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医療運動部会長談話 「医療の再生産を保障する医療費規模へ 8兆円の赤字ギャップの解消を求める」

医療の再生産を保障する医療費規模へ

8兆円の赤字ギャップの解消を求める

 

神奈川県保険医協会

医療運動部会長 池川 明

 日本の医療費水準が国際的にみて低水準にあることは、もはや広く理解されつつある。 最近のOECDデータでみても医療費の対GDP比は8.2%で加盟30カ国中21位と低い。日本より低いのは韓国、トルコなど公的医療保険の歴史が浅く、 給付内容が貧弱な国々である。この低水準の医療費の下、世界一の健康度(WHO)を達成しているのは、医療者の献身と犠牲によるものであり論をまたない。

 われわれは90年代の終わりと、早くから、公的医療費の欧州水準規模への総枠拡大を唱え、関係方面に要望してきた。最新データに照らせば、求める医療費規模 の追加分は、フランス水準でプラス10.6兆円、ドイツ水準でプラス6.7兆円、スウェーデン水準でプラス3.7兆円となる。

 われわれは、このようなざっくりした要望ではなく、医療の再生産を保障する医療費規模はどれだけであるべきなのか、各種の指標を基に改めて積算をし、ここに示すこととした。結論を先に言えば、41兆4千億円は最低限、必要である。つまり現行の医療費33兆円と8兆円のギャップが存在しており、医療機関がこの赤字分の解消に犠牲を払っているのである。

 

 再生産を保障する医療費の積算式を、われわれは、「人件費+管理費+外部購入費用+医業再生産費用」とした。

 人件費は現金給付と福利厚生費で構成し、現金給付は全産業の平均賃金である賃金センサスを指標に医師も事務も一律的な賃金として医療従事者数をもって試算した。福利厚生費はその10%相当として計上した。

 管理費は経費と減価償却費で構成し、指標は直近のH19年度の中医協・医療経済実態調査の数値を、診療所、病院、歯科診療所、薬局ごとに用い、施設数で試算。

 外部購入費用も、実態に即し、医薬品費、医療材料費、給食材料費、委託費を、管理費と同様に中医協・医療経済実態調査の数値で試算を行った。

 医業再生産費用については、医療の公共性を鑑み、公共サービスの従業員1人あたり経常利益を用い試算した。詳細は後掲の資料に譲るが、試算結果は次のようになる。

 

・人件費14兆9,898億円 ・管理費6兆1,742億円 ・外部購入費用16兆4,543億円 ・医業再生産費用3兆8,236億円

 

●総計41兆4,419億円

 

 つまり、41兆4千億円が最低限、必要な額であり現行の33.1兆円と8.3兆円の大幅な乖離をしているのである。

 管理費、外部購入費用は実態値であり、医業が全国で継続していることを勘案すれば、医業再生産費用と合わせて、この3項目で26兆円なので、人件費は7兆円程度となり、全産業の平均賃金の半分で医療者が働いていることになる。

 また、医療費は人件費の塊とし、医療費の半分は人件費との厚労省の統計数値で考えれば、再生産費用はゼロどころかマイナスとなり、一般産業ではありえない数値実態となるのである。

 これらは、医師の賃金を一般職と傾斜をつけていない試算であり、この点を加味すれば、この規模では到底すまない。

 以上の試算は、この間、誰もが知ることとなった「医療崩壊」の理由を如実に示している。社会保障国民会議が医療費抑制策の転換を打ち出したが、一律的な底上げに難色を示し配分問題が重要と診療報酬の配点に注文づけをする向きがある。

 しかし、既に見たように、今の医療運営は異常なのである。

 

 医療の質、患者満足の問題や、医療連携をはじめ第一線医療、二次救急、三次救急、基幹病院、大学病院、救命センターの役割分担や、この重層構造の盤石化など のほか、高血圧や糖尿病、歯周疾患など慢性疾患中心となった病態変化に対応した医療展開など、医療費の見積もりは、人員、設備だけではない要素や、二次予 防や患者教育による重症悪化予防や健康づくりによる真の医療費適正化も考慮される必要がある。

われわれは今後も情報発信を続けていく。この試算が医療界への一石となることを期待したい。

2009年4月7日