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2012/2/21 医療運動部会長談話「再診料の『診察』分を実質、減算!? 新設のリハビリ、放射線治療の"診療料"は矛盾している」

再診料の「診察」分を実質、減算!?

新設のリハビリ、放射線治療の"診療料"は矛盾している

神奈川県保険医協会

医療運動部会長 野本哲夫


 中医協は2月10日、2012年度診療報酬改定を答申した。焦眉の診療所の再診料の690円から710円への復元は無視され、今後、「その在り方について検討」と前回同様の結論に終わっている。それにもかかわらず、再診料の評価体系を大きく歪め、矮小化する「外来放射線照射診療料」と「外来リハビリテーション診療料」が新たに導入されている。これは「再診料=診察料」との誤解に乗じた、「診察」分の減算システムの点数化である。この再診料の恣意的な解釈改変についてただし、医療者、関係方面に注意を促すとともに、是正に向けた理解と協力を仰ぎたい。

 

 再診料とは「再診の都度算定できる」ものであり、簡単な検査・処置等の基本的な診療行為を一括して評価した点数と規定されている。しかも看護師やコメディカル、事務職員などの人件費、診察用具、光熱費を含むと厚労省は中医協資料で示している。つまり「再診料=診察料」ではない。「診察」がその算定の要件ともされていない。更に言えば、再診時に新たな疾病を発見し診察をしても、また複数の疾病を診ても新たな初診料や、再診料の積算とはならない仕組みとなっており、いわば事実上、「診察」部分の経済評価は無いに等しい。690円と諸外国に比して極めてその評価は低廉である。

 初・再診料の「診」の意味は「医療機関の診療」の「診」であり、診療行為があると算定する仕組みになっている。安全管理の全てを含むものであり「初再診」のない医療は法を逸脱した行為といえる。

 

 新設の「外来放射線照射診療料」(2800円)は、放射線治療医が診察を行った日に算定する外来放射線照射実施計画にもとづく1週間単位の包括点数であり、算定要件で「医師による診察を行わない日であっても放射線照射を実施してよい」「放射線照射を実施した日については再診料等を算定しない」とされている。

 また「外来リハビリテーション診療料」(690円または1040円)は、医師による包括的なリハビリテーションの指示が行われた日に算定する1週間または2週間単位の包括点数であり、算定要件で「医師による診察を行わない日であってもリハビリテーションを実施してよい」「リハビリテーションを実施した日について再診料を算定しない」となっている。

 

 いずれも、診療があった日に再診料は算定できず、診察がない日の診療行為の実施に言及しており、あたかも診察がない場合の新たなタイプの診療料との錯覚をさせる。

 「外来放射線照射診療料」は週5日以上の外来放射線照射の実施が、「外来リハビリテーション診療料」は1週間に2日以上または2週間に2日以上の疾患別リハビリの実施が要件とされている。各々1日あたりの診療料は前者が560円、後者が340円または520円となる。再診料は690円なので、事実上、前者は▲130円、後者は▲350円または▲170円と、診察分の減算を図ったような格好となっている。実に▲18.8%~▲50.7%と減額は大幅である。

 

 しかし、診察がない日の診療行為の実施は、算定要件(通知)に規定されるまでもない話である。「実施してよい」の文言が、あたかも新たな"許可"のような印象を与えるが、健康保険法の一片の通知が、法律である医師法に優越することはない。医師法、医療法の上に健康保険法が成り立っている。あたり前の現状を要件に盛り込み錯覚を誘い、算定誘導を図る巧妙な罠である。

 

 診断確定後に医師の管理・監督下で包括的な指示により、診察なしでの診療は日常では多々あることである。患者家族への投薬、訪問看護、入院治療など普通にある。医師法の無診察禁止の硬直的な理解、曲解が医療関係者に蔓延していること、ならびに個別指導等でそこにつけ込んだ官僚たちの指摘がこの問題を複雑、深刻にさせてきたのである。

 

 奇しくも、外来リハビリテーション診療料は、その基本的考え方として中医協で示された骨子には、「外来でのリハビリテーションにおいて、現在は毎回医師の診察が必要となっているが、状態が安定している場合等、毎回医師の診察を必要としない患者が含まれているため」とし、その導入理由は国語的にも矛盾しているが、図らずもこの理由による同点数の新設は、診察なしの医療行為は医師法違反ではないことを厚労省が是認していることを意味しており、そのことを医療界に教えたことになる。

 

 日本リハビリテーション病院・施設協会の石川副会長などが主張してきた、外来リハビリに毎回診察がルールとの認識は間違っていたことも証明されたとこにもなる。

 

 再診料の「診察」部分の経済評価は無いに等しいにもかかわらず、無診察禁止を個別指導で曲解させ、医療界を自縄自縛の連鎖に陥らせ、それを悪利用し、再診料から「診察」部分を減算したかのような診療料を新設するに至っては、厚労省のご都合主義も度が過ぎる。

 

 これら新設点数の、診察分の減算、分割解体評価は、再診料の再編の先鞭である。包括化とも異なり今後、基本診療料(初診料・再診料、外来診療料、入院基本料)全体の融解、雲散霧消の危険性が高い。200床以上の病院では紹介のない患者の初診料の減算(▲700円)も今次改定で導入されている。

 中医協答申の附帯意見に盛られた、再診料等の見直しは、前回と様相が違い、「急性期医療の適切な提供に向けた医療従事者の負担軽減等」のカテゴリーに位置づき「前提」がつけられてもいる。

 

 再診料の正確な理解を広く望むとともに、姑息な再診料再編の策動の撤回を強く求める。

2012年2月21日

 

再診料の「診察」分を実質、減算!?

