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地域医療対策部長談話 「"全面禁煙"の初志貫徹を 実効性ある『受動喫煙防止条例』への早期見直しを求める」

"全面禁煙"の初志貫徹を

実効性ある「受動喫煙防止条例」への早期見直しを求める

 

神奈川県保険医協会

地域医療対策部長 桑島 政臣


 3月24日、神奈川県の「公共的施設における受動喫煙防止条例」が成立し、来年4月から施行されることとなった。県知事の肝いりで制定が進められてきたこの条例は、昨年4月に示された屋内全面禁煙の方針から、「大規模飲食店等は『禁煙』か『分煙』かの選択可」、「小規模飲食店等は罰則なし」など後退を重ねた上、今県議会における激しい攻防でさらに「小規模宿泊施設の適用除外」、「大規模飲食店等への1年間の罰則適用猶予」などが盛り込まれた。われわれは医療者として、条例の大幅後退に遺憾の意を示すとともに、同条例が真に県民の健康づくりに資するものとなるよう、当初方針である「全面禁煙」に向けた早期の見直しを望むものである。

 

 がんの死亡のうち男性で40%、女性で5%は喫煙が原因と考えられ、特に肺がんの死亡では男性で70%、女性で20%が喫煙が原因だとされている(国立がんセンター)。受動喫煙による健康被害も様々な研究で明らかになっており、複数の疫学研究をまとめた結果、夫の喫煙による非喫煙配偶者の肺がんの相対リスクは1.3?1.5となると厚労省も指摘している。また、たばこの規制を実施した米カリフォルニア州では、医療費を15年間に約9兆円削減できたとの試算もある(カリフォルニア大)。喫煙、受動喫煙がもたらす健康被害及び経済的損失の大きさはもはや論を待たない。

 

 屋内禁煙はいまや先進国の標準である中、わが国での受動喫煙防止対策は『健康増進法』や『たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約』において"努力義務"にとどまっており、事実上たなざらしとされてきた。そのような中、厚労省の「受動喫煙防止対策の在り方に関する検討会」は、神奈川での動きを踏まえ議論を重ね、同24日に「多数の者が利用する公共的な空間については、原則として全面禁煙であるべき」とする報告書をまとめた。今後具体的に推進すべき対策として「国及び地方公共団体は、全面禁煙とするべき施設・区域を示す」、「国は受動喫煙防止対策の取り組みについて進捗状況や実態を把握することが必要」とし、病院や公共機関など全面禁煙にすべき場所を都道府県に通知するとしている。神奈川県における条例制定の動きが、遅々として進まなかった国の議論を後押ししたことは一定の成果であり、条例制定に向けた県知事の奮闘にわれわれは敬意を表したい。

 

 条例では大規模飲食店等は「禁煙か分煙の選択可」とされ、また小規模店等も受動喫煙防止の"努力義務"が課された。喫煙場所と非喫煙場所を区切っても、たばこの煙は出入りや仕切りの隙間から漏れ、分煙は受動喫煙の害を無にする効果はなく、意味をなさないと考える。実際、条例制定に際し行われた調査によると、県民の75%が「屋内の全ての公共的施設は完全禁煙にしたほうがいい」としており(慶応大学調査09年1月)、また喫煙者自身も6割超が「できれば喫煙をやめたい」と考えている(厚労省調査)。屋内禁煙は、非喫煙者の健康被害を防ぐのみならず、喫煙者自身の喫煙量減少にも繋がり、有効な禁煙対策にもなりうるのである。

 

 業界団体の反発はいまだ強いが、度重なる条例案の後退は、われわれだけでなく、たばこの煙のない社会を望む県民の多くにとっても不本意であると考える。われわれ医療者は、当初方針である「全面禁煙」に向け、患者・住民に対して喫煙及び受動喫煙の危険性について十分な教育活動を行い、条例の早期見直しの後押しをする用意がある。県知事には是非とも、健康づくりの先進県として業界団体の理解を得られるよう、粘り強く話し合いを重ね、3年後といわず速やかに条例の見直しがなされるよう、引き続きの努力をお願いしたい。

 

 全国初の受動喫煙防止条例が、実効性ある健康づくりの施策となるよう、早期見直しに向けた取り組みを期待するものである。

2009年4月1日