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政策部長談話 「現場の士気を砕き、冷水を浴びせる 介護報酬マイナス改定を厳しく指弾する」

現場の士気を砕き、冷水を浴びせる

介護報酬マイナス改定を厳しく指弾する

 

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 1月14日、介護報酬をマイナス改定とする次年度予算案が閣議決定された。全産業平均より月額「10万円も」低い賃金で働く介護現場へ、この「マイナス改定」のメッセージは重く響き、ギリギリで踏ん張っている現場職員の士気を確実に挫き、砕くことになる。当然、労働集約型産業、人的集約産業である介護サービスの質を落とし、介護事業所の存立さえ揺るがすことになる。2025年問題に対応する国策、地域包括ケアの構築にも逆行している。不理解による乱暴な議論の下、マイナス改定となった経緯も看過できない。われわれは、この介護報酬マイナス改定と暴論での政策決定に断固抗議する。

 

 介護保険は、介護の社会化、介護地獄からの解放の世間の期待を背に受け2000年4月に制度がスタートした。5回の報酬改定(03年:▲2.3%、05年:▲1.9%、06年:▲0.5%、09年:+3.0%、12年:+1.2%)の累積で▲0.6%となっており、2000年時点の水準すら割り込んでいる。制度発足当初、必要な介護サービスの6割をカバーする水準からの出発であり、決して「潤沢」ではない「不十分」なサービス状態が起点だったことが忘れ去られている。今回、改定率▲2.27%となったが、これで累積▲2.85%となる。介護心中、介護虐待は依然、後を絶たない。孤立死は社会問題化した。

 介護事業は人件費率が6割、7割と医療以上に高い、個別的対人的サービスである。マイナス改定は、介護現場で働くものの将来を暗くする。全産業平均給与32万円(月額)に対し、介護現場は22万円と10万円も低く年間120万円もの格差がある。介護保険制度以前の措置制度の時代より一貫して低いままである。報道では加算措置の拡充で職員一人あたり月1万2千円を積み増すとされているが、基本サービスの報酬が大きく下がるため、「賃上げ分」を増額しても「基本給」が下がることとなり、総額で賃上げとならないことは関係者には自明である。しかも、利用者と相対する直接処遇職員、つまり介護職員に関する加算であり、ケアマネジャーや看護師、生活相談員、調理師、事務員など全職員の半数を占める間接処遇職員の賃金に関しては無視されている。世間を欺く「朝三暮四」である。

 

 この引き下げにより、総額2,270億円、国庫1,180億円の負担軽減と無邪気に讃え、政府の説明を鵜呑みにした報道も目につくが、介護サービスの質が落ち、薄氷を踏む事態に陥るだけである。「マイナス改定」は、この「社会」が下した介護現場への「評価」、「烙印」である。

 

 今次改定に向けた財務省の審議会や、経済財政諮問会議では、企業と社会福祉法人との会計の違いや財務特性の不理解に胡坐をかいた、特別養護老人ホーム(特養)の内部留保2兆円が槍玉に挙げられた。社会福祉法人の内部留保は施設などに既に使われた財産を含み、現金・預金が全てではない。特養は基本金が必須であり、ほとんど当初の基本金は施設建設、設備整備に投入され、減価償却39年で40年後にゼロとなる。ゆえに、その分の保有は必然である。施設・設備に使途限定の国庫補助金も架空収入とし繰越しとなる。しかも施設の建替費用、職員の年功に応じた賃金上昇分などは、「事業継続」「再生産」に必要な合理的な内部留保であり、当然である。これらは、余剰でも何でもない。

 非正規労働者の大量創出により、賃金を切り詰め結果的に「顧客」を減らし、社会保険制度はじめ不安定な身分の層を厚くするなどで成した、大企業の285兆円に上る「内部留保」とはその内実も質も、金額も桁違いである。

 社会保障を犠牲にしないとの首相の意志が報じられたが、次年度は法人実効税率2.51%の引き下げで1.2兆円、16年度は累計で3.29%下げ最終的に1.5兆円を軽減し、大企業に優遇となる。

 人は石垣、人は城。介護の世界への人材集中は時代の要請である。改めてマイナス改定を指弾する。

2015年1月16日