、医療機関の法的権利の基本を定め、患者への医療提供を守ることに重きを置いた医療基本法を制定することとした。

医療基本法(案)草案「第二次案」(2014.3.13)

第一章 総則

第二章 医療保障政策

第三章 医療提供者の権利と責務

第四章 患者等の権利と責務

附則

前 文

 日本は戦後の社会保障制度審議会「勧告」(1950年)で示された新たな国家建設の理想のもと、国民皆保険、皆年金の制度を敷き(1961年)、多年にわたり憲法の、生存権保障(第二十五条)、個人の尊重と幸福追求権(第十三条)、基本的人権の不可侵(第九十七条)に基づく医療保障を築いてきた。

 これを将来にわたり保障するため、医療者が持てる力を発揮できる環境を整え、患者は経済的負担がなく安心・安全な医療が受けられるよう、ここに医療基本法を制定する。

第一章 総則

[目 的

第一条 この法律は、憲法に基づき、すべての国民の生命と健康を守るため、医療保障、医療提供の基本的理念ならびに基本的権利と原則を定め、医療に関する施策の指針及び国、地方公共団体の責務を定めることを目的とする。

(患者の権利に偏らない医療提供側の権利の確保の宣言)

※(  )内は趣旨。以下、同様

[定義規定

第二条 この法律でいう医療とは、健康の保持増進、疾病の予防、治療及びリハビリテーション、公衆衛生など医学的知見により社会的に行われるものをいう。

 この法律でいう、病院、診療所は医療法第一条の五に規定するものをいう。

 この法律でいう健康情報とは、健診、予防接種、診療、投薬などの記録その他健康管理に必要な情報をいうものである。

※必要に応じ「定義」項目は追加

[医療保障の基本理念

第三条 国は、患者・国民が「いつでも、どこでも、だれでも」医療を受けられるように、公共性、公益性を踏まえた施策を講じなければならない。

(皆保険理念の明文化/医療の商品化、市場化への牽制) 

 国は、医療に関する施策の決定にあたり国民の意思が反映されるようにしなければならない。

(医療政策決定過程への国民参加)

第二章 医療保障政策

[財源の確保

第四条 国は、医療保障に関する施策に必要な財源を確保しなければならない。

(財政圧力による医療費抑制策への牽制) 

[医療の進歩、安全の確保

第五条 国は、医療に関する研究及び技術の開発が、有効性、安全性を担保し、その成果が国民に還元されるように、その推進に関し必要な施策を講じなければならない。

(医学研究への財政保障と臨床研究・試験の法整備) 

 国は医療機関において、医療提供が安全になされるよう、人的体制等の労働安全、医療技術、医薬品などの医療水準の担保がはかられるよう施策を講じなければならない。

(医療者の過密労働の解消/安全な医療提供)

[医療制度

第六条 国は国民が医療を等しくあまねく享受できるよう法律等に基づく制度により保障しなければならない。

(財政措置による雲散霧消化の牽制)

[健康情報

第七条 健康情報は原則、患者本人の同意なく、利用することを禁ずる。

(医療情報の無断使用、商業利用等の禁止)

[医療機関の体系的整備

第八条 国及び地方公共団体は、住民が必要に応じ適切な医療を受けることができるようにするため、その地域の自然的、社会的諸条件に応じて、診療所並びに総合的、専門的な病院及びその他の病院が体系的に整備されるよう必要な施策を講じなければならない。

 その際、特に専門的医療を担当する病院は主として公的医療機関の新設又は整備拡充によって行なわれるものとする。

 国は診療所、病院の各機能に応じた診療分担と、各機能の補完的な連携がなされるよう、体制整備をはからなければならない。また、国は広報・教育による患者の自律性と、疾病の多様性に鑑みた医療機関の自主性を尊重しなければならない。

(診療科目、診療機能の地域偏在と無秩序化の整備)

(その際の地域の医療機関の合意形成の担保)

(診療ガイドラインの強制の排除とプロフェッショナル・オートノミーの保障)

[医療担当者の確保のための施策

第九条 国は、医学、歯学、薬学及び医療技術の進歩及び専門分化並びに医療に対する需要の変化に対応して、各種の医療担当者が十分に確保されるよう必要な施策を講じなければならない。

 前項の施策は、生活環境、人口構成、疾病構造等の変化に伴う各種医療担当者の需要に応じ、その養成は計画的に行わなければならない。

(医療需要に即応した計画)

[医療提供者の質の確保

第十条 国は、医学、歯学、薬学及び医療技術の進歩及び専門分化並びに医療に対する需要の変化に対応して、医療を提供するものの業務範囲、資格要件等を見直し、必要な措置を講じなければならない。

 医師は担当する診療科目につき原則、相当期間の臨床研修を経ているものとする。

 医療を提供する各種医療担当者は、医学、歯学、薬学及び医療技術の進歩等の状況の変化に対応するため、その資格取得後においても研鑚し、その研修は物的・時間的に保障されなければならない。

(医師養成の国家責任と医師の研鑽保障)

第三章 医療提供者の権利と責務

[医療担当者の処遇

第十一条 国は、各種医療担当者の職務の公共性並びにその職務について必要とされる高度の知識及び技能にふさわしい社会的地位の確保と経済的待遇の保障がなされるよう必要な施策を講じなければならない。

(診療報酬などの経済水準、労働・技術の的確な評価の保証)

[医療担当者の労務環境の保障

第十二条 国は、各種医療担当者の職務遂行が適切に行われるよう、労務環境の保障に努めなければなない。その際、労働の特殊性に配慮がなされなければならない。

[医療を提供するものの裁量権

第十三条 医療を提供するものは、医療水準に応じた合理的判断と職業的判断に基づき、適切な診療を実施することを妨げられない。

保険診療の点数ルール、審査、個別指導などによる診療介入の拒否)

[医療を提供するものの責務

第十四条 すべての医療担当者は、生命の尊厳に立脚して、医療担当者相互の立場を尊重しつつ、医師又は歯科医師を中心として有機的連携の下に一体となって、医療を提供する義務を負う。

(医療の必要に応じた連携の強化)

第四章 患者等の権利と責務

[患者等の権利と責務

第十五条 患者は自らの医療に関し、自らの健康情報の提供を受け、主体的に判断し決定する権利を有する。

(患者の自己決定権の保障)

 患者は、医療提供者が適切な医療を提供できるよう、協力に務めなければならない。

(適切な医療の提供のために)

[医療制度に関する教育

第十六条 国は国民が適切に医療を受けられるよう教育を行わなければならない。

(大病院志向の是正と医療制度、医療知識の理解の促進)

附 則

第一条 国、都道府県及び市町村は医療施策について、医療機関、住民、有識者などと共に検証し、必要な施策の軌道修正を図らなければならない。

(政策の「検証」のルール化)

第二条 この法律は、公布の日から施行する。