新設のリハビリ、放射線治療の"診療料"は矛盾している

神奈川県保険医協会

医療運動部会長 野本哲夫


 中医協は2月10日、2012年度診療報酬改定を答申した。焦眉の診療所の再診料の690円から710円への復元は無視され、今後、「その在り方について検討」と前回同様の結論に終わっている。それにもかかわらず、再診料の評価体系を大きく歪め、矮小化する「外来放射線照射診療料」と「外来リハビリテーション診療料」が新たに導入されている。これは「再診料=診察料」との誤解に乗じた、「診察」分の減算システムの点数化である。この再診料の恣意的な解釈改変についてただし、医療者、関係方面に注意を促すとともに、是正に向けた理解と協力を仰ぎたい。

 

 再診料とは「再診の都度算定できる」ものであり、簡単な検査・処置等の基本的な診療行為を一括して評価した点数と規定されている。しかも看護師やコメディカル、事務職員などの人件費、診察用具、光熱費を含むと厚労省は中医協資料で示している。つまり「再診料=診察料」ではない。「診察」がその算定の要件ともされていない。更に言えば、再診時に新たな疾病を発見し診察をしても、また複数の疾病を診ても新たな初診料や、再診料の積算とはならない仕組みとなっており、いわば事実上、「診察」部分の経済評価は無いに等しい。690円と諸外国に比して極めてその評価は低廉である。

 初・再診料の「診」の意味は「医療機関の診療」の「診」であり、診療行為があると算定する仕組みになっている。安全管理の全てを含むものであり「初再診」のない医療は法を逸脱した行為といえる。

 

 新設の「外来放射線照射診療料」(2800円)は、放射線治療医が診察を行った日に算定する外来放射線照射実施計画にもとづく1週間単位の包括点数であり、算定要件で「医師による診察を行わない日であっても放射線照射を実施してよい」「放射線照射を実施した日については再診料等を算定しない」とされている。

 また「外来リハビリテーション診療料」(690円または1040円)は、医師による包括的なリハビリテーションの指示が行われた日に算定する1週間または2週間単位の包括点数であり、算定要件で「医師による診察を行わない日であってもリハビリテーションを実施してよい」「リハビリテーションを実施した日について再診料を算定しない」となっている。

 

 いずれも、診療があった日に再診料は算定できず、診察がない日の診療行為の実施に言及しており、あたかも診察がない場合の新たなタイプの診療料との錯覚をさせる。

 「外来放射線照射診療料」は週5日以上の外来放射線照射の実施が、「外来リハビリテーション診療料」は1週間に2日以上または2週間に2日以上の疾患別リハビリの実施が要件とされている。各々1日あたりの診療料は前者が560円、後者が340円または520円となる。再診料は690円なので、事実上、前者は▲130円、後者は▲350円または▲170円と、診察分の減算を図ったような格好となっている。実に▲18.8%~▲50.7%と減額は大幅である。

 

 しかし、診察がない日の診療行為の実施は、算定要件(通知)に規定されるまでもない話である。「実施してよい」の文言が、あたかも新たな"許可"のような印象を与えるが、健康保険法の一片の通知が、法律である医師法に優越することはない。医師法、医療法の上に健康保険法が成り立っている。あたり前の現状を要件に盛り込み錯覚を誘い、算定誘導を図る巧妙な罠である。

 

 診断確定後に医師の管理・監督下で包括的な指示により、診察なしでの診療は日常では多々あることである。患者家族への投薬、訪問看護、入院治療など普通にある。医師法の無診察禁止の硬直的な理解、曲解が医療関係者に蔓延していること、ならびに個別指導等でそこにつけ込んだ官僚たちの指摘がこの問題を複雑、深刻にさせてきたのである。

 

 奇しくも、外来リハビリテーション診療料は、その基本的考え方として中医協で示された骨子には、「外来でのリハビリテーションにおいて、現在は毎回医師の診察が必要となっているが、状態が安定している場合等、毎回医師の診察を必要としない患者が含まれているため」とし、その導入理由は国語的にも矛盾しているが、図らずもこの理由による同点数の新設は、診察なしの医療行為は医師法違反ではないことを厚労省が是認していることを意味しており、そのことを医療界に教えたことになる。

 

 日本リハビリテーション病院・施設協会の石川副会長などが主張してきた、外来リハビリに毎回診察がルールとの認識は間違っていたことも証明されたとこにもなる。

 

 再診料の「診察」部分の経済評価は無いに等しいにもかかわらず、無診察禁止を個別指導で曲解させ、医療界を自縄自縛の連鎖に陥らせ、それを悪利用し、再診料から「診察」部分を減算したかのような診療料を新設するに至っては、厚労省のご都合主義も度が過ぎる。

 

 これら新設点数の、診察分の減算、分割解体評価は、再診料の再編の先鞭である。包括化とも異なり今後、基本診療料(初診料・再診料、外来診療料、入院基本料)全体の融解、雲散霧消の危険性が高い。200床以上の病院では紹介のない患者の初診料の減算(▲700円)も今次改定で導入されている。

 中医協答申の附帯意見に盛られた、再診料等の見直しは、前回と様相が違い、「急性期医療の適切な提供に向けた医療従事者の負担軽減等」のカテゴリーに位置づき「前提」がつけられてもいる。

 

 再診料の正確な理解を広く望むとともに、姑息な再診料再編の策動の撤回を強く求める。

2012年2月21日