神奈川県保険医協会とは
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2026/1/13 政策部長談話「診療報酬のプラス改定を評価し経営権侵害に抗す 初再診料の充実と今後の底上げを求める」
診療報酬のプラス改定を評価し経営権侵害に抗す
初再診料の充実と今後の底上げを求める
神奈川県保険医協会
政策部長 磯崎 哲男
◆骨太方針2025とインフレ局面対応に応えた2段階改定 首相裁定と財務省の手練 実質プラスは評価
2026年度診療報酬改定の改定率は本体3.09%、薬価等▲0.87%、全体2.22%と実質プラス改定へ転じ近年にない本体のプラス幅となった。首相裁定で厚労省が推す改定率に軍配が上がったが、「骨太方針2025」の二律背反の内容を満たし、日本医師会が提案のインフレ下での改定方法へも応えた内容は、厚労省の尽力の下に財務省の手堅い手練が垣間見えるものとなっている。自民党医系議員らをはじめ、医療界や関係者の労を多としたい。ただ、各方面からの指摘のように、不十分性、不足感は否めない。
本体3.09%は、26年度2.41%、27年度3.77%の2段階改定での実施による平均値という「新たな発想」で、27年度は経済・物価動向の対応した加減算調整を経営状況調査の上で行うとしている。
これから点数配分となるが、改定率には幾重もの枷や要件が課せられている。われわれは素直に経営安定と職員の賃上げのため初再診料の充実と、今後の改定での継続的で大幅な底上げを強く求める。
◆使途限定で細分化した改定率 内科系診療所へ適性化▲0.15%は打撃
本体改定率3.09%の使途内訳は複雑・多岐に細分化された。①賃上げ分1.70%(26年度1.23%、27年度2.18%)、②物価対応分0.76%(26年度0.55%、27年度0.97%)、③食費・光熱水費0.09%、④経営悪化緊急対応分0.44%、⑤適正化分▲0.15%、⑥通常改定分(政策改定分)0.25%と、された。
「骨太方針2025」に盛り込まれた「公定価格の引上げ」、「経営の安定」、「コストカット型からの転換」「幅広い職種の確実な賃上げ」「経済・物価動向への対応」を満たし、「歳出改革努力の継続」「保険料負担の抑制」へも応えた格好である。しかも日医のインフレ下の現実的な改定対応案を取り入れている。
ただ、適性化分▲0.15%は、処方・調剤の点数引き下げ、長期処方・リフィル処方の取組み強化とされ、主に内科系診療所への悪影響が懸念される。「リフィル処方箋の原則化を視野」と大臣折衝事項で記されており、今後の点数改定での度合いにもよるが全てが圧し掛かると、単純計算で前回改定の▲0.25%との合計で▲0.40%となる。内科診療所の占める医療費は全体の10%でしかなく、これは実質▲4.0%に匹敵し打撃が大きい。▲0.4%は約2,000億円強、診療所医療費は約10兆円、内科は約5兆円である。
改定率は国費分が示されており、逆算すると改定率1%=国費約1,300億円、医療費換算で約5,200億円となる。実は26年度の本体と薬価等の相殺での全体分国費1,285億円は改定率1%相当である。27年度は薬価の毎年改定分が乗るので、国費分は更に削られる。財務省の深謀遠慮が見て取れる。
◆経営裁量権への侵害と医療機関の事務の煩瑣化を重ねる愚 企図は水泡に帰す
使途がここまで細分化された改定率も、2段階改定も初めてだが、更に書き込みや施設類型ごとの改定率まで明示され、がんじがらめになっている。
賃上げ分1.70%は3.2%のベースアップ実現を「支援するための措置」を講じ、施設類型ごとの職員規模や構成に応じた配分にするとしている。しかも、事務職と看護補助者は人材獲得競争に直面していることを踏まえ5.7%のベースアップ実現としている。
そのため、賃上げ分1.70%のうち0.28%は、事務職や看護補助者などの、ベースアップ評価料の対象職種とならない職種についての対応分として、初・再診料や入院基本料で、賃上げ拡充時の「特例的な対応」として措置がされる。ただし、賃上げの「実効性確保」のための新たな「仕組み」をベースアップ評価料と同様に構築するとしている。迅速、詳細な実績把握が目的となっている。
「医療機関等における賃上げ余力の回復・確保を図る」とされているが、現状は初再診料の点数引上げを長年、棚上げにしてきた惨禍である。遅きに失した感があるが、更なる経営裁量権の侵害、医療機関への煩瑣な計画書・実績報告書の作成・提出義務化では、その企図は水泡に帰す。事務職員や看護補助者の確保は医療機関機能を維持する上で既に死活問題であり、医療機関へ信頼を置き任すべきである。
