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政策部長談話 「2010年度の診療報酬改定に向け 医療経済実態調査の公正なデータ処理を求める」

2010年度の診療報酬改定に向け

医療経済実態調査の公正なデータ処理を求める

 

神奈川県保険医協会

政策部長 森 壽生 

 中医協は2010年度の診療報酬改定に向けた医療経済実態調査を、6月の単月調査と年間決算データの調査とし、準備にかかっている。ここ8年連続の社会保障費2200億円削減も軌道修正の機運が生まれはじめ、われわれはこれを注目し、プラス改定となることを望んでいる。しかしながら、その診療報酬改定の基礎とされる医療経済実態調査だが、最重要の指標とされる収支差額は、この事業所所得を個人所得と偽って公表する問題もさることながら、収支差額データの処理と評価に甚だ問題がある。簡潔にいうと恣意性と作為が強く働いているということである。この問題について、誰もきちんと指摘をしておらず、今回も同様のことが繰り返される危険性が高い。そこで、ここに指摘をし、今後、公正なデータ処理にもとづき、中医協の議論がなされるよう要望をする。

 

 医療経済実態調査は通常、改定実施の前年6月に単月調査を実施し、その年の秋に速報を、そして翌年の改定後、夏に確定報が公表されている。08年度診療報酬改定でいうと、07年10月31日に速報が公表され、08年4月1日に改定が実施、08年7月9日に確定報が発表となっている。

 

 よって診療報酬改定は速報を基に、改定幅と改定内容が決められているのである。ただ実際には、速報は「平均値」の収支差額が公表されるにすぎず、この平均値を指標とし、全体を推し量る代表値として改定が実施されているのである。速報では、階級ごとの度数分布は示されていない。つまりは収支差額が正規分布していることを前提に、それを暗黙の了解として、改定が行われているのである。

 

 では、本当のところはどうか。この08年診療報酬改定の基礎となった07年度医療経済実態調査の診療所全体の収支差額は177万9千円(平均)だった。しかし、改定後に発表された確定報の階級分布を見ると、明らかに正規分布とはなっていない。「最頻値」は0円未満であり17%の度数を占め、「平均値」以下が63%を占めている。また「中央値」は135万6千円であり、平均値と大きく乖離している。

 

 つまり、08年改定は、医療現場の実態を反映した改定とは極めて言い難いのである。

 

 しかも、階級分布は500万円以上の階級は、それ以下が50万円単位にも関わらず、100万円単位と階級幅を変えて処理をし、ヒストグラムも縦軸と横軸を逆にし図示するなど、作為が加えられているのである。

 

 では、速報段階で収支差額の階級分布の公表は不可能なのだろうか。否、である。速報では収支率(=収支差額/医業収入)の階級分布がヒストグラムで示されており、これが作成できるのならば、収支差額の階級分布も公表可能である。付言すれば、収支差額の実態を糊塗するためか、収支率の階級分布のみが、唯一公表されているのである。明らかに作為が働いているとしかいいようがない。

 

 政策立案において公正なデータは必須ではないだろうか。アンフェアなデータによる政策のミスリードを期待するのではなく、フェアな政策論争ができる文化を厚労省は築くべきだと考える。厚生労働の意味内容に恥じない、官庁としての役割を、われわれは切に願う。

 

pdf:収支差額の階級別度数分布(中医協資料) 

2009年5月7日