◆物価版のベースアップ評価料の噂 規模の底上げは必要
物価対応0.76%も、そのうち0.62%が「26年度以降の物価上昇分への対応」となっている。しかも、診療報酬に「特別な項目」を設定するとした。配分も既に病院0.49%、診療所0.10%、歯科診療所0.02%、保険薬局0.01%と枠決めがされている。この「特別な項目」は、物価版のベースアップ評価料との噂もあり注視が必要だが、規模として1施設あたり、病院は月265万円、診療所は月4万円、歯科診療所は月1.3万円でしかない。規模の底上げは必要である。
0.76%の残り0.14%は高度機能医療を担う病院を対象とした、物価対応本格導入時の「特例的な対応」として措置され、使途は限定されている。
過去の物価上昇へは、骨太方針で社会保障関係費が高齢化の増加分しか認められず措置されていない。それを踏まえれば、この物価対応分の水準では、医療機関経営の危機の脱却は非常に心許無い。
◆緊急対応分も雀の涙 補正予算の効果は雲散霧消化 政策改定分は0.25%
24年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分0.44%は、病院0.40%、診療所0.02%、歯科診療所0.01%とメリハリがつけられている。しかし、診療所は1施設で年間9.9万円にすぎず、歯科は7.8万円に過ぎない。「令和7年度補正予算の効果を減じることのないよう」にと書きこまれているが、補正予算で診療所、歯科診療所とも1施設で6カ月分32万円が手当されており85%減と殆ど減殺され、不整合が生じている。
これら紐付きではない、通常改定分、政策改定分は0.25%で各科の改定率は医科0.28%、歯科0.31%、調剤0.08%とされた。これは、技術料が「医科:歯科:調剤=1:1.1:0.3」である従来比率を踏襲したものである。2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進、かかりつけ医機能評価、アウトカム評価や医療DXなどの安心・安全で質の高い医療の推進が基本方針にあげられている。「面」として地域医療を担う全ての医療機関に資する内容になることを期待したい。強引な医療DX推進で、医療機関の閉院を促進する愚は犯すべきではない。
◆医師偏在是での診療報酬上の「減算措置」が発動
今次改定では、医療法改定に基づき、「外来医師過多区域」での診療所の新規開業者が都道府県知事の要請に従わない場合、診療報酬上減算措置がとられる。地域で不足している医療機能(夜間や休日等における地域の初期救急医療、在宅医療、公衆衛生等)の提供や医師不足地域での医療の提供(土日の代替医師としての従事等)が、要請内容となる。
「外来医師過多区域」は、外来医師偏在指標が一定数値(例えば標準偏差の数倍)を超える地域とされ今後の設定如何だが、二次医療圏でみて上位1/3は東京都や神奈川の都市圏に限定されず、山梨、長野、和歌山、鳥取、島根、徳島、愛媛、熊本、大分など、地方にも広く存在する。偏在指標は人口対比であり、診療専門科目の別は考慮に入っておらず、厚労省資料が脚注でいうように「あくまでも相対的な偏在状況」でしかない。医師の開業動機の上位は今も昔も「自らの理想の医療を追求」、「地域医療への貢献」であり、それは専門性の発揮を基盤としている。開業当初は借入金も多く、経営もすぐには軌道に乗らない。減算措置の実効性に疑問符がつくが、開業撤退の危険、医療資源の損失懸念がつきない。知事要請に従わない場合に、「兵糧攻め」の減算措置が発動というパンドラの箱が開く意味は重い。
◆経済変動対応の精緻化は、経営のガラス張り化とセット
改定では経済・物価対応を組み込み、当初見通しから変動し経営状況に支障が生じた場合に27年度度改定時に加減算調整を図るとした。そのため26年度の医療機関の経営状況の調査を行うとしている。更には経営情報の「見える化」のため医療法人経営情報データべース(MCDB)や医療経済実態調査の精緻化を図るとし、職種別の給与・人数の報告義務化や個人立などの医療機関のデータ公表等も検討の俎上となる。いわば、医療機関経営の「ガラス張り」化が企図されている。
今次改定は既にみたように、医療機関の経営権、経営裁量への侵害を増強する方向性が示されている。日本の皆保険制度は、民間が主体の医療施設が担っており、開設も経営も運営も、経営方針や診療計画も医療機関が責任を負っている。診療所の4割に算定が止まるベースアップ評価料などの経営権侵害は撤廃すべきである。実質プラス改定の福音を画餅に堕さない、点数設定と更なる底上げを強く求める。
2026年1月13日
診療報酬のプラス改定を評価し経営権侵害に抗す
初再診料の充実と今後の底上げを求める
神奈川県保険医協会
政策部長 磯崎 哲男
◆骨太方針2025とインフレ局面対応に応えた2段階改定 首相裁定と財務省の手練 実質プラスは評価
2026年度診療報酬改定の改定率は本体3.09%、薬価等▲0.87%、全体2.22%と実質プラス改定へ転じ近年にない本体のプラス幅となった。首相裁定で厚労省が推す改定率に軍配が上がったが、「骨太方針2025」の二律背反の内容を満たし、日本医師会が提案のインフレ下での改定方法へも応えた内容は、厚労省の尽力の下に財務省の手堅い手練が垣間見えるものとなっている。自民党医系議員らをはじめ、医療界や関係者の労を多としたい。ただ、各方面からの指摘のように、不十分性、不足感は否めない。
本体3.09%は、26年度2.41%、27年度3.77%の2段階改定での実施による平均値という「新たな発想」で、27年度は経済・物価動向の対応した加減算調整を経営状況調査の上で行うとしている。
これから点数配分となるが、改定率には幾重もの枷や要件が課せられている。われわれは素直に経営安定と職員の賃上げのため初再診料の充実と、今後の改定での継続的で大幅な底上げを強く求める。
◆使途限定で細分化した改定率 内科系診療所へ適性化▲0.15%は打撃
本体改定率3.09%の使途内訳は複雑・多岐に細分化された。①賃上げ分1.70%(26年度1.23%、27年度2.18%)、②物価対応分0.76%(26年度0.55%、27年度0.97%)、③食費・光熱水費0.09%、④経営悪化緊急対応分0.44%、⑤適正化分▲0.15%、⑥通常改定分(政策改定分)0.25%と、された。
「骨太方針2025」に盛り込まれた「公定価格の引上げ」、「経営の安定」、「コストカット型からの転換」「幅広い職種の確実な賃上げ」「経済・物価動向への対応」を満たし、「歳出改革努力の継続」「保険料負担の抑制」へも応えた格好である。しかも日医のインフレ下の現実的な改定対応案を取り入れている。
ただ、適性化分▲0.15%は、処方・調剤の点数引き下げ、長期処方・リフィル処方の取組み強化とされ、主に内科系診療所への悪影響が懸念される。「リフィル処方箋の原則化を視野」と大臣折衝事項で記されており、今後の点数改定での度合いにもよるが全てが圧し掛かると、単純計算で前回改定の▲0.25%との合計で▲0.40%となる。内科診療所の占める医療費は全体の10%でしかなく、これは実質▲4.0%に匹敵し打撃が大きい。▲0.4%は約2,000億円強、診療所医療費は約10兆円、内科は約5兆円である。
改定率は国費分が示されており、逆算すると改定率1%=国費約1,300億円、医療費換算で約5,200億円となる。実は26年度の本体と薬価等の相殺での全体分国費1,285億円は改定率1%相当である。27年度は薬価の毎年改定分が乗るので、国費分は更に削られる。財務省の深謀遠慮が見て取れる。
◆経営裁量権への侵害と医療機関の事務の煩瑣化を重ねる愚 企図は水泡に帰す
使途がここまで細分化された改定率も、2段階改定も初めてだが、更に書き込みや施設類型ごとの改定率まで明示され、がんじがらめになっている。
賃上げ分1.70%は3.2%のベースアップ実現を「支援するための措置」を講じ、施設類型ごとの職員規模や構成に応じた配分にするとしている。しかも、事務職と看護補助者は人材獲得競争に直面していることを踏まえ5.7%のベースアップ実現としている。
そのため、賃上げ分1.70%のうち0.28%は、事務職や看護補助者などの、ベースアップ評価料の対象職種とならない職種についての対応分として、初・再診料や入院基本料で、賃上げ拡充時の「特例的な対応」として措置がされる。ただし、賃上げの「実効性確保」のための新たな「仕組み」をベースアップ評価料と同様に構築するとしている。迅速、詳細な実績把握が目的となっている。
「医療機関等における賃上げ余力の回復・確保を図る」とされているが、現状は初再診料の点数引上げを長年、棚上げにしてきた惨禍である。遅きに失した感があるが、更なる経営裁量権の侵害、医療機関への煩瑣な計画書・実績報告書の作成・提出義務化では、その企図は水泡に帰す。事務職員や看護補助者の確保は医療機関機能を維持する上で既に死活問題であり、医療機関へ信頼を置き任すべきである。
◆物価版のベースアップ評価料の噂 規模の底上げは必要
物価対応0.76%も、そのうち0.62%が「26年度以降の物価上昇分への対応」となっている。しかも、診療報酬に「特別な項目」を設定するとした。配分も既に病院0.49%、診療所0.10%、歯科診療所0.02%、保険薬局0.01%と枠決めがされている。この「特別な項目」は、物価版のベースアップ評価料との噂もあり注視が必要だが、規模として1施設あたり、病院は月265万円、診療所は月4万円、歯科診療所は月1.3万円でしかない。規模の底上げは必要である。
0.76%の残り0.14%は高度機能医療を担う病院を対象とした、物価対応本格導入時の「特例的な対応」として措置され、使途は限定されている。
過去の物価上昇へは、骨太方針で社会保障関係費が高齢化の増加分しか認められず措置されていない。それを踏まえれば、この物価対応分の水準では、医療機関経営の危機の脱却は非常に心許無い。
◆緊急対応分も雀の涙 補正予算の効果は雲散霧消化 政策改定分は0.25%
24年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分0.44%は、病院0.40%、診療所0.02%、歯科診療所0.01%とメリハリがつけられている。しかし、診療所は1施設で年間9.9万円にすぎず、歯科は7.8万円に過ぎない。「令和7年度補正予算の効果を減じることのないよう」にと書きこまれているが、補正予算で診療所、歯科診療所とも1施設で6カ月分32万円が手当されており85%減と殆ど減殺され、不整合が生じている。
これら紐付きではない、通常改定分、政策改定分は0.25%で各科の改定率は医科0.28%、歯科0.31%、調剤0.08%とされた。これは、技術料が「医科:歯科:調剤=1:1.1:0.3」である従来比率を踏襲したものである。2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進、かかりつけ医機能評価、アウトカム評価や医療DXなどの安心・安全で質の高い医療の推進が基本方針にあげられている。「面」として地域医療を担う全ての医療機関に資する内容になることを期待したい。強引な医療DX推進で、医療機関の閉院を促進する愚は犯すべきではない。
◆医師偏在是での診療報酬上の「減算措置」が発動
今次改定では、医療法改定に基づき、「外来医師過多区域」での診療所の新規開業者が都道府県知事の要請に従わない場合、診療報酬上減算措置がとられる。地域で不足している医療機能(夜間や休日等における地域の初期救急医療、在宅医療、公衆衛生等)の提供や医師不足地域での医療の提供(土日の代替医師としての従事等)が、要請内容となる。
「外来医師過多区域」は、外来医師偏在指標が一定数値(例えば標準偏差の数倍)を超える地域とされ今後の設定如何だが、二次医療圏でみて上位1/3は東京都や神奈川の都市圏に限定されず、山梨、長野、和歌山、鳥取、島根、徳島、愛媛、熊本、大分など、地方にも広く存在する。偏在指標は人口対比であり、診療専門科目の別は考慮に入っておらず、厚労省資料が脚注でいうように「あくまでも相対的な偏在状況」でしかない。医師の開業動機の上位は今も昔も「自らの理想の医療を追求」、「地域医療への貢献」であり、それは専門性の発揮を基盤としている。開業当初は借入金も多く、経営もすぐには軌道に乗らない。減算措置の実効性に疑問符がつくが、開業撤退の危険、医療資源の損失懸念がつきない。知事要請に従わない場合に、「兵糧攻め」の減算措置が発動というパンドラの箱が開く意味は重い。
◆経済変動対応の精緻化は、経営のガラス張り化とセット
改定では経済・物価対応を組み込み、当初見通しから変動し経営状況に支障が生じた場合に27年度度改定時に加減算調整を図るとした。そのため26年度の医療機関の経営状況の調査を行うとしている。更には経営情報の「見える化」のため医療法人経営情報データべース(MCDB)や医療経済実態調査の精緻化を図るとし、職種別の給与・人数の報告義務化や個人立などの医療機関のデータ公表等も検討の俎上となる。いわば、医療機関経営の「ガラス張り」化が企図されている。
今次改定は既にみたように、医療機関の経営権、経営裁量への侵害を増強する方向性が示されている。日本の皆保険制度は、民間が主体の医療施設が担っており、開設も経営も運営も、経営方針や診療計画も医療機関が責任を負っている。診療所の4割に算定が止まるベースアップ評価料などの経営権侵害は撤廃すべきである。実質プラス改定の福音を画餅に堕さない、点数設定と更なる底上げを強く求める。
2026年1月13日

